忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第7話 一つの節目

 店のカウンターでのんびりする毎日。

 気付けばそれを365回繰り返した……簡単に言えば一年経ったんだけどね。

 一年経っても相変わらず客は少ないけど、その分色々な事に時間を割く事が出来た。

 とりあえず一年を一区切りとして、今後のトレーニングスケジュールを立てるために今までやってきた内容を頭の中で整理することに。

 

 

 この一年間、まず店に居る時の空き時間で瞑想と印の練習、家に居る時は体術と能力の確認を行なってきたんだけど、一年続ければそれなりの効果は出るもんだ。

 まず印は正確に組めるようになり、幾つかの術の印の順番も覚えた。

 ………どっちもチャクラ使えないからあんまり意味ないんだけどね。

 いや、チャクラっぽいのが身体にあるっていうのは感じられるようになったんだよ?

 毎日1時間以上の瞑想のお蔭だと思うんだけど、感じられるのと使えるのはイコールじゃなかった。

 今は瞑想の時間で何とかそのチャクラを動かせないか試すのが日課になっている。

 これは今のままでいいと思う。

 

 

 体術に関しても、とりあえず現状維持しかできない。

 今まで通りの筋トレと木に巻いた道着を使った投げ技の打ちこみ練習が基本になるかな。

 打撃に関しては最初空手の型を練習していたんだけど、如何せん小学校の頃にやっていた位のものしか知らないし、変な癖が付いたら直すのが大変だからアカデミーの教科書に載っていた体術を中心に探り探りで練習することにしてる。

 これ以上高度な体術は誰かに師事しない限りは厳しいだろう。

 でもこの二つはまだ現状維持という選択肢が取れるから良いんだけど問題は……

 

 

「能力の把握かぁ」

 

 

 これに関してはやれること殆どやったと思うんだ。

 ‘スケープゴート’で4匹の羊トークンを出してみたり、そのトークンを‘トークン収穫祭’というカードの効果で破壊してみたり(LP回復は発動しなかった……LPがどういう扱いになっているか分からないけど、恐らくLP8000が自分の万全な状態であり、それ以上回復はしないのだと思う)、‘デーモンの斧’を装備してみたりもした。

 思いつく限り効果範囲が広くないであろうものはあらかた試し終え、残っているのはバーンカード、フィールドカード、二体以上のモンスターに影響を与えるカード。

 因みに制限カードのスケープゴートを使ったときに何かデメリットがあるのでは?と少しだけ心配したけど、特に目立った何かは無かった……俺が分かってなかっただけで何かあったのかもしれない可能性は否定できないけどな。

 話が少しだけ逸れたけど、今までは裏庭でこういった実験を行ってきたわけで、残っている効果範囲が大きいであろうカード群は流石に裏庭で発動させることは出来ない。

 ということで俺は手元にあるペーパーナイフをクルクルと回しながら、対策を考えることに。

 

 

「一番手っ取り早いのは広い場所を借りればいいんだけど、確実に何に使うか聞かれるだろうしな……っというわけでこれは却下。

 森とかで勝手にやるっていうのもアリだとは思うんだけど、森は忍者の訓練場でもあるからバッティングする可能性が低くない。

 ということはだ……やっぱり今まで通り裏庭で済ませるのが最善か?

 ……でもどうやって?」

 

 

 普通にやるのは不可能。

 一番可能性があるのはカードの効果なんだけど、今回必要な効果は周囲に影響を与えずに行動できる空間を作り出すこと。

 ……そう言えば墓地はそのまま死を意味するとして、除外ゾーンってどういう扱いなんだ?

 思い立ったが吉日とばかりに一旦店の戸に準備中の札を掛け裏庭へ行くと、手に持っていたペーパーナイフを地面に置いた。

 

 

「使えそうなのは……‘異次元隔離マシーン’だな。

 対象は自分の場と相手の場に居るモンスター一体ずつだから、自分の場のペーパーナイフとそこにいるてんとう虫を除外」

 

 

 対象を選択した瞬間、目の前に二メートルほどの機械が現れた。

 ペーパーナイフがモンスターとして扱えるかどうか不安だったけど、無機物のモンスターやトークンもありならやっぱりイケるよね。

 てんとう虫とペーパーナイフは異次元隔離マシーンのライトが一度点滅するのと同時に、無音でその場から消えた。

 

 

「ここまではOK……問題は帰りだ。

 ‘魔法除去’発動!」

 

 

 目の前にあった機械が空気に溶けるように消えていく。

 するとさっき除外ゾーンに飛ばしたてんとう虫とナイフが地面に転がった。

 てんとう虫は戻ってきて早々何処かに飛び立ち、ナイフは地面に転がっているが特に欠損は無い様だ。

 

 

「問題なさそうだな。

 これで除外ゾーンの安全は確認できたわけだけど、除外ゾーンで能力が使えなければ意味が無いし、異次元隔離マシーンを除外ゾーンから破壊できるか分からない……やるとしたら結構なギャンブルだな」

 

 

 下手すれば異次元に隔離され続けるっていう可能性もないわけじゃない……それは怖すぎる。

 まぁ、最悪でも能力が使えれば‘次元の歪み’の効果で戻ってこれるとは思う。

 だが怖い……というわけで、まずは別の方法で一回除外ゾーンに行ってみることにしよう!

 念のため自室に戻り、一定時間除外ゾーンに行くことができるカードを発動させる。

 

 

「‘封印の黄金櫃’発動。

 対象は俺自身!」

 

 

 こっちに来るときにあった紙の御陰で、1ターンがおよそ5分である事は分かっている。

 故に10分後になればこの場に戻ってこれるはずだ。

 若干の不安は胸から消えないが、俺は目の前に現れた黄金櫃に吸い込まれていく。

 痛みは感じないが、落ち着かない気分だ。

 視界がグニャグニャしていて気持ち悪かったので暫く目を瞑っていると、ふと周囲から音が消える。

 そのことで除外ゾーンへの移動が終わった事が分かった俺は、ゆっくりと目を開いた。

 すると眼前に広がっていたのは白。

 ただ白くて地平線すら見えるほど広い空間だ。

 想像していた場所と全然違っていて一瞬思考がフリーズしてしまったが、直ぐに我に返って当初の目的で ある除外ゾーンで能力を使用できるのかという事を実験してみることに。

 

 

「別に何でもいいんだけど……この際だ!

 フィールド魔法試してみるとしますか!

 ‘草原’発動」

 

 

 その言葉と同時に俺の足元から一気に草原が広がっていく。

 しかし草原は一定範囲まで広がると、フィールドの浸食を止めた。

 どうやら100メートル四方がフィールド魔法の効果範囲のようだ。

 

 

「やっぱり裏庭で使わなくて正解だったな……周囲に障害物があった場合どうなるか分からないけど、絶対大事になってたよ。

 何にしても除外ゾーンでも能力は使えることが確認できてよかった。

 これで異次元隔離マシーンを使っても大丈夫だな」

 

 

 とりあえずこのまま十分何もしないのは勿体ないから今まで試せなかった魔法や罠を試していくことにするかな!

 そうして俺は十分の間、自重という単語を何処かに忘れてきたかのように様々なカードの効果を確認していくのだった。

 

 




バーンカードっていうのは直接プレイヤーにダメージを与える魔法や罠のことです

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