忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第78話 引き継ぎ

 一人の男がナルトを誘導し禁術の記された巻物を他里へ持ちだそうとした翌朝、入院しているであろう二人の見舞いに行った俺だったが、元からそれほど大きな怪我をしていなかった上に自然治癒能力が高いナルトは入院を必要とせずに軽い治療を受けて退院していた。

 一方ナルトを庇って大小様々な怪我をしたイルカも全治三ヶ月の重傷ではあったものの、内臓に大きな損傷はなく、後遺症の心配も皆無らしい。

 本人は背中に風魔手裏剣が突き刺さった時は死ぬかと思ったと笑いながら話していたが、正直友人が死ぬかも知れない状況を笑える程俺はタフじゃないので、真顔で「笑えない話だ……生きて帰って来れて本当に良かったよ」と少しだけ怒りを込めて返す。

 すると俺がそう返すとは思わなかったのか、彼は少し驚きながらも直ぐに真剣な顔になり、「俺はまだ死ねませんよ……ナルトが火影になるまで見守らなきゃいけませんからね」と部屋の窓から見える火影の顔岩を見ながらそう言った。

 

 

 その後は話題を変え、俺が事件の詳しい話を聞いたり、逆にナルトやイルカが今どういう扱いになっているのかをイルカに話したりしていたのだが、丁度ナルトの処遇を話すところで病室にノックの音が響く。

 俺はイルカの交友関係をそれほど知っているわけじゃないので見舞客かナース辺りが来たのだと思い、イルカにドアを開けていいか聞いてOKが出たのでドアを開いた。

 開けた先に立っていたのは覆面をして、片目を隠した白髪の男……いかにも怪しい人物だが、木の葉の額当てをしていることからもしかしたらイルカの友人かも知れないと思いイルカの方を振り返る。

 彼は驚きと疑問を顔に表しながら、口をポカンと開けたままこちらを見ていた。

 そんな彼に戸惑い、男を病室に入れて良いのか迷っていると件の男が口を開く。

 

 

「え~と、そんなに警戒しなくても見舞いついでにお話を聞きに来ただけですよ?」

「君はイルカ君の友達かい? アカデミーの職員ではないのだろうけど……」

「あぁ申し遅れました、俺は上忍のはたけカカシって言います」

「はたけカカシっていうと、もしかして昔一度四代目と一緒に店に来た子かい?」

「覚えてましたか……お久しぶりですね」

「随分雰囲気が変わったから分からなかったよ。

 あの頃は排他的な雰囲気を醸し出していたからね……おっと、そういえば話をしに来たって言っていたね?

 もし俺が邪魔なら今日は帰るけど」

「いえ、今日はお二人に聞きたい事があるんでいてもらえると助かります」

 

 

 俺とイルカの二人に話があると言われたが、二人に共通する事柄なんてかなり限られる。

 彼は顔を見合わせて首を傾げる俺たちに真剣な顔で一つの報告と、一つの疑問を投げかけてきた。

 

 

「でもまずはお二人が気になっているであろうナルトの処遇について決まったことを伝えようと思います。 今回の一件三代目が色々と考慮した結果……」

「ど、どうなったんだ……まさか「アカデミーの便所掃除一週間と言うことになりました」へ?」

「まぁ下手人はあくまで思考誘導したミズキですから、ある意味妥当な判断でしょう……自らの手で捕まえたという功績と相俟ってそういうことになりました」

「そうですか!」

「またそれに加えて、今回の卒業試験で課題だった分身の術よりも高度な多重影分身の術を覚えた事を評価し、彼を下忍として認めると三代目から直々に言伝を頂いてあります」

「ナルトが……下忍?」

「まだ下忍見習いって所ですけどね」

「え、下忍に見習いなんてありましたか? 俺は忍者じゃないのでそこら辺余り詳しくないのでわからないのですが……知ってますかイルカ君?」

「いや、下忍見習いなんて俺も聞いたことないですね。 どういう事なんですか?」

「要はまだアカデミーに戻る可能性があるということですよ」

 

 

 カカシが言うにはナルトを含めた彼が担当する三人の下忍に対して行う最初の訓練で、もしも成果が奮わなかった場合は卒業資格を取り消してアカデミーからやり直してもらうとのこと。

 しかもその訓練は成功率が低く厳しいらしいという話を聞いて、当然の如くイルカは抗議した……しかし既に三代目の許可は下りているらしく、それが聞き届けられることはなかった。

 イルカはその事に納得していない様で、眉間に皺を寄せながら何かを考えているようだ。 

 

 

「(こりゃイルカは後で三代目の所に直談判しに行くかもしれないな……でもその前に)ナルトの処遇については分かりました。

 ですが先程言っていた聞きたい事というのは何なのですか?」

「それもある意味先程の事に関係するんですけど、個人的にナルトと懇意にしていたイルカ先生と、家庭教師の様な事をしていた本瓜さんにアカデミーの教育要領以外にどんなことを教えていたのか軽く教えて頂けないかと思いまして……」

「何でそんなことを?」

 

 

 そんなことを聞く理由として思い浮かぶのは訓練を失敗させるための情報収集、もしくは教育者としての引き継ぎの二つ。

 前者は彼の実力から考えるとあり得ないだろう……本気出せば下忍位瞬殺できるはずだし。

 ということは自然と後者の意味なのだと察しがつく。

 そして俺の考えが殆ど間違っていなかったことを彼が証明してくれた。

 

 

「どんなことを教えられたか知っておくと、どういう鍛え方をすればいいか考えやすいからですね……あ、別に使える術とかは教えてくれなくてもいいですよ?

 手の内知っていたら訓練に面白味が欠けてしまいますから」

「そういうことでしたら……大雑把に言えば俺が教えていたのは体術が主ですね。

 後は苦手な勉強を見てあげたりしてましたよ」

「俺は特に何もしてません、敢えて言うとすれば補習をした位です」

「そうですか……分かりました、では普通に鍛えることにします。

 それでは俺はこの辺で失礼させて頂きます。

 イルカさんはお大事に」

 

 

 そう言ってカカシが部屋を出て行こうとする……その背中へ向かってイルカはベットに座ったままではあるが、深く頭を下げる。

 ナルトにはそれなりに情が移っているので俺もそれに合わせて軽く立礼した。

 

 

「カカシさん……ナルトを宜しくお願いします」

「あの子を教えるのは少し大変かも知れないけれど、期待しているよ」

「ははは………まぁ、やるからには一人前の忍にしてやりますよ」

 

 

 マスクと額当ての所為で表情は殆ど見えないけれど、彼が苦笑しつつも真面目に生徒を育てようとする気持ちが見て取れたので、俺とイルカはもう一度深く頭を下げる。

 イルカは期待とナルトの担当上忍になるカカシへ少しだけ嫉妬を、俺は期待と今後ナルトに関わる事で様々な事件に巻き込まれることに対しての激励を込めて。

 


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