忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第47話 蛞蝓師匠

 安○先生……螺旋丸を出したいです。

 二十年以上修行を重ねても出来ないとか、マジ笑えてくる。

 

 

「なんで出来ないのかな?」

「私も聞いたことのない術なのでよく分かりませんが……おそらく単純にチャクラの量が足りないんだと思います」

「やっぱりそこか……いい加減諦めた方が良さそうだな。

 とりあえず今は気持ちを切り替えよう。

 いつも通り掌仙術を教えてくれるかい、カツユ?」

「はい、じゃあ始めましょう」

 

 

 俺はあらかじめ用意しておいた痛んだ野菜や果物を詰め込んだ籠から一つだけ取り出して目の前に置く。

 この訓練は傷んだ食べ物に掌仙術を掛けることで食べても問題ないレベルまで持っていくのと同時に、繊細なチャクラコントロールを得られるという画期的な訓練なのだ!!

 別にケチったわけじゃないよ? ホントだよ?

 

 

「では先ず患部に直接当ててください」

「これって見た目は戻っても味は落ちたままなんだよな?」

「そうですね、ですが最初に比べれば全然マシになりましたよ。

 最初は人が食べたらお腹を下してしまう様な物でしたから」

 

 

 ちなみに修行で使った果物や野菜は修行に再利用しているのでそれなりにエコだ。

 俺はいつものように手にチャクラを込め、今回の対象である蜜柑をソッと手で包み込む。

 すると僅かに手が発光し、何かが焼けるような音と共に傷んだ蜜柑が元の瑞々しい姿へと戻っていく。

 暫くして音がしなくなったので蜜柑をカツユの前に置いた。

 

 

「65点ですね」

「前より二点高くなったけど、今日は何処が悪かったんだい?」

「そうですね……まずチャクラを込める配分が多かった所為で見た目は元に戻っていますが中身が大味になってしまっています。

 次に時間をかけ過ぎです。

 この程度の事にこんなに時間を掛けていては人を相手にするにはまだ時間が掛かりますね」

「要は全然駄目って事か……こっちは結構自信あるんだけどな」

 

 

 そう言って俺は手にチャクラを纏わせ硬質化し、チャクラメスを作り出す。

 最初は手刀、次に指一本ずつ、最後に針のような形状で両手に計十本。

 これは自分の中にチャクラを感じてからずっと練習してたものなので、まだやり始めて一年も経っていない掌仙術より練度が高い。

 修行の時間は厳しいカツユもこれに関しては「師もいないのに良くここまでの練度を……」という驚きと賞賛をくれた。

 まぁ実際チャクラの運用訓練に関してはこれと水上歩行の業ばっかりやって来たから、その二つと変化の術に関しては中々のものだと自負している。

 変化の術はずっと使っているものだから使用チャクラに無駄があるとチャクラ切れを起こすかも知れないという恐怖があったのでかなり気合いを入れて習得したものだ。

 

 

「何度見ても見事なチャクラ形成ですね」

「こればっかりやってたからね、でもまだ身体の内部だけを斬るなんていう技は出来る気がしないよ」

「あれはかなり精密なチャクラコントロールと人体に関する深い知識が不可欠ですから、医療忍者……それもかなりの凄腕にしかできません。

 どうします? そのレベルを目指しますか?」

「流石にそこまで本格的に忍の道を進む予定はないから遠慮しておくよ。

 それよりもこの間言っていた幻術を教えてくれないか?」

「魔幻・此処非の術の事ですね……確かに戦闘を避けるために修行しているヨミトさんには丁度良い術ということは確かです。

 この術は簡単に言えば相手に場所を誤認させる術なのですが、個人に掛けるわけではなく効果範囲にいる全員に掛かる術なので、結界術に近い性質を持っています」

 

 

 カツユの話をまとめるとこうなる。

 幻術は大まかに分けると二通りので、一つは個人に掛けるもの、もう一つは範囲内にいる者に掛けるもの。

 どちらも一長一短なわけだが、後者の欠点は明確だ……面倒臭いのである。

 前者は相手の目に印や動きを見せることで発動するのだが、後者は前準備が必要不可欠なのだ。

 結界符が必要だったり、術者が数人必要だったりと条件は様々だがパッとやって出来る、ものではないらしい。

 故に専守防衛ならまだしも、積極的に攻める場合には向かないのだとか。

 

 

「幻術の特性については分かったが、じゃあこの術の発動条件は一体何なんだい?」

「符を四カ所に張り、印を組むだけで出来ます。

 ただし符に一度使用者のチャクラを流さないといけません。

 この術は比較的に簡単なものですから直ぐ出来るようになりますよ。

 符はよろず屋に売っている物でも大丈夫ですから、次の時に用意できれば次から始めることにしましょう。

 高い物ではないですし、少し大目に十枚ほど用意しておくと良いかもしれませんね」

「分かった、買っておくよ。

 じゃあ今日の修行はここら辺で切り上げて、お茶にしようか。

 この間お客さんが美味しい羊羹を持ってきたから、一緒に食べよう」

「羊羹……聞いたことはありますけど、私食べたことないです!」

「そっか、じゃあ楽しみにするといい。

 ただ上品な甘さで飽きが来ないから食べ過ぎないようにね」

「わ、私はそんなに食い意地張ってません!

 ヨミトさんの馬鹿っ!!」

 

 

 少し顔を赤くして怒るカツユに苦笑しながら俺は台所の棚にあるとっておきの羊羹を取りに行った。

 ホント可愛いわぁカツユ……人だったら告白するレベルだよ。

 一時的でも良いから蛞蝓を人にする薬とかないかな…………地下倉庫の本でまだ読んでない本結構あるから、後で少し探してみよう。

 


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