忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第3話 店の顔

 良い感じの看板探して暫く里の中を歩き回ると、カッコいい焼肉屋の看板が見えたので昼食を取るついでにそこで看板について聞いてみる事を決めた。

 店に入った俺は奥のボックス席に座り、店員にご飯とカルビ、タン塩、ハラミを二人前ずつ注文。

 存分に焼き肉を楽しんだ所で店員さんに本題の質問を投げかける。

 

 

「すいませ~ん」

「あ、ご会計ですか?」

「そうなんですけど、その前に一つ質問いいですか?」

「質問ですか……別に良いですけど、私の3サイズとかは教えられませんよ♪」

「いや、そういんじゃなくて。

 ここの看板についてなんです」

「看板……ま、まさか道場破りならぬ、食堂破り!?」

「いや、違うから……っていうか食堂破りって何だし!?

 俺は看板を何処で作ってもらったのか聞きたいだけだ!!」

 

 

 何だこの店員……テンション高すぎだろ。

 っていうか他のお客さんも憐みの視線を向けてきてるんだが!?

 ん? あのポッチャリしてる人何処かで見た事ある気がするんだけど……主に倍化の術とか使ってた人に似てるぞ?

 もしかして彼のおじいちゃんか?

 なんか微妙に時代を感じていると店員さんが少し考えた後に、何かに気付いたように手を叩いた。

 

 

「あ、な~んだ。 そんなことですかぁ。

 それなら里の外れにある書道家さんにお願いしたって店長がいってましたよ?

 何ですかお客さん、お店でも始めるんですか?」

「ちょっとね。 で書道家が看板を作ったんですか?」

「なんか元大工らしくて木を削る位お手の物、結構その人に看板を作ってもらっている人多いみたいですよ?

 詳しい場所はレジの前にある地図に載ってるからね」

「へぇ……ありがとうございました、助かります」

「いえいえ~、お会計は120両になりま~す。

 今後ともご贔屓に~」

 

 

 俺は会計を支払うと、そのまま教えてもらった書道家さんに看板作製を頼みに行くことにした。

 場所は意外と俺の家に近いらしく、来た道を戻ることになる。

 なんか若干無駄に歩いた気分になりながら、看板のイメージを固めていく。

 う~ん、二行で‘古本屋 本の宿’とかでいいかな?

 そんな事を考えていると書道家が住んでいる家の前に着いたんだけど……ボロい。

 しかも朽ちた感じじゃなく、明らかに切り傷やら打撃痕の所為でボロい。

 

 

「なんだここ……明らかにヤバい雰囲気がするんだけど?

 本当にここなの「オイ」ひぃ!?」

「オレの家に用か?」

 

 

 後ろから話しかけてきたのは左腕が無く、頭にバンダナらしきものを巻いている30代後半の渋メンだった。

 目つきが鋭いというわけじゃないけど、煙草を吸いながら何処を見ているか分からないような眼をしているのはちょっと怖い。

 でもこのままビビっているわけにもいかないんだ……俺は看板を作ってもらいに来たのだから!

 

 

「あ、あの!」

「あ?」

「かっ……看板を作って欲しいんです!!」

「ん、あ~……客か。

 何を書けばいいんだ?」

「えっと、‘古本屋 本の宿’っていう看板を……」

「ふ~ん、古本屋ねぇ。

 何処にあんだ?」

「す、直ぐそこです」

「じゃあ行くか」

「へ?」

 

 

 なんかいきなり歩き始めたオジサンの後ろ姿をポカンと見ていたんだけど、何処に行くか聞いてないし、ここで見失ったらここに来た意味が無くなると思い、俺も後を追っていく。

 

 

「ちょ、ちょっと!

 何処行くんですか!?」

「お前の店」

「何でいきなり!?」

「お前の店見ないと看板書けねぇじゃねぇか。

 店構えに合った看板じゃなくちゃ気分悪いだろ?」

「そ、そうなんですか?」

「当たり前だろうが。

 高級料亭で女の書くような丸っぽい文字で看板掲げてたら何か違和感感じるだろ?

 オレはそういうの嫌なんだよ。

 だから看板書く前は必ずその店を見ることにしてる」

 

 

 ヤベェ……想像以上に本格的な職人だ。

 ぶっちゃけ見た目から適当にやる人だと思ったけど、がっつり仕事人だったよこの人。

 嬉しい誤算だったけど、代わりに見た目で判断したことに対して少し罪悪感が沸いてしまった。

 俺は自分が悪いと思った時には謝れる男。

 ここは謝らなきゃいけないところだ!

 

 

「あ、あの……すみませんでした!」

「んあ?」

「俺正直貴方の事適当な人だと思ってました!!」

「別に謝んなくていいぞ?」

「お詫びとして……へ?」

「オレは別に誰にどう思われようが気にしない。

 納得がいく物を作れればそれでいい。

 お前がオレに対して申し訳ないと思うなら看板を大事に使ってくれ」

 

 

 何この人マジイケメン……やる気なさげに見えるけど仕事に対する気持ちはかなり強いんだな。

 THE職人って感じでカッコいいなぁ……見た目やる気ゼロだけど。

 その後は特に会話もなく黙々と店に向かって歩き続ける俺達。

 あんまり距離が無い事も相まって割と直ぐ着いたわけだけど、彼は店の正面に座ると懐に手を入れて紙と筆を取り出した。

 そして腰に付けた徳利の様なものに筆を入れると筆先は黒く染まったので、どうやらあの中には墨が入っているようだ。

 酒だと思っていた俺はまた小さな罪悪感に襲われていたが、彼はそんな俺に一切目を向けず、地面に置いた紙へと一心不乱に筆を走らせる。

 何を書いているのか気になった俺は彼の後ろに回って紙を覗いてみると、何か凄い勢いで俺の店の絵が出来上がっていた。

 店を一通り書き終わると、少し筆を止めて目を瞑る。

 そのまま30秒ほど経っただろうか、彼は突然カッと目を見開くと店の入り口の上あたりに看板と思わしきものを書き始めた。

 構成は左上に古本屋、その右下に本の宿という文字を書きいれるという普通の構成だが、その文字はまるで生きているかのような躍動感が出ており、俺はその小さな紙に書かれた看板に目を奪われてしまった。

 

 

「ふぅ……こんなところか。

 これでいいか、古本屋?」

「え、あ、うん」

「どうした?」

「いや、何か凄くてビックリした」

「? まぁいい、これでいいなら明後日までに完成させるから、昼頃に取りに来るといい。

 報酬はその時くれ」

「あ、うん。

 報酬ってどれ位払えばいい?」

「これだけなら3000両だな。

 他にはいらないのか?」

「意外と安いんだ……じゃあ‘本買います’っていう立て看板も頼みます」

「分かった。 じゃあ合わせて3300両でいい」

「本当に安いですね。

 客が言うのも何ですけど、もっと高くしても大丈夫だと思いますよ?」

「いいんだよ、別に金に困ってるわけでもねぇし。

 んじゃ、明後日この店に届けてやる。

 ついでに取り付けもやってやるから安心しろ」

 

 

 そう言うと彼は店から去って行った。

 現代日本にはあんまりいないタイプの人だなぁとか考えながら俺も店の中へ戻ったんだが、未だ完全には片付いていない店内を見て小さなため息をついたのは、しょうがない事だと思う。

 

 




一両って現実なら日本円にして四万円位なんだけど、ナルトの世界だと円=両だと思うんだ
ゲーム版のアイテムの値段を考えるとね?
実際は1両=10円が公式設定らしいです

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