忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第37話 思わぬ危機

 火影邸へと到着した俺はそのまま何の説明も受けずに迎えにきた忍の後をついて歩く。

 どんどん上に登っていることから、恐らく三代目のいる部屋に向かっているのだろう。

 暫く歩いた後、前を歩く三人がある扉の前でピタリと立ち止まった。

 

 

「火影様、本瓜を連れて参りました。

 件の少女も一緒です」

 

 

 そう言うや否や扉が内側から勢いよく開いて一人の男性が飛び出してきた。

 男性は辺りを見回し、俺の隣に立っているシズネを見つけると目から涙を零しながら彼女に近づき抱きしめる。

 

 

「無事で……無事で良かった!!」

「いたぃよおとーさん」

「ど、どうしたんだ? 本当は怪我をしていたのか!?

 それなら早く病院に行かないと!」

「いやいや、きつく抱きしめた所為だと思うけど……」

「そ、そうか……ゴメンよシズネ」

 

 

 シズネの父親は申し訳なさそうにシズネを腕の中から解放するが、思い出したようにシズネを叱りつける。

 説教の内容をまとめると「何故一人であんな危ないところに行ったんだ!」「出かけるんだとしても何も言わずに行くんじゃない!」とのこと。

 明らかな正論に大人ならば挟む口を持たないだろうが、相手は子供である。

 シズネの言い分としてはダン君のお墓に思い出の花を供えたいというのと、綺麗な花を見れば彼の死で沈んだ綱手や両親も笑顔になるんじゃないかと思ったのだとか。

 そんな事を言われれば親は怒りづらいし、自分の行動が子供に不安を与えていたと知ったことで彼の怒りは完全に沈静化した。

 むしろシズネに「気を遣わせてゴメンな」と謝ったくらいだ。

 まぁシズネも良かれと思ってやったことで怒られて少しむくれていたが、彼が本気で心配していたのを小さいながらも理解したのか「ごめんなさい」と小さな声で謝った。

 俺がそんな二人を微笑ましいなぁと思いながら眺めていると、その視線を感じたのかシズネの父親が俺の存在に気付き、駆け寄ってくる。

 

 

「本瓜さん、本当にありがとうございます!

 貴方がいなければシズネはどうなっていたことか……」

「いえ、俺はただピクニックに出かけたシズネちゃんを迎えに行っただけですから」

「ですがあの森には危険な生き物がたくさん……」

「シズネちゃんはそこまで奥に行っていませんでしたし、運良くそういったものには遭いませんでしたから」

 

 

 あの蛇のことは別に話さなくてもいいだろう。

 きっと今頃他の生き物のご飯になってるだろうし。

 彼は少し悩むように下を向いたが、すぐこちらに向き直り「何にせよ本瓜さんは私たちの恩人です」と真剣な表情で言った。

 

 

「この恩は必ず返します……本瓜さんが何か困ったことがあれば言ってください。

 全力で力になりますから」

「そこまで重く考えなくても良いんですが……でももし何かあれば頼らせていただくかも知れません。

 その時はお願いします」

「はい、任せてください」

 

 

 俺としてはあまり頼るつもりもないんだが、未来に控える大事件の数々を考えると協力者の存在は精神安定上非常に助かる。

 店が被害にあったときに一時的にでも身を寄せることが出来る場所があれば大分助かるしね……まぁその時は彼も大変なことになっている可能性があるが。

 九尾もそうだけど輪廻眼の人とかも里にとんでもない被害出すからあんまり楽観視できない。

 今は考えても仕方ないけどな。

 

 

「よし用事も済んだことだし、帰りま「おいおい、俺が呼んでるって聞いてなかったのか?」……そんなわけないじゃないですか、火影様」

「それは良かった、そこの三人は持ち場に戻っていいぞ。

 報告は俺自ら聞く」

「「「わかりました」」」

 

 

 三代目の命令通り彼らは消えるようにこの場を去り、ここに残ったのはシズネ親子と俺、そして三代目だけになった。

 何処かに誰か隠れていそうではあるが、それに対して俺が出来ることは口を滑らせない位しかないからとりあえず放置しておく。

 三代目が俺に視線を送り、今回の詳細を説明するように眼で言ってくる。

 別段逆らう理由もないので今回のことを報告していく。

 シズネが演習場の金網の隙間を通って森の中に入って花を探していた所を俺が見つけて保護したとかなり簡潔に説明した。

 すると三代目が「いくつか気になることがあるから質問するがいいな?」と言ってきたので了承の意を表す。

 

 

「シズネが通った隙間って言うのはどの位の大きさだ?」

「子供一人が四つん這いでギリギリ通れるくらいですね」

「そんな隙間があったのか……後で直すように言わんといかんな。

 でお前はどうやって演習場の中に入ったんだ?」

「金網を登って入りました」

 

 

 流石に蜘蛛と場所を入れ替えて侵入しましたとか言っても意味不明だろうし、どうやったとか言われても困るから適当にでっち上げる。

 実際に少し時間が掛かるだけで不可能ではないわけだしね。

 

 

「上の有刺鉄線はどうした?」

「チャクラ糸で一纏めにして乗り越えました」

「そんな痕跡は残っていなかったらしいが……まぁいい。

 じゃあ森に転がっていた大蛇の死骸、あれについて何か知っていることはないか?」

「俺は詳しいことはわから「おっきな蛇におじちゃんの友達がふぅーってしたら蛇が寝ちゃったの!」……(口止めするの忘れてた!!)」

「ほぅ? その話詳しく聞かせてもらおうか」

「いいよ~、えっとシズネを蛇がバクってしようとしたらおじちゃんが大っきなかごを被せて、それからおじちゃんの友達が出てきてフゥーってしたら蛇が寝ちゃったの」

「この子はこう言っているが……これはどういう事だ?

 先程お前は分からないと言ったことにお前が関わっているとこの子が言っているぞ?」

 

 

 あれ? これって俺ピンチ?

 三代目も真剣な眼でこちらを見ているし、何処からか殺気っぽいものが飛んできている気がする。

 どうしよう………ギブミーライフカード!!

 


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