忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第33話 蘇生実験

 その日俺は店を休み、朝から異次元へと赴いていた……手に袋に詰められた蛇用のエサ(死んだ鼠)を数匹持って。

 本当なら人の死体があれば一番なんだろうけど、流石にそこまでマッドになる程人生に飽きてないので、ペットや忍獣用のエサを買ってきたというわけである。

 これで実験の材料は準備できた……さぁ生命の不可逆に挑戦してみようじゃないか!!

 

 

「まずは‘思い出のブランコ’を発動!

 対象は目の前にある鼠の死骸」

 

 

 俺がそう宣言するのと同時に背骨が折れた一匹の鼠が一瞬光に包まれた。

 そして次の瞬間ピクピクと鼻の辺りが動き始めたではないか!

 約十秒後、そこには元気に走り回る一匹の鼠がいた。

 そう……走り回っているのだ。

 

 

「あの鼠は確かに身体が曲がっちゃいけない方向に曲がっていたはず……それなのに何で走れる?

 たとえ痛みを感じていないとしても普通に走れるとは思えない。

 生き返ると同時に治ったって言うのか?

 だとすれば損傷が激しい死体でも大丈夫ってことになるな」

 

 

 まずは第一案件をクリア……いくら生き返ったとしてもグロテスクな状態で生き返ったらまたすぐ死んでしまうからな。

 俺はしばらくその鼠の観察を続けていると、鼠に少しずつ変化が訪れてくる。

 魔法‘思い出のブランコ’は通常モンスターをエンドフェイズまでフィールドに特殊召喚する効果がある。

 エンドフェイズまでということは、およそ1ターン……効果時間は約5分。

 鼠は4分を経過した辺りから動きが鈍くなり、徐々に元気が失われ、最後には身体がへし折れていく。

 およそ5分、カードの効果が終わると同時に再び鼠は物言わぬ屍へと変化した。

 

 

「やっぱりカードの効果時間終了と同時にもう一度死ぬことになるんだな……縄樹の時に感情のまま使わなくて良かった。

 もし使っていたら綱手と縄樹に最後の別れをさせてあげられたかも知れないけど、代わりに縄樹は二度目の死を経験することになるからな」

 

 

 ここまでは予想と大きな食い違いはない。

 よし次の実験だ。

 次に俺がしようと思っているのは墓地から特殊召喚の際に表示形式が強制的に決まる類のものはどういう効果を生むのかという実験だ。

 

 

「次は違う鼠を対象にしてみようか……‘リビングデッドの呼び声’発動!

 ………あれ光らない?」

 

 

 失敗か? いや、でも効果は発動してる。

 なら何で動かない?

 さっきはあんな好き勝手に走り回ってたのに……まてよ、‘リビングデッドの呼び声’の効果は墓地のモンスター一体を表側攻撃表示で特殊召喚する効果。

 もしかしてこれは……一つ試してみるか。

 俺が一言「立ち上がれ」と命令すると、ネズミが静かに立ち上がった。

 死因となったであろう首の骨折は治っている様だが微動だにせず立っている姿を見て確信する。

 

 

「表示形式が決まった状態で出てくると俺の意思に従うだけの人形みたくなるってことか。

 さっきと違って意思というものが感じられないし……」

 

 

 これはある意味傀儡の術に近い性質のものだな。

 糸を使わずに口頭で命令する分違いはあるが、人形と死体……そのどちらも命を持たないもの。

 しかも死体を使う分人道的に言えばこっちの方が良くないだろう。

 これを人前で使えば非難轟々、いや下手すれば死者を冒涜したって遺族に襲撃されかねないな。

 うん……これはもう使うことは無いかもしれん。

 もし生き返らせた人が生前使えた技術や術を使えるなら戦力として魅力的かもしれないけど、それ以上に敵が増える可能性が高い。

 忍者には使えるものは何でも使う精神を持つ人も少なくないけど限度があるだろう。

 大蛇丸も原作で人体実験して色々なところに敵作ってたはずだし、その二の舞は御免被る。

 とりあえず‘サイクロン’を発動させて鼠を元の屍に戻した後、少しだけ風で飛ばされた鼠達を回収し再び元の場所に戻った。

 サイクロンは魔法や罠を一つ破壊する優秀な速攻魔法なんだけれど、少し厄介な事にその名前通りサイクロン……軽い暴風を生み出してしまう。

 暴風って言っても人が吹き飛ぶレベルとかではないから問題ないっちゃないんだが、小さなものとかだと飛ばされるから気をつけなきゃならんのよね。

 因みに‘大嵐’とか‘砂塵の大竜巻’とかだと……一点集中ではないから風遁・大突破とかには及ばないものの軽い人なら吹き飛ぶ位には危険だ。

 効果がしょぼいカードからといって書いてある絵や名前を良く思い出して使わなければとんでもないことになるから気をつけなければならない。

 幸いカードの記憶に関してはこの世界に来る際に神的存在が何らかの対策をしてくれたようなので、まったくと言っていいほど薄れていない……どうせだったらNARUTO原作に関する記憶も保護して欲しかったと思うのは我儘なんだろうなぁ。

 

 

「っと今はそんなこと関係ないか。

 時間も永遠にあるわけじゃないし、ドンドン試していかないと!」

 

 

 その後4時間位色々と試してみて分かった事を纏めてみるとこうなる。

 死者蘇生は対象が死後一日以内でなければ使えない。

 これは正確に一日かどうかは分からないが、死後硬直が解けてなかったから30時間は経ってないと思う。

 また蘇生する場合も‘死者蘇生’の様な表示形式の指定が無い場合は自我があるが、‘リビングデットの呼び声’の様に表示形式の指定がある場合は肉の人形に近い物になる。

 さらにこのどちらの場合でも効果時間中は外傷などは一時的に治るが、心臓や頭を破壊されると効果は強制的に終了。

 その他にも効果時間が終わりに近づくと治った傷が元に戻っていくことや、体温や心臓の鼓動とかは戻らないことも分かり、あくまで一時的に蘇らせてるんだなと再認識させられた。

 今回の結果次第では縄樹やダン君を……とも考えていたが、世の中そんなに甘くなかったよ。

 すまない綱手……俺は無力だ……。

 


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