忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第16話 油断

 今日も外は騒々しい……戦争は人の心を荒ませるな。

 俺がこの世界に来てから十年程、ついに第二次忍界大戦の幕が開けた。

 この戦争にハッキリとした切っ掛けはないらしいが、それぞれの里が武力で領地を拡大しようとしたのが原因らしい。

 もちろん木ノ葉もそのうちの一つであり、里の外では割と頻繁に小競り合いが起こっている。

 流石に里の中で忍同士の戦闘は滅多にないけど、今後どうなるかは分からない。

 木ノ葉には白眼と写輪眼という忍であれば喉から手が出るほど欲しい眼があるのだから、他里の忍者は虎穴に入ってでも狙いかねないのだ。

 まぁそんな簡単に日向とうちはをどうにかできるやつはいないだろうけどな。

 そんなことよりも今重要な問題は俺の店がいつも以上に閑古鳥が鳴いているということだ!

 三代目はもちろん、綱手もかなり忙しいらしくしばらく姿を見てないし、他のお客さんも明らかに減っている。

 戦争中に娯楽物である本を買いに来る人はそう多くはない……そんなもの買うくらいだったら食べ物買うのが普通だ。

 輸入が滞ったりすると食べ物の値段なんてすぐ上がるしね。

 俺は裏庭に家庭菜園があるからそんなに困らないけど、流石に米とかの値段が上がると辛い。

 主食がないと中々腹一杯になることはないから出来ることなら米を切らすのは避けたいところだ。

 俺が我が家の食卓事情を考えてるうちに外で再び爆音が聞こえてきた。

 遠くで金属がぶつかり合う音、小さく聞こえる怒声のようなもの、火遁系の術であろう爆発音。

 恐らく何処かの里が偵察を送ってきて、そのまま戦闘ってところだろう……ホント物騒になってきたな。

 

 

「まったく、戦争とか勘弁して欲しいな」

「俺もそう思う」

「うぉう!?」

 

 

 突然独り言に応答した相手に振り向くと、そこにはこの里のトップが立っていた。

 何故?とかどうして?とか言うことはあったけれど、彼があまりにも真剣な顔をして立っているから、そう言った言葉すらも引っ込んだ。

 

 

「久しぶりだな」

「そう……ですね」

「今日は一つ聞きたいことがあってここに来た」

「俺にですか?」

「そうだ、前にも聞いたことだが改めて聞きに来た」

 

 

 前にされた質問?

 俺と三代目が交わした会話なんて数えられるほどしかない。

 偶に春本買いに来たり、世間話したりする位で重要な質問なんてされた記憶はないぞ?

 疑問が俺の頭の中を駆け巡っているのを知って知らずか三代目は言葉を続ける。

 

 

「俺がこの店に初めて来たときに聞いたことを覚えているか?」

「三代目がこの店に初めて来たときのこと……」

「俺はその時お前が何者かと問うた」

「あ、あぁ確かに覚えています」

「その問いを改めてお前に問う。

 お前は何者だ?」

「俺はただの古本「なら何故変化の術で姿を変える?」……気付いてらしたんですか?」

「昨日偶々店の前を通りかかったときにお前の姿が揺らいだのを見てな」

 

 

 昨日は確かにカウンターでチャクラトレーニングをしている時に変化の術の構成が一時的に緩んだ。

 まさかそんなタイミング良く彼に見つかるとは……俺も運がないな。

 俺は観念して変化の術を解く。

 そこに現れるのは十年間経つというのに全く年老いていない俺の身体。

 二十代から三十代の変化故にそれほど大きな違いはないけれど、よく見れば明らかに三十代ではない。

 突然変化の術を解いた所為か、三代目がクナイに手を伸ばす。

 その事に危機感を感じた俺はこのままだと攻撃されると思い、急いで弁明をし始める。

 

 

「俺は他里のスパイではないです……命を賭けてもいい」

「なら何故変化していた?」

「それは…………」

 

 

 ど、何処まで話せば良いんだ?!

 転生と能力の事は教えないとして、年を取りにくい事を教えれば納得してくれるかな?

 一先ずこのことを教えて反応を見よう。

 

 

「俺の姿を見て何か思ったことありませんか?」

「少し若くなったな、でそれがどうしたんだ?」

「三代目が言う通り今まで変化していた姿は俺が年を取ったらこうなるだろうという想像の元に変化したもの。

 この姿が俺の素の状態。

 何故俺が変化の術で姿を偽ってきたかといえば、俺の見た目が変わらないことを知られたくなかったと言うのが理由です」

「見た目が変わらない? それはどういう意味だ?」

「そのままの意味です。

 俺はこの十年近く姿見た目が変わっていないのです」

「……不老か?! だがお前の家系に特殊な血を持つ者はいなかったはず」

「何故俺がこうなのかは分かりません。

 でもこのことを知られることで俺が暮らし難くなるのは学がない俺でも分かります」

 

 

 どの世界でも不老不死というものに憧れる者はいる。

 もしそういう人に俺のことを知られれば人体実験とかされそうだし、そういう人じゃなくても気持ち悪いと迫害されかねない。

 人は自分の理解できない存在を遠ざけたくなる生き物って何処かで聞いたことあるしな。

 恐らく三代目もその事に思い至ったのだろう……少し眉を顰めている。

 

 

「分かった、この件に関しては俺の胸の内に秘めておくことにしよう。

 実際何故お前が歳を取らないのかは分からないが、このことを知ってお前を研究材料にしようとする者もいるかもしれないからな。

 お前自身も今後より一層気をつけた方が良い」

「ご忠告確と受け取りました」

「そうか……ところで話は変わって一つ提案なのだが、お前忍者にならないか?」

 

 

 その言葉を聞いた時の俺はきっと鳩が豆鉄砲食らったような顔をしていただろう。

 それほどに想定外の提案だった……確かに今まで何とか変化の術で歳誤魔化してきたけど、他の忍術や能力に関しては他人には絶対に見られない場所でやっていたから知られていないはずだ。

 何故俺が忍者に誘われる?……その理由は三代目が態々教えてくれた。

 

 

「お前のその重り、かなり重いだろう?

 それだけの身体能力があればすぐにでも下忍……もしかすれば中忍に成れるかも知れない。

 今は戦時中、一人でも多くの戦力が欲しいんだ。

 どうだ、忍者になってみないか?」

 

 

 そうか、重りでバレたのか。

 そうだよな、別にそのまま付けてるんだから分かる人には分かるよな。

 色々迂闊だったな俺。

 それにしても三代目に忍者に誘われるなんて……少し嬉しいな。

 だが俺の答えは決まっている!

 

 

「…………魅力的なお話ですけどお断りさせていただきます。

 自分から荒事に突っ込むのは怖いですからね」

「そうか、まぁ無理強いはしない。

 だが出来ればいざという時に一度でいいから力を貸してほしい」

「……不老の事を黙っていてもらうのにその見返りがないと言うのもおかしい話ですから、一度だけ……一度だけ、身分を隠した状態で良いのならば」

「それでかまわんさ、すまんな無理を言って」

 

 

 そう言い残して三代目は店を後にした。

 彼を店の中から見送った俺は再び変化の術で見た目を変え、レジの椅子へと腰掛ける。

 不気味な笑みを浮かべ俺の店を見ている一人の男に気付くことなく……。

 




この話は大分賛否が分かれるかも知れませんね

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