山中、奈良、秋道家に男の子が生まれました!
後のいの、シカマル、チョウジのお父さんであり、それぞれが特殊な忍術を使う家系の子であるが故に木ノ葉でも結構なニュースになっていた……うちはや日向の時ほどではなかったけどね。
俺の店は一度人の手に渡った物を商品としているが故に有名な家の人って滅多に来ないから、うちは家と日向家の人は偶に歩いているのを見かけるくらいで話したこともない。
別に話せたからと言って何があるわけでもないけどな。
そんな話はさておき、この間久しぶりに綱手が店を訪ねてきた。
最近は忙しくてめっきり店に来なくなっていたから、久しぶりに顔を見たんだが……やっぱり美人さんになってきたな。
男子三日会わずんば即ち刮目して見よという諺があったけど、女の子もしばらく会わないと大きく変わるものだ。
一緒に連れてきた男の子を見て思わず「綱手の子供か!?」と驚くほどには大人っぽくなっていたよ……もちろんその後には般若が目の前に現れたわけだが。
彼女が言うには店に来たのは弟の縄樹君に絵本を読んであげるために、カツユに任せるのではなく自分の目で選びたいとのこと。
その言葉を聞いて思わず「しっかりとお姉ちゃんしてるじゃないか」と口から零すと、少し顔を赤くして「うるさい」と小さく一言言って本棚の方へ身を隠してしまった。
突然動いた綱手に置いていかれまいと小走りで棚の方へ向かう縄樹君……人見知りか?
その後綱手は数冊の一般的な絵本(桃太郎や金太郎的な話)をカウンターにおいて財布から代金を出そうとし……それを俺が止めた。
俺の行動の意味が分からない綱手は首を傾げ、横に立つ縄樹君も姉の真似をする。
「え、足りなかった?」
「いや、これは俺から贈らせて貰うよ」
「え?」
「良いお姉ちゃんしてるみたいだからね、そのご褒美とでも考えてくれ。
それに此処じゃ絵本を買っていくお客さんなんていなかったしね」
「な~んだ、在庫処分かぁ……でもありがと。
ほら縄樹もお礼」
「え、うん。 ありがとうヨミトおじさん」
「お、おじさん……ハハハッ」
実際精神年齢は30近いけど、ショックが無いわけじゃない。
俺の見た目も一応変化の術で少しずつ歳を取っているように見せてるから今の俺の見た目は二十代前半位だし……ちょっと若めに化けてるのはこの世界には童顔が多いからであって、決して若く見られたいとか思ってのことじゃないよ? ホントだよ?
でもこれが通じるのは何時までだろうか?
幾ら客が少ないとはいえ零じゃない。
変化の術だと見破られる可能性もあるし、結局100年もすれば此処には居られなくなる。
まぁそこまで生きられるかわかんないけどな。
色々と考えた結果若干顔を引き攣らせながら本を包む俺を見て、ため息をつく綱手。
「実際30過ぎてるんだからおじさんじゃない、いい加減に慣れなさいよ」
「な、何のことかな? 俺は別に気にしてなんか……(実際それだけじゃないし)」
「はいはい、ヨミトは若い若い。
さてと……そろそろ帰ろうか縄樹」
「うん」
本を受け取り、日が暮れ紅く染まっている外を見て千手家の二人は来た時と同じように手を繋ぐ。
そのまま綱手と縄樹君は店の出口へ向かって歩き始め、俺もそれに合わせてカウンターから出る。
店の戸を開け帰ろうとした綱手に一つの助言を与えるために……。
「綱手」
「ん、どうかした?」
「弟をしっかり守ってやれよ」
「あったり前じゃない!」
そう言って二人は家へと帰っていった。
俺の記憶が正しければ原作で綱手は大切な人を亡くしたことでトラウマが出来たはず。
もう俺の原作の記憶は虫食いだらけで大まかな事しか思い出せないけれど、これは間違いない。
なら常連さんの心身を心配して助言するのは人として間違ってないよな?
幾ら火影になる女性で、距離が近ければ危険に巻き込まれる可能性が高いとしても、助言の一つや二つで俺に何か起こるとも思えないし。
最悪何かあれば此処から引っ越せばいい。
ただこの里から出るのは本当の最終手段、
店のものを全て持って引っ越すのはかなりの骨だし、大まかとはいえ何が起こるか知っているこの里の事の方が手の打ちようがあるからね。
それでも対処が思いつかないペイン襲来とかあるんだけど……アレ本当にどうしよう?
店を守りたいけど、里自体が一気にペシャンコにされるのをどう防げばいいのやら……深めの地下室でも作れば身は守れそうだけど、身を守るだけなら除外ゾーンに隠れた方が楽だ。
手段を選ばないんなら‘悪夢の鉄檻’でも使えば攻撃は防げるんだけど、問題は使えば確実にいろんな人に目を付けられる……甘い人なら良いんだけど、この里にも危険人物はいる。
現状なら大蛇丸やダンゾウには目を付けられたくないな。
思想も能力も危険としか言いようが無い。
まぁ今の二人なら理不尽と言うほどの戦力は無いだろうけどね。
流石にまだ草薙の剣やら写輪眼が一杯の腕とか無いはずだし、仲間も多くない。
実際何度か今の内に暗殺すれば今後のためになるんじゃないかとか考えなくもなかった。
でもあの二人が居ないことで里の戦力は確実に低下する。
何時か分からないけれど忍界大戦が起こる時絶対に困ったことになるはずだと思い、手を出せなかった。
積極的に人を殺す気が無いっていうのも理由の一つなんだけど、俺もいつか人を殺すことになるんだろうか?
出来ればそんな日が来ないといいな……。