忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第130話 終末の谷

 六道仙人が言うには無限月読に捕らわれた者を解放するには、ナルトとサスケの二人が子の印を結んで解術しなければならないらしい。

 随分簡単な条件だと思ったが、二人はカグヤの子孫であり、六道仙人の息子達の生まれ変わり……この条件を持った二人以外には解けないのだから厄介だ。

 ましてや因果か六道仙人の息子達の生まれ変わりは相対する事が運命付けられている様に敵対関係になってしまうので、共に何かを成すという事が難しい。

 先程まで共通の敵相手に共闘していたことからこの二人であれば大丈夫だろう……と思っていたのだが、何やら雲行きが怪しい。

 少し距離があるから何を言っているのか聞こえないが、明らかに場が緊張している。

 

 

 そして事は起こった……サスケが周囲を一瞥すると、ナルトを除くその場にいる全ての者が幻術に捕らわれ身動きが取れなくなったのだ。

 そこで明かされるサスケの計画。

 それは自身を頂点とする平和維持計画、尾獣と現五影を排除する事によって過ぎた力を無くし、自身を抑止力として強制的に平和を作り出すという何処かで聞いた事のある様なものだった。

 五影や尾獣、その場に居る他の者達も異を唱えたが彼は聞く耳を持たず、一人動けるナルトに対して殺すと宣言する。

 ナルトは驚くことなく此処にいる者を巻き込まないために離れた場所で決着を付けようと提案、そしてこの場にいる全員に対して「俺に任せてくれ」「動ける様になっても手は出さないで欲しい」と頼む。

 無論雷影や土影は激しく反論するが、サスケは煩わしそうに改めて彼らを一瞥すると両手を合わせ一つの術を発動させた。

 

 

 地爆天星……以前ペインが木の葉を襲撃した際にナルトを拘束するために発動したものであり、強力な引力を持つチャクラを作り出す事で周囲の物体を引き寄せ、まるで一つの星の様に対象を固めてしまう強力な術である。

 その拘束力は尾獣でさえ拘束可能であり、九尾ですら簡単に抜け出すことは不可能。

 そんな術を彼は五影と尾獣各々に対し使い、彼らは幻術で動くことが出来ず、物理的に封じ込められた。

 ナルトはそれを見て少しだけ唇を噛みしめたが、先を行くサスケを追いかけてその場を後にする。

 残されたのは岩で出来た13個の星と三人の動けない者……写輪眼を持つが故幻術に対抗する事は出来たもののチャクラが尽きて動けないはたけカカシ、他の者よりも強力な幻術に掛けられたのか気絶している春野サクラ、そして俺だ。

 

 

 実は俺に関して言えば別に口さえ動けば能力を発動できるので、幻術を掛けられてすぐに対処することも出来たのだが、彼が近くにいる間に解除すると普通にまた掛けられる上により厄介な幻術もしくは全力で消しに来る可能性があるので一旦彼が離れるのを待つ必要があった。

 能力の残る使用回数は16……幻術を一瞥するだけで掛けられる人間を相手取るには相応の準備が無ければ対処するのは難しい上に、相手の戦闘力は未知数なのだ。

慎重に動かなければ容易に詰みかねない。

 故に伏せた罠が使えるようになる時間が必要だったのだ。

 ‘スキルドレイン’……本来であれば効果モンスターの効果を無効化するテキストを持つ 罠カードだが、この世界で発揮する効果は血継限界封じ。

 瞳術や肉体自体に他の人間と違う能力を持つ者に対しては絶大な効果を発揮するある種のワイルドカード。

 うちはや日向一族にとって天敵とも言える効果だろう……ちなみにこの効果に関しては以前‘クローン複製’という対象の効果以外全て同じクローントークンを作り出す罠による実験したので自信はある。

 実験対象は店の客として来た日向一族の一人だったのだが、忍術が使えるのにも関わらず白眼を使えなかった事でほぼ確信しているのだ。

 

 

 既に二人は見えない程遠くに行っており、何時でも切り札は発動出来る状態にある……そろそろ動き出すべきだろう。

 俺は一先ず自身に‘サイクロン’を使う事で幻術を消し、身体に問題が無いか確かめる。

 突然の強風にカカシが此方を向いて目を見開くが、特に気にせず身体に問題が無いことを知った俺は次の作業へと移るため歩き始めた。

 既にサイクロンは二度使用しているので後一回しか使えない……対して地爆天星によって拘束されているのは13。

 どう考えても対処しきれないので制限のため一度しか使えない虎の子‘ハーピィの羽根箒’の使用を決意。

 効果範囲は能力の範囲限界でもある前方100mなので全て解除出来る訳ではないが、恐らく尾獣五体と影達は解放できるだろう。

 

 

「本瓜さん……貴方は一体……」

「今はそんなこと良いじゃないですか、急がないと決着が着いてしまう。

 手を出すなと言われたけれど、決着が着いた後に助けるなとは言われていないですしね」

「屁理屈ですよそれ……二人を頼みます」

 

 

 俺は何も言わず彼に微笑み、羽根箒を発動させた。

 全長20m近くある巨大な羽根箒……水色でしなやかなそれはまるでシルクの様に艶やかで尚かつ何処か神々しさを感じさせる。

 一瞬だった、優雅であり力強くもあった羽根箒の一振りで最初から何もなかったかの様に岩で出来た星は土に還り、五匹の尾獣と影達が解放されたのだ。

 羽根箒は埃を落とすかの様に一度身を震わせてから光の中へと消えていった。

 解放された四人と五匹は何が起きたのか理解できていない様だったが、直ぐに身体の自由が効く事に気付き拘束した張本人を捜すがサスケは既に此処にはいない。

 そこで目を付けたのは俺とカカシ、カカシは手頃な岩を背に体力回復に務めているのが明らかなために彼らが俺の方へ来るのは自明の理だった。

 真っ先に沸点の低そうな雷影が俺の胸倉を掴み上げ問い詰める。

 

 

「サスケは何処へ行った!?」

「ナルトと戦うに相応しい場だと思います」

「……終末の谷という場所だな、其処からナルトのチャクラを感じる。

 かなり激しく戦っているな」

 

 

 九尾が言うには二人は終末の谷……此処からは大分遠い所で戦っているらしい。

 共に解放された一から四尾もそれに同意する様に首を縦に振っている事から間違いないだろう。

 それさえ分かればとばかりに影達は早速動き始める。

 尾獣達は歯を噛みしめ悔しそうに最初の一歩を踏み出せずにいた……それはそうだろう、九尾は一度操られた経験があるし、他の尾獣もつい先程一瞬で身動きを封じられたのだから。

 俺の切り札の事を説明しようと彼らを呼び止めようとしたが、彼らは聞く耳を持たず消えてしまったので一先ず尾獣達に‘スキルドレイン’の事を話し、一歩進める切っ掛けを与えると二尾が器用に尻尾を使って俺を背に乗せ、先を走る影達を追いかける形で尾獣達も走り出す。

 怪獣大行進と言わんばかりに樹や岩といった障害物を四尾と九尾が破壊し、湖があれば三尾が水遁で一時的に道を作り、より大きな障害物があれば一尾が砂で新たな道を造る。

 ほぼ減速することなく直線的に突き進んだ俺達が影達に追いつくのは当然のことで、終末の谷に着く前に彼らと合流する事が出来た。

 


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