忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第129話 終戦

 そこに生きている人は誰もいなかった。

 居たのは穢土転生で現界している歴代火影と身元不明の下半身が一つ。

 四代目火影がいつの間にか合流していたが、それであればナルト達も此処に居るはずであり、そもそもマダラもいないというのはどういう事なのだろうか?

 一先ず先に到着していた火影達に話を聞くため、謎の下半身を中心に立って居る彼らの元へ影達と共に向かう。

 綱手が代表して事情を聞こうとすると、中心に転がる下半身からヌルリと若干身体が透けている角の生えたお爺さんが現れ、辺りを見回す。

 突然現れた幽霊の様な相手に俺を含めた数人が臨戦態勢へと移るが、穢土転生組と土影は目を見開いて驚いている様だ。

 最初に口を開いたのは三代目、その口から出た声は少しだけ震えていた。

 

 

「あ……貴方様はまさか六道仙人では……」

「そう呼ばれていたこともあったな。

 ワシのことを知らん者もいるだろうからまずは自己紹介から始めよう。

 名は大筒木ハゴロモ、今ナルトと戦っているカグヤを母に持つ忍宗の開祖だ」

「六道仙人だと!? 忍の始祖が何故此処に?!」

 

 

 六道仙人……輪廻眼を最初に開眼し、世界を救った救世主として神話として語られる様な人物。

 彼について書かれた書物は数多くあるが、そのどれもが憶測推測に満ちており、共通して語られるのは輪廻眼を持っていた事と隔絶した実力を持っていた事。

 火影達と土影は一般的に得られる情報以外の事も知っている様だが、今尚戦う意思を見せないことから恐らく好戦的な人物ではないのだろう。

 それよりも気になる情報が自己紹介の中に紛れていた。

 

 

「ちょっと待ってください、今ナルトと戦っている相手は誰って言いました?」

「カグヤだ……マダラが神樹を取り込んだ所為で封じ込められておったカグヤが活性化し、奴の肉体を使って現界した。

 今ナルトは位相の異なる空間にてカグヤと戦っておる」

「そのカグヤとは一体何者なのでしょうか?」

 

 

 俺の問いに彼は一度その長い髭を触ってから「ふむ、では簡単に話すとしよう」と前置きしてから話始めた。

 六道仙人の語るカグヤという人物は規格外にも程があるもので、両目の白眼と額にある第三の目が輪廻写輪眼(輪廻眼と写輪眼両方の力を持つ眼)というチートっぷり。

 彼女の目的は元は自分の物だったという世界に存在するチャクラを全て手に入れる事。

 遙か昔、神樹に成ったチャクラの実と呼ばれる食べればチャクラをその身に取り込む事が出来る果実を食べたことで膨大な力を得、息子達にそのチャクラを分け与えたのだが、強すぎる力に未練を感じていたカグヤは息子達からそれを取り返すために十尾へと姿を変えた。

 彼女の息子である二人の子ハゴロモとハムラによってカグヤは封印されたが、其れから幾星霜、封印される前に分離したカグヤの意思がマダラを唆し、自身を復活させ今に至るらしい。

 後此処にある下半身だけの死体は、神樹を取り込んで身体の内側からカグヤが飛び出した結果弾けてしまったマダラの物だということが分かった。

 

 

 話を聞き終わり、カグヤの事や大筒木一族の事もある程度理解することができたのだが、結局此処にいる者に出来る事は祈る事と決着がついた時に六道仙人の術によって別の位相にいるナルト達を呼び戻す事だけ。

 それも後者は此処にいる全員のチャクラを合わせても足りないとかで、歴代五影全ての力を冥界から借り受けるのだとか。

 チャクラさえあれば媒介もなく死者の力を借りる事が出来る事に軽く驚きつつも、流石は六道仙人と半ば納得しその瞬間を待つ。

 タイミングはカグヤと血の繋がりを持つ仙人にしか分からない……この場にいる者全てが今か今かと待ち構える中、遂に仙人からGOが出た。

 その瞬間凄まじいチャクラが六道仙人の元へと集まっていき、上空に黒い孔ができるとそれがドンドン広がっていき、10m程迄大きくなると飛び出す様にナルト達と九体の尾獣が此方の位相へと戻ってくる。

 

 

 戻ってきた彼らは皆ボロボロで、激戦であったことが見て取れた。

 大きな怪我は無い様だが、焼け焦げた様な跡があったり、服が濡れていたりとどんな戦いをしていたのか予想も出来ない様相をしており、並の者であれば何度命を落としていたか分からないレベルの戦いがあったのだろう。

 それにしてもナルトの恰好が倒れてる時に見た恰好と大分違うんだが、どういう事なんだろうか?

 それにあの背中の方に浮いてる玉はなんなんだ?

 俺がそんな疑問を抱きながらナルトを見ていると、軽い地響きを響かせながら蒼い巨大な猫が俺の方へと歩いてくる。

 前に一度ユギトが尾獣化したのを見たことがあるから二尾だと分かるのだが、何か用があるのだろうか……体躯が大きいから大分威圧感が凄い。

 

 

「初めまして、私は二尾……貴方にはユギトの中にいた尾獣と言った方が分かり易いかしら?」

「ご丁寧にどうも、えっと……何か御用でしょうか?」

「一度お礼を言いたくてね……以前ユギトが襲撃された時に助けてくれたでしょう?

 もしあの時貴方がいなければユギトは私を抜き取られて命を落としていた。

 私もあの子の事は嫌いじゃないから機会があれば一言って思っていたの……何だかんだあの子結局あの時のお礼言っていないみたいだし」

「いえ気になさらずに……あの時気付けたのは偶然ですし、ギリギリまで覚悟が決まらず助けに入るのが大分遅れた結果尻尾を……」

「それでもですよ、貴方のお蔭であの子も私も助かった……だからありがとう」

 

 

 猫の笑顔というものを見るのは初めてだったが、随分と愛らしいものである……サイズが大きいが故に被食者の恐怖が若干あるけれど。

 それから少しだけユギトの事などを話して二尾の尾獣……又旅(またたび)という名の尾獣は他の尾獣の輪へと戻った。

 入れ替わる様に三代目が此方へと歩いてくる。

 その顔は憑き物が落ちたかの様に穏やかで、好々爺然としていた。

 

 

「ヨミト……お主これから大変じゃな」

「しょうがないさ、流石に今回ばっかりは嵐が過ぎるのを待つって訳にもいかなかったからね……逝くのかい?」

「まぁの、何時までもこっちにいる訳にもいかんしな……ヨミトよ、最後まで気を抜くでないぞ?

 大戦は確かに終わったが、一つだけ残っていることがある。

 口惜しいがもう儂にはどうすることもできん、あの二人の事を気に掛けてやってくれ」

「何を言って……言いっぱなしは狡いぞ三代目」

 

 

 彼はそう言い残して、苦笑しながら光となり消えていった。

 周りを見ると穢土転生で呼ばれた他の火影達も同じ様に消えていこうとしている。

 初代は綱手と笑顔で別れを交わし、二代目は残る五影へ未来を託す。

 四代目は……ナルトと親子水入らずの話をしていた様だ。

 それにしても三代目が最後に言っていた言葉の意味は一体何だったのだろうか?

 


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