忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第128話 発動

 雷影の宣言通り護封剣の発動と同時に全面攻勢へと打って出て、逃げ場のない中で飽和攻撃を受けた木像は原型を留めない程に破壊された。

 しかしそれだけの攻撃に曝されながらも仮面の男は未だ存命、攻撃の手が止むと像の破片からまるで生えてくる様に現れる。

 それも木像の破片と同じだけの数がだ……幸い護封剣の効果範囲内から出ることは適わなかったらしく、此方の有利には変わりないのだが相手の数が此方を上回ったのは留意すべき点だろう。

 まぁ俺にとっての問題は其処じゃなくて、恐らく分身体であろうそれらの殆どが俺をロックオンしている事である。

 その上あの木像を使って術を行使していた時よりは一つ一つの術の威力は低いものの、数が居るために五行の法則に則って術の相乗効果を引き起こし、此方への攻撃がむしろ激化していた。

 護封剣も護封壁と同じ様に術に込められたチャクラの割合によって通り抜ける術の威力が変わる訳だが、護封剣は効果時間が3ターン……15分という制限がある為に物理的な衝撃に対する耐性が先程のそれよりも高い。

 一度実験として敵味方両者に似た様な効果を与える‘悪夢の鉄檻’を装備魔法マシマシで殴りつけた時にビクともしなかったことから、10000以下相当の攻撃力であれば揺るがすことすら出来ないだろう。

 

 

 15分という時間はあっという間に過ぎ、光で出来た剣群は儚く散り、敵を閉じ込める物は無くなった。

 しかし中から誰かが出てくることはなく、無数の木片と共に横たわる仮面の男は満足そうに笑っている。

 四分の一時間の攻防は激戦と呼ぶに相応しい戦いだったが、行動範囲が限られている以上此方の優位は覆せず、分身体は次々と木っ端へ変わっていき、最後は五影が残り少ないチャクラを振り絞った術群で強引に敵の術ごと圧し潰す事で決着がついたのだ。

 ちなみに俺も‘ライトニング・ボルテックス’を二回使って、多くの分身体を屠った。

 男の両足はへし折れ、腕にはそれなりに酷い火傷……仮面も罅が入って今にも割れてしまいそうだが楽しそうに首だけを此方へ向けて話しかけてくる。

 

 

「流石は五影、見たことない術のオンパレードだったから思わず魅入っちゃったよ!

それに何よりあの結界術!!

 前に張ってたやつよりも硬いし、綺麗だったなぁ……もっと別のやつも見せて欲しいけど、俺的にもアンタ達的にも無理だろうなぁ」

「どういう事だ?」

「もう時間切れ……ってことだよ火影……あぁ……本当に残……念………」

 

 

 仮面の罅が広がり、パラパラと崩れ、中にいたのが敵に攫われたはずのヤマトだった事に俺一人が驚く。

 どうやら五影達は木遁を使用していたことからある程度予想はついていたらしい……まぁ穢土転生体だろうと思っていたらしいが。

 

 

「漸く片付いたな……後はマダラだけだが、今アイツが言っていた時間切れというのが気になる。

 急ぎマダラの元に……何だっ!?」

「アレはまさか?!」

 

 

 一瞬大きく地面が揺れ、この場にいる全員が上を見上げると其処には写輪眼の紋様が映り、話に聞いた無限月読発動の兆候が現れていた。

 奴が言っていた時間切れというのはコレのことを言っていたのだろう。

 このままでは催眠に掛かってしまうが故、万が一に備えて伏せておいた罠を解放する。

 

 

「皆さん、一先ず集まってください!

 間に合え! 発動‘マジックディフレクター’!」

 

 

 発動と同時に10mはあるかと思われる青色の六足ボディでパラボラアンテナのような物を持つ機械が現れ、アンテナから頭上に緑色の光線を放つ。

 するとそれは放射状に広がり、ドーム状のバリアへと変化した。

 それが形成されるとほぼ同時に月が不自然に光り始め、その光を浴びた者の目に輪廻眼の様な文様が浮かび上がる。

 そして全ての者が動きを止めた……まるで時間が止まってしまった様に。

 俺の呼び掛けで、動ける者は俺の近くに集まってくれたために、無限月読に捕らわれる事無く済んだが、それ以外の人は見える限り全て術中に嵌ってしまったらしい。

 

 

「これが無限月読か……こんなものどうすればいいというんだ!?」

「落ち着け火影、一先ず儂等は動けるんじゃぜ?

 無限月読は術者が居なければ維持出来ん類の術じゃから、マダラの奴を仕留めれば解ける」

「そうだ、結局の所やることは変わっておらん。

 悲観的になるにはまだ早いだろう……おい貴様、この結界は何時まで保つ?」

「発動から5分で消えます」

「5分か……この厄介な術は見たところ月が放つ光を媒介にして発動している。

 要は光が届かない場所に居れば掛からないということだ」

「時間内に光を全く通さない密室を作り出すか、この光自体が止めば問題無いという訳じゃな」

「この光が止まない限り満足に動くことも出来ん……動けなければ奴を倒すことなど夢のまた夢。

 密室に篭もるのは残る時間が1分を切っても光が止まない時だけだ」

「分かっている!」

 

 

 焦りから火影と雷影から苛立ちが感じられ、土影と水影も眉を顰めている。

 三代目は辺りを見回し、術に掛かった者達を見て何か考えている様だ。

 俺はそんな三代目と共に辺りを見てまわり、試しに‘サイクロン’で術が解けないか実験したりしていた……結果は失敗だったが。

 二分が経過した頃、徐々に光が弱まってきている事に気付き、幾分か刺々しい空気が和いだ。

 しかし遠くから何者かが此方に向かってきているのを三代目が発見すると、再び緊張状態へと移行する。

 未だ術が続く中で徐々に近づいてくるその人影に警戒心が高まるが、顔が見える距離まで来ると緊張は解けて若干の安堵感の様なものが湧いた。

 

 

「初代様、二代目様!」

「無事で何よりですが、お爺様方はこの光に当たっても大丈夫なのですか?」

「どうやらこの術、生者にしか効かんらしくてな。

 穢土転生で呼ばれておる儂等には効果が無いようだ」

 

 

 それを聞いて三代目が試しに外に出てみると、催眠状態に掛かることもなく行動できることが分かった。

 その性質を考慮した上で軽く話し合った結果、一先ず初代二代目三代目火影が先行してマダラの元へと走り、現在戦闘を行っているであろう味方の援護を行う。

 残る五影の面々+俺は当初の予定通り、光が止むのを待ってから行動を開始するという事に決まった。

 自分たちがすぐには動けない事を大層悔やみながら三人を見送る事になった五影達の瞳には、まだかまだかと待ちわびる想いが隠しきれず、月の光が途絶えると同時にマダラがいるであろう方向へと走り出す。

 月の光が止むの共に術に掛かった人達が突然生えてきた白い大樹に捕らわれ、まるで木の実の様に枝からぶら下げられている光景は不気味以外の何物でもない。

 えも言われぬ気持ち悪さを我慢しながら俺も五影達に続くが、無限月読が発動してから徐々に強くなる嫌な予感が脳裏を走り、足を鈍らせる。

 マダラと戦闘を行っているのであれば激しい戦闘音が此処まで聞こえてきてもおかしくないはずなのだが……現につい先程まで理解できないレベルの空中戦が行われていた時は地面が揺れたり、破裂音の様な音が聞こえたりしていた。

 しかし今は前を走る影達の足音以外殆ど聞こえず、術者を倒せば解けるであろう無限月読に捕らわれた者達は未だ捕らわれたまま目を覚まさない。

 絶望的な想像が脳裏を掠めるが、到着した現場に広がる光景は想定の範囲外のものだった。

 


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