忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第11話 自己紹介

 三代目が来てから数日が経ったがいつも通りこの店は平和だ。

 てっきり「調子に乗るなよ小僧!」とか言いながら誰か来たりするのかとドキドキしてたりもしたんだけど、何にもなかった。

 まぁもしなんかあってもトラップカードを3枚伏せてたから大丈夫だとは思うけど……‘六芒星の呪縛’と‘強制脱出装置’は中々良いトラップだよ?

 三年もあれば色々と試す時間もあって、この二つのトラップを使えば相手を殺すこともなくここから離れさせる事が出来る……はずなのだ。

 まぁ前者は身体の拘束、後者はこの場から相手を強制的に離脱もしくは自分が離脱するときに使えるので中々使い勝手が良いんだけど、忍者のように割と頑丈な人じゃない限り拘束された状態で高々度まで飛ばされたら死んじゃうのが難点なんだよコレ。

 今のところどちらも使う機会がなくて助かってるけど、問題はこの二枚が任意発動だから俺が殺されそうになっても自動で発動するわけじゃない……要するにこの間来た三代目のような超高レベルの忍者だったら発動よりも先に俺殺されかねないわけだ。

 よって三枚目のトラップカードが必要になる……遊戯王5D’sの主人公が愛用していた‘くず鉄のかかし’という優秀なトラップカードが!

 このカードは相手の攻撃に反応してくず鉄のかかしが現れ、1ターンに一度相手の攻撃を防いでくれるという効果を持ち、使用後はまた伏せられるという中々に強いカード。

 連続して防ぐことは出来ないから二人以上に同時で攻められたら意味ないんだけど、少しでも隙が出来れば除去か破壊効果を持つ魔法を使うことが出来るから大丈夫……たぶん。

 とりあえずそんな感じでこの数日の間三枚は除外ゾーンでの実験兼訓練以外では外さない様にしてる。

 だからこそ多少の緊張感はあれど、いつも通り店を開いていられるのだ。

 

 

「だけど結局今日も店には閑古鳥が鳴いているっと……本格的に宣伝することも考えなきゃ駄目かな?」

「私も何度かそう言ったと思うけど?」

「うぉ!?」

 

 

 突然後ろから聞こえてきた声に驚き椅子ごと後ろに倒れる俺。

 腰への鈍痛を感じつつもそのまま後ろに立っていた人物を下から見上げると、そこには苦笑しながらこちらを見ている綱手ちゃんが立っていた。

 流石にこのまま会話するのはどうかと思い、立ち上がって椅子を直すと彼女の方を向き直る。

 

 

「とりあえずカウンターから出てくれるかな?」

「そっちは分身よ?」

 

 

 彼女がそう言うとボフンという音と共に彼女の姿が白い煙へと変わって霧散した。

 どうやら最初からカウンターの中には入っていなかったらしい……彼女はいつもの指定席に座り俺の方を見ながらクスクスと笑っている。

 

 

「せめて音を立てて入ってきてくれると嬉しいんだけど……」

「それだと面白くないでしょ?」

「店に入るのに面白さを求めるのはどうなんだろうか」

「そんなことより一ヶ月ぶりに会った美少女忍者に何か言うことはないの?」

「あぁ……毎度ご来店ありがとうございます。

 お客様の御陰で少しずつ顧客が増え始め「そうじゃないでしょうが!」……元気そうで何より」

「う~ん、まぁそれでいっか。

 そっちはなんか変わったことあった?」

「変わったことかい?……君の先生が来たくらいかな」

「えっ! 猿飛先生が!?」

「知らなかったよ、君が三代目火影様の生徒だったとは……」

 

 

 ホント、超びっくりだったよ……知らないうちに三忍の一人と知り合っているとか想定外ってレベルじゃないって。

 まぁ彼女もここに三代目が来るとは思わなかったようで、椅子から立ち上がり目を丸くして驚いている。

 確かに火影なら古本屋に用なんて普通ないもんな。

 だが彼女も忍、何時までも驚いたままで居るはずもなく、カウンターの前に立って事情聴取のように俺へと問いを投げかける。

 

 

「先生私のこと何か言ってた?」

「大事な生徒だって言っていたよ」

「そう言う事じゃなくて! えっと……私の名前……とか」

「いや、火影様の恩師のお孫さんとしか聞いてないけど……どうかしたかい?」

「先生の馬鹿、そんなの答えを言ってるようなものじゃない……」

 

 

 まぁ三代目の恩師って言えば初代火影と二代目火影位だから、自然と彼女の名前は浮かんでくる……顔と一致はしてなかったけど、名前自体は前から知ってたけどね。

 にしても彼女の顔が些か暗いな。

 そんなに名前を知られるのが嫌だったのだろうか……ま、まさか俺嫌われてる!?

 そ、そ、それはやばいぞ!! 五代目火影から嫌われるとか死亡フラグってレベルじゃねぇ。

 俺が内心戦々恐々と知ってか知らずか、綱手さんは意を決したかのように口を開く。

 

 

「三年間この店に通い続けて、私としては店員さんとも結構仲良くなれたと思う。

 でも名前だけは交換してなかった……それは店員さんが私の名前を知ることで今までの様に接してくれなくなるのが嫌だったから。

 歳は多少離れているけれど私は店員さんの事を友達だと思っているから」

「う、うん(嫌われているわけじゃなかったのか……セーフ!)」

「でも先生が話しちゃったみたいだから、どうせなら自分から名前を教えようと思うの。

 それが三年間積み重ねた時間の証だと思うから。

 だから言うわ……私の名前は千手 綱手、初代火影千手柱間の孫娘よ」

「そうだったんだ、では俺も自己紹介をさせて貰おうかな。

 俺の名前は本瓜 ヨミトです。 今後とも宜しく」

「え、うん宜しく……ってそうじゃなくて!

 もっと、こう……なんかあるじゃない!!」

 

 

 何故か綱手ちゃんはイライラしているようだ。

 俺なんかやらかしてしまったのだろうか?

 俺がそんな疑問を浮かべながら首をかしげているのを見て、彼女は余計納得がいかないのかついには地団駄を踏み始める。

 

 

「だから! 普通こういう時『まさか千手家のご令嬢とは知らず今までご無礼を』とかあるじゃない!!」

「そう言った方が良かった?」

「嫌に決まってるじゃない!! でもそんな普通に返されると今まで悩んでいた私が馬鹿みたいでしょうが!!」

「そんなこと言われても……確かに君は初代火影様のお孫さんで、この里において非常に重要な立場にいるのは分かるけど、俺にとって君は初代火影様の孫娘と言うより俺の店の常連さんってイメージが強いんだ。

 多少驚きはするけれど今になって態度を変えるのもどうかと思うから普通にしているんだけど……多分初めて会ったときにそれを聞いてたら今ほど気軽には話しかけなかっただろうね。

 強い権力を持つ人には怖い人も少なくないって聞くし」

 

 

 俺の言葉を聞いてガックリと肩を落として「なんか納得いかない」と小さく呟いた彼女だったが、俺に悪気がないのも何となく分かっているので気を取り直してもう一度俺に向き直る。

 

 

「まぁ私が名前を教えなかったのも無駄ではなかったってわかったから良いわ!

 じゃあ今まで通りって事で宜しく!」

「こちらこそ、今度とも宜しくね綱手ちゃん」

「つ、綱手ちゃん!? 何その呼び方?!」

「だって君まだ10歳くらいだろう?

 なら綱手さんって言うより綱手ちゃんかなって思ったから」

「止めてよ、そんな呼び方されたら鳥肌立っちゃうわよ!

 普通に呼び捨てで良いわ、ヨミトさん」

「それなら俺のことも呼び捨てで良いよ?

 あ、そう言えばずっと店員さんって呼ばれてたけど、俺店長だよ?」

「それは何となく知ってたけど、まぁ良いじゃない。

 これからはヨミトって呼ぶから問題ないでしょ?」

 

 

 そう言って向日葵のように明るい笑顔を浮かべた彼女に少しドキッとしたのは内緒の話。

 これだから美人さんは……俺はロリコンじゃないってのに。

 


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