忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第110話 痛み

 ナルトが退院してから一ヶ月程経った。

 暁の構成員二人を倒したということで少しだけ色めきだった里もすっかり落ち着き、いつもの騒々しくも平和な里に戻ったある日……一つの訃報が人伝に聞こえ始めた。

 木の葉の三忍の一人、潜入任務中に自来也が殉職したという噂だ。

 三忍といえば木の葉においてトップクラスの実力者、その彼が亡くなったというニュースが里に良い影響を与えるはずは無く、先日とは一変して重い雰囲気が漂っている。

 一部の噂だと自来也は暁の首領……ペインという人物の事を調べるために排他的な雨隠れの里に潜入し、そこで交戦の後敗れたのだとか。

 彼を慕うものも多かったために仇討ちを考えるものも出てくるかと思ったが、相手は自来也を倒すほどの猛者……無計画に仕掛ける愚も犯せない。

 その事をもどかしく思っている者も多いだろう。 しかし俺はそれよりも二人を心配する気持ちの方が強かった。

 

 

 ナルトと綱手……二人は彼と細くはない縁で繋がっていた。

 片や古くから付き合いもあり、最近は単なる友愛以上の感情を抱いていた相手。

 片や師匠であり、祖父の様であり、目指すべき目標でもあった相手。

 そんな相手を失った二人の心情たるや如何なるものか……綱手が沈み込んでいたという話はシズネから、ナルトの様子がいつもと違うという話はイルカからそれぞれ聞いている。

 しかしナルトはイルカと話し、綱手は一日自室に篭る事で一時的に折り合いをつけたらしい。

 弟子として、火影として……二人は彼の思い出を胸に前へ進むことを選んだのだ。

 結果ナルトはより強くなるために極一部の人間以外は知らない場所へと一人修行に向かい、綱手はその事を深く考えないように今まで以上に仕事に力を入れた。

 俺はそんな二人に殆ど何も出来なかった……精々何処に向かうのかも知らないナルトへ応援の言葉を送り、綱手の書類仕事のアシストをした位だ。

 そんな自分に無力さともどかしさを感じつつ、時間は過ぎていく。

 

 

 ナルトが修行に出てから数日経ったある日、俺はシズネからの手伝い要請も無かったので客のいない店の中でボーっとカウンターで本を読んでいた。

 すると突然轟音と共に空気が震え、地面が揺れて本棚から本が幾つか床に落ちる。

 どう考えてもただ事じゃないのは明らか故に、急ぎ変化を解き暗部姿へと着替え外に出た。

 周りを見回せば里の各所で煙が立ち上り、家よりも数段大きい獣が数匹散在しているのが確認できる。

 大蛇丸による木の葉崩しを彷彿とさせる光景を見て呆気に取られながらも直ぐに我に返り、一先ず今の状況を確認するために情報が集まりそうな火影邸へ向けて初めの一歩を踏み出したところで聞きなれた声が聞こえて歩を止めた。

 

 

「待ってくださいヨモツさん!」

「カツユ……様? これから火影邸の方へこの状況について聞きに向かおうと思っていたところだったのですが、俺に何か?」

「綱手様からの言伝があります。 ヨモツさんは至急シズネ様と合流し、彼女の指示の元行動するようにとの事です」

「……心配事もありますが分かりました」

 

 

 店から離れることが主な心配事なのだが、地下の倉庫さえ無事なら店の再建は出来るのだから、ここは綱手の言伝通りに動いた方がいいだろう。

 枕ほどの大きさのカツユを肩へと乗せ、シズネがいる場所へと向かって走る。

 カツユ曰くシズネの今居る場所は暗号解析や尋問等を行う建物らしく、六人いるペインの内の一人の遺体を自来也が蝦蟇に持たせていたので、彼女は其処で遺体から情報を引き出していたらしい。

 検死の結果現状分かったことについてカツユから聞いていると突然その口が止まり、カツユの顔色が悪くなった。

 

 

「いけない! 急いでください、シズネ様が敵に捕まりました」

「何だって?! 糞……恰好の的になりかねないからやりたくなかったのだけど、仕様が無い。

 全力で目的地目掛けて跳ぶから、しっかりくっついていてくれるかい?」

「はい、決して離しません」

 

 

 その返事を聞いた俺はその瞬間全力で地面を蹴り、弾丸のようなスピードで高度を上げる。

 高いところから見た今の里は酷いもので、至る所に倒れた人の姿があり、ある意味九尾の襲来の時よりも生々しい様を見せていた。

 その光景に歯を食いしばりながらも今はシズネの事だけを考えねばと、目的地を注視する。

 すると目的の建物の上にシズネの頭部に手を置いている男の姿が見えた。

 一気に血の気が引き、一刻も早くシズネを助けるためにその男目掛けて全力でクナイを投擲する。

 長年鍛えた肉体と修行によって培ったチャクラコントロールによる肉体活性をフルに使った投擲は、音を置き去りにして男を滅さんと飛ぶ。

 一度投げただけで肩がダルくなるほどの全力投擲……それも視界に入りにくい高所からの狙撃だ、俺は男が崩れ落ちる様を幻視した。

 しかし男はシズネから手を離しはしたものの、難なく避けてその場を後にする。

 後姿目掛けて一発‘ファイヤーボール’を放つがそれも此方を一瞥もせずに躱し、その姿を見失った。

 歯牙にもかけられなかった事に若干の悔しさを感じつつも、本格的に交戦する羽目にならなくて良かったとも感じる矛盾した感情を抱きながら、目的地へと着地してシズネへと駆け寄る。

 シズネの近くには既に数人の忍が集まっており、その内の医療忍者と思わしき人物が彼女の容態を確認していた。

 

 

「彼女の容態はどうですか?!」

「脳から強制的に記憶を引っ張り出されたショックで意識を失っているだけだと思います。 後遺症などはおそらく無いでしょう……ところで貴方は?」

「俺はヨモツと申します。 火影様の命でシズネ上忍の元へ向かうよう言われたのですが……」

「そうですか……先ほどのクナイと火遁は貴方が?」

「えぇ、難なく躱されてしまい、あまり役には立ちませんでしたが」

「いえ、あのクナイが無ければシズネさんは更に悪い状態になっていたかもしれません。

 決して無駄などではありませんでしたよ」

「そう言っていただけると気が休まります」

「それは良かった……それでは私たちは、怪我人達の救助に向かいます。

 申し訳ありませんが貴方はシズネさんを安全な場所へ連れて行ってください」

 

 

 シズネを診ていた医療忍者は医療器具等を仕舞い、俺に一礼すると上忍らしき人を先頭にしてその場にいた忍者達はその場を後にする。

 その内の一人である金髪のくの一は去る前に振り返り、「シズネさんをよろしくお願いします」と頭を下げてから、他の忍者達の後を追った。

 




仕事で熊とニアミスしたぜ!
後一歩で死後の世界の有無を確認できたね!……超怖かったよ
すげぇ獣臭するんだもん、みんなも気を付けてね
意外と熊とかまだ冬眠してないぞ

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