忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

105 / 147
第103話 シズネと二人

 ナルトが里に戻ってきてから一月もしない内に大事件が勃発した。

 暁に風影が攫われたというニュースが木の葉に届いたのだ……同盟国である風の国の危機に木の葉が動かないはずもなく、直ぐさま救援隊を編成して送ったらしい。

 構成メンバーは風影と友好関係にあるナルトと綱手の弟子であるサクラ、そして二人を担当していた上忍のはたけカカシによるスリーマンセル。

 事は急を要するとのことで少数精鋭で機動力を重視し、風影救出を試みた。

 砂隠れの里に着いた一同は暁と交戦した忍から話を聞き、さらに相手の服の一部を受け取り敵の居場所を特定する。

 途中増援部隊と合流し、敵の居場所まで辿りついたが時既に遅く、風影は既に息を引き取っていたのだとか。

 しかしその後其処にいた二人の暁を苦戦しつつも各個撃破し、何らかの術で風影が蘇り、今に至る。

 ここら辺は伝聞だから内容が大分簡潔だったが、内容は主にこの様な感じだ。

 里に戻ってきてすぐに大事件に関わり、尚かつ活躍して見せたことでナルトの里での評価は鰻上り。

 今となっては九尾だからと差別的な反応を示す人は少数派となり、ナルトにとってかなり住みやすい環境になったことで、特に何かしたわけではないけれど俺は少しだけ肩から荷が下りたような気がした。

 

 

 そんな大事件から数週間が経過した今、俺は変化を解き、面を付けた状態で雲隠れの里へと向かって走っている最中です。

 何故大蛇丸に狙われている俺がという疑問を抱く人もいるかもしれないが、理由は幾つか存在する。

 第一に同盟国とはいえ一度木の葉を裏切った雲隠れの里に行ったことのある忍は少ないために案内できる人材がいなかった事。

 第二にいざという時カツユを介して綱手に報告することが出来る事。

 最後に里に居るよりも任務へと共に向かう同行人と一緒にいる方が安全である為だ。

 

 

「もう少しで雲隠れに着きますよ」

「流石に長い道のりでしたねヨミ……じゃなくてヨモツさん」

「気を付けてくださいね、シズネちゃん。

 雲隠れには数人とはいえ俺の名前を知っている人がいるから、もしも疑われたら面倒なことになるかもしれないのだから」

「だ、大丈夫ですよ! 私も伊達に上忍やってませんから!」

 

 

 そう言って少し慌てながらも力瘤を作る女性がこの任務の同行者であり、雲隠れへの使者として綱手から直々に任命された人物……シズネである。

 当初の予定では俺も彼女も雲隠れに行く予定は無かったのだが、暁が狙っている尾獣を二柱も有している雲隠れにとって先日の風影誘拐事件に関する情報は重要であると考え、文を飛ばすだけでなく質疑応答を請け負う者を雲隠れに送ろうという事になった。

 そこで選ばれたのが雲隠れに赴いたことある俺と、綱手の側近且つ優れた医療忍者であるシズネというわけだ。

 

 

「その言葉を信じますよ……まぁそれはそれとして酔いはもう醒めましたか?」

「はい、もうすっかり元通りです。 久しぶりに船に乗ると酔いますね……私乗り物に弱いワケじゃないんですけど、揺れが強いと大なり小なり……流石にガイさん程ではないですけど」

「大丈夫なら良かった。 彼処に見えるのが雲隠れの入り口に繋がる橋だから、後五分も歩けば着くと思うけど……着いたら真っ直ぐ雷影様の所に行くのかい?」

「そうですね、暁が次に狙うのが雲隠れの人柱力という可能性もありますから、少しでも早く伝えた方が対策等も取りやすいでしょうし」

「そう言えば聞き忘れていたけど、シズネちゃんが雷影様と話している間俺はどうしていればいいのかな? 無言で立っているだけでも良いのかい?」

「暗部のような格好をしていますから無理に話す必要はありませんが、話しかけられたら流石に返答はしてくださいね」

「それなりに生きてるからそれ位の礼儀は心得てるよ」

「なら何の問題もないと思います。 既に文は届いていると思いますから幾つかの質問を受けるだけで其程時間も掛からないと思います。

 もし早く終わったらヨ……モツさんはいつもの格好に戻ってお知り合いの方に会いに行ってもいいですよ?

 流石に刺客も此処で仕掛けてきたりはしないと思いますし」

「そうかい? ならその時はお言葉に甘えさせて貰おうかな」

 

 

 少しだけ楽しみなイベントができた事で足取りが少し軽くなり、これから権力者の一人に会うという緊張感が和らいだ。

 俺はなんだかんだで今まで行く機会のなかったユギトの孤児院に行くことを想像しながら、雲隠れの里に入って雷影邸へと向かう。

 入り口に立つ忍に用件を伝えると、予め話が通っていたのか中へと通されて応接室へと案内された。

 シズネは特に緊張した様子を見せないが、俺はそれなりに緊張しており、仮面の下で数度深呼吸をして心を平穏に保つ。

 応接室の中に入ると上半身裸の筋肉質な男性と細身の女性、そして一度ユギトと一緒に店に来たことのあるダルイという気怠げな雰囲気を醸し出す男性の三人が席に着いていた。

 俺達が入ると直ぐさま筋肉質の男性が声を掛ける。

 

 

「お前達が火影の寄越した回答役か?」

「仰るとおり、私が綱手様に質問に答えてくるよう遣わされた者です。 お初にお目に掛かります、私は綱手様の秘書をさせて頂いておりますシズネと申します。

 そして隣にいるのは道中の護衛を務めたヨモツですが、彼は文の件に関して詳しい事を存じておりませんので質問に答えるのは私だけになります」

「そうか、分かった。 では早速本題に入るとしよう」

 

 

 雷影から投げかけられる質問は暁の戦闘能力や尾獣を抜き取られた際の風影の様子、暁の目的など意外と多かったが、それらの質問にシズネは的確に答え、それを雷影の秘書らしき女性がメモしていく。

 質疑応答を繰り返し、経過すること一時間程……ようやく聞くことが無くなったのか、質問が止まった。

 

 

「分かった、それらの点を考慮した上で雲隠れも暁に対する対策を取ることにする。

 長旅ご苦労だったな、急いでいないのであれば雲隠れで一休みしていくと良いだろう。

 マブイ、外まで送ってやれ」

「はい、ではシズネ様にヨモツ様を外までお送りいたします」

 

 

 俺とシズネは「失礼しました」と一礼してから部屋を出ると、マブイと呼ばれた女性の後に続いて来た道を戻る。

 仮面を被っている所為で、行きと同じく擦れ違う人々に多少訝しげな視線を向けられたが雷影の秘書が共にいる事から怪しい人物ではないと分かってくれたのか、特に因縁を付けられたりすることはなかった。

 当初の予定よりも早く任務を終える事が出来たので、道中で話した通り短い時間ではあるが自由時間が設けられる。

 シズネは綱手へのお土産探しを、俺は適当な店のトイレでいつもの格好に変化をして、ユギトと交わした約束を守るために孤児院へ向かって歩き出した。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。