オーバーロード ~ナザリックの華達は戦っている~   作:SUIKAN

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注)モモンの声色と口調については、鈴木悟の素の声口調になっています


STAGE27. 支配者失望する/竜軍団ヘ動キダス人類(1)

 

「……何という事だ。これは人類の守り手として憂慮すべき非常事態である!」

 

 スレイン法国の首都『神都』。中央部の広大に広がる敷地へ、白き石造りの巨大で荘厳さに満ちて建つ中央大神殿内――。

 水の巫女姫の部隊を管理する神官長より、自室で火急の報告を受けた国家主席である最高神官長は、その場でそう叫んでいた。

 スレイン法国が、煉獄の竜王(プルガトリウム・ドラゴンロード)率いる竜軍団の存在と動きを掴んだのは、リ・エスティーゼ王国の大都市エ・アセナルへの襲撃からわずか一日後の事である。

 

 

 法国が誇る国家最高戦力、漆黒聖典メンバーの『巨盾万壁』が率い、『深探見知』と『人間最強』を含む4名で編成された竜王確認遠征隊は、『占星千里』の予言した破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)についての復活確認を行うため、軍馬四頭立ての戦車によって隠密で王国内の裏街道を経てアーグランド評議国の領内まで侵入した。そして、国境付近の山奥の中で(ドラゴン)を発見するが、逆に向こうにも発見されてしまい、いきなり強烈な攻撃を受ける。

 あの日、その攻撃を『巨盾万壁』の魔法盾2枚と死に体を装う風に武技でギリギリ凌いだ面々は、竜軍団の襲った村々の跡を辿り、闇夜の中で異様に揺れる赤き光を放つ大都市エ・アセナルの惨状を遠方より確認した。

 

「ひでぇな……。他国とは言えムカつくぜ」

「あの攻撃では、都市内全域は火の海ね……」

「……行くぞ。今、我々の優先すべき任務は本国への報告だ」

 

 『巨盾万壁』は他の二人と戦車の所まで戻って来ると、速やかに御者の兵へ出発を告げた。

 だが、彼らはすぐに本国を目指して往路で通過した穀倉地帯を突っ切る裏街道へ進まず、()()()()()()()エ・アセナルの東南東130キロ程の地にある大都市リ・ボウロロールを目指す。

 それは、エ・ランテルから約300キロ南にある神都へ帰還するまでは計800キロ程の距離となり、軍馬を王国内各地の秘密支部で交換する通常の戦車による移動では、どんなに頑張ろうと5日以上掛かってしまうからだ。

 そのため法国首脳部は、『巨盾万壁』らが神都を出てから5日目以降、毎日午前十一時と午後二時に水の巫女姫達の部隊によって、大都市リ・ボウロロール及びリ・ブルムラシュールにあるスレイン法国の秘密支部内敷地の一角を、本部内の遠距離から確認することで情報を得る手を打っていた。

 そして次の日となる6日目の確認で、『巨盾万壁』らにより伝えられたリ・ボウロロール支部の敷地一角の一面に敷かれた板に大きく文章書きされた内容を見る事で、竜王並びに竜軍団の存在と被害を本国側でいち早く掴むことに成功していた。

 確認された文面の内容は以下。

 

 『昨日、評議国内山岳部にて難度200超えの竜2体確認。内1体は煉獄の竜王(プルガトリウム・ドラゴンロード)の模様。竜王はその後、300体程の竜軍団を従え、越境し王国内の村々を襲った後にエ・アセナルまで侵攻。壊滅的で被害甚大。煉獄の竜王の難度は、我ら"隊長"に匹敵の可能性高し。もう1体の所在は不明。対策についてエ・ランテル支部まで伝達の事。』

 

 この深刻極まる状況の知らせを受け、法国内での最高意思決定会合である神官長会議が、昼食を後へ回し即時に非常招集で開催された。

 最高神官長を初め、六大神官長、三機関長他の10数名が集い、神秘的に輝く最高級ステンドグラスの窓群から光の差し込む神聖な会議堂であるこの部屋の席上にて、この未曽有の巨大災害級といえる亜人勢力からの攻撃にどう対応するかが協議されていく。

 

「私はやはり戦力の即時派遣には反対する。まずこの軍団だけなのか、相手の狙い等、動くのは情勢を見極めた後であるべきかと思います。評議国が我々人類に対し本格的に侵攻してきたのやも知れません」

 

 局院長の一人がそう告げるも、先程から大勢は討伐戦力の派遣で動いている。

 

「どちらにしろ、温い対応は後手に回る恐れがある。竜王(ドラゴンロード)が率いているのであれば、まずそれを叩くべきかと」

「その通り。王国の一般の戦力では全く対抗出来まい。時間が経てば人類の数が一方的に減っていくだけでしょう」

「同じく。人類の力を分からせる意味でも、直ぐに部隊を編成し派遣すべきだっ」

 

 先日、謎の魔法詠唱者アインズ・ウール・ゴウン一行の襲来が有るのではと頭を抱えて怯え、戦力の多くを神都に引き止めていた面々は、掌を返したように今は元気且つ強気である。

 それは現状において、噂のゴウン一行に『ニグン率いる法国部隊からの攻撃』への怒りの即時報復……という動きの無い事が、会議冒頭でこの場の皆へと伝えられていたからだ。

 神官長達は六大神を信仰するがゆえ、『死の神』がそうであったという圧倒的な高位の魔法詠唱者を強く崇め――密かに恐れていた。

 前回の会議内の最高神官長から「ゴウンという人物との関係改善も考えるべき」という言は直ぐに実行され、カルネ村への調査が行われている。

 その際、エ・ランテルの支部を経由し騎士らでは無く、近年エ・ランテル西方と北方の村々を回る農具等の物売りを行う元法国兵の老いた工作民間人達を利用した。

 結果、カルネ村における旅の魔法詠唱者というゴウン一行の法国への侵攻的動きは無く、どうやら7日も前に立派な高級馬車で王都へ向かったという情報を得て、即時の報復は杞憂に過ぎない可能性が高く、ホッとしている状態だ。

 

 

 

 つまり――今なら、法国の国家最高戦力である漆黒聖典を、問題なくこの『人類の平和を脅かす敵』の竜軍団へ全投入することが出来るというわけである。

 

 

 

 なお、ニグンの部隊の事は撃退されたとしか分からず、行方不明とあっさり結論付けされて捜索は終了していた。蒸し返す事は、ゴウン一行に喧嘩を売る事と同義となるため、もはや上司の神官長すら、再捜索について口にすることは微塵も無かった……。

 黙していた最高神官長は、会議内での皆の意見を十分に聞いた後に発言する。

 

「情報によれば、かの魔法詠唱者は、仁徳者らしいことも伝わってきている。法国にとって状況は大きく好転している。また、我々は人類の守り手である。国家を超えて、同胞である人類を守る為に、この未曽有の竜軍団の侵攻を一刻も早く阻止するべく――漆黒聖典の部隊を派遣しなければならない。評議国へも警告の意味を込めてな」

 

「異議なし」

「同意します」

「賛成です」

 

 次々と、神官長らが声を上げる。

 反対していた一部も、最高神官長の言葉に、「そう判断されたのなら従いましょう」と述べ、全会一致で国家の方針が『竜軍団へ対する漆黒聖典の部隊派遣』という形で決定された。

 

「派遣戦力は、どういたしましょうか? 私個人の考えでは、"番外"以外の漆黒聖典各員の最大装備での出撃が妥当と思われます。それと、もう1体いるという高難度の(ドラゴン)や竜王を撃破出来ない場合に備え、やはり"あの方"も同行して頂くべきかと」

 

 漆黒聖典を配下にする神官長が、最高神官長へと投入戦力について具申した。

 最高神官長は、目線を手元の現有戦力資料へ落とし、確認すると静かに告げる。

 

「よろしい。そなたの進言案で準備を急がせよ。カイレ殿も同行して頂こう。陽光聖典の精鋭飛行隊も付け護衛も厚くしておくべきだ」

「はい、では直ちに準備に掛かります」

「うむ。では本日の会議は――」

「あの、最高神官長。東方の隣国、竜王国から派遣戦力強化についての相談が来ておりますが」

 

 外交も受け持つ神官長が手をあげ、人類系国家の守護の観点からと、この席の最後でと伝えてきた。竜王国は、先月中旬ごろより首都から東方側にある都市群が、近隣のビーストマン国家による広い範囲で散発的に攻撃を受け始めた事も知らせてきていた。

 

「――その件については、まだ小競り合いの状況であるし当面自助努力するように仕向け、なるべく後日へ引き延ばせ。そもそも、今、回せる戦力が無い」

 

 回せる戦力――それは陽光聖典の実に半分、ニグンと彼が連れていた44名もの戦力喪失を指す。法国では組織的に信仰系魔法詠唱者を育てているが、優秀な者は帝国に比べるとそう多くない。結果的に隊長であったニグンの、判断を誤った愚かな行動により大きく戦力を損失したのだろうと、神官長会議の出席者の多くが考えていた。特に上司の神官長は……私は悪くないと。

 最高神官長の答えに、申し出ていた神官長は現状を理解し、渋い顔にて引き下がる。内心で、以前謁見したことがある某女王の悲壮感の滲む表情を思い浮かべつつ。

 

「分かりました。出来る限り引き延ばす形にて、こちらで対応いたします」

「あの、南のエルフ王国の方は大丈夫ですか?」

 

 別のふくよかな神官長がついでと尋ねた。

 

「問題ない」

「現状で十分大丈夫であろう」

 

 関係している神官長らが答える。

 現在法国は、南方の大森林にあるエルフ王国と交戦している状態を数年前から続けている。この戦争については、スレイン法国の第二位階魔法詠唱者達の部隊を含んだ通常軍が主力である。あくまで裏方として、陽光聖典の部隊30名と風花聖典の一隊も支援しているが、戦況は優位に進んでおり継続戦力に影響はないものと判断していた。

 最高神官長は「ふう」と一瞬の溜息を()き、皆へ告げる。

 

「本日の会議は以上である。主力の漆黒聖典のいない間は、残りの六色聖典各隊は通常の守備軍と共に基本王都待機とする。警戒を厳に頼む」

 

「分かりました」

「はい」

「そうですな」

 

 そう言いつつ六大神官長や三機関長達は頷き、最高神官長の退出を見送ると、彼らもこの荘厳である会議室を去って行った。

 

 

 

 

 

 周囲数キロを亜人からの攻撃へ対する外周壁が囲む都市内に、南西へ湖の見える高台がある。そこへこじんまりした王城が建っていた。

 竜王国は、スレイン法国の東方にある小国だ。首都であるこの都市も人口は40万人程。他に3つの都市があるが、総人口はスレイン法国の十分の一以下の120万人を少し超えた辺り。

 近隣には、亜人のビーストマンの国家があり、長年、餌や家畜としてこの国の民達の多くが連れ去られたり殺されたりしている。そのため国策で生めよ増やせよすれども、ここ50年の人口は横這いであった。

 そんな竜王国は、一人の女王により治められている。

 名はドラウディロン・オーリウクルス。

 その姿はまだ小柄で子供と言えるあどけない少女の姿をしている。しかし今、部屋には頭冠を付けた側近の宰相しかおらず、気の抜けたその表情と眼光にはこの地上に生を受けてすでに40年以上という経験が見え隠れしていた。

 竜王に建国されたこの国の王家は、代々竜の血を継承してきている。そのため、自身の形態を変化させる事が出来た。

 この姿は女王にとって、臣下や国民の不満を大きく逸らす苦肉の策であり、やむを得ず本来の成人女性の姿よりも幼い形態をとって日々を過ごしていた。

 

「宰相よ、最近東の都市群からビーストマンどもの強まる襲撃に苦戦していると伝え聞くが、手は打っているのか?」

「はい、もちろんです。先日、スレイン法国のいつもの神官長殿宛てで、派遣兵力強化について手紙を送ったところです」

「ふむ。我が国でも兵力を少し増強し、冒険者の組合への報奨金も増やしておるが、まだ効果は薄い感じだな。何かもっとこう、効果のある打開策はないものか。余力のある間に手を打たねば、手遅れになりましたではすまされんっ」

 

 数年前から、遠方のリ・エスティーゼ王国で推奨され始めた冒険者組合への報奨金制度を、この竜王国でも即時取り入れた上で、街からの他に国からも報奨金を出している。

 しかし、国の規模により冒険者の分母自体が少ないため、中々に個の強さと数を誇るビーストマン達の集団へ、効果的な敗北を強いることが現状で満足に出来ていない。

 そういった中で近年、都市ギルド内にアダマンタイト級冒険者チームが一つ誕生し、期待からチーム一行は王城で女王への謁見を許された。その後、何故かリーダーが異常に好意的で亜人討伐を猛烈に頑張ってくれており、唯一の希望になってきている。

 ただ、時々不足気味の報奨金代わりに褒美として謁見を要求された上、その度に女王はその少女姿の身体を、リーダーの男からの熱い視線で舐めるように見られていた。

 王女は薄々、『閃烈』とも呼ばれるこのリーダー――セラブレイトの異常さに気付き始めているが、冒険者ながらすでに国家の貴重な防衛戦力の一角であるため、今の無礼すら罰せられない。彼女は、報奨金の代わりの要求がエスカレートしないかと、内心で密かに不安が募っている……。

 とはいえ、1チームが突出していても全体を抑えられる訳が無い。

 先の「打開策はないものか」は、行き詰まり掛けている状況に喘ぐ小国の女王の文句と言える。

 普通ならここで宰相の、「何か良い手があればいいですねぇ」という言葉で終わると思われた。

 ところが――。

 

「そうですねぇ……思い切っていっそのこと――他国の冒険者にも募集を掛けてみては?」

 

 突拍子も無い案に呆れるも、「まあ、やってみろ」とダメ元で女王は告げた。可能性は、少しでも広げておいた方が良いと。

 しかし、このことが(のち)に奇跡の一行を呼び込むことになろうとは女王も想像していなかった……。

 

 

 

 

 

 スレイン法国神都、中央大神殿敷地内奥の地下に、隠蔽された形で存在する神官長直轄特殊工作部隊群『六色聖典』本部。

 漆黒聖典の区画は特に厳重警備された場所であり、そこへ通じるただ一か所の出入口は常時20名もの精鋭の守衛が守る。

 だがその中に入ってしまえば、動くことはそれほど難しくなかった。

 特に普段から、その素行が恐れられている彼女にすれば。

 暇だと告げてクレマンティーヌは個室を出ると、「自分の装備の修理記録の事がちょっと知りたいんだけどぉー?」と殺気の籠ったいつもの斜め右下へ見下す魚の死んだような目で、資料室扉横へ立つ守衛の許可を取ると、室内にて堂々と隊員各員の装備品へ関して、整備や修理記録に記載された状況や受けた損傷、補充記録からその性能と能力を大まかに把握していた。

 彼女は――この作業すら楽しかった。

 

(ルンルン。モモンちゃん、喜んでくれるかなぁ~、褒めてくれるかなぁ~。ギュッて抱き締めてくれたりなんかしちゃってーっ、なんてね。でもやっぱり、また膝枕でぇ頭撫でて欲しいかなー。んふっ)

 

 薄暗い資料室の中、ひとり足音無くピョンピョン飛び跳ねつつ、すでに表情が締まりなく笑顔で破顔していた……。

 これまで、兄への復讐殺害達成を唯一の人生の希望とし、自分以外へ興味はなく全てが詰まらないモノに見えていたが、今は愛しのモモンちゃんがおり、『二人の』目的の為に一歩ずつ近付いているのだと考えられたから。

 すでに、兄の死すら人生を謳歌するための、確定要素的踏み台と思えていた。

 この本部には――現在兄がいる。

 以前ならそれだけで、怒りと不愉快さに精神が不安定になっていたが、もはや愛するモモンちゃんに比べれば、全く取るに足らない人物と言い切れ、ほくそ笑む余力すら出来ていた。

 元々冷静になれば、よく頭の回る娘である。

 

 彼女の狙いはもう一つあった――『叡者の額冠』だ。

 

 現在、前使用者の土の巫女姫が爆死して、使用されずに保管されているスレイン法国の最秘宝の一つである。

 区画内でちらりと聞いた話では、巫女姫を蘇生予定だが、再び訓練し第五位階魔法を使えるようになるには2年は掛かるという話を耳にしていた。

 要するに、基本怖くて誰も触らないため、すり替えても2年間は気付かれないということだ。その頃には、愛しのモモンと幸せに満ちた家庭を築いているはずであると……。

 

("お土産"はー、何時取りに行こうかなぁ~)

 

 『ちょっとそこまで買い物に』でも行くみたいな気持ちのクレマンティーヌであった。

 しかし、ここで彼女は慎重さを取り戻す。資料室へ近付いて来る何者の気配を察知したのだ。資料を丁寧に所定の棚へと仕舞う。

 クレマンティーヌの表情は、純粋に恋する少女の笑顔から、いつもの歪んだ笑いの面構えへ戻る。彼女が不意を突かれることはほとんどない。

 また、警戒と閲覧時間を短縮する為、先程から武技〈流水加速〉〈能力向上〉〈能力超向上〉を実行し続けており、時間にすればまだ5分と経っていないが粗方読み終えていた。

 5日前にも一度行っており、比較的安全に集められる情報的には十分といえる量になっている。

 不自然さは残さない――モモンの為にと彼女は全力を尽くしていた。

 そこで、扉を開けて入って来た者から、優し気な声が掛かる。

 

「――クレマンティーヌ。ここで、お前は何をしているんだい?」

 

 彼女は背中から掛けられた『忘れることの無い声』の方へゆっくりと振り返った。

 

「これは、兄上……様」

 

 そこには、漆黒聖典の第五席次『一人師団』の二つ名を持つ妹と似た髪型で金髪の貴公子、クアイエッセ・ハゼイア・クインティアが立っていた。

 憎き兄で怪人がそこに居る。身体能力でも優秀であるが、その格の高い存在感が異常。皆が彼の魅力と能力に惹かれていく。その反動がクレマンティーヌの、これまでの素通りされ続け、下劣の者だけが寄ってくる不幸な人生なのだろうか。

 だが――兄本人は、妹が『狂気』『恐怖』『凶悪』『人外』『外道』という悪名で家名を汚している理由がよく分かっていない。忙しさの余りずっと妹と話をしていない為、思い当る節が無かった。まさか、自分の存在自体が原因だという事に思い付けないでいる。

 互いの存在を食いつぶしているような、不幸な兄妹とも言えた。

 一方で彼は、ビーストテイマーとしても優秀であり、難度80を超えるギガントバジリスク複数体を自在に操ることが出来る。状況次第では一国を一人で攻略すら出来る、大戦略級の存在なのだ。

 クレマンティーヌは一瞬迷う。これは非常に好機であったからだ。

 以前なら迷わず即、この場で兄殺害に動いただろう。運もあるのだろうが、これまでの数年間に漆黒聖典本部において、兄とこのように頑強で狭い場所にて一対一で向き合った事が無かったのだ。

 ここなら10メートルを超える巨体の、ギガントバジリスクを召喚出来ない。

 扉外の見張りは一人。兄を一撃で葬れば、区画の出入口を抑えられる前に出られる可能性は高い。

 しかし、もし一撃必殺に失敗すれば、見張りを逃がし『隊長』らを呼ばれ包囲されてしまう。

 それはモモンとの永遠の別れになってしまうのだ。

 僅かに、一旦目線を落としたクレマンティーヌは、ここでの襲撃を思いとどまる。

 

 彼女は――モモンへの愛と漆黒の戦士の圧倒的実力を取った。

 

(モモンちゃんとの、約束だし……)

 

 思わず彼女は笑いそうになる。それは、あの手の届かなかった恨み渦巻く圧倒的な兄へ今、『ここでは生かしていてあげる』と見下し見逃すほどの余裕がある状況におかしくなったのだ。

 兄へと視線を上げ、妹は腰の武器へと軽く手を当て、素で告げる。

 

「この、平時に使ってるスティレットをもっと頑丈に出来ないか、ちょっと調べようとしただけ。失礼します」

 

 目を閉じつつクレマンティーヌは、兄の横を通り過ぎ、足早で資料室を後にする。

 兄は静かに妹を見送る。彼は優しい表情のまま、無礼で素行の困った妹を――怒らない。

 

(ふー、相変わらずだね。どうすればいいのか……)

 

 クアイエッセは僅かに困った顔をしたが、『隊長』に指示された地図と資料を集め始めた。

 

 

 

 凛々しい青年の顔に、神聖騎士団風の非常に高位の装備を纏う――漆黒聖典第一席次の通称『隊長』が、神官長会議を終えた上司の神官長室へと呼ばれた。

 すでに会議へと向かう前の神官長から、「確定ではないが竜軍団討伐がありそうだ。王都を含むリ・エスティーゼ王国北東部の地理について、詳細な資料へ目を通しておけ」と告げられており、配下のクアイエッセだけに伝えて資料を揃えさせ、優秀である彼にとりあえず進撃路を吟味させ始めている。

 部屋へ入った『隊長』は、神官長の立つ前まで進むと、装備を僅かに軋ませながら跪き目を閉じる。

 

「お呼びにより、参上いたしました」

「うむ。神官長会議において……竜軍団討伐が正式に決定された。アーグランド評議国がとんでもないモノを送り込んできた。相手は煉獄の竜王(プルガトリウム・ドラゴンロード)率いる300体もの竜軍団だ。すでに王国北東部の大都市、エ・アセナルに壊滅的といえる被害が出ている。この竜王の難度は――お前に匹敵するらしいぞ。それと、所在が不明だが難度200以上はもう一体いるらしい」

 

 『隊長』は、流石にその内容詳細部分に驚きパッと目を開く。

 竜《ドラゴン》の難度は、その強靭である鱗と筋力に圧倒的な火炎攻撃やそれらを活かす頭脳を考慮すれば、最低でも探知した数値の1割増しで考えなくてはいけない。

 つまり、竜王は『隊長』の強さを上回っている可能性が告げられていた。可能性だけでも脅威だが、総数も300。更に竜王級がもう一体出て来る恐れがある。今回は、かつて命じられた数々の指令の中で、最も過酷となる命令内容に思われた。評議国が動いたと言うのであれば、まだまだ敵が増える可能性も大きい。

 神官長は『隊長』へ告げる。

 

「お前達へ命じる。"番外席次"を除く、全漆黒聖典メンバーは最大装備にて明日午前10時を以て出撃し、速やかに人類の脅威となっている竜軍団を討伐せよ。なお、陽光聖典の精鋭飛行隊を護衛にカイレ殿も同行される。不明のもう一体が現れたとしても、これで何とかなろう。頼んだぞ。それと――くれぐれもお前の正体は知られるなよ」

「……了解いたしました」

 

 人類を守ったと聞く六大神への信仰心のもと、人類の守護者として、隊員の多くが今の役職を受けた漆黒聖典の彼等に『否』はない。

 特に国内で3名だけいる、血が覚醒し六大神の力を発揮する『神人』は、この人類の敵と戦う重責を担うために生まれたともされる。一方で、『神人』の存在が知られると『真なる竜王』が決戦を仕掛けてくると伝えられており、その余波で法国は滅びると言われている。なので、彼が『神人』という事実は、上層部以外秘匿とされてきた。

 そんな境遇の彼も含め、過酷の多い任務に対し、メンバーへは見返り的に普段の平穏時の好待遇や破格の装備が与えられているのだ。

 

 任務を完遂するか――死ぬか。

 

 この彼等の役職に生き残っての退役は稀と言える。年齢を理由に、才能のある若者へ席を譲るぐらいである。

 人類にとっての非常時には、番内以外もカイレのように駆り出されるのだ。そして、国家の存亡時には切り札の『番外席次』すらも。

 

 だが多くの者が「それでいい」と考えている。人類を守り切ることが出来るならと……。

 

 若き少年の顔を「相応の青年の表情に見せる魔法の仮面」を被る『神人』の隊長は、静かに立ち上がると一礼ののち神官長室を後にする。

 

 

 

 

 

 漆黒聖典隊員の全12名が、区画内にある広めの作戦室に集合する。

 時間は、午後の3時を回った辺り。

 このメンバーには第五位階魔法以上の使い手も複数名居る。普段は存在自体を消しており、陽光聖典隊長のニグンにも掴むことが出来ていなかった者達だ。その中に女もいるが、幼いころより特異の生まれながらの異能(タレント)持ちと身体能力の高さを買われ現在不足している巫女姫の過酷に満ちた運命から逃れている。

 他の者達も、難度で100を優に超える者達が大勢を占めていて、まさにこの新世界での人類最強部隊であった。

 その『隊長』が皆へと引き締まった表情で告げる。

 

「我らの神官長様より、指令を受けた。今、外へ出て情報を寄越してきた"巨盾万壁"達も含めて、漆黒聖典全員でリ・エスティーゼ王国北東部へ侵攻を開始した煉獄の竜王(プルガトリウム・ドラゴンロード)率いる300体の竜軍団討伐に向かう。出発は明日の午前10時。装備は各自の最大装備とする」

 

 ざわついていた隊員たちは逆に一気に静かになった。内容が凄すぎたのだ。

 

「これより、任務内容の詳細に移る」

「ちょ……っと、待ってくれへんか……"隊長"。それって……わ、わたいの占いの?」

 

 小さく気弱い感じで変なアクセントの声が掛けられる。

 使い魔の如き大きく変わった帽子を被る『占星千里』だ。自分が占った破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)では無い上に、300体の軍団がオマケで付いてきた事で慌てていた。

 

「そうだ。実際に確認した結果、多少異なるが――竜王は復活していた。それを我々が討伐するんだ。では、話を進める」

「「「「「……」」」」」

 

 全員が、『占星千里』の再確認にも沈黙していた。

 『隊長』が冗談の類を言うことは無いはずだが、多くの隊員は今日はそうであって欲しかったと思わずにはいられない内容である。

 『隊長』の説明は、事前に少しクアイエッセと検討したものであった。

 基本的に『巨盾万壁』らが先日、戦車で通った法国が掴んでいる王国内の裏街道を進む。エ・ランテル南西へ小ぶりで横たわる山脈の西側の平原を通り、王都までの大街道に並行するように走る裏街道を通る。ただ、王都近くからは北東側に移動し、そこの15キロ四方に広がる森付近でエ・ランテルから折り返して来る『巨盾万壁』らと合流する予定である。

 約10分の要点説明を終え、何かあるかと『隊長』から尋ねられるも、現段階では皆からの質問は無かった。

 しかし――この出撃命令に困ったのは、クレマンティーヌである。

 

(モモンちゃんとあと1週間程で定例報告なのにー。どうしよう……)

 

 一瞬、彼女は直ぐにこの場からバックレるかと思うが、モモンとの約束もあって視線を横に逸らしつつ、ふと『隊長』の説明の中に抜け道を見つける。

 

「あのさぁ、エ・ランテルに一度帰って来る"巨盾万壁"のあんちゃん達に、誰が知らせるのかなー? ちょっとこの前ー、エ・ランテルに行ったときに買いそびれた欲しい物があってさぁー。私に行かせてよー、ね。――じゃないと、竜退治にいーかないっと」

 

 いつもの感じで、前半は歪んだ笑顔を浮かべ、クレマンティーヌは最後にしかめっ面の低音の声でゴネるのを忘れない。

 隊員達は、またいつもの我儘が始まったと、睨み付けて来る。

 第一席次の考えだと知らせに行くのは、ただの騎馬兵数名であった。漆黒聖典の隊員を動かすつもりは無かったので話していなかったが。

 指揮官として『隊長』は考える。今回、取り敢えず全員揃うまで、作戦は攻撃行動へは移らない。なので、最終的に合流してくれれば戦力に変動はない。同行する数日間、ずっと彼女にブチブチ言われ仲間内で揉め事が起こるより、一時別行動させただけで問題を解消し、そのあと気分良く戦わせるのも上司の裁量かと思われた。

 『隊長』は伝える。

 

「いいだろう。ただ今回は『巨盾万壁』らがエ・ランテルに到着するまで1日程時間差があるので特別だ。そして、合流後は文句の無いように」

「は~い」

 

 クレマンティーヌは、満面の歪んだ笑顔を返していた。

 

 新しく陽が昇った次の日の朝、午前10時。

 冒険者モモンが、直近の仕事でマーベロと4件目の商隊の復路護衛で、エ・ランテルへ向かっている頃である。

 神都の中央大神殿敷地外の、少し離れた場所にあり地下で繋がっている寂れた建物の秘密通用門。

 そこから、大急ぎで各種物資の準備を整え終えた漆黒聖典部隊の軍馬四頭立て戦車6両が出発した。だが、その中にはもうクレマンティーヌの姿は無かった。

 

 

 

 

 

 漆黒聖典の一団が神都を出発した翌日早朝のこと。この日、王家直轄地の大都市エ・ランテルへ激震が走ることになった。

 ついに、竜の大軍団についての情報が北西側第三城壁門の、いつもモモン達への挨拶に親指を立ててくれている気の良い守備兵達の所へ、王都からの騎馬兵達によって書簡と共に事変の情報がもたらされたのだ。これはまだ、竜王の存在が確認されていない時の文面である。

 門の周辺からどんどんと、その衝撃の事象は大都市内へと広まっていく。

 だがそれよりも当然早く、第二、第一城壁門を通過した王城所属の騎馬兵達によって、エ・ランテル都市長で貴族、パナソレイ・グルーゼ・デイ・レッテンマイアのもとへと書簡が届けられた。

 緊急という事で起こされ着替えたため、豚のように肥えた都市長の男はいつもより鼻が詰まり「ぷひーぷひー」と鼻を鳴らす呼吸音を連発しつつ、謁見の間で跪く騎士達を前に書簡を読み始めた。

 

「なんということー。わたしは、どうすればよいかわからんな。とりあえずしじはうけたまわる(本当にどうしたらいいだっ、300体の竜の軍団など昨今見たことが無いわっ)」

 

 普段から、相手を油断させる為のふざけた風に受け答えをするパナソレイだが、実は状況判断も的確で冷静に振る舞う男である。額から汗を滴らせつつも、都市守備隊の隊長を呼ぶように召使いへ申し送る。

 そして、書簡の指示通り周辺領域へも含めて臨時徴兵を掛け総動員し兵4万5000を王都へ送り、冒険者組合へも竜1に対し金貨300以上という特別報奨金の告知と共に行政府として協力への圧力を掛けると言葉にし、その内容を同席する書記に羊皮紙へ記させ即時署名し、それを目の前の騎士達へ渡した。

 騎士達が次の近隣貴族の下へと足早に去った広間でパナソレイは、気疲れの疲労でどさりと椅子に座り込む。王国の今後の未来に恐怖しつつ、守備隊の隊長の参上を待っていた。

 このあと、午前中には徴兵や報奨金についての御触れが街角や近郊の村々に次々と立てられる。戦況と終戦が明確だった帝国との戦いとは違う、怖さと異様さを持った非常事態の戦時下という嫌な空気が都市内へと徐々に充満していく。

 

 

 

 ンフィーレアの祖母、リィジー・バレアレはカルネ村への引っ越しには当初反対であった。

 当然だろう。何と言っても長年掛け、この大都市エ・ランテルでも屈指の薬師としての名を広めたのだから。リィジーは第三位階魔法詠唱者でもある。自身だけで危険の多い僻地にある薬草の採取も可能であった。コツコツと稼ぎ、そして研究室も備え持ち構えた彼女の店である『バレアレ薬品店』はその集大成の一つであり、今や非常に繁盛している状態。

 片田舎に引っ込む事に良い点はないと、ンフィーレアへは告げた。経営者として、また孫の将来を考える身としても当然の判断である。

 しかし、可愛く大事で優秀な孫の頼み込む真剣さに、結局折れた形となった。

 ンフィーレアは少し気が弱い所があるように感じていたが、本気になった時には粘り強く、心配いらないという事が分かっただけでも良かったと喜んでいる。まず、自分の女の為に動けない腰抜けでなかったと。

 しかし、カルネ村から戻って来た孫は、それ以上に偉大で凄い人物というゴウンなる者の事を盛んに告げてきた。

 「あの偉大なアインズ様に、僕は少しでも早く近付きたいんだ」と。

 心底好いた女を取られているというのに、孫はそのアインズという人物に近付ければ、まだ取り返せる機会があると信じている様子。

 年季の入った彼女から見れば、エンリという名だったあの村娘に利用されてる感じが凄まじいのだ。

 リィジーとしては、孫に女心は怖いもんだよと言ってやりたい。確かに可愛く働き者でしっかりしていて、芯の通った家族思いの出来た娘であったとは記憶している。

 だが、良く言えばこれも経験である。どう転んでも、結局はンフィーレア本人が納得するしかない。

 歳を経た彼女も経験したことが有るから分かることだ。恋は――盲目なのである。

 

 そんなこんなで、祖母とンフィーレアが仕事の傍ら、引っ越しの準備を進めて荷物も殆ど整理し纏め終わり、いよいよ明日が引っ越しという前日に、その早朝から都市の街中を駆け巡る衝撃の事象が、バレアレ薬品店へも舞い込んできた。

 薬の納品と集金を始めたばかりのンフィーレアが、祖母の所へと慌てて帰って来る。

 

「おばあちゃん、大変だよっ! (ドラゴン)が、それもいっぱいっ!」

「なんだい、なんだい、ンフィーレア。ちゃんと聞こえてるよ。竜の肝でも手に入ったのかい?」

 

 何の冗談かと、リィジーは慌てる孫へと声を掛けるが、ンフィーレアの次の言葉に目を見開いていた。

 

「王国に、竜の軍団300体が攻めて来たんだってばっ!」

 

 

「ハァーーーーーーーーーーーーーーっ!!?」

 

 

 祖母は、孫よりも大口を開け、大きい声で叫び驚いていた。

 これまでの彼女の人生で、一番驚いたかもしれない。それは王国の滅亡が考えられる水準の敵と言える大軍団であった。

 そもそも、生まれてこの方、人間が(ドラゴン)と戦ったという話は、御伽話でしか聞いたことが無い。

 また、経験豊富な高位の第三位階魔法の使い手として、話に聞く難度での成体1体の(ドラゴン)がどれほど強力で危険極まりない存在か知っているつもりである。

 正直――一人では逃げ出すしかない相手と言える。それすら、死への時間稼ぎかもしれない。

 まず第三位階魔法でも、一撃では彼らの持つ強固である鱗と肉体に恐らく殆ど通じない。更に〈飛行(フライ)〉で逃げようと、翼でどこまでも追い駆けてくる。そして、とどめの強力な遠距離火炎攻撃……。

 それが、300体とか冗談以外に考えたくないところだ。

 ふとリィジーは、明日のカルネ村行きが疎開に最適ではないかと思えた。住民が100人未満の極小の村である。それに孫から聞いた話では、村には例の御仁によって完全に使役されている屈強の怪物が3体いるらしい。

 竜軍団の標的にはなり難いはず。

 ただ問題は、戦争となると怪我人への対応を要求され存在価値が上がる自分達を、城壁外へ出してくれるかということだろう。

 そして大大的に逃げ出すという形は取るべきではない。名声に大きく影響が出るからだ。

 救いは、少し前から引っ越しの話は周知している事である。

 急に逃げ出すという訳では無いという、言い訳にはなる。

 しかし、状況は大きく変わってしまった。

 リィジーは、近くの水差しからコップに少しの水を入れ飲んで落ち着くと、静かに孫へ伝えた。

 

「明日はンフィーレア、お前だけ引っ越しをするしかないね」

「そんな……」

「いいかい、世間というのはとても厳しい目をしているんだよ。お前だけなら非常時の為に、ここと生産箇所を二か所にするという立派な言い訳が立つ。まだここには最低限の設備は残しておるしな。それに、二人ともここへ残るより、私もその方が安心だ」

 

 リィジーは、可愛い孫へと優しい笑顔を浮かべる。

 ンフィーレアは一瞬言い返そうとするが、自分はもう子供ではなく、あの偉大なアインズを目標としている一人の男なのだと思いとどまる。より大局を見て動かなくてはいけないと感じたのだ。

 少し大人になった少年は一度目を閉じ、再び大切に思う祖母を見つめて答える。

 

「わかったよ、おばあちゃん。カルネ村で、いつでもおばあちゃんが来れる様にしっかりと準備しておくから」

 

 リィジーは納得し、年季の入った皺の有る笑顔で小さく頷いていた。

 

 

 

 

 

 王都リ・エスティーゼの王城内、ヴァランシア宮殿の一室。

 アインズは、昨日に引き続き今日も優雅にお茶を皆と囲みながら、呑気に寛いでいた。

 昨日は、昼前に王城正門へ現れたアダマンタイト級冒険者チーム『朱の雫』の3名が最終的に国王とも謁見し、エ・アセナルでの惨状を直接伝えていた。

 その場で、思考の斜め上の厳しい現実を突き付けられた城の中は、直後から非常に混乱している。

 ソリュシャンの盗聴した話では、都市壊滅と概算で死者約30万、捕虜8万以上が伝えられた上に竜王の見せた、大魔法すら反射する完璧すぎる防御力と圧倒的である攻撃力が伝説の魔神以上で、正直なところ現状で倒す方法は――考え付かないと告げられ、その場が静まり返ってしまった模様。

 それでも緊急対策会議の開催が決まり、先日の様に大貴族達を呼び寄せる事になったようだ。

 更にそのあとも、日が沈んだ頃に帰還したばかりのアダマンタイト級冒険者チーム『蒼の薔薇』の報告が、国王謁見の間でこれから始まるとガゼフが部屋へと呼びに来た。折角なのでとアインズも立ち会う。

 広間奥の玉座に、国王ランポッサⅢ世がすでに着座していた。

 その傍に武人と聞く体格の良い第一王子のバルブロ・アンドレアン・イエルド・ライル・ヴァイセルフに、小太り気味の第二王子ザナック・ヴァルレオン・イガナ・ライル・ヴァイセルフ、そしてラナー王女が控えていた。また、この場には城に居合わせた国王派の貴族達も数名同席している。

 

「これより、アダマンタイト級冒険者チーム"蒼の薔薇"一行の帰還報告の儀を行います。"蒼の薔薇"一行、入場っ」

 

 大臣の声に広間の大扉が開かれ、五人の金髪の乙女達が入って来る。

 もとは王女の独断で動いていたはずだが、王国戦士長から彼女らの威力偵察を伝え聞いていた国王が、直接聞きたいという事でこの場が設けられていた。

 『朱の雫』の3人と同様に彼女達の装備もかなり煤けて足元も酷く汚れている。周囲はその激闘の跡を示す姿に騒めいている。当然綺麗な赤絨毯は踏んだ箇所から煤等で汚れる形である。

 しかし今は戦時下で、その汚れは王国皆の為に命をとしてのものであり、いかなる者も咎める事は有り得ない。

 リーダーのラキュースが王の前へ一歩出る形で、その後ろに4人も続き跪く。

 すでに、『朱の雫』からエ・アセナルの絶望的内容が伝えられていたが、彼女達はそれを再確認させる悲惨さで満ちた内容を簡潔に告げた後、いくつかの朗報を持ち帰って来ていた。

 

「――ただ、我々は難敵ではあるものの幾体かですが指揮官の竜を討つことに成功しました。百竜長の1体は重傷に留まりましたが、他十竜長については3体を殺害し排除することに成功しております。戦利物として十竜長の竜については其々の鱗を、百竜長の竜についても偶然牙の欠片を入手出来ました」

 

 この場に居るほとんどの者が、その快挙に「おおぉ」と驚きの声を上げる。

 そして、大臣補佐が戦利物を乗せた大きめの箱を持って王の脇へと見やすいように近付いた。

 国王は笑顔を浮かべ、それら4点を確認すると力強く頷く。

 

「"蒼の薔薇"の者達よ。アダマンタイト級冒険者に相応しい見事な働きであるっ」

 

 これで、王国にも戦い方の手掛かりが出来たのである。

 彼女達は、アダマンタイト級冒険者チームとして、正に勝利の形に向けての突破口となり『竜軍団も無敵では有り得ない』と証明してみせたのだ。冒険者のたった1チームでも(ドラゴン)に対し倒したり、大きく出血を強いらせることは十分可能だと。

 それを多くの冒険者チームや兵達で波状的に積み上げれば、圧倒的な竜軍団を倒せなくも撤退させるという手はまだ大きく残されているだろうと。

 蒼の薔薇達が持ち帰って来た最大のものは、形のあるものでは無く、多くの弱き人々へももたらす『明日へ希望』であった。

 

 そんな、王国にとって苦渋だった昨日を、呑気に寛いで振り返っていたアインズの頭の中に電子音の呼び出しが響く。

 

『ア、アインズ様、来ました。――冒険者モモンさんへの知らせが。竜軍団の情報が、今朝この都市へ届いたようです。これから1時間後に組合前の広場で集会があるみたいです』

 

 その声は、エ・ランテルでパンドラズ・アクター扮するモモンと居るマーベロことマーレであった。

 アインズは「うむ」と小さく呟くとゆっくり横顔を向け、自然の形でソファーの傍で静かに立つツアレへ伝える。

 

「ツアレよ、熱めのものが飲みたい。悪いが、新しいお湯をすぐ用意してくれ」

「はい。畏まりました、アインズ様っ」

 

 彼女はここ数日、今までのつらい人生に対して、本当に夢のように思える穏やかなる日々を送っている。

 すぐ傍の、想いを寄せる優しいご主人様からの指示を、綺麗な艶のある金色髪をふわりと揺らすツアレは、嬉しそうに可愛い笑顔で答えると奥の家事室へとワゴンを押して下がっていった。

 アインズはその様子を見届けると、小声でマーレへ伝える。

 

「今、宿か?」

『は、はい。先ほどまで、慣れる為にモモンさんへ擬態したパンドラさんと外を歩いていたのですが、周囲の雰囲気がいつもと随分違うので、こんな事じゃないかと戻ってきたところ、組合から宿へ知らせが来ました』

「良く分かった。すぐ行く、ではな」

『はい』

 

(マーレは用心深いし、自然に振る舞う行動をしてくれてとても助かるよなぁ)

 

 アインズは内心で嬉しく思う。パンドラズ・アクターも慣れれば大丈夫だろうが、まだまだ初めての場所だ。

 支配者は小声で、周りの者達へと告げる。

 

「聞け、マーレから連絡が入った。また冒険者へ変わる。ナーベラル、暫くここの代役を頼むぞ」

「畏まりました、アインズ様」

 

 不可視化していたナーベラルが現れ、アインズの装備姿へと変わる。

 アインズはルベドを初めとする周囲の者らの了承する頷きを確認すると、素早く〈転移門(ゲート)〉を開いた。

 

 

 

 エ・ランテルの冒険者組合は、植栽の植えられたかなり広い広場に面しており、その広場へは大商店なども多く囲うように建てられている。

 その広場に今、エ・ランテル中から多くの冒険者達が数百人集まって来ていた。

 もちろん、竜軍団の侵攻に関しての招集である。会場内ではギルド内の冒険者チームの大連合による討伐遠征だと専らの噂が広まっていた。

 集合期限の時刻までまだ30分程は有る。

 モモン達がこの広場へ来る途中、小耳に挟んで驚いたのが、この大都市エ・ランテルには、現在アダマンタイト級冒険者はともかく、オリハルコン級すらもいないという事だ。

 どうも都市周辺に脅威が少ないのも原因の一つと思われる。

 南側は20キロ程度でスレイン法国との国境が迫り、東側も30キロを越えた所で直ぐに帝国領。南東に広がるカッツェ平野は50年単位で見れば稀に危険だというデス・ナイトも登場するとの事だが、普段はミスリル級でも十分対応出来る難度70未満の『死者の大魔法使い(エルダーリッチ)』ぐらいまでの出没に留まると聞く。

 北方のトブの大森林も都市に近い周辺部は、森の賢王のハムスケが200年に渡り安定の支配力を見せており脅威的なモンスターは少ない。南西側の大きい森と山岳部にぐらいしか、難度で80を超える程の大物はいない模様。しかも、高難度の個体達は分別があるようで、人間達と衝突しないように配下の者らを抑えていると言われ、長年大軍では出没してこない。

 なので、ミスリル級がこの都市の冒険者組合では最上位の等級となる。そのチーム数も僅かに5つ。

 それゆえ彼等はまさに、この都市では冒険者達の目標でもあり憧れである。

 この場に集まった2割程の者達は、その5チームの周りを取り巻くように順番で挨拶をしたり話に興じていた。

 

(まあ、スターやアイドルみたいなものだよなぁ)

 

 モモン達は、パンドラズ・アクターも不可視化して連れている為、少し離れた所からその様子を眺めている。予想するに、挨拶は仕事を共にする白金(プラチナ)(ゴールド)、将来を見越して(シルバー)級辺りまでのチームのようだが。さすがに、銅《カッパー》や(アイアン)級の者達は、差が有り過ぎて邪魔になると遠慮している風に見える。

 だから未だ最下層の銅《カッパー》級であるモモンとマーベロ達は、当然蚊帳の外に思われた。

 しかし、先日の盗賊団討伐の件は本当に大きかった模様だ。

 討伐した盗賊団は、同行した(シルバー)級冒険者チーム『漆黒の剣』らの噂話からも50名以上の規模と思われ、これまでにブリタのいた(アイアン)級内でも十人程の大チームを初め、(シルバー)(アイアン)級の連合チームに(ゴールド)級のチームまでも血祭りに上げられており、総合的に見てモモン達の成した事は周りからは明らかに白金(プラチナ)級以上の働きだと判断されていた。

 さらに、巨躯で見事な漆黒の全身鎧(フルプレート)に二本のグレートソードを背負ったモモンの姿と、可愛いマーベロの高級感ある純白のローブと紅い杖である。やはり目立った。

 モモンらに気付いた冒険者チームの幾つかが挨拶に訪れ始める。

 大半は、(アイアン)や銅《カッパー》級だが、中には(シルバー)(ゴールド)級の冒険者チームからも声を掛けられていた。

 また数日前からはどうやら、その立派で目立つモモンの漆黒の鎧から『漆黒』というチーム名の二つ名を付けられているみたいで、「"漆黒"チームのモモンさんとマーベロさんですね? よろしくお願いします」と何度も聞かされている。

 状況に少し戸惑っていると、見知った顔が笑顔で現れた。

 

「ども、モモンさん、マーベロさん。街が色々大変な事になってるけど」

 

 乱暴に切られた髪が鳥の巣風で赤毛の女、ブリタである。相変わらず、動き易く見える分厚い布革の服装。この前の稼ぎは、銀貨で14枚。倹約すればやっと1ヵ月程暮らせる額であったため、装備等に回す余力は僅かもなかったのだ。

 彼女はあれから、一日だけ、『漆黒の剣』の手伝いをさせてもらって、銀貨8枚を得ていた。

 しかし、それ以外の幾つか他のチームに声を掛けたり掛けられたりしたが、結局合意出来ず組めなかった。単身の女1名という事で分け前の歩合が不利になる事も大きい。

 中でも、(シルバー)級だったが、酷いチームに宿場街外れの区域で出会っていた。つい昨日のことである。男5人チームで、あわや人気の無い路地奥へ連れて行かれそうになった、そのとき、たまたまモモンに扮した、パンドラズ・アクターとマーベロを見かけ、「モモンさーーん」と声を上げたのだ。

 マーベロは人間などどうでも良かったが、モモンの知り合いをここで見捨てると、モモンガ様の冒険者としての名に悪影響が出るのではと気を利かせる。

 人間について、やはりどうでもいいパンドラズ・アクターは、状況が分からないのでマーレに合わせた。創造主にこれ以上怒られたくないのもあり頑張った。

 (シルバー)級の冒険者達は男5人であったが、大盗賊団を討伐した『漆黒』のモモン達の噂を知っており、「やっべ。え、あ、いや……じゃあな」と言って逃げる様に去って行った。

 冒険者というのは、命を賭けた厳しい実力の世界なのだ。いきがるのも相手次第。モモン達が、銅《カッパー》級のプレートを付けている事も逆に不安を倍増する。近いうちに(ゴールド)白金(プラチナ)級となり地位が逆転した時のことを考えて。

 そんな『漆黒』の知り合いに、手を出すという愚かさも含めてだ。

 一方、助けて貰ったブリタだが、御礼の言葉を伝えるも、状況が情けなく恥ずかしく、その後直ぐにその場を去っていた。

 だが、再会した今は感謝で一杯だ。堂々と目の前に立つ漆黒の戦士と純白の魔法使いの少女がいなければ、昨日はどうなっていたことかと。

 

「昨日は本当にありがとうね」

 

 ブリタは焼けた浅黒い肌の頬を僅かに染めて、嬉しそうにそう伝えてきた。

 モモンは、マーベロから一応その助けたという事実だけは聞いている。

 なので、マーベロがブリタへ会釈したあと、少し距離が有る感じのクールな形に答える。

 

「当然の事だよ。無事で良かった。君とは一度一緒に戦った仲でもあるし」

 

 その雰囲気の言葉が良き人柄を際立たせ、さらにブリタの胸には響いていく。

 

(やっぱり、すごくモモンさん、いいかも……)

 

 だが、相手は美人の女の子を連れた三段は上の実力派冒険者だ。直ぐに仲を進展させるというのは無理な話。

 ブリタはずっと考えていた。既に良い歳でもあるし、この単身のままの冒険者では、誰かに縋り使われる酷い人生になりそうだと。それでは、モモンに近付く価値のない女になってしまう。

 そんな中、先日のモモンに提案されたカルネ村の話は、村人を守り助け手伝いながらと自分の剣に誇りと自信を持って暮らしていけるように感じていたのだ。

 ただ、一つだけの不安を彼女はモモンへと確認する。

 

「モモンさんは――あの、カルネ村にはよく行く予定なんですか?」

「えっ? んー……ンフィーレアの仕事もあるし、時々は行くんじゃないかな」

 

 ブリタは、とても安心したように笑顔を浮かべる。

 

「明日ですよね、バレアレさんところの引っ越しは」

「あ、そうかな」

「あの、私――カルネ村に移り住もうかと思ってます。一人じゃ今回の竜討伐も難しいし。この間のお話、いいなと思ったので。なので同行させてくれませんか?」

 

 まさか本当に、田舎のあの村へ移り住むとは思っていなかったモモンだが、存続の危ういカルネ村の為にも断る理由は無い。

 

「……そ、そうか。別にいいけど」

「やったっ。ありがとう。じゃあ、この後の集会次第かもしれないけど、行けそうなら明日朝に、バレアレさんの店まで行きますね」

 

 ブリタは、両手を胸元で合わせて喜んだ。

 その会話が丁度終わった時に、今度は(シルバー)級冒険者チーム『漆黒の剣』の一行に声を掛けられる。

 

「こんにちは、モモンさん、マーベロさん。ブリタさんも。それにしても今回、大ごとの内容みたいで、しかも王都からの知らせのようですが」

 

 リーダーのペテル・モークを皮切りに、他のメンバーも現状を受け微笑での顔で続く。

 

「こんちはー、モモンさん。綺麗で健康的なブリタさんに、超美人のマーベロさんもご機嫌麗しゅうっ! 酷い知らせだよなぁ」

「こんにちは。とにかく、御三方とも息災でなによりであるっ」

「こんにちは、ブリタさん、マーベロさん、そしてモモンさん」

 

 特に、最後で声を掛けたニニャは、特別の想いを抱き始めたモモンへ会いたかったのだ。個人的に相談したいことが、日々色々と膨らんできているのもあった。胸元だけではなくだ。

 

(ああっ、仲間達に黙っているそろそろ隠し切れそうにない秘密の事や、きっと今も酷い目に遭っている姉さんの事、そして――個人的にあなたを好ましく思っているこの気持ち……それらを早く打ち明けられたら。機会が中々ないところに竜の軍団だなんて……)

 

 それだけに今、会えた事が嬉しくて、まだまだ少女らしい少し色白で瑞々しい頬が僅かに赤く変わり、モモンに対してだけ視線も少し上目遣いになっていた。

 

(やっぱりこの英雄級の人は、他の冒険者の戦士達とは違う。さっき広場で見たミスリル級の人達よりも断然圧倒的に雰囲気があるっ)

 

 それは、才能豊かなニニャだから潜在的に分かることでもあった。

 彼女の正体に気付いているマーベロは、主への眼差しが熱い少女の様子に内心面白くない。ちょっとだけ口許が、むっとへの字になった。

 その横では「こんにちは。先日は仕事ありがと。とんでもない状況よね」と『漆黒の剣』達へと話し掛けるブリタ。それに「こ、こんにちは」と僅かに機嫌を害しているマーベロも続き、最後にモモンもペテロ達へ、この都市で聞いた事実だけを交えて答える。

 

「こんにちは、皆さん。そうですよね。俺も先程、"王都からの要請で、冒険者は組合前の広場に集まるように"と言われましたけど。宿屋の主人や周囲の冒険者の方達の、"竜300体の軍団が攻めて来てるそうだぞ"と聞いて驚いてるところで。このあと、ここで組合の方から、正確で詳しい話があるのかも」

 

 ペテル達は、『漆黒』と呼ばれるようになり始めた、驚異の冒険者モモンチームの様子に注目している。

 (ドラゴン)――それはこの時代の人間達にも伝説のモンスターと言っていい存在。

 冒険者として、生涯で一度でも倒すことが出来ればと憧れる存在ではあるが、夢と現実は異なるのだ。

 いざ敵として戦うとなれば、話が違う。成体となれば最低でも難度で80程にもなる。更に耐久性や体力、各種能力を加えた総合力を考えれば、実際の強さはもっと上だろう。

 普通に考えれば、そんな怪物を相手に倒す事まで出来るのは、冒険者チームでもミスリル級以上の力がないと難しいように思われる。

 つまり、エ・ランテルでも5チームしか本当の意味で戦えないのではと。

 だが『漆黒の剣』達は、6チーム目は確実に存在していると考えている。

 今はまだ(カッパー)級であるが、ペテル達はあの人食い大鬼(オーガ)を容易く一閃で両断したモモンの放ったグレートソードの斬撃を忘れるはずもない。

 

 彼のあの一撃は、間違いなく(ドラゴン)にも通じるはずだと。

 

 

 

 

 冒険者組合前の広場は、集会の開催時刻の午後3時となった。

 その少し前に組合の建物脇から、小さめで白色の舞台が広場の一角に出され、ちょっとした前準備が行われていた。

 今、その舞台へと、がっしりした40代前半の灰色の髪と口髭の有る一人の男が登場する。

 エ・ランテルの冒険者組合長のプルトン・アインザックである。彼自身も元オリハルコン級冒険者だ。

 彼は集まった冒険者達を見回すと張った声で多くへ聞こえる様に話し始める。

 

「組合長のアインザックだ。エ・ランテルの冒険者の諸君、良く集まってくれた。今日は君達に冒険者組合員として、リ・エスティーゼ王国の民として、そして――エ・ランテルの市民を守る者達として話をさせてもらう。今、我々の住むこの都市も含めて、王国には未曽有の危機が押し寄せてきている」

 

 アインザックは、組織の長であり、またエ・ランテルを守る一人として、冒険者達の良心と人の持つ精神に訴えようとしていた。

 

「一部ですでに話が流れているが、東北部の大都市エ・アセナル近郊へ竜の大軍団が現れた。その数は300と聞いている。これは……厳しい数字である。しかし、我々には守るべきものがある。家族であったり友人であったり財産であったりだ。それは他の誰が守ってくれる訳でもない――我々自身で守るしかないのだ。この場を失えばすべてを失うと知って欲しい。家族や友人はここに住んでいて、そして関係を築いてきたのだと」

 

 組合長アインザックの言葉に、皆が静かに耳を傾けている。多くの者が分かっているのだ。竜300体である。もし多くが逃げ出し、戦線が崩壊すれば国が滅び全てを失うと。

 

 だから静かに待っているのだ。魂を奮い立たせる、漢達の声を――。

 

「それらを守り通すために竜の軍団を倒す為に、我々は王都へ遠征隊を送り出す。これは、他の大都市からも集まって来る。そして、もちろん――私自身も出る。そこの足元に居る、旧友のラケシルもだ」

 

 アインザックは、白い舞台の脇に立つ痩せた細身の男を態々ゆっくりと指差した。

 苦笑うラケシル――テオ・ラケシルは、エ・ランテルの魔術師組合長である。

 アインザックが引退して5年は経っている。だがそれまでは、エ・ランテルで唯一のオリハルコン級冒険者チームを率いてきた男だ。ラケシルもそのメンバーの一人。

 それらが指揮官として現役に復帰すると言うのである。

 

『おおおーーーーーっ!』

 

 広場の男達は、彼らの男気と漢粋(おとこいき)に各所から声が上がった。

 

「なお、今回王都遠征に出てもらうのは(シルバー)級以上の冒険者チームの諸君だ。敵は強敵の(ドラゴン)。悪いが、後ろを守っている暇はない。精鋭に絞らせてもらう。そして遠征する諸君達も、自分のチームが最主力の存在だと思って奮闘してもらいたい。今回は、全員が高い気概なくして勝利は掴めないだろう。都市での仕事は、残る(アイアン)と銅《カッパー》級の諸君で協力し合ってお願いする。なお、今回は王国より(ドラゴン)1体に対して金貨300枚の報奨金が出る。指揮官の竜に対しては倍額かそれ以上となる」

 

『『『『おおぉーーーーーーーーーーっ!』』』』

 

 やはり、現金なものである。1体倒せば当分遊んで暮らせる額が提示されると、広場は大きく盛り上がった。

 

「甘くはないが、色々と好機でもある。皆を守る気概と共に奮闘して是非栄光も掴んで欲しいっ。出発は明後日の早朝である。皆で頑張ろうっ。やるぞーーっ!」

 

『『『おぉーーーーーーーーーーっ!』』』

 

 アインザックの大きな掛け声で、最後に大きく広場内の士気の上がって集会は終わった。

 (シルバー)級以上の冒険者チームは100チーム程で約490名。

 すでにこの都市が王国にある以上、行くも残るも全員がオンステージの状態なのだ。

 やるしかない――冒険者達の眼光には力が漲っていた。

 

 

 

 結局、未だ銅《カッパー》級冒険者チーム『漆黒』のモモンとマーベロは、エ・ランテルへと残ることになった。

 明日の冒険者の仕事である、バレアレ家の引っ越しは予定通り行えそうだ。

 先日、モモンが予想したほぼ同じ形である。都市も空にする訳には行かず、足手纏い気味の者らは送ってもしょうがない点から常識的に考えた範疇での結果だろう。この後、モモンらへ行動制限が付くかどうかは、王都遠征が始まってからという感じか。

 そして、(シルバー)級冒険者チームの『漆黒の剣』のペテル達は、広場から多くの冒険者チームが去り、別れ際の頃合いにはもう複雑に変わった表情をしていた。

 冷静になればなるほど直面する壁が大きく感じるはずだ。彼らの水準では、まず(ドラゴン)に傷を負わす事も出来ないだろうから、精々囮役ぐらいにしか成れないはずだ。

 しかし、全力で戦うしか道はない――。

 

 この現実は、無情で非常に厳しい。

 

 傍に佇む残る側のブリタも、下を向いていた。

 ペテルが『漆黒の剣』を代表して、苦笑しながら話し掛けてくる。

 

「あの……少し早いですが、この後、皆でまた一緒に夕食でもどうですか?」

 

 一同を見ると、ルクルットやダイン、ニニャも同様に苦笑いだ。

 モモンは営業マンとして当然その案も頭にはあった。しかし、普通の壮行会のノリでは声が掛けられなかった。何といっても――『死別』かもしれないのだ。

 非常に異色の雰囲気があった。

 こんなことは、自然環境の酷いリアル世界でも、流石に戦場では無かったため、経験が無かった。

 

「――そうですね」

「私もいいけど」

 

 モモンとブリタが同意し、モモン達は移動し始める。またあの思い出のお店を目指して。

 

 ただ雰囲気的にその料理や酒は、別れの予感の濃い味がしそうな気がしている……。

 

 

 

 

 

 

 

 バハルス帝国――アゼルリシア山脈を挟みリ・エスティーゼ王国の東側に隣接する、帝都アーウィンタールを中心に絶対君主制の帝政を敷く一大人類国家である。総人口は王国よりも僅かに少ない850万人程度。

 そのバハルス帝国情報局は、リ・エスティーゼ王国の王城で王国戦士長ガゼフ・ストロノーフより会議にて報告された、スレイン法国特殊部隊撃退とそれを成した謎の旅の魔法詠唱者一行についての情報を、内通している大貴族経由ですでに掴んでおり、それを確認するために先日より越境させている情報局工作兵達が、近年王国内へ潜りこませ定期的にエ・ランテル近隣を回らせていた商人の民間工作員へ接触し、得た情報を持って帰還してきた。

 この日の夕暮れが迫る頃、帝国が誇る大陸に僅か4人しか存在しないという、第六位階魔法の使い手、「逸脱者」の一人にして主席宮廷魔法使い及び魔法省最高責任者であるフールーダ・パラダインは、長年の熱心な魔法研究の跡が見える感じの、机回りと床が高位魔法に関する専門書に埋め尽くされている自室内のソファーで丁度寛いでいた。

 その彼の風貌は二百年以上の齢を物語り、雪のように白く長い髪と髭に、魔法使いらしく首へ水晶球のネックレスと純白のローブを羽織っている。しかし足取りは確かで、杖に頼ってはいない。

 そんな彼は、下から上がってきた西方隣国の例のカルネ村に関する一つの報告について、部屋を訪れた高弟から聞き、若者の如く立ち上がりつつ手元に握っていたカップを落とす。本来拾うのは彼にとって造作もない事だが、それどころではなかった。

 床で砕け散る乾いた音と波紋のように広がる液体。その様子と告げられた事象は、人生の無情と驚愕が込められている様であった。

 

 

 

「ほ、本当なのかっ――――ただの村の娘が、あ、あの死の騎士(デス・ナイト)を使役しているというのはっ!」

 

 

 

 フールーダの声は、歳の割に若い声の為、より素っ頓狂な形で響いていた。

 信じられないと――死の騎士(デス・ナイト)の使役は、「逸脱者」と呼ばれるフールーダが長年課題としている高位魔法へと繋がる『渇望』であった。現に、現在も帝都の魔法研究施設の地下深くへ秘密裏に頑強に出来た鎖でデス・ナイトを拘束し続けており研究中なのだ。先日も使役魔法に失敗したところであり、行き詰ってもいたのである。高弟も共にその様子を見て知っているため、慌てて知らせに来ていた。

 帝国の大魔法使いは、羊皮紙の報告書を高弟から奪い取ると、急いで自身の目を通し記載されている怪物の風貌から確かにデス・ナイトだと読み取り、暫く口を開いたまま僅かに震え固まっていた。

 

(うぉぉぉーーっ、何という事だっ。一介の村娘でも使える魔法が有るとでもいうのかっ。それとも村娘が凄いのかっ。いやっ! これは、謎の魔法詠唱者アインズ・ウール・ゴウンなる人物の仕業ではないのかっ?! ――知りたいっ。私は、その全ての真実と方法を知りたいぞっ!)

 

 もはや老人の目は、獲物を逃さない欲情した若き狼の如くただギラギラとしていた。

 

 

 

 帝国が、揺れ動き始める――。

 

 

 

 

 

 

 

――P.S. 知りたいっ。スベテガッ

 

 

 同時刻、見事に美しい茜色に染まる夕日の中、白きGを肩に乗せ木の小枝を振り回すネムと手を繋ぎ、死の騎士(デス・ナイト)とゴブリン軍団の一人のカイジャリを従えて、畑から村内の()()()()へほのぼのと帰る途中のエンリは、急に全身がゾワリとした。

 

「いやん。なによこれ……風邪でも引いたのかしら」

 

 うら若い村娘の身にジジイの影が迫ろうとしていた……。

 

 

 

 

 

――P.S. 国王謁見の間を後に

 

 

 国王ランポッサⅢ世と謁見し、直接報告した『蒼の薔薇』達には魁となった働きもあり、合計金貨2500枚の報奨金が与えられることになった。

 そうして帰還報告の儀が終了し、国王は退室し王族達も下がってゆく。

 『蒼の薔薇』達も大任を終え、黙して退出していく。戦場では身を清める事や睡眠もままならない。今日ぐらいはゆっくり休ませるべきだろう。

 戦いを良く知るガゼフは、本日の勇者である彼女達を静かに称え黙って見送る。

 仮面のゴウン氏もただ黙して横に居た。

 そうして、間もなくガゼフとゴウン氏も謁見の間を後にする。

 王国戦士長は、『蒼の薔薇』のリーダー、ラキュースの報告の間、横に立つ御仁の様子を実は窺っていたのだ。

 先の『朱の雫』のリーダー、ルイセンベルグの報告からおおよその惨事は分かっていたから。

 彼は、このゴウン氏という人物の少しでも驚くところが見たかったのかもしれない。

 

 ――しかし。

 

 都市の惨状の話にも、竜王(ドラゴンロード)の圧倒的で驚異度が凄まじい攻撃の話にも、特に反応が無かったのだ。

 

(こ、これは……どういうことだろうか。いや、やはりさすがの彼も、絶句しているのだろう)

 

 ゴウン氏は、いつものように仮面を被っているため、身体が動かなければその反応は皆無となる。

 だが先程の竜王の話は、先日『竜300体もの軍団の戦力をどう思うか』と尋ねた時の、通常の竜や竜軍団とも一線を画す想像以上の強さだったはず。

 目撃者から直に聞き、それが彼も居るこの王国へと襲って来て、迫っている現実。

 『恐れを抱いていない』――常識的に考えて、それは無いだろう。

 

(――ん? 常識的……? まさか……)

 

 ガゼフは、ヒヤッとし、一つごくりと唾を飲む。

 この城内の廊下を共に歩く御仁が、常識の範疇に入っていれば、あの村で配下と自分は死んでいたのではという事を思い出す。

 王国戦士長は、共に廊下を歩きながら改めて尋ねた。

 

「ゴウン殿、先程の話の竜王と戦うかもしれない事について、どう思われた?」

 

 すると、仮面の彼は前を向いたまま静かにこう答えた。

 

「――戦いは、やってみなければ分からないものですから」

 

 その言葉は謙虚。だが、彼の答えには、やはり怯えや迷いは全く無かった。まるでこれから気軽に遊びでクジでも引くような雰囲気である。

 ガゼフは、そのまま歩きつつも目を見開く。

 

(ゴウン殿……貴方という御仁は、伝説の魔神をも遥かに上回るという竜王すら怖くないというのか――)

 

 夜の帳が降りた王城の中は、『蒼の薔薇』の報告で僅かだが希望が見え、残った理性に落ち着きを取り戻した部分が有りながらもざわつきは収まらない。

 そんな中、王国戦士長は経験者として思い始めていた。

 

 

 

 まさかだが、この御仁が動いた時、魔神を超える強大さを持つだろう竜王率いる竜の大軍団すら、以前と同じ感じで本当にあっさりと―――また、消えていなくなるのではと。

 

 

 

 

 

 

 

――P.S. 漆黒聖典の上司の神官長室を出ると

 

 

「竜退治、まあ精々頑張ってきてね」

 

 『隊長』は神官長室を出て直ぐの、閉めた扉の左側から声を掛けられる。

 足元に得物の十字槍にも似た戦鎌(ウォーサイズ)を転がし、静かに壁へもたれ手に正方形状の玩具を弄っている一人の少女。彼女の風貌は風変りで、長めの髪と瞳の色が左右で違うという。髪の片側が白銀、もう片方は漆黒だ。

 

「盗み聞きは、よくありませんよ? "番外席次"の"絶死絶命"さん」

 

 『隊長』は『番外席次』へそう驚いた様子も無く伝えた。

 人類に残された最後の切り札が――彼女である。

 

「貴方達が失敗した時は私が戦ってあげるから安心して。その時は、是非雄の竜王だと楽しみが多いかもね」

 

 『番外席次』の彼女は、結婚するなら顔も種族もどうでもいいから自分より強くないとと、常日頃から言っている。

 『隊長』は、それを逆の意に捉えていた。

 

「(貴方に勝てる存在はいないと思いますよ。結婚する気が元からないんだろうなぁ)……」

「ん、何か言った?」

「いえ、別に。でもカイレ様もいますから――多分勝ちますよ」

 

 カイレの装備する秘宝は非常に強力である。最初に竜王へ使えば、あとは勝手に戦いが終わるかも知れないという代物なのだ。

 

「なーんだ、カイレ様も一緒か。それは残念。もう、つまらないわねー」

 

 『番外席次』の彼女もカイレの装備の凄さを知っているので、本気で自分の出番は無さそうだという表情である。

 

「期待外れで申し訳ないですね」

 

 そんな彼の言葉を聞き流し、彼女は『隊長』らの竜軍団討伐には、もう興味が無くなった風に、左手に玩具を持って、右足で足元の戦鎌(ウォーサイズ)を軽く蹴り上げ、右手でそれを掴むと『隊長』へと背を向ける。

 だが、ふと何かへ気付いたように振り向いた。

 

「そういえば、なんか高位の凄い魔法詠唱者一行が、神都に襲って来るって話はどうなったの?」

「その方達は、こちらに興味が無いようで、今は王国の王都へ行っているみたいです」

 

 それを聞いた『番外席次』は、ニヤリとして告げる。

 

「じゃあ、せめてお土産に竜王の強さと、その――すごい魔法詠唱者の話でも仕入れてきてよね」

 

 そう言って返事は聞かず、彼女は背を向けて去って行った。

 『番外席次』のその姿は、『隊長』が初めて会った数年前から全く変化がない。

 彼女も『神人』であり、法国の五柱の秘宝を守っているため、『番外席次』は長年ずっと外へ出ることが殆ど出来ない秘匿された存在である。

 

「遊びに行く訳じゃないんですけどね。まぁ、あの人は暇を持て余してるから……」

 

 『隊長』は自分の仕事に戻るべく、彼女とは反対方向の通路へと歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

――P.S. 酒場で

 

 

 『その料理や酒は、別れの予感の濃い味がしそうな気がしている』

 

 そのモモンの予想が、全くの見当違いに変わるとは……。

 

 あの後、冒険者チーム『漆黒の剣』のメンバーとブリタと共に、モモンとマーベロ達は盗賊団討伐の打ち上げといえる食事会を楽しんだあの同じお店に入った。

 そこで『漆黒の剣』一行の、竜退治に向かう王都遠征への『壮行会』的意味での食事の席となったが、またモモンが「この場は自分が奢ろう」という太っ腹な話になって、皆は食い放題、飲み放題で盛り上がっていた。

 モモンの向かい側のブリタは、それなりに食べて飲んでしているが、主役ではないのでやや控えめだ。

 左横のマーベロは、酔った振りをしつつ可愛く静かに、モモンへ寄り添ってニッコニッコしている。

 右斜め前へ座る、主役のペテルやルクルットにしてみれば、まだ若い身で後戻りの出来ない戦いへ赴く事にどこかやり切れないヤケクソ気味の部分もあるのかもしれない。二人は飲んで出来上がってからは「クソ、クソ、クソ、クソ」や「ちきしょーっ、イイ女と結婚したかったぜー! マーベロちゃんがもうちょっと大きくなってたら、今すぐ結婚してたーっ」と、大声で叫んでいる。

 一方、左斜め前へ座るダインは悟りを開いたかのように、黙々と凄い量を食べて飲んでとしていた。

 そして――ニニャはモモンの右側横に座っていた。

 酔っているのか、頭を時々左右に振りつつも、先程からずっとモモンを見ている。

 その彼の姿を、まさに目と記憶へ焼き付けるかの様に。

 

(モモンさん、モモンさん、モモンさん、モモンさん――)

 

 これが、最後かもしれないとの思いが大きいと言わざるを得ない。将来的に才能が有ろうとも、ニニャの現状は一人の第二位階魔法詠唱者に過ぎないのだ。

 竜の舞う厳しく過酷すぎる今回の戦場では、生き残れるとは思えない。

 それは、モモンも考えていた。

 デミウルゴスの報告からすれば、Lv.89の竜王だけでも王国の戦力では善戦すらも難しく壊滅するだろうと。

 ふと、確かマーレが第五階層にペットとして置いている(ドラゴン)がLv.90近かったと思い出す。ぶくぶく茶釜さんの課金アイテムでの当たりレアモンスターだったと。そして、それは2体いたはずだ。

 ちなみにアウラもLv.55のドラゴン・キンを数体、闘技場の片付け役で飼っている。

 酒の席でモモンは、これだけで竜軍団といい勝負になりそうかなと場違いの事象を考えていた。

 とにかく、モモンはニニャに会えるのはこれで最後かもしれないと考え、一度ぐらいはと、きちんと聞いてみる事にする。

 

「ニニャ、君はお姉さんが居ると聞いたけど……やっぱり顔は似ているのかな?」

 

 すると、彼女は酔った中でも、モモンが自分に関心を持ってくれたのが嬉しくて笑顔で答える。

 

「えっとですね……似ていると言われたことは、何度か有りますよ。……8年程前のまだ小さい時でしたけど」

「そうか……(そんなに前だと、余り参考にならないかな)……今は分からないよね」

 

 だが、ここでニニャは、驚くべき事項を口に出した。

 

「そうですね……それに私の茶髪と違い、姉は――綺麗な金髪でしたから」

「んん……? き、金髪……(ツアレと同じ、金髪だとぉぉーーー?!)」

 

 モモンは、面頬付き兜(クローズド・ヘルム)の中で、瞼のない赤き目のはずだが、何度か点滅するほど衝撃を受けた。

 そしてニニャへと、落ち着いて控えめに確認する。

 

「えっと……ちなみに、お姉さんの名前は?」

 

 すると、ニニャは酔っていたし、最後かもしれないと素直に姉の本当の名を告げた。

 

 

 

「―――ツアレニーニャ……ですけど?」

 

 

 

「ツ、ツアレ……ニーニャ……ね。ふぅん(うあぁぁぁーーーっ、もう、絶対ツアレだよっ、間違いないっっ!!)」

 

 モモンは、兜の頭を左側へゆっくりと向けてニニャから視線を外した。

 何故か、ルベドのニヤニヤした笑顔が思考内へ激しくオーバーラップしつつ。

 

 この瞬間、エ・ランテルのンフィーレアに護衛として付けていたLv.88の八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)について、明日からの護衛対象が自動的に決定する。

 

 結果、他の『漆黒の剣』メンバーらもついでに恩恵を受けることになった―――。

 

 

 




捏造)クアイエッセと『占星千里』の口調
まあ、とりあえず……の感じで。


捏造)エ・ランテルのミスリル級冒険者チーム数
書籍版3-302で『招集に応えてくれた』のがモモン達を合わせて4チームだったので、5つぐらいのチームは存在しそうかなと。



資料)プロットから(左端が開始からの日数)
17 王城行きでカルネ村出立。モモンと漆黒の剣と出会う 『巨盾万壁』ら出発 法国、カルネ村への調査も開始。
18 モモン夜に漆黒聖典と遭遇 帝国-アインズ情報入手
19 盗賊団の根城から帰還。漆黒の剣とブリタと宴会
20 再びナザリックより出発。ツアレ エ・リットルに宿泊。
21 王城到着 晩餐会
22 竜王襲撃 会議 蒼の薔薇エ・アセナルへ モモンエ・ランテルへ 八本指共闘
23 蒼の薔薇反撃 ナザ戦略会議 正午から集会&宴会 ドルビオラ評議会へ 法国-竜情報入手
24 蒼の薔薇反撃2 朱の雫王都へ。蒼の薔薇も モモンの仕事を片付けてお茶 漆黒聖典出撃
25 エ・ランテルへ通報来る。冒険者集会。ニニャ、ブリタ ジジイ-デスナイト
26 ンフィーカルネ村へ ドルビオラ帰還

基本、こんな感じで、時々加筆修正しつつ書いてます(汗

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