東方博麗社〜もし博麗神社に参拝客が来ていたら   作:だぴょん

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今回は鈴奈庵ベースで、現代の教育問題も取り入れつつ書きました。

あと最後が鈴奈庵にするか霊夢と一緒に風呂入って話し合う場面にするか迷ったけれど最終的に鈴奈庵になりました。

それでは今回もノーサイドでお送りいたします。


寺子屋の妖怪子狐

「妖怪の文字と年号が障子に……?」

 

「はい、そうなんです」

 

博麗神社。

 

参拝客が多く訪れるこの神社の母屋で、博麗の姉弟と尊朝は話し合っていた。

 

「まあ、たまにはこの楽園の素敵な巫女と言われる私が行ってあげようかしらね。久し振りに人里にも顔出したいし」

 

「ああ、こういう時は『自称楽園の素敵な鬼巫女』が行った方が説得力があるってことね」

 

「誰が自称鬼巫女じゃい。それにね、あんたは優しすぎるのよ。こういう時はしっかりと鬼の形相して犯人を見つけ出さなきゃ」

 

「えー……」

 

小鈴に会えると思ったのにー、とボソッと呟くが霊夢には届かず、そのまま尊朝と歩いていく。

 

「さあ、行きましょ尊朝」

 

「あの、詠夢さん落ち込んでますけど良いんですか?」

 

詠夢の方を見ると、うわーんと嘘泣きをしながら霊夢にすがりつこうとしている。実に演技下手である。

 

「まあ……良いんじゃないかしら?」

 

冷徹に言い放ち、霊夢は尊朝と一緒に人里へと向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

寺子屋。

 

上白沢慧音によって、いろいろな教育(意味深)を受けることが出来る学び舎である。また性に目覚めるのもだいたい慧音の豊満な胸のお陰である。実に罪な女である。

 

「それで慧音、退治されたい子はどの子?」

 

「いや、まだ見つかっていないんだ」

 

そう、犯人がある程度特定出来ていれば見つけるのは簡単なのだが、今回は犯人が誰かわからないどころか、人間でないため捜索範囲が幻想郷全域の可能性もあるので余計ややこしいのだ。

 

「はあ、本当に詠夢を連れてきた方が良かったかしら……。まあお札でも貼っておきましょう、少しは不安は減るはずだから」

 

そう言い近くにお札をペタペタと貼り、様子を見ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

詠夢が寺子屋で授業をするということもあり、霊夢は詠夢を引き連れて寺子屋に訪れていた。

 

「うーん、やっぱりダメよねー」

 

お札の効果はあまり無く、今日も文字が書いてあった。

 

「妖怪文字が解読できれば捜索がしやすいのだけど……」

 

「妖怪文字か……あっ、そうだ!あそこに行けば良いんだよ霊夢!」

 

詠夢は何かを思いついた様子で、妖怪文字と日本語が書かれた障子を持って霊夢の手を引き、鈴奈庵の方へと向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

詠「同じことが書かれているの?」

 

小「そう、多分妖怪が文字の練習でもしてたんじゃないかしら」

 

鈴奈庵に行き、小鈴にこの文字を鑑定してみると同じことが書いてあるということがわかった。

 

詠「でも、確かこの年号って今日やる範囲の前だったはず……ってことは、やっぱり寺子屋の生徒の中にいるのか……」

 

霊「確かにそうなると、寺子屋の子の中には『こんなのへっちゃらだ』なんて言ってる子達もいたけれど、結構怖がる子たちもいるかもしれないから、慧音だけに話をして今夜寺子屋を張ってみようかなぁ。」

 

詠「あんたはまた仕事サボる気かい……」

 

小「まあまあ……。あ、良かったらこれまでの妖怪文字が書いてある障子欲しいんだけど……」

 

詠「ご自由にどうぞ」

 

小「やったー!」

 

小鈴はまるで小さい子のようにはしゃぎまわった。

 

 

 

 

 

 

 

その後、詠夢が寺子屋に戻るときに、1人の子を数人の子が囲っていた。詠夢は、かごめかごめでもやっているのかなと思いそのまま寺子屋に足を運んだ。

 

それが、間違いだったーーー

 

ーーーーーーーーーーーーーー

また翌日。

 

詠夢は、化けの術を見破るべくマミゾウと寺子屋に来ていた。

 

マ「お疲れさまじゃ霊夢。張り込みはどうかの?……ぷっ、アハハハハ!これじゃあ儂のスペルカード名と同じじゃのう!」

 

霊「うっ、うるさいわね!ぐぬぬ、妖怪狐め……!」

 

霊夢の近くには、『居眠りしている巫女、怖くなし』と書かれていて、霊夢が張り込んでいる中寝落ちしてしまったことが容易に想像できる。

 

そんな会話を続けていた時、マミゾウがふと何かに気づいた。

 

マ「ぬ、あいつじゃ。簡単な術ですぐにわかって良かったわい」

 

そうマミゾウが見つけたのは、一見普通の人間。しかし、正体は化け狐なのだ。

 

詠「ありがとうございますマミゾウさん。霊夢も徹夜で眠いでしょ、家、先に帰ってて」

 

霊「ありがとね詠夢。あんたも無理しないで」

 

わかってる、と姉弟の心で通じ合い、詠夢はその男の子……もとい、子狐の様子を1日観察することにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、事件は起きた。

 

寺子屋の休み時間中、外でかごめかごめをやっている生徒たち……では無く、あの子狐を蹴ったりしている様に見えた。また、時々罵声が詠夢の耳に飛び込んでくる。

 

びっくりした詠夢はすぐさま止めるべくそちらへ向かう。

 

「ちょ、ちょっと、何やってるの弥助!?」

 

「別に何もやってないですよ先生」

 

「じゃあなんでこんなにこの子が傷ついて泣いてるの?」

 

「そ、それは……」

 

この問いかけには流石の弥助も言葉を詰まらせる。

 

「本当は、この子が妖怪狐だって気づいてるんじゃないの?」

 

「は、はい……すみませんでした」

 

そして、子狐の方に向かって、優しい笑顔を見せて話しかける。

 

「君も大変だったんだね、ここまでよく頑張った。多分親を亡くしてしまったんだね?」

 

そして社会勉強や生きていく術を学ぶために人に化けて寺子屋に来ていたのだと詠夢は推測し、子狐に同情する、

 

「はい。ボクの母さんは博麗の巫女によって……。それで、あの、その、このことは博麗の巫女に黙っていてください!そんなこと知られたらボク、生きていけない……」

 

「大丈夫だよ。霊夢はいまそんなことしない。博麗神社の代表として僕が保証する」

 

でもね、と付け加え、続ける。

 

「流石に夜にコソコソやってきて文字の練習をするのは、怖がる子たちもいると思うし止めて欲しいな」

 

「でも、ボクはノートを買うお金を持っていなくて……」

 

「それなら心配いらないよ」

 

そう提案して、子狐を鈴奈庵に連れて行った。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

詠夢が考えた案とは、小鈴が白紙のノートを無償で渡し、それを寺子屋で使ってもらう。そして妖怪の文字が書かれたノートを小鈴がもらう。大赤字覚悟のことだが、小鈴曰く「こんなレアモノが手に入るならなんだっていいわ」ということらしい。

 

鈴奈庵で、詠夢は事の顛末を小鈴に話していた。

 

「結局、平穏に解決できて良かったわね詠夢」

 

「まさか裏でいじめがあるとは予想してなかったけれど、あれ以降反省したらしいし」

 

「そうなの。それなら良かったじゃない」

 

そこに、例の子狐がやってきた。

 

狐「ごめんくださーい。はい、小鈴お姉さん、ノートです」

 

小「はーい、ありがとね。それで、これが新しいノート」

 

詠「そうだ、新しいお友達できた?」

 

狐「はい、沢山仲良くなれました!あ、そろそろ寺子屋の時間!では、ありがとうございました!」

 

子狐は急いで寺子屋へ向かう。

 

その姿を、詠夢と小鈴、2人で微笑みながら見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷は、今日も平和だ。




さあ、次回ものんびり不定期更新になると思います。数学の宿題等々がたんまりとあるため遅くなる可能性大です。

ではまた次回、お会いしましょう。

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