東方博麗社〜もし博麗神社に参拝客が来ていたら   作:だぴょん

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紺珠伝の設定なりエピソードなりを弄ってます。独自設定タグ追加しました。

尊朝くん、異変解決に出動です!

では、どうぞ。


秘密の薬

ん……知らない天井……じゃないな。ここは多分……永遠亭か。色んな人が僕のことを覗き込んでいる。

 

なんでここにいるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

あ、そっか……僕……あの男の人に負けちゃったんだよね……

 

 

 

 

 

 

 

誰1人として守れなかった。詠夢の頭の中には守れなかった悲しみより自分に対しての情けなさの方が先に、また多く上がってきた。

 

「詠夢!起きたんだ!?心配したよ……」

 

詠夢に1番最初に声を掛けたのは、詠夢の姉である霊夢。あの後、ずっと永遠亭にいたと言う。

 

「詠夢!良かった……詠夢……詠夢……!」

 

その場にいた小鈴もまた、心配で仕方なかったのである。

 

「みんな……ごめん……僕、何も出来なかったから……」

 

詠夢はベッドに寝たまま、涙を目に溜めていた。それだけの使命感に追われて生活していたことを彼の顔から推測できた。

 

 

 

すると、2人の少女は詠夢の体を起こし、霊夢は前から、小鈴は後ろから抱きついた。

 

「「大丈夫よ、詠夢」」

 

優しく、詠夢に声をかける。詠夢は俯いた顔を少し上げた。

 

「私たちはあんたのこと大好きだから」

 

「心配しないで。詠夢が全力で戦ってるの分かってるし、カッコよかったから」

 

2人の優しい言葉に、詠夢は涙を我慢しきれなかった。

 

「ごめん……っ……!僕が……弱いだけにっ……!」

 

その時、暖かい感覚が詠夢を包んだ。

 

(この感触……この霊力……間違いない。お姉ちゃんだ)

 

「お姉ちゃん……っ……?」

 

「大丈夫よ。それならお姉ちゃんが悪い奴をやっつけてあげる」

 

その言葉を聞いた時、詠夢はふと昔のことを思い出す。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

「おねーちゃん」

 

「どうしたの?」

 

「さいきん、怖い夢をみるんだ。妖怪にぼくがつかまっちゃって、たべようとするの。殺そうとするの」

 

そんなことで怯えていた詠夢に、よく霊夢が言っていたことだ。

 

 

 

 

 

 

ーーーそれなら、お姉ちゃんが悪い奴をやっつけてあげる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

「ありがと……お姉ちゃん……」

 

そこに、コンコンコンとノックする音が聞こえる。

 

「永琳よ。入っていいかしら?」

 

ここの医者兼薬剤師の八意永琳が来た。

 

「どーぞー」

 

霊夢はそう返すとともに永琳が入って近くに座る。

 

「あら、詠夢起きたのね。取り敢えずお疲れ様」

 

「いや……っ……なす術なく負けたから……っ」

 

小さい嗚咽が聞こえる。それが聞こえた永琳は大丈夫よと一言慰めたあとに話し始めた。

 

「あいつには負けても仕方ないわ。だって私より強いもの」

 

衝撃の発言だ。

 

永琳の話によると、輝夜を月に帰らせる時に、あの男の部下と永琳に行かせていた。男自身が月最強の力の持ち主だったので部下も強かったのだろうか、輝夜と2人で逃げられたのは奇跡に近かったらしい。

 

そして、男が幻想郷を去る直前に紫が男の名前を聞いたところ、

 

「名前は言えん。しかし、嫦娥の夫だ」

 

とだけ答えたという。

 

 

 

 

 

 

「永琳より……強い……」

 

「だから、詠夢が彼の結界を破壊できたのは貴方の実力が上がってきている証拠よ。……おっと、話がずれたわね。続きを話すわ」

 

 

 

昔、まだ永琳が月にいた頃に男は2人の妻だった。嫦娥ともう1人の名前は……

 

純孤だ。

 

純孤と男の間に出来た子供を嫦娥に殺されたことが原因で純孤は嫦娥に強い恨みを持つようになっていた。その恨みは嫦娥を擁している月の民にも及んだ。約1000年に一度、嫦娥をあの手この手で暗殺しようと考えていた成果を出すのだ。その結果が今回、月の民が幻想郷を侵略しようと考えている原因なのだ。

 

 

 

「……っていうこと。ほら、あの天狗の新聞にも載っているわ」

 

そう言って今日の朝刊を詠夢に渡す。一面には

 

『金属製の蜘蛛襲来!幻想郷侵略の危機か!?』

 

と大きく書いてあった。

 

ふと、外の世界を思い出す。

 

「キュリオシティ……?

 

……わかった。僕が行く「詠夢はダメよ」……え?」

 

詠夢は突然、永琳に止められた。

 

「彼女の能力を考えると無傷の人間じゃないと無理だわ。詠夢は戦っていま体の中が壊れているの。無理し過ぎも良くないわ」

 

無理し過ぎても、悲しむ人がいる……

 

詠夢はそれを理解し、今回は異変解決に行かないことを決意した。

 

「……でも、困ったものねぇ……霊夢と魔理沙と早苗。それだけでは絶対に足りないわ。うどんげは連れて行かせる気だけれど、それでも月の民は強いものね……」

 

永琳は頭を抱えていた。そこに、詠夢が何かを閃いたような顔をする。

 

「あっ!うってつけの子がいた!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

「……それで僕を呼んだんですか?」

 

その人こそ源尊朝。源氏の血を引く者だ。

 

「そう。タカくんさ、まえ一回弾幕出せるかやってもらった時に凄い威力があったからさ。だから、スペルカード作って異変解決して欲しいの」

 

詠夢は彼の将来に期待していた。普段外に出ている霊力はそこらの里の人達と同じなのだが、弾幕の威力は半端ない。下手するとパワーでゴリ押しする魔理沙の弾幕に及ぶ可能性がある。それだけ尊朝に潜在した霊力があるのではないかと詠夢は思ったからだ。

 

「そうなんですか。分かりました!悪い人は僕がやっつけてきます!」

 

「そう、その調子だよ!ごめんね。僕が動けなくて」

 

詠夢はベッドに居ながら尊朝の頭を撫でる。

 

そこに、永琳と鈴仙が入ってくる。鈴仙が持っているお盆には水の入ったコップが2つと瓶に入った錠剤があった。

 

「待ちなさい。貴方と鈴仙にはこの薬を飲んでもらうわ。名付けて『紺珠の薬』、未来を見通す不思議な薬よ」

 

まあ、副作用が出るかもしれないから気をつけてね、と付け足した。リスクはあるけれど、飲まないより良いだろう。そう思った尊朝は薬を水で流しこんだ。

 

「頑張るね、詠夢さん!」

 

尊朝は詠夢の代わりという事もあって、右手で小さくガッツポーズをして言った。

 

「うん、行ってらっしゃい。」

 

詠夢は笑顔で返す。そして、みんなの方にも向いて笑顔を見せる。

 

「他のみんなも、気をつけてね」

 

「「「「行ってきます」」」」

 

みんなは永遠亭を出発し、月へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静まり返った永遠亭の窓越しに、詠夢は朝になっても見えていた、これからみんなが行くであろう月を見上げていた。




弄った点を説明します。

まず、嫦娥の夫は死んでません。月の都が凍結して、幻想郷に攻め入る時に宗教が混在していると面倒だからという意味で寺や神社を潰していたのが嫦娥の夫です。

その次に、純孤の子供を殺したのは嫦娥にしました。純孤の夫と嫦娥の夫は同じです。自分と子供を作ってくれなくて嫉妬した結果、子供を殺したという設定です。

最後に、半年経っても純孤の怒りが収まってません。紺珠の人間が来たら怒りは収まることでしょう。



以上が設定変更点ですね。ヘカT好きだから早く出したい。

尊朝は元気溢れる少年ですね。霊力は半端ないですが。

次回、月の兎が見た妖怪の山。

ではまた次回、お会いしましょう。

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