東方博麗社〜もし博麗神社に参拝客が来ていたら   作:だぴょん

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はいっ!今回で詠夢が正式に博麗の神主になりますッ!

前後半に分けて書く予定です。

では三人称視点どうぞ。

※先に言っておきます。まだ完結はしないです※

追記

活動報告の方のアンケートもご協力お願いいたしますっ!


博麗の神主〜前日編〜

霊夢「おはよう詠夢。遅かったわね」

 

コン「おはようございます、詠夢さん」

 

緋天「詠夢様、お目覚めですか」

 

針妙丸「詠夢さん、おはよう」

 

正邪「おはよう詠夢」

 

詠夢「…………おはよ」

 

詠夢は下を向いてぶっきらぼうに言う。

 

実はーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日の夜。

 

神社のある一室には、紫、霊夢、詠夢がいた。

 

紫「っていうことで明日、神主任命式の時に龍神が来るのよ」

 

詠夢「龍神様……」

 

霊夢「それで、今回の龍神の要求は何かしら?」

 

霊夢が博麗の巫女に任命された時は、龍神と戦って、勝てという命令だった。というより、歴代博麗の巫女はそれをしてきた。

 

紫「今回は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全能神に勝てという命令よ」

 

紫の声のトーンが一気に下がる。

 

詠夢「ぜ、全能神ゼウス様……?」

 

詠夢は全能神を知っていた。普通、妖怪の賢者や歴代博麗の巫女全員が総攻撃をしてやっと勝てるか勝てないかというレベルの敵である。それを10歳を過ぎたくらいの少年が成し遂げることなど到底無理である。しかし詠夢は決心したようだ。

 

詠夢「分かりました……僕、やります」

 

霊夢「!?」

 

霊夢は絶対に無理だと思っていた。全世界で1番強いのが全能神、2番目が龍神という上下関係で、霊夢は【2番目】と戦ってギリギリで勝ったのだ。

 

紫「わかったわ……龍神に伝える」

 

紫が静かに、部屋を出て行った。

 

霊夢「本当に……やるの?」

 

霊夢は不安そうな顔で詠夢を見つめる。詠夢は決心をして、真剣でどっしりとした黒い目を霊夢に向ける。しかしそれは、心なしか不安そうであった。

 

詠夢「うん。僕、幻想郷を守りたい」

 

幻想郷を守る。詠夢の気持ちは、昔から変わっていなかった。

 

霊夢「死なない、わよね?」

 

霊夢はその瞬間、変なことを聞いてしまったと悟った。しかし詠夢はそれにも動じず、質問に答える。

 

詠夢「戻ってくるよ、多分」

 

霊夢はその言葉に納得していなかった。彼女は自分の義弟の肩をがっちりと掴んで揺らす。涙をボトボト落としながら叫んだ。

 

霊夢「多分じゃなくてッ!絶対って言って!絶対よ!」

 

霊夢が11歳、詠夢が6歳の時に霊夢は母親を失った。その時、心の一部にあった【母さん】が一瞬にして崩壊した。その後、詠夢の助けもあり約半年をかけて心の復旧をした。その【母さん】の領域は、【詠夢】で塞がれていた。それどころかいつの間にか詠夢が自分の一部になりつつあることもわかっていた。だから、詠夢がいなくなると【自分】そのものが崩壊する。それが1番怖かったのだ。

 

詠夢「……わかった。絶対に戻ってくる。約束だよ」

 

姉と弟は小指同士を結ぶ。すると、先ほどまでいなかった人物の声が聞こえた。

 

紫「はあ……霊夢も落ちぶれたものね」

 

紫がいた。紫は扇子で胡散臭い笑みを隠しながら話した。

 

霊夢「ゆ、紫!これは、その……」

 

紫「まずね……」

 

紫は先ほどの胡散臭い笑みを一瞬にして消し、溢れている妖力を全て開放した。顔は真剣そのものだった。

 

紫「貴方には11年も親がいたんでしょう!?それくらいで落ち込まないで頂戴!その復旧に半年だと?ふざけるのもいい加減にしなさいっ!詠夢なんて生まれた時から母親なんてもの、いなかったのよ!」

 

紫は確かに怒っていた。落ちこぼれた霊夢を救おうとした結果なのだろう。その傍で、詠夢は俯きながら小声で囁く。

 

詠夢「……止めて」

 

紫はさらに勢いを増して霊夢に説教する。

 

紫「それに父親に虐待までされていたのよ彼は!父親も母親も知っていて優しく接してくれた貴女に詠夢がどうこう言う権利はないと思うわよ!?詠夢はいつもあんたの前で笑顔だけどね、本当は苦しみで一杯なのよ!前に話してくれたわ!私だけにね!『お姉ちゃんに悲しんでほしくない』って!」

 

詠夢は泣きそうな事実を無理やり感情で抑え、紫に少し声を張る。

 

詠夢「……止めて!」

 

しかし紫はやめる勢いも無く、余計激しくなる。

 

紫「貴女の軽率な半年の行動が彼の人生そのものを変えたかもしれないのよ!?それなのに貴女はまだ母親がああだ父親がこうだと言う権利は無いわ!!彼なんてここに来て7年たったけれどまだ心の修復がしきれていないのよ!その心にぱっくり空いた傷を霊夢や小鈴に頼ることでとりあえず塞いでいる、いわゆる応急処置レベルなの!誰かいないと1人で涙を流していた夜もあったわ!全部霊夢、貴女がしたことなのよ!」

 

紫が言い切ると、詠夢が大声を出した。

 

詠夢「止めろッッ!!」

 

霊夢の瞳からは大粒の涙がボロボロと落ちている。紫も流石に言いすぎたと反省したのか、扇子で必死に顔を隠す。詠夢は怒っていた。……惨めな自分に。

 

詠夢が止めたのは紫がどうだったとかではなかった。過去の自分が嫌いだったのだ。それを全て霊夢や小鈴にぶちまけていたことを今、紫から言われて気づいたのだ。

 

詠夢「ごめん……おやすみ」

 

詠夢は早歩きでそこの襖を閉めた。

 

バタンッ!

 

 

 

部屋に少しの間、静寂が訪れる。

 

霊夢「私……詠夢に謝らないと」

 

紫「明日にしなさいよ?今日は彼の心がもう追いつかないわ」

 

紫は詠夢の状態をわかっていた。今きっと、自分に心をメタメタにされて傷ついているのだろう……紫も少し反省の色を見せていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

霊夢は昨日のことを思い出しつつ、静かに朝食を食べていた。

 

霊夢「……詠夢」

 

詠夢は首を傾げて霊夢を優しい目で見る。

 

霊夢「昨日は……その……ごめんなさい」

 

詠夢「大丈夫、気にしてないから」

 

そんな会話を交わしつつも、刻一刻と決戦の時間は近づいていく……




かなり重い話になってしまいました。

次回、ついに全能神ゼウスと詠夢が決戦!

ではまた次回。

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