東方博麗社〜もし博麗神社に参拝客が来ていたら   作:だぴょん

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東京在住なのに謎の臨時休校でヒャッハー!なだぴょんです。

今回は久々の小鈴登場!

小鈴ファンのみんな、遅くなってごめんね?

では詠夢視点どうぞ。


小鈴の風邪

僕はいつもの通りに博麗神社の仕事をこなしていた。

 

大半が参拝目当てでくるのだが、たまに僕目当てで来る人もいる。

 

ちなみにそのことについて霊夢は、

 

「お金を落としてくれるならなんでもOKよ☆」

 

とか言ってた。あの腋、どんだけお金に執着してんだよ……

 

side out

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三人称視点

 

そして、詠夢が人里に買い物をしに行った時。

 

「え、詠夢…」

 

「あ、小鈴」

 

鈴奈庵の小娘、本居小鈴である。

 

「今日はどうしたの?」

 

「どうしたのって……別に、夜ごはんの買い出しに来ただけだけど?」

 

そこで詠夢はある「こと」に気づいた。

 

「小鈴、ちょっとごめん」

 

そう言って詠夢は飴色の髪で隠れている小鈴のおでこに手を当てる。

 

「あっ……」

 

「やっぱり……」

 

詠夢の予想通り、熱があった。

 

「ご、ごめん」

 

小鈴は元気をなくした顔で詠夢の方を向いて頭を下げる。

 

「じゃあゆっくり休んで……って僕が言うと思った?家まで送るよ」

 

詠夢がそう言うと、小鈴をお姫様抱っこして鈴奈庵まで飛んだ。小鈴がこっ恥ずかしそうにしているけど今は風邪を治すのが優先だ。

 

「ごめんなさい……詠夢に迷惑掛けちゃって」

 

「いいよ。僕は気にしてない」

 

とりあえず小鈴の家(鈴奈庵の裏)に着いてすぐ、小鈴を寝間着に着替えさせて、熱を測る。なぜか小鈴の家に体温計があったから借りた。

 

「39.7℃……ひどい熱。とりあえず布団で休んでな」

 

詠夢は素早く布団を押し入れから出し、小鈴を寝かせる。いつもの鈴のついている髪留めは外したので、完全に髪を下ろしている。

 

「ゴホッ、ゴホッ……詠夢、まだ仕事あるんでしょ?」

 

小鈴は仰向けになりながら上にある詠夢の顔を見て、話し始めた。咳も出て、本格的に悪化し始めている。

 

「小鈴の為ならなんでもするよ」

 

詠夢は優しく小鈴の頭を撫でる。

 

「あ、少し買い物してから、博麗神社に戻って霊夢に事情を話してからすぐ戻る」

 

「……行かないで」

 

「すぐに戻ってくるから、少し待ってて」

 

詠夢は小鈴の家を飛び出して行った。

 

「…詠夢ぅ……行かないでよぉ〜」

 

小鈴の目には涙が溜まり始めていた。

 

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「小鈴ー?ただいまー」

 

「詠夢!」

 

「うわっわわっ!?」

 

小鈴は布団からガバッと起き上がり少し小柄な詠夢を上から抱きしめる。

 

「ほら、布団に行くわよ!」

 

小鈴に案内されて布団に行くと、そこには布団が2つ、並べて置いてあった。

 

詠夢も寝間着に着替えて少し横になった。

 

小鈴と一緒にいた後、タオルを取り替えようと布団を出て歩き始めようとした。すると……

 

「……ん?」

 

誰かに寝間着の裾を掴まれた。というか、誰かというより小鈴である。

 

「行かないで……」

 

小鈴のか細い声が詠夢の脳内に響く。

 

「でも、小鈴が……」

 

「いいの。だから、お願い……行かないで……」

 

小鈴は布団から目だけを出していた。今にも目の下に溜まっている涙が溢れ出しそうだ。

 

「……わかった。今日は絶対にここにいるから」

 

普段は言わないわがままを、今日だけは言ってしまった小鈴。しかし彼女の表情は安堵へと変わっていた。

 

「詠夢……詠夢……!」

 

小鈴は彼の名前を呼び続ける。詠夢は優しく彼女を見つめていた。

 

「泣きたいときは……」

 

詠夢の優しい声が小鈴の心までに響く。小鈴は隣の布団から彼の近くへと寄っていく。

 

「泣いても良いんだよ。ほら、こっち来な」

 

そのまま小鈴は詠夢に抱きついてわんわん泣き出した。それを詠夢は、自分の胸でただただ受け止めるだけだった。

 

「詠……夢………え……い…むぅ〜……」

 

「大丈夫だよ小鈴」

 

詠夢は優しく話しかける。小鈴は熱と泣いていたので火照っていた。

 

「小鈴には、僕がついてるから」

 

詠夢はそれを力強く話した。詠夢は抱きしめている小鈴から手だけを出し、抱きしめ返した。

 

「ねえ、詠夢」

 

少し落ち着いた小鈴が下にある詠夢の顔を見て話した。

 

「ん?なに?」

 

「私のこと、どう思ってる?」

 

小鈴は小声でとても大切なことを聞く。詠夢は少し考えた後に口を開いた。

 

「かわいくて、個性的で。そんな小鈴、僕はとっても良いと思うけどなぁー。小鈴はどうなの?僕のこと」

 

小鈴はすぐに答えた。

 

「私は好きよ!詠夢のこと…」

 

小鈴の声には強い決意が生まれていた。

 

「カッコよくて、勇敢で、大切な人の為なら何でもする。そんな貴方が、私は大好きよ」

 

詠夢の目に涙が浮かんでいた。

 

「ねえ小鈴、僕ね。霊夢のお母さんに言われたの。『大切な人が出来たら、その人の元でたくさん泣きなさい』ってね。だからさ……」

 

詠夢は恐る恐る小鈴に話す。小鈴は高熱がありながらも真剣な眼差しで詠夢を見た。

 

「一回、泣いても良いかな?」

 

小鈴は赤い顔をもっと赤く染めながら、

 

「私は、いつでも良いわよ。貴方は、私にとって……かけがえのない存在だもの」

 

すると、今度は小鈴の胸元で、詠夢が泣き出した。

 

「うわぁぁぁーんっ!小鈴!ありがとね!」

 

詠夢はこの6年間、一度も泣いてこなかった。今、その6年分の葛藤や悲しみが一気に出てきたのだ。

 

「詠夢ったら……もう、今日は私に全部ぶつけなさい。ちゃんと受け止めてあげるから」

 

「グスッ…うっ……うう……あぁ……うわぁぁぁんっっ!」

 

詠夢は泣いた。精一杯泣いた。小鈴はそれを見て少し熱が下がったようだ。

 

これが詠夢の【強さ】である。

 

6年間。

 

いくら悲しくとも、痛くても、苛立っても。

 

詠夢は全く泣かなかった。

 

そのストッパーが、小鈴の前で外れたのである。

 

「こ……す…ずぅ〜………グスッ」

 

「どう?落ち着いた?」

 

小鈴の問いに、詠夢は小さく首を縦に振る。

 

「じゃあ、寝るわね。おやすみ」

 

「……おやすみ。早くよくなってね、小鈴」

 

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勢いよく小鈴の部屋の扉が開かれる。

 

稗田家当主にして小鈴の親友、稗田阿求である。

 

「小鈴!大丈夫ーーー」

 

親友が見たのは、2人同士、1つの布団で抱き合って寝ている親友とその恋人の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフッ……お大事に、小鈴」




今回は甘々になりましたね。そしてまさかの詠夢と小鈴の展開です。

ではまた次回。

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