東方博麗社〜もし博麗神社に参拝客が来ていたら   作:だぴょん

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前書きは特になし。

これはオリキャラ扱いかな?

では三人称視点どうぞ


鈴奈庵と子狐の想い

鈴奈庵。

 

人里にある、普通の本から妖魔本まで幅広い品揃えのある貸本屋。

 

そこには1人の小娘が店番をしていた。

 

名前は本居小鈴。

 

そう、彼女はとある1人の少年に恋する乙女だったーーー

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

朝10時。

 

暖簾を掛け、開店の時間である。

 

そこにやってきたのは……

 

「いらっしゃ……詠夢くん!」

 

そう、彼こそが小鈴が恋という感情を抱いている、博麗詠夢。あの博麗の巫女の弟である。いつもの神主衣装ではなく、Tシャツにジーンズというラフな服装だった。

 

「おはよ。手伝いに来たよ」

 

「ありがと!」

 

小鈴は満面の笑みでお礼を言い、詠夢はせっせと作業を進める。

 

まず2人がするのは、本の整理である。昨日返却された本を棚に戻したり、新しい本をおろしたりである。

 

小鈴は早く終わらせて詠夢と話したいという衝動を抑え、黙々と仕事を進めていく。

 

そして全ての作業が終わったその時。

 

「小鈴ー!」

 

「あ、阿求!おっはよー♪」

 

「なんで貴女そんなに上機嫌なのよ……あ」

 

阿求の脳裏に博麗詠夢という人物が浮かび上がる。それに彼は人の役に立つのが取り柄と言っていた。

 

「詠夢さんっ!幻想郷縁起に書かせてくれませんか?」

 

「また今度ね。今日過ぎたら1ヶ月くらい休みはないと思うけど」

 

「まあ……正直博麗神社のあの忙しさは異常だものね……」

 

「まぁそうだねぇ………最初の頃は毎晩あの霊夢が大泣きしてたもんね……慰めるのがすっごい大変だったなぁ」

 

詠夢と阿求が入口付近で立ち話をしていると、小鈴がやってきた。

 

「ほら、2人ともカウンターに来て!ここだと迷惑だから」

 

小鈴は2人をカウンターの方へ促し、話を始めた。霊夢の妖怪退治のお土産話や、詠夢のお土産話。いろいろな話をしているともう太陽は真上まで来ていた。

 

「じゃあ僕がお昼「私がやるっ!」え?じゃあ……」

 

詠夢が引き下がろうとしたその時、横からとてつもない視線を感じた。阿求だ。

 

阿求の考えがわかった気がした。

 

「じゃあ、一緒にやろうよ」

 

「え……?う、うん!」

 

阿求は笑顔でこちらを見ていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

そしてお昼ご飯。

 

「はい炒飯でも作ってみた」

 

詠夢の得意料理の一つである。詠夢が料理するとお米はとてもパラパラ、塩加減も絶妙でとっても美味しいと巷の噂にもなっているらしいが、その味を知っている者は幻想郷中に数人しかいないという。

 

そして小鈴はとびっきりの笑顔で

 

「うん!おいしい!」

 

と言いながら食べていた。阿求も

 

「こんなの食べたら自分で作った料理が食べられなくなるわね」

 

と言いながらもとても美味しそうに炒飯を頬張っていた。

 

 

 

「「「ごちそうさま!」」」

 

すると、詠夢は片付けを始める。小鈴と阿求はカウンターへと戻っていったその時。

 

「おーい本を出せぇっ!」

 

叫んだそいつは小鈴にナイフを向けていた。小鈴はあたふたしていた。緊張と焦りが一緒に出てしまい涙を浮かべていた。

 

「ほら早く出しやがれっ!」

 

その時である。

 

「てぃっ!」

 

その声とともにナイフは床に叩きつけられた。そして黒のパーカーにフードを被った彼の首近くにはお祓い棒があり強盗は動けずにいた。詠夢である。

 

「はぁ……本当に情けない」

 

詠夢はいつもより声のトーンを落として続けた。

 

「貴方ね……こんな小娘にナイフ突きつけて……何をしたいの?子狐さん」

 

子狐は黙っていた。詠夢は少し心配気味に優しい声で子狐に話し始めた。

 

「どうしたの?何か話したいことがあれば遠慮なく言ってね」

 

子狐は口を開いた。実は親が博麗の巫女に退治されていなくなってしまったこと、それによりまともにご飯も食べられなかったこと、その結果このように強盗という手段に出てしまったことを話した。

 

「霊夢がねぇ……でも、強盗をしようとしたのは罪。とりあえず慧音先生のところへ行かないとね」

 

そう言い、小鈴にもちょっと出かけてくると言って鈴奈庵を出た。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

寺子屋。ある教室では、詠夢と慧音、子狐が座って話をしていた。

 

「っていうことらしいんですけど、慧音先生、何か手段はないですかねぇ?」

 

「うーん………じゃあ、もういっそ博麗神社に住ませてあげればいいんじゃないか?よかったら私も同行する」

 

「え………いや、嫌です!」

 

子狐が叫んだ。

 

「あんな怖い人と一緒に暮らすなんて………無理ですよぉ………」

 

子狐はおびえていた。昔は暴君巫女と言われ、弱い妖怪からは恐れられてきたからだ。

 

「最近、霊夢はとっても優しくなった。人里の警備をしている者としてそれは保証する」

 

「そ、そうですか………そこまで言うならお願いしようかな……」

 

子狐は少し安堵の表情を浮かべていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

博麗神社。

 

「嫌よ」

 

霊夢の口から出た最初の言葉だった。詠夢は反発した。

 

「別に、それくらいいいでしょう?」

 

「嫌よ!なんで私がこんなの育てなきゃいけないのよ!」

 

「霊夢!その考え方は間違っている!」

 

慧音は少し怒鳴ったように聞こえた。慧音はすぐに続けた。

 

「お前、詠夢がここに来た時のことを覚えているか?」

 

霊夢ははっとした。

 

何もできない詠夢を私が育てると奮発していたことを彼女は思い出した。そのあと、詠夢は立派な少年へと育っていった。実際、詠夢は博麗神社においてとても重要な存在になりつつある。

 

「わかったわ。ここに住んでも良いわよ。但し!しっかりと神社の仕事はやってもらうからね!」

 

「はい!ありがとうございますっ!」

 

子狐は涙を流しながら詠夢に抱きついた。

 

「よかったね………じゃあ、早速買い出しに一緒に来てもらうけど、いい?」

 

「はいっ!あと、僕の名前はコンですっ!」

 

「そうなんだ!じゃあコン、行こうか」

 

「はい!」

 

その夜、他の人間や神社の裏の大木に住む三妖精などから歓迎されたという。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

数日後

 

彼はとても仕事の習得が早く霊夢も感心していた。しかし…

 

ついに詠夢が危惧していたことが起きてしまった。

 

詠夢は妖怪退治から帰ってきて、言葉を失った。

 

「コン!どうしたのその火傷!も、もしかしてーーー」

 

詠夢は宴会の酒の席で霊夢にコンは妖怪狐だと言ったことを思い出した。コンは酷く火傷を負っていた。

 

詠夢は考える暇もなく、霊夢に

 

「永遠亭に行ってくる!」

 

と言いすぐにコンを抱えて空へ飛んでいくのだった。

 

 

 

 

 

永遠亭。

 

永琳は部屋から出てきて

 

「うーん………2日は絶対安静ね」

 

「はい……すみませんでした」

 

「まあ……霊夢にも非があるわけだし……今回はきっと大丈夫よ」

 

そう永琳には言われたものだが、詠夢はどこか納得していなかった。

 

 

 

「輝夜ー!入るよー」

 

詠夢は永遠亭の輝夜の部屋へと行っていた。相談をしようとしていたのだ。

 

詠夢は状況を説明した。

 

「っていうことで……もうコンに会う顔がないよ……」

 

「それは違うと思うわよ」

 

輝夜は自信を持って詠夢へと話しかけた。

 

「私もここ、幻想郷に来てから行き場を無くした鈴仙を拾ったわ。でも、永琳が少しこき使いすぎてね。それでも鈴仙は逃げなかった。永琳もそれを反省して、しっかりと仲直りをして…。今も仲がよさそうでしょ?」

 

「そうだね。良いこと聞いた。ありがとう!コンに会ってくるよ」

 

「ええ、そうするのが良いと思うわ」

 

 

 

 

 

 

 

「コン〜?」

 

詠夢はドアをノックし入る。

 

「あ、詠夢さん!」

 

「ごめんねコン。僕が未熟だったばかりに怪我させてしまったね。本当に謝るよ」

 

「ええ、でもボクにも非があるので………ところで、赤の他人なのになんで拾ってくれたんですか?」

 

「ああ、それはねーーー」

 

詠夢は自分がもともと外の世界の人間だったこと、捨てられて紫に保護されたこと、そこを霊夢に引き取ってもらい詠夢という素敵な名前をもらったことを話した。詠夢の父親の狂気のことについては話さなかったが。

 

「だから、もともとは違っても、コンは、今は僕や霊夢を始めとした博麗神社のメンバー。すなわち家族だから……」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

コンは泣いて詠夢に抱きついた。それは希望に満ち溢れた顔だったという。

 

そうして博麗神社に新しい顔が現れたのであった。




いまの霊夢は詠夢のお陰で成り立っているといっても過言ではなくなってきました。

ではまた次回。

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