東方博麗社〜もし博麗神社に参拝客が来ていたら   作:だぴょん

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今回は、書いているだけで胸が痛む、詠夢の過去のおはなし。

※今回は少しグロいかもなので苦手な人はブラウザバック推奨です。

では、霊夢視点どうぞ


捨てられた弟

「詠夢の過去を聞かせて欲しい?」

 

私は戸惑っていた。詠夢には絶対秘密を条件に過去のことを話してくれていたのだ。

 

「詠夢くんがどうしても嫌だというので……霊夢さんなら知っているかなって思って……」

 

小鈴ならそんな事しないだろう。私は確信した。

 

「詠夢に、この事を秘密にしてくれるならね」

 

「わかりました。絶対に秘密にします」

ーーーーーーーーーーーーーーー

「じゃあホントに始めるわよ?」

 

「ええ。心の準備はできているわ」

 

「大丈夫です」

 

私の心の準備ができていなかった。それを知られないようにするために少し伸ばしていた。

 

私は深呼吸をしてから、紫と小鈴に話し始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

ある普通の家庭に、ごく普通の男の子が産まれた。

 

しかし、その男の子はその後4年もの厳しい人生を送ることになる。

 

「お前は……私の実験道具だ……フヒヒヒヒヒ」

 

父親がそう叫んだ。彼には【狂気】が取り憑いていた。

 

 

 

母親は詠夢が産まれた瞬間に死んだらしい。詠夢のせいで。

 

父親のその発言によって、詠夢はこのあと壮絶な人生を歩む事になる。

 

 

 

 

東京、そこに立つふつうの一軒家。

 

しかし、暮らしは普通ではなかった。

 

「これも違う……さあ、次だ、次」

 

父親は薬を飲ませた奴をナイフでグサグサと刺した。

 

詠夢はその記憶を残し、手足や内臓までに隅々に至るまで修復する。

 

父親はまた新しい薬を開発し、詠夢に飲ませた。

 

「これも違う……さあ、次だ、次」

 

また詠夢をナイフで刺し、修復する。

 

修復しなければいいのではという考えも最初はあったらしいのだが、そうすると

 

「お前……死にたいのか?!」

 

と脅され、逆に余計ナイフで刺されてしまうらしい。

 

「さて、今日はここまでだ、そんな悲しい顔しても飯はやらないぞ?」

 

そう、ご飯は1日1食、パン一枚だけ。金に困っていた詠夢の父親は薬を作って一獲千金を夢見たという。詠夢はその実験台となっていたのである。

 

「お父さん……それ、分けて…下さい」

 

「わかったよ」

 

「あ、ありがとうござ

 

「ハッ!お前なんかにやる訳ねーだろ!」

 

父親はざまあみろ、と言わんばかりにステーキを切って食べていたという。

 

そんな日常が約3年続いたという。最後の方は1日に100回以上殺されたという。

 

そして、詠夢の父親は、

 

「新薬ができないのは全てお前のせいだっ!だから……

 

お前を捨ててやる」

 

という事で、まるで貧しい家庭の悲劇の子みたいな設定の手紙を書き上げ、詠夢を東京の空き地に捨てたという。

 

 

 

その後の事はあまり覚えていないらしく、気づいたら幻想入りしていて紫に保護されたという。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

「っていうのが、詠夢の幻想入り前の話よ」

 

「詠夢くんの笑顔の裏にはそんな事があったなんて……」

 

小鈴は涙を流しながらそう呟いた。

 

「あんな無邪気なのに……過去を捨てたくなる理由もわかるわ…」

 

紫も扇子で必死に何かを隠しているのだろう。悲しそうだった。

 

「そ、そうだ……詠夢くんのこと、なんで霊夢さんだけに話していたんですか?」

 

「うっ……そ、それは…」

 

「僕の傷を見たから?」

 

後ろから声がした。それと同時に、居間の襖が開いた。

 

詠夢だった。

 

「お姉ちゃん……なんでよ」

 

「え、詠夢……」

 

「お姉ちゃんのバカァーーーッ!」

 

詠夢はそこからいなくなってしまった。私は大変なことをしたと悟った。

 

「ねえ霊夢、詠夢の傷って何?」

 

私は紫からの質問に答えることさえできなかった。

 

私は夢中で詠夢の部屋へと駆けて行った。

 

「詠夢…?」

 

そこには詠夢はいなかった。だとしたら……家の外!

 

私は外に出た。詠夢を傷つけてしまった。詠夢の心を傷つけてしまったら終わり、文字通り心も体もズタボロになってしまい、情緒不安定になってしまう。きっと過去を断ち切ろうとしている詠夢の、必死の過去への反逆なのだろう。

 

「詠夢………」

 

私は必死になって夕日を浴びる幻想郷を駆け回った。

 

 

 

 

しかし、どこにも詠夢はいなかった。

 

「だとしたら……妖怪の山……」

 

妖怪の山。妖怪が多く住まう、危険な山。

 

昼は天狗の巡回、夜は妖怪がうようよいるため、入るのは困難とされている。

 

「あ、椛!」

 

私は椛に事情を説明した。

 

「詠夢さんが妖怪の山に……危ないですね」

 

「椛、詠夢はどこかしら」

 

「詠夢さんは……へ?」

 

「ん?も、椛?どうしたの?」

 

「危ないです!とにかく、急ぎましょう」

 

私は椛の誘導のもと妖怪の山へと進んでいった。

ーーーーーーーーーーーーーーー

詠夢視点

 

僕は……もう……戻れないよ…

 

霊夢……ごめん……

 

「はっ!ただの人間か……おーい!こいつを喰っちまおうぜー」

 

何か声が聞こえた。ただしもう僕には関係ない。

 

そこにいた妖怪は好き勝手に僕を切り裂いていった。しかし、もう慣れていた。

 

4歳ごろと同じ感覚。

 

そして……修復。

 

「なんだこいつ!?ふ、復活した!?」

 

「さあ、パーティーの始まり始まり〜」

 

とりあえず、目の前の奴等を切る。

 

切る。

 

切る。

 

なーんだ、もういなくなっちゃった。つまらない。

 

「詠夢!正気に戻って!詠夢!」

 

「もーうっさいなぁー」

 

切る。

 

殴る。

 

蹴る。

 

夢想封印。

 

なぁーんだ、倒れちゃった。つまんない……

 

つまんない……

 

つまんない……

 

つまら…ない……れ、霊夢!?

 

僕は顔を青くした。

 

血まみれの霊夢が僕の目の前で倒れている。

 

もしかして……僕が……!

 

僕は即座に回復スペルを詠唱したが、霊夢は動かない。

 

「う、うそ……だよね…?」

 

とりあえず、永遠亭へ行かないと!!

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

数日後、博麗神社にて 霊夢視点

 

「ん〜?ん、詠夢いでででで!」

 

私の体に激痛が走った。な、何があったのかな?

 

少なくとも、ここは博麗神社……っぽいわね

 

「あ、お、お姉ちゃん!」

 

詠夢は飛びかかってきた。

 

私の体に激痛が走った。

 

「いだいいだいマジでやめてもう痛いから」

 

「あっ……ご、ごめん」

 

「それで、私はどうなったんだっけ…あの後…」

 

「実はーーー

 

〜少年説明中〜

 

……で、2日間くらいずっと寝ていたってことだったの。ホント、ごめんなさい、肋骨とか背骨とか頭蓋骨とか折っちゃったりして」

 

いつも笑顔の詠夢が元気を無くしてる。なんか気が狂うなぁ……

 

「大丈夫よ、でも、私の身の回りの世話、全てやってもらうわよ」

 

「そ、そのくらいやるっつーの」

 

詠夢は少し顔を赤らめながら頷いた。

 

「じゃあ、ちょっと起きぃだだだだだだだ!」

 

「お姉ちゃん、無理しすぎだよ」

 

「わかったわ、じゃあ、お願いね」

 

博麗神社に、また【日常】が戻りつつあった。




うーん、僕にしては少し文字数が多かった気がする

そんで、宿題の追い込みの関係上少し投稿頻度が落ちます。

それではまた次回!

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