トンガリ帽子の復讐者と小さい竜の迷宮物語 (リメイク開始)   作:ケツアゴ

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やっと一章クリア リョフが頼もしかった ピーキーだけど

そしてキヨヒメついてきた!? 皆同じ ランダム?


階層主

「あのアホが居なくなった事に乾杯や~!」

 

 未だ続くロキ・ファミリアの酒宴。ネルガルに掛けられた呪いを聞いたロキは嫌悪感を丸出しにした後、それを振り払うかの様に酒宴を再開する。その席にはネルガルとザハクまで巻き込まれていた。

 

『かぁ~っ! やっぱオラリオは良い酒が集まるなっ!』

 

 ジョッキに並々と注がれた酒に顔を突っ込んで飲み干していくザハク。先程からこの場の誰よりもハイペースで飲み続け、既に体積を遥かに超える量を飲んでいる。おとぎ話でも竜は酒が好きだとされているが。初めて見る光景にロキ・ファミリアのメンバーも驚きを隠せない様子だ。

 

 そんな中、ネルガルはアイズと並んで料理を口に運ぶ。そんな中、先程から横のネルガルをチラチラと見ていたアイズはフィンに話を振った。

 

「……フィン。このこの前の主神ってどんな神様だったの?」

 

「……一言で言うならば”最悪”だね、あの神に関する話題は普段は口の軽い神々でさえ口を噤むんだ」

 

 フィンは話すのも嫌なのかネルガルの方を気にしながら言い淀む。だが当の本人は特に気にした様子もなくアイズの方を向いた。

 

「あの馬鹿神は争い事と他人の不幸が大好きで、眷属に必ず呪いを掛けてるんだ。それも、哀れんだとある神が天界に帰ることを承知で神の力を解放しても解呪出来ない程の強力な奴をね。それを神の力を封じられていても使えるんだから悪質だよね~」

 

「……なんでそんな神様の眷属になったの?」

 

「あの馬鹿の眷属になった理由? 簡単だよ。父親殺しの濡れ衣を着せられて殺されそうになった所を引き取って貰ったんだ。だから感謝もしているよ。目的の為に必要な力を手に入れる手助けをしてくれたしね」

 

 ネルガルが何でもない事の様に語った過去に席が静まる中、ネルガルは杖を片手に席を立った。

 

「ん? もう帰るんか?」

 

「違うよ? 一休みしたからダンジョンに戻るんだ。僕の目的達成の為に必要な力を手に入れるには時間が幾ら有っても足りなからね。ザハク、行くよ」

 

『ちっ! 仕方ねぇなぁ。んじゃ、俺達は此処で失礼させて貰うぜ』

 

 そのまま代金をミアに払うと酒場から走り去っていくネルガル。ロキはその背中をジッと見つめると面倒くさそうに後頭部を掻いた。

 

「……なぁ誰かあの阿呆餓鬼を尾行してくれへんか?」

 

「他のファミリアとは基本的に不干渉だよ、ロキ」

 

「分かっとんやけど、あの阿呆とウチとは昔はダチやったからな。そのダチの不始末やさかいちょっと気になるんや。……あと、出来るならスカウトして来てくれんか? 阿呆やけど才能を見いだすのは一流やったからな」

 

「……では、私が行こう」

 

 名乗りを上げたのは意外な人物。王族(ハイエルフ)にして幹部のリヴェリア。生真面目な彼女がその様な仕事に志願する事にロキでさえ驚いていた。

 

「あの少年の帽子とローブ、そして連れていた竜に少し思い当たる所があってな。少々確かめたくなった」

 

そう言って酒場を後にするリヴェリア。店先に簀巻きにされたベートが吊されていたが見なかったことにした。

 

 

 

 

 

 

 

(しかし、引き受けはしたものの……あまりいい気分ではないな)

 

 他のファミリアの冒険者の後をつけて戦いを盗み見する様な真似に対して嫌悪を感じながらもりヴェリアはネルガルの尾行を行う。距離が離れているので詠唱が聞こえないが、おそらく短文詠唱と思われる速度で発動した四属性の魔法は魔物の胸部を正確に撃ち抜き核である魔石を破壊していく。まるで邪魔だから殺していると言わんばかりに前に現れた魔物を殺し次の階段を目指すネルガルの進む速度は速く、短時間で中層までたどり着いた。

 

 

「……手助けする準備でもしておくか」

 

 本人が漏らした話ではレベル2らしいので単体相手なら問題ないが、この階層から連携を行う魔物が多く出没する。流石に子供が無残に殺されるのは気に入らないのかリヴェリアが杖を構えたその時、ネルガルの前に大量も魔物が出現した。前方の壁や天井から現れたのは総勢十数体のヘルハウンド。この中層で多くの冒険者が命を落とす要因だ。

 

「いかんっ!」

 

「……ブースト、形状変化、クワトロカノン」

 

 そしてリヴェリアが慌てて飛び出そうとした時、ネルガルの前方に巨大な氷塊が出現した。天井ギリギリまで届く大きさの氷の形状はまるでドリル。側面に無数の刺がついたそれは回転しながら前方へ突き進み、装備品ごと冒険者を灰にする炎をものともせずにヘルハウンド達をすり潰していった。その威力は長文詠唱クラス。それほどの威力を詠唱を抜きにして放った事にリヴェリアが驚く中、ネルガルは下層へと続く穴に飛び込んだ。

 

(……あの魔法、少し興味が沸いてきた。悪いがもう少し観察させてもらうぞ、少年)

 

 急いで後を追おうとするリヴェリアだったが、穴は急に閉じてそれ以上の追跡を阻む。仕方なしに階段を目指すリヴェリア。彼女のレベルは5なので魔物は障害にならなかったが数は多く、十七階層まで来てようやく戦っている音を察知してその姿を捉える事が出来た。

 

 この階層には階層主と呼ばれる強力なモンスターが一定周期で一体現れる。そのレベルはその周辺よりも2は上とされており、この階層の階層主の名はゴライアス。とてもレベル2に成立ての者が敵う相手ではなく、リヴェリアの目に映ったネルガルはボロボロだった。息を切らして膝を付いた右足は折れており左腕も力無く垂れ下がっている。

 

『グ、グォォォォォォ……』

 

「……ありえん」

 

 その光景を見た彼女は思わず呟く。遥かに格上のはずのゴライアスはネルガル以上にボロボロだったからだ。尻餅を付いたその体には無数の焦げ跡ができ、左目には氷の槍が深々と刺さり左腕の肘から先が無くなっている。互いに瀕死という中唯一無傷なのはザハクのみ。傷ついたネルガルを助けるでもなくただ静観を続けている。

 

『オオオオオオオッ!!』

 

 そして決着の時が訪れる。ネルガルの杖に魔力が集まり、詠唱が始まった。

 

「目覚めよ断罪の王よ、君臨せよ非情の王よ。我が前に存在するは其方が忌み嫌う罪人なり。例え名を汚されようと己が正義を貫き通した正義の王よ、その信念の元に我に力を貸したまえ。たとえこの身が血に染まり、たとえこの名が怪物に落とされ様とも我は構わぬ。我が信念の為ならば汚辱に塗れようとも耐え抜こう! 其方と我の信念の元、我が前に立ち塞がりし罪人に裁きを降さん! 我は正義の代行者! 我は神の下僕なり! 我が前に立ち塞がりし悪は皆神への供物と知るが良い! 王と我が敬愛する偉大なる神よ、これなる生贄の血潮を飲み干し、その魂を喰らい給えっ!」

 

(超長文詠唱だとっ!?)

 

『グ、グォオオオオオッ!!』

 

 ゴライアスも危険性に気付いたのか倒れ込むようにして拳を振り落とす。その時、ネルガルの手に一本の槍が出現した。

 

「供物は天高く掲げ、飾るべし! とくと味わえ、裁きの槍を! 串刺城塞(カズィクル・ベイ)!!!」

 

 地面から現れた無数の槍がゴライアスを串刺しにし、胸部の魔石を貫いて砕く。核を破壊された事でゴライアスは灰になり、その場にはドロップアイテムである巨大な牙が残された。

 

「……ちょっと疲れたかな。ザハク、後お願い」

 

 そう言って仰向けになって瞼を閉じるネルガル。リヴェリアは潮時と判断して物陰から姿を現した。

 

『やぁっと出て来たのかよ。バレバレだぜ、ハイエルフさんよぉ』

 

「……気付かれていたか。いや、すまない。この侘びは後で正式にするとして、今はこの子の治療をしよう」

 

 ネルガルに近づき回復魔法を使い出すリヴェリア。先程遠目に見た時よりも遥かに傷が軽い事に違和感を感じながらも治療を始めた。

 

「……所で無作法と分かっていながら聞きたい。この子が此処まで力を求める復讐相手は誰だ?」

 

『けっ! 大手ファミリアさんは好奇心旺盛なこったな。……誰、じゃねぇ。何処、だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この馬鹿が復讐しようとしてんのはラキアだ。この餓鬼は国一つ相手にしようとしてやがるんだよ』

 

 

 




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