トンガリ帽子の復讐者と小さい竜の迷宮物語 (リメイク開始) 作:ケツアゴ
バレンタインイベント復刻ないのかな? えっちゃん・・・・
セミ様、解析は当てにならん 強そう
腕目掛けて振るわれる槍を拳で迎え撃つ。衝撃が内部からの爆発を受けて損傷した内蔵に響き、思わず膝が崩れ落ちたのを小人族の冒険者は見逃さなかった。
「ぐっ!」
脇腹に槍で薙ぎ払いを叩き込まれ無様に地面を転がる。起き上がろうとするが腕に上手く力が入らない。普段ならば『彼女』の力が込められたこの体に通じるはずもない毒が先程食らった魔法によって増幅され体を蝕んでいた。
(Lv.6といった所か。そしてあの小僧と……小僧の帽子の中に居る何か。今は傍観してるが……)
小人族のサポートをする様に風を纏ったナイフが投擲され非常に鬱陶しい。だが、この事態を招く原因になった迂闊な行動を思わずしてしまう程の何かが居る以上は無暗に攻勢に出られない。
「……一旦引くか」
此処には探し物をしに来たが、彼女を守るのが私の役目である以上は無理は禁物だ。だが、そう簡単に引かせては貰えそうにないな。チラリと視線を送れば食人花達は冒険者達によって倒されて行く特にアマゾネスの二人が群れの中心で暴れ、エルフ二人が大規模な魔法で数を大幅に減らすので念を入れて数を用意したが長くは持ちそうにないな……。
「悪いが逃がす気はない。『アリア』やあのモンスターについて話を聞きたいしね」
「団長、ザハクが彼奴から魔石の気配がするって言ってるよ。完全に人の姿をしたモンスターか……人間の体に寄生して乗っ取るタイプかもしれない。……手足切り落として聞き出したら魔法で吹き飛ばした方が良いかもしれないよ」
小僧の発言に小人族の目付きが変わり槍を持つ手に力が籠る。先程までは本気ではあったが殺さずに捕らえる気であったが今からは殺しに掛かって来るだろうな。思わず冷や汗が頬を伝った時、街の中心部で異変が起きた。
「な、なんだっ!?」
「モンスター共が合わさって……」
聞こえて来る雑音、そして食人花が一つになっていく中、辛うじて見えた今回の探し物の存在。どうやら目的達成は無理だが『彼女』の恩恵か運が向いてきたようだ。
「あれは深層で見た……」
小人族の意識が逸れた瞬間、全力で後ろに跳躍しながら指笛を吹く。まだ取り込まれていなかった食人花が殺到し、それに釣られる様に宝玉に寄生された個体もやって来た。さて、このままなら逃げ切れそうだ。
「仕方ないなぁ。……ザハク」
『あいよー』
耳に飛び込んできた小僧の冷徹な声、それ当時に何者かの楽しそうな声が聞こえ、私の腹は大きく抉り取られた。血肉を撒き散らしながら湖面へと落ちていく中、私の意識は閉ざされる。くそ、この様な所で死んでたまるか……。
「……仕留めたかい?」
『寸前でガス欠だ。ただの人間なら兎も角、ありゃギリで助かるかもな。情けねぇなぁ、ネルガルよぉ。ケケケケケ!』
結構魔法を使ったし、精霊の魔法は僕が使うには燃費が悪いからか脱力感が並じゃない。膝をつく中、嘲笑するかのような声を上げながらザハクは僕の帽子の中に潜り込む。ああ、本当だ。こんな事じゃ復讐なんて成し遂げられない。自分に腹が立つよ。
「ネルガル、無理をしない方が良い。アレは僕達で仕留めよう」
迫って来た食人花は全て一つになって目の前に居る。女体型のモンスターの上半身に球根みたいな下半身が存在し、無数の食人花が根っ子のように生えていた。魔石は上半身かな?
「はいはい、無茶は駄目だよー?」
団長には下がるように言われたけど精神力枯渇が起きるまで戦おうとした時、ティオネさんに担ぎ上げられる。流石に前衛担当の第一級冒険者、それもパワー馬鹿のこの人相手に抵抗は無駄だと分かっているから仕方なく大人しくしていようか。
「彼奴は魔法に反応する。フィン、抑えきれるか?」
「ちょっと無理かな? 大き過ぎる」
巨大というのはそれだけで武器だ。大重量の攻撃を高所から叩き落した際の威力は計り知れないからね。
「ティオネさん、逃げるくらいは出来るから彼奴の相手を……」
流石にもう大規模な魔法は無理だけど走るくらいの余力は残っていると伝えようとした時、女体型のモンスターがクルリと反転して街の端へと向かって行く。
「しまったっ! 誰かが詠唱を……」
前聞いた話の同型と同じならあのモンスターの強さは第一級冒険者が複数で掛かるべき。なら、それ程強くないのが襲われれば一溜りもない。だから団長達も焦りを見せたけど……。
『是は刺し穿つ死棘の槍』
あっ、大丈夫だ。途中から聞こえて来た詠唱遠目で見えるあの姿を僕は知っている。……彼奴も居るのかぁ。
『ゲイ・ボルク!!』
遥か彼方から突き出された深紅の槍、それは正面から女体型のモンスターの心臓、そして魔石を突き穿った。多分に漏れず灰になっていく巨体。相変わらず凄い魔法だなぁ、アレ。
……詠唱を僕に知られないようにしてたから使えないんだよなぁ。
「……あの程度の雑魚に何やってやがる」
「いやいや、別の敵が居たんだよ、クーフーリンさん」
モンスターを仕留めた後、真っすぐ此方にやって来た魔法の使い手は僕を見るなり呆れたような不機嫌そうな声を掛けてくる。
鋭く尖った八重歯に剥き出しにした前面に施された赤い入れ墨。どこからどう見ても悪人のこの人は僕の元仲間、名をクーフーリン・オルタ。僕が入団する前、オラリオから姿を晦ませる前からレッドライダー・ファミリアで副団長を務めていたLv.6の戦士だ。
「戻ってたのか。知らなかったよ……」
当然、団長とも知り合いみたいだけど警戒した様子。まぁ表立って悪事は働いていないけど陰で色々やってたらしいし、性格も見た目も凶暴だから仕方ないよね。二つ名が『
「あぁ? 俺が帰って来るのにいちいちテメェに知らせる必要なんざねぇだろ」
流石に噂になるはずだから検問の人を脅して騒ぎにならないようにしたんだなぁと思っていた時、下から視線を感じる。まだティオネさんに担がれたままの僕を見ている奴がいた。
「ぷぷっ! 情けない姿ですね」
「はっ? 相変わらず貧相な情けない体のお前に言われたくないよ。っていうか状況くらい察したら? 相変わらず馬鹿だね」
「馬鹿じゃあ~り~ま~せ~ん~! そんな状況になること自体が情けないって言っているんです。はい、論破」
「……貧乳チビ。相変わらず無理をした服装だよね。鏡見たら」
「……根暗」
「「……やる気(ですか)? 上等だ(です)!!」」
一応此奴の紹介もしよう。このチビで頭悪い癖に頭良い振りをするのが好きでツルペタストンな馬鹿の名前はジジャリィ・オルタ。クーフーリンさんの妹だ。
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