トンガリ帽子の復讐者と小さい竜の迷宮物語 (リメイク開始)   作:ケツアゴ

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力の代償

 食堂での一件が起きて直ぐ、ロキは最高幹部であるリヴェリアと共にアイズを連れてロキの部屋へと向かう。ネルガルも一緒に来るように言われ、今からアイズに苦言が呈されるといった瞬間、ネルガルが口を開いた。

 

「別に殺され掛けたくらい気にしてないんだけどなぁ」

 

 床に正座させられたアイズをロキが睨む中、ネルガルはそこまで怒る理由が本当に分からないという顔をして呟く。その声を聞いたロキは絶句した表情になる。

 

「お前……」

 

「それに最初から可能性を気にしていたよね。だからロキ様はアレほど念押ししてたよね」

 

 神は人の嘘が分かる。だからこそネルガルが本気で言っているのが分かった。まだ十歳の子供が殺され掛けた事を気にしないと口にする。ロキにはその心理が理解出来なかった。

 

「……どういう事だ?」

 

 同じファミリアの団員の命を奪いかけたという事に本気で怒っていたリヴェリアは説明しろとばかりに二人に視線を向ける。だが、ロキは少し話し辛そうに口籠り、ネルガルが平然と口を開いた。

 

「そもそもザハクを召還した魔法『サモンサーヴァント』の発動には触媒・代価・呪いの三つが必要なんだ」

 

「……待て。呪いだと。お前、呪われると分かっていて魔法を使ったのか?」

 

「うん。必要だったからね」

 

 ネルガルの説明を遮ったリヴェリアの声には怒気が含まれている。ロキから聞いた話では魔法を使ったのは五歳の頃。この怒りは本人ではなく主神への物だろう。それが分かっているのかいないのかネルガルは怒気に怯えた様子もない。Lv.6である彼女の怒りは大の男ですら怯ませるに十分にも関わらずだ。

 

「……続けろ」

 

「呪いはある目的を達成するまでそれに必要な感情が消えないってだけ。僕のスキルとの相性が良いから問題はないよ? 代価は僕にとって大切だった人達に関する記憶だよ」

 

「……なんで?」

 

 この時になって先程から黙っていたアイズが口を開く。ネルガルが平然と言っている内容が心底信じられないといった顔でだ。実際、彼女は信じられないでいた。自分にとって大切な人の記憶、両親との思い出は何よりも大切だから。だが、その質問を聞いたネルガルもまた理解に苦しむといった表情になった。

 

「え? だって死んでるし。人間死んだら終わりでしょ? 居なくなった相手を想うなんて無意味じゃないか」

 

 それはこの場の全員を絶句させるには十分すぎた。何を代価に支払ったかを聞かされているロキでさえ言葉が出ない中、ネルガルは説明を続ける。触媒についてだ。

 

「召喚する条件として対価を払い、受けた呪いと触媒として使ったモンスターの体の一部で使い魔の強さが決まる。ねぇ、知ってる? 人類の三大悲願の最後の一匹である黒龍は世界の各地に鱗を落としているんだ。それだけでモンスターが寄り付かない程の力を残した鱗を」

 

「……こっからはウチが話すわ。そんなモンを使って産み出されたザハクは黒龍の分身みたいな存在でな、一定以上ランクアップした眷属なら本能を刺激されるし、モンスターへの憎悪を無理にでも引き出される。やからアイズが暴走するなら早い内がええと思ったんや」

 

 流石に食堂ならもう少しおとなしいと思ったんやけどな~、と落ち込んだ様子でロキは呟き、大人しく話を聞いていたアイズはネルガルの方を向いた。

 

「……ごめんなさい」

 

「いや、だからさ。殺され掛ける程度で謝られても僕が困るよ。ああ、それとザハクだけど実体化するだけで僕の精神力をガリガリ削っているし普段は黒龍のオーラを抑えているから」

 

 頭を下げるアイズにネルガルが困った時、二人の腹が鳴った。そう言えば食事を摂る前にアイズが暴走した事を思い出したロキとリヴェリアは顔を見合わせ苦笑する。これなら一旦大丈夫そうだと思ったのだろう。食堂に戻ろうとなり、ネルガルも退室しようとするが思い出したようにリヴェリアに呼び止められた。

 

 

「おい。お前が其処までする目的はなんだ?」

 

「……復讐だよ。僕の幸せを奪った奴ら全員に復讐する事、それが僕の全てなんだ」

 

 リヴェリアの背筋に冷たい物が走る。ロキ・ファミリアの初期メンバーとしてアイズなどの問題を抱えた子供知っている彼女でも目的を口にした時の彼の瞳は初めて見る。昔のアイズの様に感情を捨てた人形の目ではなく、全てを諦めた死人の目。決して子供が浮かべるべきではない眼であった。

 

 

 

 

「……ロキ、奴の過去とステイタスを全部教えろ」

 

「そやな。彼奴は母ちゃんに頼むわ」

 

「……誰が母だ、誰が」

 

 

 

 

 

ネルガル・ノヴァ

 

 LV.3

 

力:F=320   

耐久:E=400

器用:F=300

敏捷:E=420

魔力:sss=1870

魔導:H

 

 

 

スキル

 

魔導大才(マジック・ジーニアス)

 

 魔法関係の能力・技術の向上に補正が掛かる。

 

 魔法の威力に補正

 

詠唱短縮(ロースペル) 威力の減衰と引き換えに呪文の詠唱を短縮出来る

 

仇敵憎悪(アベンジャー)

 

 早熟する

 

 復讐心が募るほど効果が向上

 

 復讐を果たすか復讐心が消えたらこのスキルは消滅する

 

 

魔法

 

 ペインブレイカー

 

 回復呪文

 

 自分を対象に指定できない

 

 詠唱追加で効果が追加される

 

 詠唱 『全ての心を静めましょう』

 

    『全ての毒を消し去りましょう』

 

    『全ての呪いを解きましょう』

 

    『全ての者が傷付けられぬ世でありますように』

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだ、このスキルは。それに一つ目は兎も角、残りの魔法は……」

 

 リヴェリアはロキから見せられたステイタスを見て悲痛そうな表情を浮かべ、残り二つの魔法、特に三つ目の魔法を見て言葉を失う。

 

「二つ目はザハクを呼び出して消滅した魔法の代わりに出現しとったらしいで……」

 

「このスキルとあの考え方さえなければ面白そうな生徒になりそうなのだがな。やれやれ、レフィーヤについても考えなければ……いや、いっそのこと」

 

 リヴェリアはふと思いついた事をロキに耳打ちする。暫し考え込んだロキであったが、それも有りかもしれないと呟いて了承した。

 

 

 

 

 

 

「ほらほらー! 早く行こうよー」

 

 翌日、遠征で手に入れた魔石やドロップアイテムを換金しにいく中、レフィーヤは尊敬する師でもあるリヴェリアから頼まれたことを思い出していた。

 

 

 

 

「わ、私があの子の面倒を見るんですか!?」

 

「ああ、彼奴も私が指導する事になってな。兄弟弟子だし、年もそれほど離れていないお前に頼みたい。出来るか?」

 

「……やります! お任せください!」

 

 元々面倒見が良い性格でありリヴェリアからの頼みならば断れる訳もない。レフィーヤは一瞬だけ迷ったが引き受ける事にした。

 

 

 

(あの子は年下ですし弟弟子ですから……私がお姉さんですね)

 

 普段から一緒にいるメンバーは格上で先輩のアイズ達という事もあるのだろう。ロキの話ではまだオラリオに来てからダンジョンかギルドにしか行っていないと聞いているので案内するのも良いかなと考える彼女の心は弾んでいた。

 

 

 

 

 

 そしてこの出来事が彼と彼女の運命を大きく変える事となるのであった……。

 

 

 

「あっ。あの子も三つ魔法を使えるそうですし、他の魔法について聞かないと。えっと、確か部屋は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、リヴェリア。三つ目の魔法の事でレフィーヤが自信失わんかな?」

 

「仲間である以上はいずれ知る。ならば早いうちが良いだろう」




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