トンガリ帽子の復讐者と小さい竜の迷宮物語 (リメイク開始)   作:ケツアゴ

20 / 41
茶番

「いやぁ~、レベルアップした後の酒は美味いねぇ」

 

 行き付けの酒場である豊穣の女主人で俺は一人ビールを煽る。今日はダンジョンに籠もってたから好きなナンパも出来てねぇし、後で歓楽街にでも行こうかねと考えているとリューちゃんが注文していたツマミを持ってきてくれた。

 

「今日は彼と一緒ではないのですね」

 

 ……彼? ああ、チビスケの事か。暫くダンジョンに籠もるって言ってたし、数週間は帰らねぇだろーな。

 

「別に何時も一緒って訳じゃねぇしな。其れよりリューちゃん。今度一種に……」

 

「ナンパならお断りします」

 

「あらら〜。あっ、もしかしてチビスケの方が好み?」

 

「少なくても貴方よりはマシです」

 

 つれないねぇ。まっ、俺も本気じゃねぇし? ナンパってのは後腐れがないのが利点だし、この店の従業員はどうも気質のモンじゃないのがチラホラ居るし、こうやって目で見て楽しむ程度が一番だわ。

 

「……しかし、貴方はハーフエルフだというのにエルフらしさがありませんね。どうも軽薄が過ぎます」

 

「何? リューちゃん、俺の事がそんなに気になる?」

 

「いえ、別に。では、ごゆっくり」

 

 素っ気ない態度で席から離れていくリューちゃん。まぁ俺も自分の過去を話すのは好きじゃねぇしな。特に中途半端にお綺麗な子にはきっつい話さね。

 

 

 ……昔、ある国で紛争が起きていた。民も国も疲弊して、とても戦線を維持できない状況でも戦争は止まらない。そんな状態が続いてたら、やがて誰かが気付くのさ。徴兵して兵士を育てるより、餓鬼を攫って武器を持たせた方が早くて安いってな。

 

 んで、ある世間知らずなエルフのお嬢ちゃんが攫われて、ある程度見目麗しく育ったら夜の仕事が増えた。戦争で精神が追い詰められた兵士の欲望の捌け口だ。当然その内餓鬼が出来て、兵士にする為に奪われた。……まぁ当人からすればそんな餓鬼なんて欲しくないだろうがよ。

 

 やがて其の餓鬼も育った頃、唐突に戦争は終わり、使い捨ての駒だった餓鬼共は放置された。誰も彼も自分のことで手一杯で餓鬼なんて救えないんだよ。……正義だの愛だの司ってる神様にもな。

 

 そんな餓鬼共の末路は簡単だ。野垂れ死ぬか、別の国で傭兵になるか。何せ人の殺し方位しか習ってねぇんだ。仕方ねぇよ……。

 

 

 

 

『君に掛ける呪いは……母親に絶対に会えない呪いだ。君の母の名はマイヤ。戦争が終わった後は故郷に帰れず世界を放浪している。私は居場所も知ってる。でも、君は其れを知って会いに行っても絶対に会えない。……其の方が面白いからね』

 

 全く、神様ってのはロクなもんじゃねぇよ。

 

 

 

 

 

 

「うっへぇ〜。呪い掛けるなら掛けるで酒が飲めなくなる呪いにして欲しかったぜ」

 

 酒のない、国に行きたい、二日酔い。……また三日目に帰りたくなる。昨日散々飲みすぎた俺はLV3にも関わらず軽い二日酔いに悩まされていた。頭がズキズキ痛み、視界が定まらない。……気分転換に散歩にでも行くか。

 

「今日はダンジョンは休みだなっと……おろ?」

 

 散歩の途中、見知った後ろ姿を見掛けた俺は物陰から様子を伺う。視線の先に居るのは今の主神のヘルメス様と団長様だ。あと、その近くに居るのはロリ巨乳の女神。確かチビスケの主神の女神だな。動くたびにタユンタユンして……うん、眼福だねぇ。

 

 

 

 ……話を要約すると何時もその日の内に帰って来ていた眷属が他のファミリアの仲間と一緒に昨日から帰ってこないから心配らしい。んで、他のファミリアの連中に怪物進呈された事が分かったから、探しに行くと。

 

「仕方ねぇな。俺も付いてくぜ」

 

「おや、ロビン。君が来るとは意外だね」

 

「……まっ、其奴らがどうなろうと知ったこっちゃねぇですが、一応腐れ縁のチビの仲間ですからねぇ」

 

 あの餓鬼が居なくて良かったぜ。自分の平穏を乱されたと知ったら……、

 

 

 

 

「あっ、うん、ダンジョンならお互い様だから仕方ないって。だから、僕がお兄さん達に同じ様にモンスター押し付けて、逃げ易いように背後を封鎖したせいでお兄さん達が逃げられなくて死んでも……お互い様だよね?」

 

 とか、平然と言いそうだからなぁ。ダンジョンで出くわした時に直ぐにフォロー入れとかないとヤベェって。

 

 ……此奴らが死のうがどうでも良いけど、あの餓鬼が無駄に手を汚すのは止めさせねぇとな。

 

 

 

 

「って、おい! なんでアンタラまで着いてくんのよっ!? 信じられないんですけどっ!?」

 

「だって、ベル君が心配でいてもたっても居られないんだっ!」

 

「そうそう。俺も少し気になってね」

 

 ……信じられねぇ。神がダンジョン入るのは禁止だってのに、何考えていやがりますかねぇっ!? 

 

「ちょいと団長。この馬鹿二人をどうにかして下さいって」

 

「……無理です」

 

 おいおい、諦めたら其処で試合終了っすよ!? あ〜、ロクな事にならない予感だよ、こりゃ……。

 

 

 こうして俺は自分の迂闊な行動を後悔しながらダンジョンに潜る事になった。……寝てりゃ良かったぜ。

 

 

「……あっ、そうだヘルメス様。ちょいとお耳を拝借して良いですかい?」

 

「ん? なんだい?」

 

 俺の手招きに応じてヘルメス様が近付いて来た。さてと、団長に聞こえない声にしなきゃ面倒だ。

 

 

 

 

「……アンタが何を考えてるかは知らねぇが、勝手な思惑に人を巻き込もうってんなら……死ぬぜ?」

 

「……覚えておくよ」

 

 さてと、ドスのきいた声で脅しておいたし……後は成る様に成りますねっと。

 

 

 

 

「うわっ!? デッカイ虫ぃぃぃっ!?」

 

「あ〜、もう! ダンジョンなんすから虫型のモンスターくらい居ますってのっ!」

 

 

 

 

 

「おや、アレは確か希少種だね。ロビン、アレを倒してくれるかい?」

 

「今はそんな事してる場合じゃないっすけどっ!?」

 

 ……あっ、こりゃ苦労しますわ。少しの事で騒ぐロリ女神に気紛れで動く阿呆神に振り回されながら、俺達はダンジョンを進む。このまま順調に行けば直ぐに中層に辿り着く……筈だったんだがねぇ。

 

 

 

 

「……まぁ、体力クソの神様ならこうなりますよねぇ」

 

 俺の直ぐ傍には此処までの踏破でグロッキーになった神様二人。まぁ霧の中つっても他の冒険者も居るし、神様が居るってバレないようにすれば良いだろ。

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、ダンジョンの入り口にはある四人組の姿があったんだわ。

 

 

「ったく、ゴライアス復活の頃だから戻ってみれば。ザハクが怪我した匂いを嗅ぎ付けなきゃ危なかったよ?」

 

「いやぁ、助かったよ」

 

「ええっ! 途中で寄り道して鉱石もたくさん集まりましたし、これで損害の補填も……」

 

「あっ。ザハクが鉱石がある場所を見つけたんだしポーションもあげたんだから分け前は7:3ね」

 

「そんな殺生なっ!」

 

 

 

 ……結局、十八階層でチビと一緒に戻ったのを知って直ぐに蜻蛉返りしたんだが、ギルドにはバッチリ見付かってペナルティ喰らいましたとさ……アホくさ。




意見 感想 誤字指摘お待ちしています


遠回りして採掘してなかったら多分十階層くらいで合流してましたww

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。