うっす、兵藤 一誠だ。
いつまでも愚痴ってても仕方ないんで今回は前回の話を軽く振り返ってみることにするぜ。
前回の話、事の発端は部長が言い出した『俺の使い魔』を探しに行こうってことからだった。悪魔っていうのは、使い魔を持って当たり前なんだとさ。それで使い魔は情報の伝達や敵の追跡など、様々な事に役立つらしい。
そこで探しに行こうって話になるハズだったんだが、そこに来客が来た。
それがこの学園の生徒会で、そこで衝撃の事実が発覚したわけだ。
俺はまったく気付かなかったけど、どうやら生徒会のメンバーも悪魔らしい。生徒会長が上級悪魔らしく、生徒会メンバーは皆会長の眷属なんだと。
それで来た理由が俺との顔合わせ。
そこで知り合ったのが同じ兵士の『匙 元士郎』なんだが、こいつがまた人を見下すイケメンなんだよ、クソ!
向こうもどうやら俺の事は目の敵にしてるらしくて、最初は実にむかつく意味合いで睨みまくってきた。こいつとは絶対に仲良く出来そうにねぇ!!
と、そう思ってたんだが、一緒に蒼崎とレイナーレさんの無情なまでの激甘空間に晒されたせいなのか、お互いに少しだけ大人になれたような気がした。まぁ、何だかんだと言いつつもそれなりに仲良く出来そうだと。
そこで話が終わりだったらよかったんだが、実はこの後続きがあったんだ。
それはある程度談笑を終えた後のことだ。
部長と会長が楽しそうに話している時に上がった話題。
「え、貴女の所もそうなの?」
「リアスの所もですか? それは困りましたね。彼は月に一度しか仕事を引き受けてくれないらしいですし」
どうやら匙も俺と同じで使い魔を持つように言われたらしいんだが、俺と運悪くダブルブッキングしたらしい。案内人の人も月に一度しか請け負わないっていう変人らしくて、これを逃すと次は一ヶ月後なんだとか。
これではどちらも困るわけだ。使い魔を持つのは悪魔としてやっと一人前って証もあるらしく部長も会長も俺と匙には早い内に使い魔を持って貰いたいらしい。
するとここで問題なのが、どっちがその権利を得るのかってこと。
譲り合いの精神ってのは適用されないらしく、部長と会長は考えた末に勝負事で決めようって話になった。高校生らしくスポーツでってさ。
うん、ここまではいいんだ。物事を決めるのに勝負事ではっきりとさせるってのは嫌いじゃない。
なんだけどさ………………。
「キャ~~~~~~~~~! リアスお姉様~~~~~~!」
「頑張って下さい、朱乃お姉様!!」
「会長、素敵です~~~~~!」
「副会長、凜々しくて格好いい!!」
翌日、俺と匙の使い魔を得るチャンスは何故か部長達のテニスの試合によって決められることになった。
それは良いんだが、流石に有名人がこうも集まって何かすれば、あっという間に人だかりが出来上がってしまうのはどうしようもないことなのだろう。御蔭であっという間にコートの周りはギャラリーで溢れかえっている。
そんな中、俺達は部長と朱乃さんを応援しているわけなんだが、何というか、つい目があっちこっちに彷徨って仕方ない。だって普段は見られない部長と朱乃さんのアンダーウェア姿その上アンダースコートという破壊力抜群な姿なんだ。揺れるおっぱいに翻ったスカートから覗く真っ白のアンスコ……う~~~~ん、最高だぜ!
あ、そうそう、因みにこの場にヴァーリはいない。アイツは学校の関係者じゃないし、何よりも下らないって一蹴してたから。
つまり久々のフリータイム! 俺はこの光景を存分に楽しめるってわけだ。
でもなぁ………やっぱり地雷を踏んじゃうのは、宿命なのかねぇ、いや、マジで。
「初めて見ましたけど、テニスって凄いですね」
「そうだね。私もこうして見るのは初めてだけど、凄く激しく動くのね」
そうそう、忘れちゃいけない我等が部活の爆発物ことバカップル。蒼崎とレイナーレさんの二人。この二人も部長達の試合を応援しに来ているんだ。
蒼崎は今まで目が見えなかったから、こうしてテニスを見るのは初めてらしい。いつもより少し子供らしい感じに目を輝かせてるようだ。そんな蒼崎を頬を赤らめつつ見つめて話しかけるレイナーレさん。既に毒が出始めたのか、周りの連中も違和感を感じ始めてないか?
そんな周りに気付かないのか、二人は早速イチャつき始めやがった。
「でも、出来れば湊君にはリアス達の姿は見て欲しくないかな」
「どうしてですか?」
蒼崎の不思議そうな感じにレイナーレさんは恥ずかしいのか顔を赤くしながら答えた。
「だ、だって、その……凄い恰好だから、湊君が見入っちゃうと思うと不安になるの」
確かに部長達のあの恰好は破壊力が凄いからなぁ。揺れまくるおっぱいに見えても良いと分かっていても反応してしまうアンスコ。いくら煩悩が薄い蒼崎でも、アレを見たら男が疼いて仕方ないんじゃねぇかなぁ。
そんなレイナーレの心配を余所に、なのかは分からないが、蒼崎は特に気にした様子はないようだ。
「別に凄いとは思いますけど、それ以上は特には」
「そ、そうなの?」
え、マジかよ! 蒼崎の奴、普通に返しやがった。その様子ときたら、まるで木場と同じじゃねぇかってくらい普通だった。え、アイツってもしかしてホ……でも、恋人とかいるし……。
そんな疑惑に駆られた訳だが、流石は我等が蒼崎さん、その程度じゃ止まらなかった。
今度は蒼崎が少し恥ずかしそうにしつつレイナーレさんに答える。
「でも、その……レイナーレさんはもっと似合うだろうなって思います。レイナーレさんは運動も得意ですから、きっとテニスも上手に出来そうですし。でも、そうなると少し複雑ですね。そんな可愛くて綺麗で格好いいレイナーレさんの姿を独り占めしたくなってしまう自分と、皆に見て欲しい気持ちの板挟みにされそうで」
「湊君…………」
ナニコレ?
レイナーレさんったらあっという間に恋する乙女の表情で蒼崎を見つめつつ、さりげなく蒼崎の手を繋いでるし、蒼崎も蒼崎で握られた手を軽く握り返しつつレイナーレさんに微笑み返す。その所為でレイナーレさんは更に顔を真っ赤にして瞳を潤ませ始めた。
このバカップル、少しのことでもすぐネタになるんだから恐ろしい。いや、確かにレイナーレさんみたいなスタイルの良い女性には似合いそうだけどさ。
そう思ってると、レイナーレさんが蒼崎を上目使いで見つめつつ囁く。
「じゃ、じゃぁ、今度、一緒にテニスしてみようか」
「いいですね」
「うん、湊君のために、もっとその……凄いアンダーウェアとか着ようかなって。えへへへ……」
「ッ!? ぁぅぁぅ」
そう言われて今度は蒼崎の顔がボンと赤くなった。
どうやらアイツの煩悩はレイナーレさんだけが対象らしい。目の前であんなに揺れまくるおっぱいを見ても何も感じないのに、それがレイナーレさんに変わったらあっという間にのぼせ上がるわけか。
純情なのか不純なのか分からない奴だ。
しかし、それが良いっていうらしく、レイナーレさんはそんな蒼崎を実に愛おしそうに見つめてるわけだ。その所為なのか、やってきましたドピンクな雰囲気。まるで胃の中に何か甘い固まりをぶち込まれたような、そんな感じになる。
クソ、これが恋人がいるということなのか! ハーレムとはナニカが違うと俺の本能に訴えかけるこれ、正直羨ましすぎて色々と苦しくなる。
さて、そんな猛毒に晒され試合よりも蒼崎とレイナーレさんに注目する周り。女子も男子も顔を赤くして羨ましそうな感じだ。あ、そこにモジモジしつつ互いを見つめ合ってる男女発見。こいつ等は俺等の『敵』だ。
さて、そんな悪ふざけもそこそこに試合の応援をしようと思うのだが、途中から試合の趣が可笑しな事に。双方とも夢中になりすぎて衆人観衆の前だというのに魔力を使い始めたよ。
そのことに苦笑してしまう木場と小猫ちゃん。俺はどう反応してよいか分からず、蒼崎は凄いと驚きレイナーレさんはしょうがないなぁと言った感じで姉のような微笑みを浮かべてた。
そして結局試合は引き分け、いや、続行不能となったわけだ。何せラケットもボールも部長達の魔力について行けてないんだから。
これじゃぁどっちに使い魔ゲットの権利があるか分からないってことになったわけで、今度は夜に学校の体育館でドッチボール大会となった。今度は全員参加だとさ。
あぁ、この際結果だけ言おうか。このドッチボール大会、勝ったのは俺達オカ研だ。何せ…………。
蒼崎相手にボールを投げつけるのは罪悪感が湧いて無理!
だからだそうです。
その御蔭でこっちは絶対に蒼崎が残るという安全性を得て、また同時に『普段から生徒会に迷惑を掛けまくってる兵藤 一誠にはしこたま投げつけよう』なんていうことになっちまった。そのせいで皆から狙われ俺の『息子』も餌食になることに。
その御蔭で皆頑張ろうって盛り上がったけど、俺はしばらく痛くてしょうがなかったよ。
「湊君に怪我がなくてよかった」
「すみません、レイナーレさん。役に立てなくて」
「いいの。私としては、湊君がドッチボールを楽しんでくれてたことの方が嬉しいから。勿論、私も湊君と一緒に参加出来て嬉しかったよ」
「レイナーレさん……僕もレイナーレさんと一緒に出来て、凄く嬉しかったです。レイナーレさんと一緒だから、だからこんなに愉しんだって、そう思えるから」
「湊君………」
「レイナーレさん……」
バカップルがイチャつく中、俺は股間に何かが染みて痛いのか、何故か涙が出て仕方なかった。
まぁ、これで……使い魔を手に入れられそうです。