堕天使な彼女の恋物語   作:nasigorenn

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二人のイチャつきっぷりを全開で書いたらお気に入りが激減に! きっと甘甘続きだったのが良くなかったのでしょう。なので今回はこんなお話。


番外11 彼と彼女と生徒会

 おっす、お久しぶり! 兵藤 一誠だ。

いやぁ~、最近出番がなかったからマジで久しぶりだよ。何せこの系列の話を前回挙げた際、周りから不評を喰らったもんだから作者の奴、焦ってしばらくこの話を書かないようにしようとか思ったんだぜ。その代わりに増えたのが蒼崎とレイナーレさんの『撃甘話』。本編では押さえていたイチャつきを全開に出した、まさに糖尿病患者を増産するような、俺からしたら殺意しか湧かないようなお話だよ。

その話の所為でしばらく出番がなかった訳だけど、こうして久しぶりに出て来ることが出来た。まぁ、その理由もその撃甘話を挙げたら不評を喰らいまくったからなんだけどさ。

ま、まぁ、そういうメタい話はそこそこにして、今回の話について先に説明するぜ。

それというもの、作者が時系列を間違えた所為でこうなったわけだが、今回の話は前回のライザーの前の話だ。そこであった事について語ろうと思う。

 

 

 その日、俺はいつも通り部室に来ていた。

いや、部活に入っているんだからそれは当たり前なんだけどさ。それで朱乃さんに入れて貰ったお茶を味わいながら優雅な一時を過ごしていたわけだ。

うん、やっぱり朱乃さんが入れてくれるお茶は最高だぜ。そう思いつつも、足の力が一切抜けない状態ってどうなの? 答えは簡単、今俺は椅子に座ってません。所謂空気椅子って奴です。え? なんでそんなことしてるのかだって? そいつは単純だよ。俺の向かいで壁に背中を預けて同じくお茶を飲んでる鬼畜な白龍皇(ライバル)の御蔭です。奴曰く、

 

『丹田を鍛えるのにはその姿勢が良いんだ。これから先、君に椅子はないぞ』

 

だとさ。

何、そのイジメ。俺、高校で初めて本格的なイジメにあった気がするよ。

しかもそんな俺に周りは同情の一つもしてくれない。木場や小猫ちゃんは普通にしてるし、朱乃さんは皆にお茶が回るように配ってるし、アーシアはレイナーレさんと何やら楽しそうに会話してるし、蒼崎はそんな二人を暖かな眼差しで見つめてるし。え? 部長はどこだって? それがまだ来てないんだよ。

そろそろマジでしんどくなってきた。いや、本当にきついんだよ、この姿勢。

足の感覚が怪しくなりつつある中、扉が開いて部長が入って来た。相も変わらず美しいおっぱいだ。これだけで俺、後三時間くらい耐えられそうな気がする。

そう思いながら部長のおっぱいを眺めてると、部長が俺を見てニッコリと笑いかけてきた。何、頑張ってる俺を応援してくれるの、部長。なら俺、もっと頑張れます。できたらそのおっぱいを揉ませて欲しい。

と、思ったのだがどうやら違うらしい。部長は改めて足をぷるぷると震わせている俺に元気よく話を振ってきた。

 

「イッセー、貴方の使い魔を見つけに行くわよ!」

「使い魔……すか?」

 

使い魔って何? そう思ってたら、それがバレたらしく部長が説明してくれた。

何でも使い魔っていうのは悪魔にとって基本的なものであり、情報の伝達や敵の追跡など、様々な事に役立つらしい。ってことはアレか? 俺だったら覗きとかにも役立てられるかも……グヘヘヘヘヘ。

そんな中、その話を聞いた蒼崎達も反応し始めた。

 

「使い魔ってどんなものなんですか?」

 

蒼崎が不思議そうにそう言うと、レイナーレさんが家庭教師のお姉さんみたいな感じに説明し始めた。

 

「湊君、使い魔っていうのはね、悪魔が用いる手駒の一つなの。冥界にいる生物なんかに術を掛け、自分専用に使役する。それが使い魔よ」

「ペットみたいなものですか?」

「う~~~ん、少し違うかも。ペットと違って常に世話が掛かるわけじゃないし、転送出来るから普段は冥界にいるし。もしかして湊君、ペット欲しいの?」

 

そう言われ、蒼崎は少し難しいような顔をした。

 

「どうでしょう? 確かにそういうのに憧れはありますけど、家はペット禁止ですから。それに……」

「それに?」

 

そこで言葉を切ると、蒼崎は何やら思い出しつつ笑顔でレイナーレさんに答えた。

 

「あの子達がいますから、そこまで欲しいとは思わないかも知れません。あの場所に行けば会えますから」

「あぁ、あの子達ね。湊君、凄く好かれてるから」

 

一体何の話をしてるんだろうか、この二人は。

そして俺は二人のやり取りを聞いてるわけだが、何だろう、少し嫌な予感が………。

まぁ、その予感は当たるわけだ。レイナーレさんは蒼崎に向かって頬を赤らめつつ嬉しそうに微笑みかけた。

 

「優しい人は動物に好かれるって言うものね。湊君は凄く優しいから、だからあの子達も湊君の事が好きなんだと思う。わ、私の方が、その………大好きだけど……」

「レイナーレさん………」

 

はい、来ましたよ、恒例のバカップルが。

一瞬にして部室内の空気がピンク色に染まっちまってるよ。何コレ、新手のイジメなの? こっちは未だに足がしんどいのに目の前では甘い光景って……拷問にしか思えないんですけど。あぁ、クソ、マジで蒼崎が羨ましい。

最近思うんですよ、俺って何処に向かってるのかって。

だって鍛えられた先に待ってるのって絶対にヴァーリ2号じゃないですか。俺が欲しいのはハーレムであってそんな戦闘狂はいらんのですよ。いや、マジで心配になってきた。これで本当に良いのだろうか?

そう真剣に考えてると、アーシアが部長に何処で使い魔が手に入るのか問いかけた。どうやら純粋に興味かららしい。

そう言われ部長が答えようとしたんだけど、その前に扉からコンコンって音が鳴った。どうやら来客らしい。この部室に来る奴は基本ノックとかしないから直ぐに分かる。流石に来客の前でこんな恰好してるわけにはいかないと思いヴァーリに目を向けながら意思を伝える。

 

(なぁ、来客だし解いてもいいだろ)

(何を言っている? 駄目に決まっているだろう。後二時間はキープだ)

 

ここに鬼畜が居た。

畜生と思うが、残念なことに俺はコイツに現在逆らえない。

最初にさ、挑みましたよ。いくら何でもそんな理不尽なことは聞けねぇってさ。

うん、俺が甘かった。何も出来ない内に滅多打ちにされ、挙げ句はそこからアームロックで締め上げられた。俺、食い逃げとかしてないのにアームロックで倒されたんだぜ。それ以降、このライバル件お師匠様には頭がまったくあがらねぇのさ。くそ、マジで悲しくなってきた。何で俺だけ恥をさらさなきゃならねぇんだ。

 

『相棒がいつもしてる覗きに比べれば余程健全で恥ではないと思うぞ』

 

五月蠅いよ、ドライグ!

くそ、まさか自分に宿るドラゴンからも裏切られるとは……本当に人望、いや、この場合は悪魔望がねぇなぁ、俺。

そんなやり取りを僅かな時間でしている内に事態は進み、扉が開くとそこには予想外の人物が居た。

そこに居たのは眼鏡をかけた理知的な雰囲気を醸し出す美少女。おっぱいが少し控えめだが、それはそれで悪く無い。それ以外にも数々の美少女がずらずらと入って来た。

 

「失礼します」

 

そう言って先頭を歩く女性が声をかけた。その人が誰なのか俺は知っている。

彼女の名は支取 蒼那、この学園の生徒会長だ。それによく見れば後から入って来た女子達も皆生徒会のメンバーだ。何で生徒会が?

そう思っていたら、少し思いがけない所から会長に声が掛かった。

 

「久しぶりね、ソーナ。挨拶以来会いに行けなくてごめんなさい」

 

会長に声をかけたのはレイナーレさんだった。何で堕天使であるレイナーレさんが会長と知り合いなんだろうか?

会長はそんなレイナーレさんに微笑み返す。

 

「えぇ、お久しぶりです。学園生活を満喫しているようで喜ばしいですよ。それに………彼が例の………」

 

会長は蒼崎の方に目を向けると蒼崎は軽く微笑みながら頭を下げた。

そしてレイナーレさんは頬を赤らめ、少し恥じらいつつも嬉しそうに答える。

 

「え、えぇ、そうよ。私の……恋人」

 

会長はそれを聞くと、少し頬を赤くしながらレイナーレさんに微笑んだ。

 

「話は聞いていましたが、成る程、彼が。お似合いですね」

「ありがとう……」

 

何やってるの、会長! せっかくやっと薄まってきたと思ったのにまた出て来ちゃったよ、ピンク色のが! 話から察するに会長はレイナーレさんと蒼崎が恋人同士ってのは知ってるらしいけど、だからって地雷を踏むのは止めて貰いたいぜ。何だか胸が甘くなってくるから。

ほら、貴方の後ろにいる生徒会の人達も顔赤くしてキャーキャー言い始めてるよ。女子高生はこの手の話が大好きなんだから。

その後も会長とレイナーレさんの話は少し続き、蒼崎も会長に改めて挨拶したりなんかする。

そして二人で顔を赤くして撒き散らすピンクの猛威に俺はストレスが溜まっていく一方だ。

実際の時間にしてそこまで経ってないらしく、二人とも会話を終えた会長は改めて部長に話しかけた。

そして明かされる生徒会メンバーの秘密。何と全員悪魔だった。

何でも、会長の本名はソーナ・シトリーって言って、部長と同じ元72柱の大貴族らしい。生徒会は会長の下僕らしい。

今回来たのは互いの下僕が増えたことで、改めて挨拶にきたのだとか。そんなことで一々挨拶に来る辺り、会長ってマメな性格なんだろうか。

俺、初めて部長達以外悪魔が居ることを知ったよ。そう考えてたら、生徒会で唯一の男が俺を見下すような笑みをしながら部長に話しかけた。

 

「リアス先輩、僕達の事を彼に話してなかったんですか? 同じ悪魔なのに気付かないこいつもどうよって感じですが」

 

うるせぇよ、こっちはそんな余裕無かったんだからよ。毎日毎日ヴァーリに鍛えられて心身共に疲労困憊なんだぞ馬鹿野郎!

そして改めて聞かされたのが、そのむかつく野郎が俺と同じ兵士だってこと。今回来たのは俺との顔合わせの為らしい。くそ、野郎となんか顔合わせしたくないっつの。寧ろ女の子と顔合わせさせて下さい、マジで。

そう思い匙の野郎を睨んでると、横から声が聞こえてきた。

 

「やっぱり匙君も悪魔だったんですね」

「湊君、気付いてたの!?」

 

蒼崎はどうやら気付いていたらしい。それに少し驚くレイナーレさん。

まぁ、この人間離れした良く分からない感性の蒼崎なら気付いても可笑しくないか。何せ俺の神器を当てたくらいだし。

 

「えぇ、と言ってもつい最近のことですけどね。たまたますれ違った際に、兵藤君と同じ気配を感じましたから。会長も学園に入ってからずっと感じてましたから、多分会長の方にいるんじゃないかって。最初は悪魔の気配とは知りませんでしたから。多分悪魔になったのも最近じゃないですか? 生徒会に入ったのも最近のようですし」

 

その発言に今度は匙の野郎が驚いてやがった。

 

「確か蒼崎 湊君……だったよな。今まで目が見えなかったっていう」

「はい、そうです。改めまして、蒼崎 湊です。よろしくお願いします」

 

蒼崎が丁寧に頭を下げると、匙も丁寧に礼をした。

 

「まさかそこまで言い当てられるとは思わなかったぜ。その通り、悪魔になったのは最近だ。人間であるお前にそこまで看破されるとは思わなかった。凄い推理力だな」

「そんなものじゃないですよ。ただ、何となくそう思っただけですから」

 

匙の称賛に蒼崎は苦笑する。

そんな蒼崎を見てレイナーレさんは凄いって褒めてたよ。

 

「蒼崎君でしたか。彼、凄いですね。人間なのに悪魔以上に感性が鋭いようです」

「湊君はそういう気遣いが凄いの。優しくて気が利いて、それでこっちが言う前に察してくれて…………だから……大好き………」

 

会長、頼むからもう止めて。

ほら、誰が見てもわかるくらいレイナーレさんが恋する乙女の顔になってるから。

それを感じてなのか、匙も匙で蒼崎に聞いてくるし。

 

「なぁ、あの子がお前の」

「はい、その……恋人です」

「堕天使って聞いてたけど、なんか滅茶苦茶イメージが壊されたんだけど。何、あの可愛いの」

「レイナーレさんは凄く可愛いですよ。堕天使だからって関係無しに可愛くて優しくて、一生懸命で………僕の一番……」

 

始まった蒼崎のドピンク講義。それを聞いた匙は羨ましいやら憧れるやら、何とも言えない顔になり、まるで師匠の話を聞く弟子みたいになっていた。

今度はこっちか~~~!

蒼崎は口にこそしてないが、それでも分かるくらい暖かな微笑みをレイナーレさんに向けていた。うん、それに気付けば後は地獄の始まりだ。クソッ、リア充爆発しろ。

匙はそんな蒼崎を少し羨ましそうにしつつ、恋人が居る奴の貴重なお話をやらに聞いて華を咲かせていた。

これって俺と匙の顔合わせだよな? 何で気が付けばあのバカップルのお話になってるの? いや、別に匙の野郎と仲良くなりたいってわけじゃないけどさ。

御陰様、部室は甘い空気で満たされつつあるわけだが、そこでやっと本題に移るようだ。

匙の野郎は俺の前に来ると、最初みたいに見下そうとしたんだろうが、俺の姿を見て戸惑いを見せた。

 

「なぁ、何でさっきからそんなポーズなんだ? 空気椅子」

「好きでやってるわけ無いだろ。あそこに居る鬼畜なコーチのご命令でずっとやってるんだよ」

 

そこでそれまで話に混ざらなかったヴァーリがやっと動いた。

 

「あんたは……?」

「あぁ、俺の名はヴァーリ。今世の白龍皇だ」

 

その言葉を聞いて会長達に衝撃が入ったらしい。顔が一気に引き締まり緊張で顔が強ばっていく。いいぞ、ヴァーリ。御蔭でこのピンクな空気も消し飛びそうだぜ。

部長から聞いたが、赤龍帝と白龍皇、この二つは歴史上でも結構やらかしてるらしいからなぁ。

そんな周りの空気を感じてか、ヴァーリは軽く話しかける。

 

「まぁ、そこまで緊張しないでくれ。俺は今、そこにいる俺のライバルを鍛えることに集中してるから争う気はないし、これでも堕天使陣営の者だ。レイナーレやミナトがいるこの場で争うようなことはしない」

 

貫禄が違うんですよね、はい。これが最強と謳われた白龍皇って奴らしい。それに比べて俺は駄目駄目だと。うっさいわ、ボケ。

まぁ、これで匙の野郎も大きくは出れないだろ。

そう思ってたんだけど、世の中甘くないらしい。

 

「兵藤 一誠、君はこんなに近づくまで彼を悪魔だと気付かなかったらしいな。その鈍さは致命的だ。ミナトは初見で気付いたというのに、君は………感性を鍛える為に今度は目隠し状態での回避鍛錬も加えよう。心して掛かれよ」

 

何てこったい。あっという間に死刑宣告じゃねぇか。

前も似たようなことをしたけど、目隠し状態でヴァーリの拳を避け続けるってやつ。アレで何度死にかけたのやら……思い出したら寒気が止まらない……。

そんな俺はさておき、蒼崎達はまったく違うようだ。

 

「湊君、凄い! ヴァーリにさえ認められるなんて」

「そんなことないですよ」

 

我が子の事のように褒めるレイナーレさんに、蒼崎は苦笑で返す。

 

「そんなことないって。普段は可愛いけど、そういう鋭いところ……私は格好いいと思う」

 

レイナーレさんは赤い顔で恥じらいつつも上目使いで蒼崎を見つめる。その顔は誰が見たって可愛らしく、俺もこんな状態じゃなきゃドキドキしてたよ。

蒼崎は見つめられ、此方もレイナーレさんを見つめ返した。

 

「レイナーレさん…………」

「湊君………」

 

また出て来ちゃったこの雰囲気。いい加減にして貰いたいね、いや、マジで。

何処でも甘くするそれはある意味猛毒ですよ。

こんな二人を見てると改めて思う。あぁ、マジで恋人欲しいです。

ハーレムを目指しているはずなのに、ハーレムから遠ざかっているのは気のせいかなぁ。

気が付けば涙が零れてきた。

そんな俺の肩に手がそっと置かれた。

その方向を見れば、匙がいた。

 

「何ていうか………互いに頑張ろうぜ」

「……………あぁ」

 

確かに挨拶と交流には成功したけど、何やらオレ達の心には悲しいナニカが吹き荒んでいた。

 


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