堕天使な彼女の恋物語   作:nasigorenn

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甘いのか甘くないのか………。
因みに起き入りの目標は2000超えです。


番外その7 彼と彼女の自宅での過ごし方

 買い物を終えて帰宅する二人。自宅に戻る前にすることが二人にはすることがあった。

レイナーレはそれまで繋いでいた手を放すと、湊より先に扉の鍵を開けて玄関に入る。そして荷物を置くと外で待っている湊を待たせないよう少しでも速く準備を行い声をかけた。

それを聞いて湊はクスっと笑いつつ扉を開ける。

その先にいるのは、玄関で三つ指を建てて湊を待つレイナーレ。

 

「おかえりなさい、湊君」

「ただいま、レイナーレさん」

 

頬を桜色に染めつつも優しい笑顔でそう言うレイナーレを見て、湊は胸が温かくなるのを感じる。目が見えないときも何度もこのやり取りはした。その時もレイナーレがそう言ってくれることが嬉しかったが、目が見えるようになってからは更にその幸せを感じるようになった。

レイナーレが自分のことを迎えてくれることが嬉しい。同じ家に住んでいる『家族』出迎えてくれることが安心感を感じさせる。孤独ではないことが心を温かくしてくれた。

そして同時に思うのだ。自分が如何に孤独だったのかということを。その凍った心をレイナーレが温めてくれた。

そんな優しい彼女がより好きになる。それが湊には嬉しくてたまらなかった。

 

「湊君、嬉しそうな顔してるよ」

 

顔を赤らめつつ少しからかうようにそう言うレイナーレ。

そんな彼女に湊は苦笑しつつも素直に答える。

 

「えぇ、嬉しいですよ。だって……大好きなレイナーレさんがおかえりって言ってくれましたから」

「そ、そうなんだ………(もう、湊くんったら、そういうことを笑顔で言うんだから……嬉しい……)」

 

湊の返事を聞いて顔を赤くしながらレイナーレは湊を見つめる。物の見事に返され、恥ずかしかったがそう言ってもらえたことが嬉しい。故に彼女も又嬉しそうに笑った。

そして二人で室内に入ると、互いに交代で制服から私服へと着替える。

コレばかりはどうしようもないのだが、二人とも未だに慣れない。少し離れているとはいえ衣服が肌を擦れる衣擦れの音が聞こえてしまい、それが妙に艶めかしさを感じさせてしまうのだ。歳若い男女がそのような音を聞けば誰だって緊張してしまうだろう。

 

(うぅ……何かこう……落ち着かない………)

(湊君が着替えてると思うと、顔が熱くて仕方ないよ~~~~~~)

 

そして互いに顔を赤くしつつ私服に着替えると、少し気まずくなりつつも笑い合う二人。

 

「その、もうずっと一緒に暮らしてるのに慣れないですね」

「う、うん…………」

 

互いに顔の熱を感じながらそう言うと、それを少しでも散らそうと互いに何かしら動く。

時に一緒にテレビを見たり、または湊の勉強をレイナーレが見て上げたり、レイナーレの手伝いをしたり。

そのどれもが二人一緒であり、互いに密着しているのは言うまでも無い。

ここで少女漫画のように湊に抱きしめられながら耳元で愛を囁かれてベットなどに押し倒されたりなどをしたかったりされたい所だが、この初心二人にそれはハードルが高すぎる。時に湊がレイナーレを抱きしめて彼女をドキドキさせることを言うが、それが関の山だ。それ以上はもう少し互いに成長してからでないと無理だと両人とも思っている。

そしてそんな風に時間を過ごした後、夕飯の時間になる。

夕飯に関しては絶対にレイナーレが作るので、湊は台所に入ることが許されない。

曰く、『男子厨房に入らず』とのことである。そこまで言われては手伝うわけにはいかないと湊は引き下がったわけだが、今にして思えばこれも悪く無いと思える。

 

「~~~~~~~~~~♪」

 

鼻歌を口ずさみながら野菜を切っていくレイナーレ。その姿は手慣れており、台所の主にふさわしい貫禄を感じさせた。

私服の上からエプロンを纏っているが何やら新鮮味を感じさせ、そのように楽しそうに料理を作るレイナーレの後ろ姿を見るのは湊の中で楽しみになっていた。

 

「その、湊君……そう見られてると……緊張しちゃうわ」

 

その視線を感じてレイナーレは恥ずかしそうに笑う。その笑みが可愛らしくて、湊は楽しそうに笑顔で返した。

 

「すみません、邪魔をしてしまって。でも、見ていたいんですよ。大好きな人が料理を作る姿を。クラスの男子が言ってましたよ、こういうのが家庭的で良いんだって。僕はレイナーレさんの一生懸命で楽しそうな感じに料理を作ってるところ、好きですよ」

「はぅっ!? そ、そう言われたら駄目なんて言えないわよ。い、一生懸命頑張るから、楽しみにしててね」

「はい」

 

湊のせいで赤面してしまい、真っ赤な顔で俯きながら頑張ると答えるレイナーレ。

もう何度となく聞いた言葉だが、大好きな人に好きだと言ってもらえることは何度言われたって嬉しいものなのだ。そして湊はレイナーレと二人っきりになると少し恥じらうときもあるが基本、素でそういうことを言うのある。

これにはレイナーレも少し困ってしまう。主に嬉しすぎるという意味でだが。

流石に直せとは言えないし、以前それとなく聞いてみたら、

 

「僕がレイナーレさんのこと、大好きだって少しでも伝えたいんですよ」

 

とのこと。

こう言われてしまっては恋人として反論は出来ない。

それにレイナーレ自身、湊に好きだと言われる度に胸がキュンとなって幸せを感じるので寧ろ良いかなぁと思ってたりするので、そのままにしていたりする。

そんなわけで湊に見守られつつも、一生懸命料理を続けるレイナーレ。その顔は湊に美味しいと言われるたいという想いで笑顔を浮かべる。

そして待つこと約一時間半。

 

「湊君、お待たせしました! カレーです」

 

テーブルの上にレイナーレが作ったカレーライスが並べられた。

カレーライスにサラダの組み合わせであり、食欲を誘う香りが鼻を刺激する。

 

「とても美味しそうですね」

 

湊は見て素直にそう告げると、レイナーレは嬉しそうに笑う。褒めて貰えるのはやはり嬉しいらしい。褒められたレイナーレは上機嫌に笑うと、何故か湊のカレーにスプーンをかき入れた。

それに関して湊は少し驚いたが、レイナーレが何をしようとしているのかわかり見守る。

レイナーレはカレーを掬うと、湊にとろけるような笑顔で甘えるように話しかけた。

 

「湊君、はい、あ~~~ん♡」

 

差し出されるカレーと愛しい恋人のドキドキとする表情。その艶やかで可愛らしい様子に湊は心臓の鼓動が早まるのを感じつつ、素直に口を開けた。

 

「あ~~~~ん………」

 

そして湊の口に入れられるカレー。

湊はそれを咀嚼し、全てを味わうかのようにゆっくりと飲み込んだ。。そしてレイナーレの期待の籠もった視線を受けながら感想を返した。

 

「凄く美味しいです、レイナーレさん! 前から美味しかったですけど、今回のカレーは今までで一番美味しいです」

 

湊はまるで子供の様に無邪気に喜ぶ。その表情を見てレイナーレも凄く嬉しそうだ。

そして彼女は此処まで頑張ったご褒美を要求する。

 

「み、湊君……約束、覚えてる?」

 

その言葉に顔がカァッと熱くなる湊。しかし、彼女の濡れた瞳を見つめながら返事を返す。

 

「えぇ、勿論」

 

そう答えると、湊はレイナーレの身体を抱き寄せる。

 

「あ………」

 

少しだけレイナーレは驚いたが、湊の胸に納まることでドキドキして言葉はそれ以上でない。

顔を真っ赤にしつつ期待を秘めながらレイナーレは湊を間近で見つめる。

湊はそんなレイナーレの綺麗な瞳に魅入られつつ、彼女の顔にそっと手を添えた。

その感触に目を瞑ってしまうレイナーレ。

 

「レイナーレさん…キスしますよ」

「うん……」

 

そんな彼女に溢れんばかりの愛おしさを込めて、湊はレイナーレの唇に自分の唇を合わせた。

 

「「ん………」」

 

それからどれくらい時間が経っただろうか? 三秒程度かも知れないし、30分も経ったかも知れない。どれくらいの時間が経ったのか分からないが、二人にとってとても貴重で幸せな時間だった。

唇が離れると、レイナーレは顔を真っ赤にしながらキスに酔うかのようにうっとりとしていた。

 

「気持ち良かったね……キス」

「はい、そうですね……」

 

レイナーレの様子に此方も男が刺激されてドキドキする湊。恋人のとろけるような顔は見ていてドキドキが止まらない。

互いに先程まで合わさっていた互いの唇や吐息、その温もりを思い出して赤くなる。その魅惑的な感触は一回だけで満足出来るわけもなく………。

 

「もっとして……もっと一杯して欲しいの。愛してるから……大好きだから、もっとキスして欲しいの……湊君……」

 

レイナーレの艶っぽい表情に上目使いでのお願いというダブルコンボ。それを聞いた湊は抵抗する気も無く陥落。寧ろ喜んで白旗を振った。

 

「喜んで………」

 

そして再び合わさる唇。二人の胸は幸せで一杯になった。

そのまましばらく二人でイチャついた後に、カレーを二人で仲良く食べ始めた。

そのカレーは中辛だったが、二人にはとても甘く感じられた。

 

 

 その後は二人で仲良く後片付けをして風呂に入って寝るわけだが、いくらイチャ付いてる二人でも一緒に風呂に入る、何て言うことは無い。キスで精一杯な二人がそんなことをしたら、その時はショックで心臓が止まるだろう。それにはしたないことだとレイナーレは顔を真っ赤にして否定するだろう。だからそこから先に行くことは『今は』ない。

 だから風呂に順番に入り、そして隣同士で敷いた布団で横になって眠る。

一緒の布団に入るのはハードルが高いので無理だ。それは互いに分かっている。

だが、そんな二人でもこれぐらいはする。

 

「ねぇ、湊君……手、繋いでくれない?」

「えぇ、いいですよ」

 

そして二人は布団から手だけ出して恋人の手を繋ぐ。

手から伝わる愛おしい恋人の体温を感じる。

そして二人は眠る前に互いに声をかけた。

 

「湊君………だぁいすき……」

「僕も愛してます、レイナーレさん………」

 

二人は幸せを感じながら眠りについた。

 

 

 これが湊が目が見えるようになってからの日常風景だ。

 




書いていて殺意が湧きました。自分が書いているキャラクターに殺意が湧くとはこれ如何に………?

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