堕天使な彼女の恋物語   作:nasigorenn

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あまりキスさせずにイチャつかせるのは難しいですね。


番外その6 彼と彼女の下校風景

 授業が終わり放課後になると、生徒は様々な行動を見せる。

そのまま帰る者もいるが、基本は部活動へと向かうのがこの学園の生徒達だ。

当然湊も部活動に所属しているのだが、そこはある意味有名な所。

 

その名も『オカルト研究部』。

 

その名の通り、オカルトなことを研究する部活なのだが、それにしては可笑しな部活動であった。何せこの学園の有名人の殆どが所属しているのだから。

二大お姉様と称されるリアス・グレモリーと姫島 朱乃、学園の王子様こと木場 祐斗、学園のマスコットこと塔城 小猫。

皆学園でも人気高い有名人達だ。そしてそこに更に加わったのが、天然で癒しのアーシア・アルジェント、一途な美少女レイナーレ・ハイブラウ。二人ともその前に語った者達と負けず劣らずの美少女である。

そんな部活に後加わったのが、それまで盲目の善人と呼ばれていた蒼崎 湊と、何故入れたのか謎である学園随一の変態である兵藤 一誠だ。

これだけ有名人が揃うと他の生徒も入りたくなるものだが、それは不可能な話だ。何せこの部活は他の部活と違い、部活動に所属している生徒が推薦し、それを部長であるリアスが認めて初めて入部出来るのだから。本来部長にそのような権限はないのだが、何故かこの部活は顧問がいない。だというのに、それが通るというのだから不思議だ。しかもそのことを誰も疑問に感じない。故にこのオカルト研究部は、選ばれた者しか入れない特殊な部活動とされていた。

そんな部活動に所属している湊もまた、選ばれた者のように思われるだろう。

しかし、本当は何てことはなく、ただ『本当のこと』を知っているだけの生徒というだけ。

そのため所属していると本人は思っているが、今では少し立場が違う。

湊本人は知らないが、彼の裏での肩書きは『堕天使陣営首脳関係者』だ。

首脳であるアザゼルの知り合いであり、そのアザゼルが溺愛している友人の娘の婚約者(誤字にあらず)、そんな存在なのだ。もし湊にどこかの勢力が手を出そうものなら、その時はアザゼルが本気で動く。つまり堕天使陣営の殆どがその者達を許さないというわけだ。

そんなVIP待遇にされていることなど知らない湊だが、知ったらあまりの申し訳なさに謝り続けてしまうだろう。

そんな重要人物と化してしまったことに気付かずに過ごすに部活動を行う湊。

と言っても彼は悪魔ではないので悪魔の仕事をすることはなく、夜の部活動にも参加しない。ぶっちゃけやることなどないのだ。

強いて言うのなら、湊が部活動でしていることは、ただ楽しくお喋りをするのみ。

それを周りの皆から見れば、レイナーレとイチャついているようにしか見えないので、部活動でイチャついているだけとしか見えない。

故に部活動の話は後にしよう。今回はその後についてだ。

 

 

 

 部活動が終わると、湊とレイナーレは一緒に部室を出て旧校舎の外へ出ると、二人はそのまま校門へと向かった。

後はこのまま帰るだけなのだが、二人の場合はそれだけではない。

 

「今日は何が食べたい、湊君?」

 

隣で腕を組み寄り添うレイナーレは湊に優しくそう聞く。

その様子はまさに新妻のそれであり、頬を桜色に染めながら嬉しそうに笑うレイナーレに湊の胸はドキドキしてしまう。

その心地良いドキドキを感じながら湊は笑顔で決まった答えを返す。

 

「レイナーレさんが作ってくれたものなら、何でも」

 

その答えにレイナーレは少しばかり膨れる。

 

「もう、それが一番困るのに……」

 

ここで豆知識だが、調理を担当している者にとって食べたい物をリクエストした時に一番困る答えが『何でも』だ。何せこれはされた側からすれば、何を作って良いのか分からなくなる。せめて何かしらの指針があれば、それに沿って考えることが出来るので、もし聞かれたのなら何かしら指針になるようなこと言った方が良い。

さて、そこで少し困ったような顔をするレイナーレを見て内心可愛いと思う湊は、更に彼女に追い打ちをかける。

 

「レイナーレさんの料理は何でも美味しいですから。僕はそんなレイナーレさんの料理を食べられるだけで幸せです」

「湊君………」

 

褒められたのが嬉しくて、レイナーレは瞳を潤ませながら笑う。

大好きな人に褒められて嬉しくない女子などいない。それも湊の実に幸せそうな笑みでそう言われれば、レイナーレの心は幸福感に包まれる。

だが、それでも問題の解決にはならない。今晩の夕飯を何にするのかはまったく決まっていないのだから。

そのことを気にしつつも、レイナーレは湊に身を寄せる。

レイナーレの柔らかな感触と温もりを感じ、湊は胸の鼓動の高鳴りを感じて身体が熱くなった。

ドキドキしつつもそれが幸せで、ついつい笑みを浮かべてしまう。

それがレイナーレにとっても嬉しいものだから、強く言うことが出来ないのだ。

 

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、そう言われちゃうと困っちゃうのよ」

「ん~、そう言われても……此方は作って貰ってる身ですし、我が儘は言えませんよ」

 

少し苦笑しながら答える湊。彼の答えも決して間違いではない。作って貰っている身としては、文句を言ったり注文を付けられるような身分ではないのだ。

しかし、それを言われてレイナーレは困りつつも頬を染める。

 

「寧ろ私はもっと言って欲しいかな。だって、湊君に美味しいって言って貰いたいから。私、湊君が喜んでくれるのが好きだから……大好きな湊君に喜んで欲しいから………」

「レイナーレさん…………」

 

その言葉に湊の顔が赤く染まる。

耳まで真っ赤に染めて恥じらいながらそう言うレイナーレが愛おしくて仕方ない。その想いが伝わり、湊もまたそれに応えたいと思う。

故に湊はレイナーレの身体を優しく抱き寄せた。

 

「あ………」

 

レイナーレの口から小さな言葉が漏れる。

それすらも愛おしくて、湊はレイナーレに囁く。

 

「だったら、今日も一緒に買い物に行って決めましょうか。きっとそれが一番良い答えが出ますよ」

「そ、そうね………」

 

湊に顔を近づけられ囁かれたせいでレイナーレの心臓は早鐘を打つ。

ドキドキと鳴り響く鼓動が妙に聞こえたような気がして、レイナーレは顔の熱が上がっていくのを感じた。

そして湊の手を引くように手を繋ぎ、少し前に行って湊の手を軽く引いた。

 

「なら、一緒にスーパーにいこう。それで一緒にお買い物しましょう」

「えぇ」

 

 そして二人は下校中にスーパーに寄っていく。

一緒に二人で入り口から入り、籠を二人で仲良く持ちながら買う物を見ていく。

 

「もう、レイナーレさんはこうしないと怒りますよね」

 

持ち手の片方を持ちながら湊は苦笑すると、レイナーレは少し甘える様な声で答えた。

 

「だって、二人で食べるためのお料理だもの。全部二人でやりたいの……それに、その、この方が恋人っぽいって言うか、新婚さんみたいで憧れるし………」

 

そう言うレイナーレを湊は直視出来なかった。

何せ可愛すぎるから。もし人が見ていなければ、そのままギュッと抱きしめたくなるくらい今のレイナーレは魅力的だ。

湊はその気持ちを我慢しつつ、代わりに自分の想いを言葉にしてレイナーレに答える。

 

「そ、そうですね……その、将来そうなったら、毎日一緒にお買い物して一緒にご飯を作るの良いかもしれませんね」

「湊君、それって……………」

 

その言葉に目を潤ませ上目使いに湊を見つめるレイナーレ。その期待の籠もった視線に湊も又真っ赤になった顔で答えた。

 

「ここは人が居ますから、大きな声では言えません。でも、その……僕も将来はそうなりたいんですよ、レイナーレさんと一緒に。だから今は、その予行練習みたいな感じで………」

「う、うん…………」

 

湊の言葉の意味を察して顔から蒸気が噴き出すくらいレイナーレは顔を赤らめる。

しかし、その答えは彼女にとって実に嬉しい答えだ。自分が思っていたことを湊も想ってくれる。それが分かり、嬉しくて少し泣きそうになった。

それは湊も同じであり、自分の望みを彼女に伝えて此方も負けず劣らずと顔を赤くした。

そして見つめ合う二人。流石に店内でキスはできないので堪えるが、それでも充分に幸せを感じた。

そして二人は動き出す。

野菜売り場で賑やかに話しながら野菜を取り、お肉売り場で鶏肉を買う。

結果籠の中に入っていったのは、定番中の定番である。

それらの会計を済ませ、二人は店を出る。

その帰り道、レイナーレは満面の笑みを湊に向けた。

 

「今日はこれで美味しいカレーを作るからね!」

「えぇ、楽しみに待ってます」

 

湊と一緒に買い物をしてご満悦のレイナーレ。湊はそんな彼女の笑みに心奪われつつも、彼女が作ってくれるであろうカレーを楽しみにする。美味しいことは分かっている。だが、それ以上に彼女のことだ。自分のタメに作ってくれることが湊には嬉しいのだ。

そんなわけで二人とも楽しそうに笑いながら家へと帰る。

 

「ねぇ、湊君。カレー、美味しく出来たらさ………ご褒美が欲しいの」

「ご褒美……ですか?」

 

その言葉にレイナーレは湊を見つめながら恥じらいつつも言う。

 

「うん………その……キス、してほしい……」

「っ!?…………はぃ………」

 

湊は最近目が見える様になってつくづく思う。

自分の最愛の人は魔性の女性だなっと。そしてその魅惑的なお誘いに自分は骨の髄まで魅了されてしまっているのだと。

でも、それが湊には幸せだと思うのだ。

だってそうだろう。自分の最愛の人は自分にとって、世界で一番愛おしい人なのだから。

 

尚、こんな日は大体スーパーのコーヒーが売り切れになる。

 

 


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