申し訳無いですが、甘くはないです。
番外1話 それから
二人がより絆を強固にした後の話をしよう。
幸せ一杯な二人のことなど、その後どうなるのかなど見え透いているのだから改めて報告する必要などないであろう。そこで強いて言うのなら、変わらず二人とも初心だということだ。
それだけでその後の二人がどのようになっているのかなど分かりきっている。
なので今回はほかの者達にスポットを当ててみようと思う。
まず、今回で一番の活躍をした物語のキーマンであるアーシア・アルジェント。
彼女はレイナーレに救助されて『神の子を見張る者』の保護下に入った。アザゼル庇護の元、人間界で生活しつつ神器の研究に貢献することになり、今はレイナーレと同じ駒王学園の二年生としてレイナーレと湊がいるクラスの一員になっている。
清楚な彼女は当然教室内でも騒がれ、兵藤達変態三人衆も大いに盛り上がりを見せた。そしてセクハラ紛いなことをしようとしてはクラスの女子達からシバかれている。
その純粋な性格からすぐに親しくなり、今ではクラスメイトの良くお喋りをして楽しんでいるようだ。尚、一番仲が良いのはレイナーレ。二人ともとても仲が良く、一緒によく話したりしている。
因みに、クラスで唯一下ネタを言う女子である桐生 藍華に良くレイナーレ共々からかわれ一緒に赤面する姿は良く見られているようだ。
また、部活は湊やレイナーレと同じくオカルト研究部であり、立場としては堕天使陣営所属、親善大使付き人ということになっている。ならば湊はと思うが、彼の場合は事情を知っていて尚且つレイナーレの恋人ということもあって問題は無い。
アーシアは部活でリアス達悪魔と会話をすることも最初こそ少し怖がっていたが、直ぐに慣れて今では充実している。
彼女自身、年相応の普通の少女としての生活を満喫し、実に楽しそうである。
次に、今回の騒動で活躍したカラワーナ、ミッテルト、ドーナシークの三人。
彼等はあの後解くに問題無く撤退した。カラワーナは襲いかかって来た戦争派の堕天使二人を見事に打ち破り、レイナーレのことを心配していた。この三人の中で唯一まともそうなだけに、これからも苦労が絶えなさそうだ。
ミッテルトははまぁ………いつも通りだったとしか言えない。教会に所属する二人組の刺客を持ち前の毒牙にかけ、もう教会には戻れないようにした。本人曰く、それなりに気持ち良かったとのこと。彼女の毒牙に掛かったら最後、しばらくはそのことで頭がいっぱいになってしまうらしい。もう普通には生きられないかもしれない。
ドーナシークは洗脳したと言っても過言ではなく、見事に同志に仕立て上げて満足したようだ。今後あの二人は教会内でも同志を募るらしい。ある意味教会陣営にもっとも甚大な被害を出すかも知れない。
三人とも戻って来た所で平常運転であり、三人とも人間界で思い思いに過ごしているようだ。
また、レイナーレとアーシアを助けたヴァーリ。
彼はあの後、再び己の鍛錬の道を進み続けているようだ。時偶にレイナーレの様子を見に来るようになったが、その際に湊と出会い、どういう訳か気が合うようで仲良くなった。それは良いのだが、そのせいでレイナーレが稀にヤキモチをやくことに。
彼は未だに見ぬライバルである『赤』を待ち望んでいるらしい。そのために鍛え続けているようだ。
今回一番の悪役であるディオドラ。
彼は現在、冥界の犯罪者収容施設でかなり厳重に拘束され投獄されている。
それというのも、アザゼルがブチ切れ寸前の状態でサーゼクスに連絡を入れたのが原因であり、アザゼル曰く……。
『うちのレイナーレを傷つけようとした奴だ! 絶対に後悔させてやる、追い詰めて追い詰めて精神的に二度と復活できないように叩き潰してやる!』
とのこと。レイナーレとヴァーリから報告を受け、激怒したアザゼルはシェハムザに取り押さえられつつもその連絡をしたのである。
堕天使の親善大使を襲撃したとなると、休戦協定に罅が入りかねないとし、サーゼクスは謝罪と共にディオドラを以下の通りにしたのである。彼がその収容所から出ることは生涯ないようだ。尚、彼のせいでアスタロト家は没落寸前のダメージを負い、今は粛々としているそうだ。
あぁ、そう言えば報告し忘れていたことがあった。
湊の目が治ったことの報告に関して。彼の目は本来治らないはずのものであり、それが治ったとなれば騒動になるはずだろう。
しかし、そうはならなかった。
何故なら、湊のことを知っている人達の記憶を皆書き換えたからだ。
リアス達などの異形は催眠術なども使え、それによりただの人間なら記憶の改ざんや認識などを操作することが出来る。なのでレイナーレはリアス達や部下達に手伝って貰い、皆の記憶を書き換えたのだ。
その内容は『海外で湊の目を治療する方法が見つかり、病院の先生が紹介状を書いて送ったから』というものである。
故に皆湊の目が治ったことを祝いこそすれど疑問に思う者はいない。
ただ一部、違和感を感じている者もいるようだが……。
これが周りの者達の現在。そして、当の本人と言えば………。
朝、湊は目を覚ます。
それまでは目が覚めても暗闇のままであった。しかし、最近は違う。
ずっと住んでいたが今まで見ることがなかった天井、自分の身体を包む布団の色、そして何よりも…………。
「おはよう、湊君」
「おはようございます、レイナーレさん」
最愛の恋人の微笑みが見える。
その事が嬉しくて湊は笑みを浮かべた。
見えるようになった恋人は想像を遙かに超えて美しく可憐で可愛い。湊はそんなレイナーレの姿を見る度に胸をときめかせ、ドキドキしつつも幸せに浸っていた。
そのままずっと彼女を見つめていたい。しかし、このままでは学校に遅刻してしまう。だから少し勿体ないと思いつつ、湊は布団から出ようとする。
そんな湊にレイナーレは頬を赤くしつつ言う。
「湊君の寝顔、可愛かったよ………」
その言葉を聞き、湊はレイナーレの可愛らしさと共に顔を赤くした。
「ぁ、ぁぅ………」
レイナーレはそう言うが、湊は目が見えるようになってから更に思う。
「そう言うレイナーレさんの方が可愛いです。目が見えるようになってもっと好きになってしまって、ずっと見て居たくなるくらい可愛い……」
「え、そ、そんなこと………ぁぅぁぅ……」
以前よりも隠し事が苦手になったようで、思ったことを口にしてしまい共に真っ赤になるレイナーレと湊。
相も変わらず二人は微笑ましい限りだ。