そしてレイナーレはかなりの初心です(笑)
祝1900超え!
もう、作者は言葉を失っております、過去、これ程お気に入りが貰えたことなどなかったので。嬉しさのあまり正気を失いそうですよ。
本当に皆さん、ラブコメ大好きですね。作者は大好きです!
翌日になり、レイナーレは動きやすい服装で玄関の前に立っていた。
今日から数日間、彼女はこの部屋には帰らない。湊の目を治せる可能性がある神器を持っているであろう人物『アーシア・アルジェント』の身柄を保護すべく、これから一旦冥界に向かう予定だ。
その見送りに湊と共に玄関の前にいるのである。
「それじゃ湊君……」
名残惜しさを感じつつもレイナーレは湊に話しかける。
本音で言えば行きたくない。数日とは言え湊と会えないなんて、彼女にはとても耐えられなかった。湊の目を治す、という目的がなければ例えアザゼルから頼まれたって断っていただろう。それぐらい今回の件は彼女にとってこの件は重要であった。
それを分かっているからこそ、彼女は動く……湊のために。
それでもやっぱり名残惜しいのは仕方ない。
それは湊も同じであり、少し悲しそうな雰囲気を出しつつも笑みを浮かべる。
「えぇ、レイナーレさん」
湊は少し寂しそうな笑みでそう答える。
後は行ってらっしゃいと送り出す言葉をかけるだけだが、その言葉が上手く出ない。
それがもどかしくも何処か嬉しいと思う湊。それだけ自分もまた、彼女と一緒に居たいのだと分かるから。
そんな湊の様子を見ていてレイナーレは微笑む。
湊の考えていることが分かった。その想いが伝わってきた。
だからこそ、胸が温かく嬉しい気持ちで一杯になる。愛しい人に一緒にいたいと思われて嬉しくない者なんていないのだから。
だからこそ、彼女はより行動に移す。
ここにずっといたい……そんな気持ちを切るために。
「湊君、ちょっと良い?」
「え? はい…」
レイナーレはそう言うと、湊に気付かれない様にそっと近づく。
そして湊の頬にそっと手を添えた。
「あ………」
急に触れられたことで声が口から漏れる湊。
そんな湊を見て頬を赤く染めつつ、レイナーレは湊の顔に自分の顔を近づけた。
ゆっくりと、しかし確実に近づいて行く二人の顔。レイナーレの瞳には、頬を触れられていることで顔を赤らめている湊が映り込み、彼女の顔の朱も色濃くなっていく。そして彼女はそんな湊の唇に………。
「……チュ………」
「っ!?」
キスをした。
それは触れるだけの簡単なキス。
それだけでも、彼女達には十分な行為だ。事実、唇を合わせている間は僅かだというのに、二人の顔は真っ赤になっている。
いきなりキスされたことに驚く湊。その内心は昨日寝る前にしたことがバレたのではないかとドキドキしていた。
勿論、それは正解でもあり、あの時レイナーレは起きていたのだから知っている。
そしてこれはその意趣返しも少しばかり混じっていた。
互いに真っ赤になる顔。そんな湊の顔を見つつ、彼女ははにかんだ。
「そのね……行ってきますのキス………なんてね」
恥ずかしさを堪えつつも、少しお茶目に振る舞うレイナーレ。その内心では心臓が破裂するんじゃないかというくらい鼓動が聞こえてきた。
そしてその答えに湊はどう返して良いのか困っていた。彼の胸も又、ドキドキと高鳴りを見せている。
嬉しいとか気持ち良いとか、そんな感情が渦巻きどう言葉にして良いのか分からない。だが、それでも………幸せを感じて笑みが浮かんでしまう。
「もう、レイナーレさんは……いきなりなんて……ちょっとずるいですよ」
「えへへへへ……そのね、たまにはこういうのもいいかなって思って」
そう恥じらいながら答えるレイナーレに湊もまたはにかんだ。
見えないが、それでも彼には分かる。愛おしい恋人が目の前で恥じらいつつも微笑んでいることが。一度も見た事はないが、それでもはっきりと彼女のことが愛おしいと感じる。それが嬉しくて幸せだ。
それが伝わるからこそ、二人とも顔を赤らめたまま話す。
「これはね、ちゃんと湊君の所に早く帰れますようにっていう自分への願掛けでもあるの。だからその……頑張ってくるね」
「えぇ、頑張って下さい。でも、あまり無茶をして身体を壊したりしないように」
「うん、分かってる」
そう言ってレイナーレは湊から離れた。
そのことを名残惜しく感じつつも湊もまた離れ、そして今度こそ彼女に笑顔を向けてそれを口にした。
「それじゃ今度こそ……いってらっしゃい、レイナーレさん」
その言葉に彼女は笑顔で返事を返した。
「うん、行ってきます!」
そして彼女は転移魔法陣を展開して転移していった。
冥界に転移したレイナーレ。彼女が転移した先は彼女の職場である『神の子を見張る者』である。
ここでまずは招集を掛けた部下達に作戦の概要を説明する。
レイナーレはエントランスを通って借りた会議室へと歩いて行く。
そして指定された部屋の前に立つと、普通にノックして入った。
「皆、揃ってるわね」
レイナーレに言葉をかけられ、それまで自由にしていた彼女の部下達は皆頷いた。
室内に居たのは携帯を弄くるドーナシーク、鏡を使って軽いメイクをしていたミッテルト、そしてレイナーレがくるのをじっと待っていたカラワーナの3人だ。
3人はレイナーレの姿を見て、佇まいを直すと話を聞く体勢を取る。
それは良いのだが、どうにもカラワーナ以外不満がありそうだ。
何せこの呼び出しは急に行ったものなので、それまでプライベートを過ごしていた3人には無理をして来てもらったのだ。不満が出るのも仕方ない事である。
まずはそれを宥めるべく、レイナーレは不満気なミッテルトとレイナーレに話しかける。
「急に呼び出したのは悪かったと思ってるわ。でも、これもちゃんとした御仕事だからそんな顔しないで」
仕事だから仕方ないということは分かっている。それでも不満なのは致し方ないと二人は文句を愚痴り始めた。
まずドーナシークが話す。
「仕事だから仕方ないのは分かっています。ですが、もう少し早く言って下さればスケジュールの調整が出来たのですが……」
それを聞いて申し訳なさそうな顔をするレイナーレ。
そんなレイナーレと違い、ミッテルトはドーナシークをからかうかのように話しかけた。
「因みに呼び出しを受ける前は何してたんっすか?」
それを聞いてドーナシークはニヤリと笑った。
「私はマダムとディナーを楽しんでいたのだよ。その後はスゥィートを取っていたのだが、それは今回の呼び出しで致し方なく断念だ。彼女が悲しんでいたことが心苦しいものだ」
「単にババアと夕飯食べてその後ホテルでベットインしようとしていたっと」
「ババアではない、熟女だ!!」
そんな二人のやり取りを聞いてレイナーレの顔は真っ赤になったのは言うまでも無い。未だにキスで精一杯な彼女にはその先は刺激が強すぎるのだ。
そして更にミッテルトから追撃がかけられることに。
「そう言う貴様はどうなのだ!」
鼻息を荒くして怒るドーナシークにミッテルトはふふんっと胸を張って堂々と答える。
「ホテルで4……してたっす!」
「「ぶっ!?」」
自分より幼い見た目の少女から聞かされた爆弾発言。それを聞いてレイナーレとカラワーナは噴き出した。
そんな二人が面白いのか、ミッテルトは妙にニヤニヤしながらその時の光景を語り出す。
「ちょっとその辺で引っかけた『おに~ちゃん』達なんっすけど、これが中々にイイモノを持っていてよかったすよ。喉を遠慮無く突っ込んで来たり、後ろの二つを交互に差しまくったり。息がろくに出来なくなって意識が白ボケ始めるンすけど、身体はどんどん鋭敏になって……」
「っ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?」
「もういい、もう良いからこれ以上言うな!」
真っ赤になって頭から蒸気を噴き出すレイナーレ。
先程も言ったが、彼女はまだキスで精一杯なのだ。その先なんて、とてもとても…………。
そんなレイナーレを見て流石に不味いと思いカラワーナが止めに入った。
彼女も顔が赤くなっているが、大学生ということもあって俗な事もそれなりに慣れているのでレイナーレほど酷くはない。
「ふん、やはりそんなことだったか、この淫売め」
「人のこと言えねぇ奴に言われたくねぇっすよ」
カラワーナがレイナーレを復帰させている間に睨み合う二人。第三者から見れば二人ともそこまで差などない。
そんな二人の睨み合いもそこそこに、何とか復帰させたレイナーレに何とか話をさせようと頑張るカラワーナだが……。
「んぅっ……ちょっと垂れて来ちゃったすよ」
「何が!?」
再びミッテルトによってレイナーレの頭が沸騰してしまう。
「あぅあぅあぅあぅ~」
「落ち着いて下さい、レイナーレ様! 駄目です、これ以上考えては心に猛毒です! 正気に戻って下さい」
多分この中で一番苦労しているのは間違いなくカラワーナだろう。レイナーレではこの二人は止められそうに無いのだから。
因みにミッテルトの立っている床の部分は確かに何かで濡れ始めていた。
そして今度こそ正気に戻ったレイナーレは若干涙目気味で二人に謝り始めた。
「その、プライベートを邪魔してごめんなさい……」
「いいんですよ、レイナーレ様! そこの色ボケ馬鹿二人が悪いだけです! あなたは何も悪くありませんから、我等の上司として堂々と振る舞って下さい」
「うん、ありがとう、カラワーナ。そう言ってくれるのはあなただけよ……」
自信がなくなりそうなレイナーレを激励するカラワーナ。そんな彼女の声援で何とか気を取り直し、レイナーレは改めて今回の任務内容を話すことにする。正直回り道のしすぎであった。
「今回の私達の任務は神器保有者の保護よ。詳しくはこれから回す書類を見て」
表情を先程まで慌てていた生娘から真面目なものに変えてそう言うと、レイナーレは資料を3人に配る。
その資料を受け取り中身を見て、大体のことを概ね理解する3人。
更に言えば、普段はそんな仕事を受けない彼女が何故受けたのかも既に察した。この上司は色々な意味でわかりやすいのだと。
だからこそ、それまでお巫山戯気味だった二人も気を引き締める。彼等の上司の思いが如何に強いのかを分かるから。
そんな部下3人を見て、レイナーレは頼もしいと思いつつ、資料にも書かれていることを改めて口にする。
「保護対象は『アーシア・アルジェント』、人間で年齢は16歳の女性。彼女の持っている神器は『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』。効果はあらゆる傷の治療。そのため、他の勢力から狙われても可笑しくない。と言っても、悪魔側とは一応休戦協定を結んでいるからそこまで此方と派手にはぶつからないはずよ。寧ろ警戒すべきは……」
そこで一旦言葉を切ると、レイナーレは更に真剣そうな顔をした。
「私達と同じ堕天使。特に最近不審な動きが見られるコカビエル様やその一派ね。どうもこの子の神器を狙っているらしいのよ。だから彼等よりも先にこの子を保護しなくちゃいけないの」
それを聞いて3人は納得する。
ここ最近妙に不穏な空気を感じているからだ。それも好戦的な堕天使達から。
だからこそ、納得もいく。
そして任務の内容など理解すれば、彼女達の行動は早い。
レイナーレ達は皆一カ所に集まると、そこで転移魔法陣を展開し始めた。
「目標は現在、イギリスのとある地方の森林を教会の追っ手から逃げているらしいわ。だから大体そこら辺に飛ぶわよ」
「「「はい!」」」
そして一気に転移する4人。
レイナーレは景色が揺らいでいく中、湊に向かって内心で心に決める。
(待っていて、湊君。必ずその目を治して上げるから!)
その思いと共に、彼女達は転移した。