堕天使な彼女の恋物語   作:nasigorenn

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あけましておめでとうございます。
これからもこの作品を楽しんで貰えると嬉しいです。


第73話 彼女は悪魔達に相談を持ちかける。

 改めて湊の目を直すと決意を決めたレイナーレ。

それは良いのだが、彼女にはあまりにも時間が無かった。

何せ彼の誕生日は一週間後なんだから。

そうじゃなくて別に良いはずなのだが、それでは駄目だと彼女は思う。彼の誕生日に……最愛の恋人の誕生日に最高のプレゼントを贈りたい。それは誰もが恋をすれば思うこと。

だが、そう思った所で直ぐに行動に移せるというものでもなかった。

それというのも、そもそもレイナーレは常に湊と一緒にいるから。

彼と常に一緒にいるため、彼の目を治す方法を模索するのが困難なのである。

現代医療で無理なのなら、神秘の技術……悪魔の魔術や天使や堕天使の力、それ以外にも仙術やその他の人外の能力、そして異形の力を宿す神器『セイクリッドギア』ならば可能性は充分にある。そうだからこそ、彼女は治療する方法を探したいが、湊には知られたくはないのだ。

別に後ろめたいことなど一切ない。単純にサプライズとして喜ばせたいのだ。

それに、もし湊がそのことを知ったら、きっと困った顔をしてしまう。彼は心優しく人の心に機敏だ。レイナーレがしようとしていること気付かれる可能性があるし、そうなれば無理をしていると思ってしまうだろう。となれば湊は調べないで欲しいと言い出すかも知れない。そんな無理をしてまで治るかどうか分からない目のことを調べなくて良いと。それよりもそれで無理をして身体を壊したりしたら、それは自分の目なんかのことよりも余程悲しいと、彼ならそう言うだろう。

レイナーレにはそれが分かる。だって彼女は湊のことが大好きなのだから。大好きな恋人のことを分からないわけがない。だからこそ、知られるわけにはいかないのだ。

そんなわけで、この非情に困難な捜し物はスタートを切ったわけである。

 

 

 

「夜にあなたが来るなんで珍しいじゃない、レイナーレ」

 

決意を決めた翌日の夜、レイナーレはある場所に来ていた。

それは彼女が通っている駒王学園、その中でも未だに残っている旧校舎の一室。この学園で唯一旧校舎で活動を行っている部活の部室である。その名はオカルト研究部。表に於いてはそのままの意味。そして裏の意味に於いては、この地を管理する悪魔『リアス・グレモリー』の本拠地。

要するにレイナーレや湊も所属している部活動の部室だ。

その部室内では現在、部長であるリアス・グレモリーやその眷属達が揃っていた。何故学生が既に締め切っているはずの学園にいるのかと疑問に感じられなくもないが、彼女達悪魔は夜が本領。昼間の部活ともう一つ。悪魔としての仕事をするためにこうして『夜の部活動』を行っているのだ。湊やレイナーレも部活には所属しているが、人間と堕天使では夜の部活に参加する意味が無いので行くことは今までなかった。彼女としても、湊を危ない夜間に出歩かせることなどさせたくないし、最近では湊と一緒に過ごしたいのでまず考えもしなかった。

そんな彼女がいきなり部室に転移してきたというのだから、唐突なことに驚きを隠せないリアス達。

そんな彼女の問いに対し、レイナーレは顔を真っ赤にしながら答える。

 

「その……少し用があって来たの……っていうよりも正直相談したいことがあって……」

 

妙に恥ずかしそうに話すレイナーレ。

そんな彼女の様子を見て、何かあったのだろうかとリアス達は思った。まぁ、彼女の様子からその相談したい事というのが十中八九湊のことであることは容易に想像出来たが。

 

「それは良いんだけど、どうしていきなり転移してきたのよ? 少し驚いてしまったわ。蒼崎君はどうしたの?」

 

リアスは相談には乗るが、その前に聞きたい事を聞くことにした。

堕天使であるレイナーレは普段からあまり転移など使わない。それを使うということは余程何かがあったということではないのかと心配になったからだ。

そう聞かれ、何故かレイナーレはもじもじしながら答えた。

 

「そのね、湊君は今家で留守番してもらってて、それで彼には堕天使として仕事で少し外に出るって言ってきたから、多分大丈夫だと思う」

「その割に随分と何かあった感じだけど、そこの所はどうなのよ」

 

彼女の様子にニヤニヤとした笑みを浮かべながら問うリアス。

そんなリアスにレイナーレは頬を両手で見られないように押さえる。それでも丸わかりなのだが

 

「そ、そんなに顔に出てた!?」

「えぇ、しっかりと。それで……何があったのか、正直に白状しなさい。しないと相談には乗らないわよ」

「そ、そんなぁ……」

 

勿論本心から残念がっているわけではない。

彼女としては幸せな気持ちが溢れて隠しきれないことに恥ずかしさを感じつつも、それでも嬉しくて仕方ないといった感じなのだから。

そして彼女は素直に白状する。

 

「その、湊君に御仕事で外に行くって言ったら、心配して貰えて。『夜に女の子が出歩くのは危ないですから、気を付けて下さいね。もしレイナーレさんに何かあったらと思うと、僕は気が気じゃないですから。その……寂しいですよ』って言ってもらえたし、その前に少し待つように言われて待ったら、湊君たら、私の顔をゆっくりと手で触れて、それで………おでこにキスしてくれたの……『あ、安全でありますようにって。そのおまじないですよ』って……ぁぅ、もう、湊君ったら~~~~~~~~!」

 

実に幸せそうに語るレイナーレ。

恋人同士でもおでこにチューは気恥ずかしいものであるが、それでも嬉しかったようだ。

そんな幸せな様子なレイナーレにリアス達は少し呆れ返る。

何か特殊な事情でもあるのかと少しは疑ったが、やはり予想通りいつもと変わらぬ惚気だとわかったから。

まぁ、それでも恋に興味がある年頃の彼女達にとっては好ましい話ではある。

だからなのか、少し意地の悪そうな笑みを浮かべつつリアス達はレイナーレに話しかける。

 

「へぇ~、おでこにキスしてもらったんだ。何て言うか、蒼崎君って意外とロマンチストなの?」

「あらあら、新婚夫婦のようで初々しいですわね」

「不潔………でもない感じがしますね」

 

女性陣はそんな感じに食い付き、唯一の男である祐斗は苦笑を浮かべる。

 

「そ、そんな、新婚夫婦みたいだなんて……えへへへへ……」

 

そしてレイナーレは周りに弄くられ嬉し恥ずかしながらに素直に答えていくわけだが、それでは本題からずれていくことになってしまう。

それに気付いた彼女は頭を振って意識を切り替える。

 

「ってそう言うことを話しに来たんじゃないわよ!?  何嬉しそうにしてるのよ、私! でも、嬉しいのは事実だし………えへへ……」

 

どうにも幸せが抜けきらない彼女だが、それでも本題に戻る。

そして彼女は改めてリアス達に相談事を話しかけた。

 

「それで相談したいことなんだけど……悪魔の治療魔術や回復系アイテムに付いて聞きたいのよ」

 

それを聞いたリアス達は当然不思議そうな顔をする。

それはそうだろう、何で彼女がそんなものに興味を抱いているのかがわからないのだから。

堕天使が悪魔の術やアイテムに興味を持つというのは、それなりに珍しい。だからこそ、リアス達はその話をもっと聞くことにした。

 

「それは何か目的があっての事よね? それについて話してもらえないかしら。幾ら親善大使のあなたでも、言えない情報とかもあるからね」

 

そう言われ、レイナーレは真剣な顔をする。

いくら彼女が親善大使だろうと、流石に機密に近いものなどは話せないし、そうでなくても不思議なのだから。いったいそんな情報を手に入れて何をするのかということも気になるからだ。

それはレイナーレも分かっていること。もし彼女がリアス達と同じような立場なら同じようにしたはずだから。

だからこそ、彼女は本音を打ち明ける。

恋する乙女の、ささやかながら本気の願いを。

 

「私ね……湊君の目を治してあげたいの。彼にまた、世界を見せてあげたいの! だから、そのために……協力して下さい!!」

 

そして一生懸命に頭を下げるレイナーレ。

そんな彼女にリアス達は暖かな目を向けて答えた。

 

「えぇ、私が知る限りなら何でも答えてあげるわ。何せ恋する乙女の一生懸命な願いだもの。同じ女として、是非とも協力してあげるわ」

「リアス……ありがとう……」

 

 こうしてまず、悪魔の治療技術について彼女は聞くことが出来る様になった。

 




何故アザえもんが先ではないのか? それは次回に明かされます。

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