堕天使な彼女の恋物語   作:nasigorenn

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さて、そろそろ終わりが近づいて来ました。
そして申し訳無いのですが、リアルの御仕事の関係で更新がかなり遅くなります。本当に申し訳ないです。


第71話 彼女は惚気る。

 現在、彼女は部下達の目の前で茹だったタコのように顔を赤くしてのぼせたようになっていた。

それと言うのも、一番幼い部下から実に卑猥でいやらしい話を聞かされたからだ。

歳こそ彼女よりも下だが、この部下は男女の情事において百戦錬磨の玄人であり、そっちの事に関しては経験豊富だ。そんな部下から所謂『性の手ほどき』など聞かされれば、この堕天使にらしからないほどに初心なレイナーレは当然羞恥に身を焦がすというわけだ。

その結果が今のこれ。

冷たい飲み物を飲もうにも火照った身体の熱は冷めていかず、妙に彼女はそわそわして落ち着かない。

彼女をそのようにした張本人であるミッテルトは少しは満足したのか、ニマニマと笑う。

 

「まぁ、これでもまだ初級っすよ。これから先、レイナーレ様はおにーさんにどんな『プレー』を要求されるのかによってはもっと深いものもやることになるかも知れないっすからね。でも、童貞ぐらいにはこれが丁度いいっす」

 

それが更にレイナーレの羞恥を呷る。

そのせいで耳まで真っ赤になり、内心では『そんなこと』をしている自分を妄想しては恥ずかしさで身悶えていた。初心ではあるが、そういった知識はあるのだ。年相応の少女なのだから。

そんなレイナーレを見ていて流石に可哀想に思ったのか、今度はカラワーナが彼女に話しかけた。

 

「すみません、レイナーレ様。どうもこいつは所謂肉食系ですぐに行為に発展させようとしますから。まだ付き合い初めてそこまで時間が経っていないのですから、レイナーレ様は問題ありません。寧ろその年齢での交際なら、その……キスくらいで丁度良いかと思います」

「そ、そうよね! やっぱりまだそういうのは早いわよね! ね!」

 

カラワーナの言葉にそれまで茹だっていたレイナーレはそうだと同意し、首を縦に良く振った。

そんな彼女にカラワーナは改めて問いかける。

 

「まったく、こいつのせいで脱線してしまいましたが……あの後はどうなりましたか? 先程の電話の感じから実に仲が良いということは窺えますので」

「そ、それは、その……うん……」

 

湊との仲の良さに関し、レイナーレはそう問われて恥ずかしそうに頬を染めつつも嬉しそうに頷いた。

そして改めてコホンと軽く咳払いをすると、カラワーナに話し始めた。

 

「そのね、カラワーナはもう知ってると思うけど……湊君が風邪で倒れちゃった時に告白したの。その時、湊君……どうも私のことで悩んでいたみたいで、それで無理して風邪を引いてしまったみたいなの。自分は役立たずだから、そんな自分に私はふさわしくないって。それで離れるべきだって……それを聞いて私、凄く怒っちゃったの。そんなことは関係無いって。その勢いで告白したのよ。確かにその事に怒りを感じたけど……それだけ真剣に私のことを考えてくれてたんだなぁって……凄く嬉しかった……」

 

当時のことを思い出して幸せそうに頬を染めるレイナーレ。

そんな様子をカラワーナはまるで妹を見るかのような目で見ていた。

 

「それでその時、湊君が返事を返してくれたの。『僕も……レイナーレさんのことが好きです。異性として、一人の女の子として。生涯を共にしたい人として、あなたのことが大好きです。まだ学生の身で言うのは重いと思いますけど……愛してます。心の底から、生涯たった一人、僕の中で唯一決まった『一番大切な人』。だから……こんな僕でも、受け入れてくれますか』って。凄く真剣でいて、それでいて凜々しくて……湊君、格好良かった……」

 

その言葉にレイナーレはその時のことを思い出して頬を染めるも目元緩め、それを聞いた部下3人はそれぞれ反応を見せた。

 

「くぁ~、何て青臭い台詞っすか!? 聞いてるこっちが恥ずかしいっすよ~!」

「凄く、その……情熱的な告白ですね。何だか聞いてる此方もドキドキしてしまいます」

「悪くはない殺し文句ですね。しかしまだ甘い! 男なら、その後は更に『だから、貴方の全てを自分に寄越せ』くらい言わねば。特に35を過ぎた後に毎日閨でしっぽりと……」

 

若干アレなこと言っている者もいたが、当時を振り返って幸せそうなレイナーレには気付かれない様だ。

 

「それでその時、私からキスしたの。湊君は目が見えないから……それに、その……嬉しくて嬉しくて、彼が愛おしくて堪らなかったの。もしかして私、はしたかったかな…」

 

その事を今更ながら恥じらうレイナーレ。

そんな彼女にカラワーナは内心驚きつつもフォローを入れる。

 

「そんなことはありません。好きな相手と想いが通じ合ったのなら、キスだってしたくなるものだと思いますから。

「へぇ~、それがカラワーナの理想ってやつッすか。見た目に反して乙女っすね~」

「五月蠅い! お前のような淫乱に言われたくない」

 

茶々を入れられ怒るカラワーナだが、精神を落ち着けてレイナーレに先を促す。

それを受けて、レイナーレはその後あった話をする。

 

「その後、まだ湊君が風邪で体調が悪かったからお粥を食べさせてあげたの。貴方の御蔭で作れたお粥よ。本当にありがとうね、カラワーナ。凄く感謝してる」

「いえ、そんな! 上司が困っているのなら、助けるのが部下の勤め。寧ろレイナーレ様に感謝されるとは感激の至りです」

 

レイナーレの心の底からの感謝にカラワーナは少し大げさながら感激だと答える。そしてそう言いつつも、彼女自身個人的にもレイナーレの恋愛が上手くいって欲しいと思っていたので、そう言ってもらえることは嬉しかった。

 

「湊君、お粥を美味しいって言ってくれて。それで全部食べてくれて『愛情が一杯籠もってるから、こんなに美味しいのかな』って言ってくれたの……凄く嬉しくて、もっと湊君に褒めて貰いたいって思ったなぁ、あの言葉……湊君が凄く幸せそうに笑ってくれたから。その後にね、湊君の背中を拭いて上げたり、寝るまで膝枕をして上げたり………」

 

その後も続く惚気話。

しかし、それを語るレイナーレの幸せそうな顔を見てカラワーナも微笑んだ。

彼女が心配するまでもなく、レイナーレと湊の仲は良好のようだ。

 

「とてもためになる話をありがとうございます。参考にとてもなりそうですよ」

「そ、そう? ならいいんだけど」

 

今更ながらに惚気話をしたと恥ずかしがるレイナーレだが、カラワーナにそう言われ取りあえず頷いた。

そして今度は自分の出番だと言わんばかりにドーナシークが前に出た。

 

「まぁ、話を聞いている限りでは悪く無いようですが……まだ甘いですな。男は女を夢中にさせる魅力を持たないといけません。そのためにはまず『熟女』について学ばなければなりません。彼女達は男を優しく包み込む包容力に溢れ………」

 

そこから始まるドーナシークの熟女講義。

当然それは男らしく堂々としたものであり、大声で辺りに響く。同席者には堪っった物ではない。

呆れ返るカラワーナ、下賊だと言わんばかりに見下すミッテルト。そして恥ずかしいと感じるレイナーレ。

そんな3人は語ることに熱中していて周りに気付かないドーナシークを尻目にそこから脱出。会計を素早く済ませると外で解散することに。

 

「それじゃウチはまだ予定があるのでここで」

「私もこの後大学のレポートがありますので」

 

そう言って二人は去って行った。

 

「急いで帰らないと。湊君、お腹空かせてるはずだから」

 

レイナーレはそう口にすると、少し急ぎ足で帰り始めた。

久々に部下達に会い、少し強引だったが楽しかった。そしてまた、『色々と』タメになる話を聞かせて貰ったと思い喜んだ。

尚、それから少しして、そのファミレスにはパトカーが来たとか……。

 

 

「ごめんなさい、湊君! 今すぐ作るから」

 

湊が待つアパートの部屋に帰り次第、レイナーレは湊に本当に申し訳なさそうに謝る。

その謝罪を受けて、湊は笑みを浮かべながら答えた。

 

「大丈夫ですよ。それより、ミッテルトさん達は元気でしたか?」

「えぇ、皆元気だったわ」

「そうですか。それはよかった。楽しかったですか?」

「えぇ! とっても」

 

笑顔でそう答えるレイナーレに、その声から湊にも楽しかったことが感じられた。

そしてレイナーレは夕食作りを再開し始めるのだが………。

 

「そ、その……レイナーレさんの側にいても、いいですか?」

「え?」

 

湊がレイナーレの側に近づいてきたことに少し驚くレイナーレ。

それは嬉しいことだけど、何故そう聞いてきたのかが分からなかった。

すると湊は顔を赤くしながら恥ずかしそうに彼女に言う。

 

「自分でこう言うのは凄く恥ずかしいんですけど、その……レイナーレさんがいないことが寂しいって思ってしまって……」

 

そう言う湊にレイナーレの顔は一気に真っ赤になってしまう。

それと共にキュンと胸が高鳴り、彼の事への愛おしさが高まっていく。

湊としては近くにいるだけで良いのだろう。

だが、レイナーレはその程度ではない。そんな愛おしい彼に彼女はドーナシークが言っていたことを思い出しながらそっと近づき…………。

 

優しく包み込むように抱きしめた。

 

「だ、だったら、こういうのはどう?」

 

驚きで身体を萎縮させる湊に、レイナーレは少し恥じらいつつも優しく問いかける。湊はそんな彼女の声を聞いて恥ずかしがりつつも素直に答えた。

 

「そ、その………良いです……凄く……」

「そっか……なら、しばらくこうしてよう。その……私も……少し寂しかったから……」

 

 そんな風にしばらく二人で身を寄せ合い、互いの存在を噛み締めながら幸せを感じていた。

そのせいで夕飯は大分遅れたが、二人の心は満たされていた。

 


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