そう思ってもリアルは何もくれない。
ゼロ、俺はどうすればいいんだ。ゼロは何も答えてくれない(ガンダム風)
昼休みに周りに見事に見せつけた湊とレイナーレ。
そんな二人にクラスメイトの女子達は顔を赤くしつつも羨望の眼差しを贈り、男子達は湊を羨ましそうな目で見つめる。
そして変態3人組はそれこそ、神すら殺さんと言わんばかりの殺気を出しながら血涙を流す。
そんな皆からの注目を集めれば、湊もレイナーレも恥ずかしさで顔を真っ赤にして俯いてしまう。
確かにレイナーレは浮かれていたし、彼女なりに周りに意思表示することで警戒をしていたつもりもあった。湊は知らないが、女子の中では結構彼は人気があるのだ。それは偏に彼の人間性の賜物とも言えるし、逆に助けてあげたいという母性本能をくすぐられるような魅力があるからでもある。
そのため、恋仲になったレイナーレはこうして彼は自分の恋人だと周りに示したわけだ。
それでも、やはり彼女はこの状況を恥ずかしいと感じていた。素が初心な分、やはり少し無理をして背伸びしても、羞恥心はかき消せない。
それ故に恥ずかしさから俯いてしまうわけだ。
それは湊も同じであり、いつも以上に感じる皆の視線に恥ずかしさが込み上げていた。
そのため、放課後になり次第に二人は急いで教室から出ることにする。
「湊君、部活に行こっ!」
「そうですね」
互いの気持ちが伝わり合い、以心伝心であることに嬉しさを感じながらも湊はレイナーレに手を引かれ歩き出す。彼女の負担にならないように歩調を合わせながら。
そんな湊のことをレイナーレも嬉しく思いつつ手を引いて歩くわけだが、それでも少しばかり恋人繋ぎになってしまうのは彼女なりの甘えだろうか。
「湊君、手は大丈夫?」
「はい、ちゃんと握ってますから大丈夫ですよ。それよりも痛くないですか?」
「うぅん、湊君が優しく握ってくれるから痛くないわ」
「よかった。なら、もう少しだけ強くしてもいいですか」
「う、うん! 喜んで………」
互いに声を掛け合い手を優しくギュッと握り合う。
それだけでも二人の心は温かくなり、幸せから笑みが零れてしまう。
そんな二人は幸せを感じつつも周りの視線から逃れるべく、教室を出て行く
そんな甘酸っぱさを感じさせる二人をクラスメイト達は温かい目で見守る。
「青春っていいわね~」
「私も恋人が欲しいなぁ。出来れば木場君みたいなイケメンの」
「ウチのクラス、蒼崎君以外に碌なのがいないから、レイナーレさんが本当に羨ましいわぁ」
そんな羨望の眼差しを向けつつ、彼女達も各自に動き始めた。
「くっそ~~~~~~、羨ましすぎる!」
「コレがリア充かッ! 目が、目がぁあぁあぁあぁあぁあぁああああああ!!」
「何で俺達はこんなにモテないんだぁ! あぁ、憎い、リア充が憎い!!」
そして3人は敗北感に打ちのめされていた。
そのまま少しだけ急ぎ足で歩く湊とレイナーレは旧校舎の中に入っていき、オカルト研究部の扉の前にやってきた。
そして扉を軽くノックする。
「レイナーレよ。入っても大丈夫かしら」
『えぇ、いいですわよ』
扉の奥から聞こえてきた穏やかな返事にレイナーレは扉を直ぐに開けた。
そして湊の手を引きながら一緒に部室に入る。
「いらっしゃい、レイナーレさん、蒼崎君」
「えぇ、朱乃」
「失礼します、姫島先輩」
部室に入り次第、朱乃が笑顔で二人を歓迎した。
そして二人が入って来た事にリアスや小猫、祐斗も気付いた。
「あら、レイナーレ、どうかしたの? 顔がいつもより赤いわね」
「先輩方、おはようございます。相変わらず仲良しですね」
「あぁ、レイナーレさんに蒼崎君、おはよう」
皆の挨拶を受け、湊やレイナーレも挨拶を返す。
そして二人が近くのソファに座り、朱乃が二人の分のお茶を淹れて来たところでリアスはレイナーレに話しかけた。
「ところでレイナーレ……聞いたわよ。蒼崎君と正式にお付き合いすることにしたんですってね」
「なっ、何で知ってるの!?」
リアスにいきなり言い当てられて顔を真っ赤にしながら慌てるレイナーレ。
実は彼女、今日の部活で湊との仲が進展したことをリアス達に言うつもりだったのだ。
別にこれは自慢でも何でも無い。レイナーレは湊と恋仲になれたのは、リアス達に助けてもらったからだとも思っているからこそ、感謝も込めて報告したいと思ったのだ。
だからこそ、意を決して部室に来たわけだが、どういうわけか既にバレていた。
その事に驚くレイナーレ。
そんな彼女に対し、リアスはまるで妹の恋路が上手くいったことを喜ぶ姉のような笑みで彼女に答えた。
「貴方達は有名だもの。そんな二人が教室内で二人の仲が進展したことを明かせば、直ぐに学園全体に伝わるわよ。ここには女の子ばかりいるんだから、そういう情報には皆過敏よ」
「ぁ、ぁぅ~~~~~………!?」
リアスに教えられた真実により、恥ずかしさから顔から火が出るかも知れないくらい真っ赤になるレイナーレ。瞳は潤み少し涙目になっている。
その様子は同性であろうとドキドキしてしまうくらい可愛い。
「うふふ、レイナーレったらすっかり乙女ね。前からそうだったけど、こうして恋人が出来るともっと可愛くなったわ」
「あ、あまりからかわないで、リアス……恥ずかしい……」
恥ずかしさからあうあうと慌てるレイナーレ。
そんな彼女が面白いのか、更に朱乃もからかうのに加わってきた。
「あらあら、そんな恥ずかしがることなんてありませんのに。私の時にだってあんな立派な事を言ったではありませんか。確か……『私はどんなことがあっても湊君を幸せにしてみせる!』でしたっけ。確かそんな感じでしたわね。とても情熱的で一途なレイナーレさんは綺麗でしたわ」
「あ、朱乃! 何でそんなこと言うのよ~! いや、湊君、そのね、決して嘘じゃないけど、その……ぅ~~~~~~~!」
更に弄くられて顔から湯気が出始めるレイナーレ。勿論その言葉は本心からであり、湊への想いでもある。だが、こうして他の人から自分の気持ちを湊に伝えられるのは、何やら恥ずかしくて仕方ない。
「レイナーレ先輩、大胆ですね」
朱乃の話を聞いて小猫が少し頬を赤らめながら静かにレイナーレにそう言うと、レイナーレは普段無口な小猫からですらそう言われたことによってもう言葉が出なくなるくらい恥ずかしくなった。
別に湊への想いは恥ずかしいものではない。だが、それをこうも弄くられるネタにされるのは恥ずかしくて堪らなかった。
最後に残った祐斗からも何か言われるのではと思い、彼女は祐斗に向かってきつい視線で睨み付けると、祐斗は苦笑しながら何も言わなかった。
そんなレイナーレに更にリアスは声をかける。
「そんな恥ずかしがることなんてないじゃない。貴方が蒼崎君のこと、好きなのは誰が見たって分かりきってたことなんだから。寧ろやっとくっついたと思ったくらいよ。ふふふ、おめでとう、レイナーレ」
「ぅ~~~、そんなこと言われたって、好きだったんだから仕方ないじゃない。その……ありがとう」
リアスに向かってレイナーレは恥ずかしがりながらも礼を言う。そんな彼女は少し涙目であり、同棲が見ても胸が高鳴るくらい可愛らしかった。
そして朱乃からもレイナーレにお祝いの言葉が掛けられた。
「ちゃんと私に約束した通り、蒼崎君を幸せにしてあげて下さいね、レイナーレさん」
「わ、分かってるから、そんなに大きな声で言わないでよ、朱乃……でも、その…ありがとう」
流石に小猫からは言葉は掛けられなかったが、それでも彼女はレイナーレに少しばかり尊敬の念が籠もった視線を向けた。
そして最後に残っている祐斗は、リアス達の意をくみ取り湊に向かって話しかける。この男、ちゃんと空気を読める男だ。
「それで蒼崎君、レイナーレさんの実に愛が籠もった告白を聞いての感想は………って部長達が聞きたそうだからそんなに睨まないでよ、レイナーレさん」
レイナーレに睨まれて苦笑する祐斗はそのまま少し身を引いた。
そしてその言葉にレイナーレは少し祐斗に怒りを感じつつも、湊の方に身体事ごと向ける。彼女自身、湊がどんな風に答えてくれるのかドキドキしているのだ。
その期待が籠もった眼差しを受けながら、湊はレイナーレに微笑んだ。
「皆から祝福されて、その……凄く嬉しいです。それにこんなにレイナーレさんに想ってもらえてたんだと思うと、凄く嬉しくて……幸せです。あ、でも一つだけ」
そこで一端言葉を句切った湊は、レイナーレに向かって真面目に、でも何処かおどけた感じに彼女に告げた。
「確かにレイナーレさんの気持ちは凄く嬉しいです。でも……僕を幸せにするだけなのは、少しばかり違いね。その……確かに僕は何も出来ない役立たずだけど、それでも………レイナーレさんのこと、世界で一番幸せにしてあげたいと思ってます」
「み、湊君………」
その言葉に顔を一気に赤らめ、泣きそうになるレイナーレ。勿論感動してだ。
嬉しすぎて、胸がときめき鼓動が早鐘を打つ。隣に座る湊が愛おしいという気持ちが溢れ、もし誰も居なかったらこの場で直ぐにでも抱きしめたいくらいだ。
だが、流石にそれは出来ないから彼女は代わりに繋いだ手をもっと優しく力を入れた。
そこから先に言葉はない。でも、互いの想いだけははっきりと伝わってくる。
一緒に幸せになろうということが二人の心に染み渡り、恥じらいながらも幸せを感じる二人。
そんな二人から発せられるピンク色の雰囲気にリアス達は顔を赤らめつつ見入る。
そして少しそれを観察した後、リアスはレイナーレに話しかけた。
「さて、せっかくだし……どういう風に付き合い始めたのか、はっきりとここで教えて貰いましょうか、レイナーレ。勿論、隠し事なんて無しよ。答えない場合は答えるまで蒼崎君に貴方が如何に彼のことを想っていたのかを赤裸々に教えることにするから」
「そ、そんな、リアス!?」
そしてリアス達によってレイナーレは湊との交際に関してのことを洗いざらいいうことになった。
そんな彼女達の様子を見ながら祐斗は湊に話しかける。
「ねぇ、蒼崎君。君は今、幸せかい?」
その問いに対し、湊は満面の笑みを浮かべながら答えた。
「えぇ、とっても」
しかしこの部活、本当に活動しているのか疑問しか湧かない。
何せ今やってるのは女子達のガールズトークなのだから、一体どこにオカルトがあるのだろうか?
まぁ、確かに……オカルトも恋愛も似てるかもしれない。
有り得ないことが起こるということが……。