堕天使な彼女の恋物語   作:nasigorenn

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何だか滅茶苦茶な気がしてしかたない。
それもこれも作者に彼女がいないからだ(泣)


第65話 彼と彼女はバレる

「おはよう」

「おはよ~」

 

朝の挨拶が絶え間なく繰り返される教室内。

生徒達が集まりつつある中、湊とレイナーレも一緒に室内に入ってきた。

 

「おはよう、みんな」

「おはようございます」

 

レイナーレは親しくなったクラスメイトへ元気よく挨拶をし、湊は丁寧に挨拶を行う。

その挨拶に対し、クラスメイト達は二人の方を向いて声をかけようとする。

 

「あ、レイナーレ、おは……」

「おはよ……え?」

「ど、どうしたの、それ……」

 

だが、そこから先は言葉が出ない。

それというのも、彼女の様子がいつもと違うからだ。

レイナーレは実に幸せそうな笑顔をしている…これは別に良い。何か良いことがあった者なら、そんな笑顔を浮かべる時もあるだろう。

だが、そんな彼女の普段と違ったところは、彼女が繋いでいる手である。

彼女は湊と手を繋いで教室に来ることはいつものことだが、今回に限ってはそれだけではない。レイナーレは湊の手をただ繋いでいるのではない。まるで、『親しい間柄』のように湊の腕を抱きしめつつ繋いでいるのだ。

そんな状態で幸せそうな笑顔。

この二つがクラスメイト達を驚かせ、それがどういうことなのかを憶測させる。

そして直ぐに答えに突き当たる。

と、言うよりも……『あれだけバレバレなのに』、今更やっとかといった思いすらあるだろう。

だからこそ、彼女達はニヤニヤと笑いながらレイナーレに話しかけた。

 

「レイナーレ、その蒼崎君と繋いでる手はなにかな~?」

「随分と仲がよろしいようで」

「蒼崎君、顔が赤いようだけど、どうしたのかな~」

 

クラスメイト達からのからかいの声に顔を真っ赤にする湊。そしてレイナーレもまた顔を赤くするが、どこか嬉しそうに微笑む。

それがどのような答えなのかなど、もう答え合わせは終わったも同然である。

故に彼女達はレイナーレの元に集まっていく。

 

「おめでとう、レイナーレ!」

「もう、やっとくっついたんだ。見ててまだかまだかと思ってたのよ!」

「蒼崎君もおめでとう!」

「いつ付き合い始めたのよ~!」

「もうキスとかしちゃったの!」

 

二人が交際を始めたことに祝福の言葉を贈るクラスメイト達。

そんな皆にレイナーレは恥ずかしいが嬉しいといった感情を顕わにして笑みを浮かべつつ、湊の手をキュッと握る。湊は顔を真っ赤にして恥ずかしがりつつもレイナーレとの事に関してはしっかりと頷き、彼女の手を握り返した。

 

「その……湊君の恋人になりました……えへへ」

「れ、レイナーレさんとお付き合いさせていただいてます」

 

「「「「「キャーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」」」」」

 

既にバレバレでも、やはりこうして本人の口から伝えられるのはテンションが上がるものらしく、クラスメイト達(ほぼ女子)は顔を赤くしつつ黄色い声を上げた。

その声でより恥ずかしくて顔を赤くする湊とレイナーレ。

だが、それは皆から祝福されてるからなのか、どこか嬉しそうにはにかんでいた。

と、女子達はこれで良い。しかし、忘れてはならないのがこのクラスにいる他の男子達だ。

数少ないとはいえ、それでも良識ある者達なら羨ましがりはすれど、まぁ祝福はするだろう。

しかし、そうではないのがこのクラスのは3人もいるのだ。

 

「な、何で蒼崎に彼女が……」

「それも、あんな美人でおっぱいの大きいレイナーレさんが……」

「くっそ~、何であいつだけ~!」

 

そう、この学園である意味有名人である兵藤、元浜、松田の変態3人組だ。

彼等は皆から祝福されている湊を、それこそ親の敵かそれ以上の憎悪が籠もった目で睨んでいた。そして目からは血の涙が流れている。その様子には同じ男子生徒でさえどん引きされるほどに酷い有様であった。

そして当然そんな雰囲気に耐えられない3人は、さっそく湊達に向かって噛み付いた。

 

「蒼崎、どうやって彼女を墜としたんだ、んぅ~?」

「本当はただ、いつも通りお世話して貰ってるだけじゃないのか?」

「レイナーレさん、本当に付き合ってるのか? 蒼崎なんかよりも俺の方が余程良いと思うぜ。今から乗り換えないか?」

 

悪意あるからかいを負け惜しみ気味にかける3人。

当然そんな3人に空気を読まない馬鹿がいると周りは睨み付ける。

そんな視線に晒され腰が引けそうになる3人だが、それでも堪えて湊の方に目を向けていた。正直に言えば、モテない彼等はモテる男が許せないのだ。

そして言葉を掛けられた湊とレイナーレはそれぞれ言葉を返す。

湊はムッとした表情で3人組がいる所に顔を向けていた。

 

「3人とも、失礼ですよ。確かに、僕はレイナーレさんのお世話になってばかりで何も返せない。それが恥じ入ることは分かってますが、だからといってそのことを人を貶めることに使って良いことではありません」

 

そしてここで一端言葉を切った湊。次に発した言葉は、まるで穏やかな彼からは考えられない程の恐ろしさと情熱が込められていた。

 

「それに……レイナーレさんは絶対に渡しません。僕は彼女のことが一番大切で、大好きですから。僕の恋人には絶対に手を出させません」

「み、湊君………」

 

湊の言葉を聞いて顔が一気に真っ赤になるレイナーレ。そして嬉しさのあまり瞳が潤み始める。胸の鼓動は加速し、キュンキュンとして湊に見入ってしまう。彼女の頭の中では先程の台詞が何度も再生され、それを思い出す度にドキドキしてしまう。

それはレイナーレに限らず周りにいた女子達も同じであり、彼の告白を改めて聞いて顔を赤くしながら興奮する。それと同時にその言葉に同意し、3人組を白い目で睨み始めた。

そして湊の言葉にときめいていたレイナーレも、改めて3人組に向かって言葉を返す。その時の彼女の目は、まるでゴミを見るような目であった。

 

「墜としたも何も、私は前から湊君の事が好きだったの。それに、大好きな人のことを手伝いたいって思う事に何か可笑しい事でもあるの? そして最後に……私は湊君が一番格好良くて可愛いって思ってる。悪いけどアナタなんて足下にも及ばないわ。生まれ変わって出直してきたら」

「れ、レイナーレさん、その……恥ずかしいですよ……」

 

レイナーレの言葉を聞いて湊もまた顔を赤くする。

彼女の気持ちが伝わってきて嬉しくなり、それでも男としては可愛いと言われることに抵抗を感じて恥ずかしく感じてしまう。

だが、そんな湊のことがレイナーレは嬉しかったようで、顔を赤らめたまま彼に笑顔で答える。

 

「だって本当のことだもの。湊君はいつもは物静かで落ち着いていて大人っぽくて格好いいけど、こういう時みたいに顔を真っ赤にして恥ずかしがったり、穏やかな寝顔は凄く可愛いから」

「う、うぁ………」

 

レイナーレにそう言われ、恥ずかしさのあまり俯いてしまう湊。

だが、そんな湊を彼女は心底可愛く思い、愛おしいと感じる。

そのため、二人の間には妙にピンク色の雰囲気が流れ始めてしまう。

それは誰が見ても明らかであり、見ていた女子達は皆妙にドキドキしてしまっていた。

 

「くぅ~~~、くそ~~~~!!」

「あぁ、やっぱり彼女って羨ましい!」

「何で俺達はこんなにモテなくて蒼崎はあんなに可愛い彼女が出来るんだぁあぁああぁあぁあああ!!」

 

 そんな雰囲気に先程まで湊とレイナーレの迫力に飲まれて戦いていた3人組は、やはり羨ましさと嫉妬で狂いそうになっていた。

 

 

 

 そんな感じにバカップル全開に過ごしていく湊とレイナーレ。

もとからバレバレだっただけにそこまで影響はないと思われていたが、それは皆の予想が甘かった。

クラスメイトは度々二人のことを冷やかすのだが、その度に二人は顔を赤くして恥ずかしそうにするも嬉しそうであり、そして恋人同士特有の甘い空間を作り出す。それを感じ取った女子達は羨ましそうな、それでいて憧れていそうな視線で

を二人に向け、男子は何かを吐き出し、兵藤達は血涙と血反吐を吐いていく。

そして恋人達にとって、もっとも楽しい時間がやってきた。

 お昼になり、各自で昼食を取るべく生徒達は行動を起こし始める。

そんな中、湊斗レイナーレも動き始めた。

 

「湊君、屋上にいこう!」

「えぇ、そうですね」

 

レイナーレが元気良く湊を誘い、彼はそれに喜びながら頷く。

そして二人で屋上に行くのがいつものことだったのだが………。

 

「ねぇねぇ、せっかくだから教室で食べてったら!」

「恋人同士がどんな風にお昼食べてるのか見てみたいし!」

「いつも蒼崎君に食べさせてあげてるんでしょ! だったら大丈夫でしょ!」

 

どうやら弄れば弄るだけ面白い反応をする湊とレイナーレのことをもっと見たいとクラスメイトが呼び止めてきた。

それに対し、当然湊は恥ずかしがったがレイナーレはそうでもなかった。

 

「湊君、今日は教室で食べよう」

「え、いや、流石にそれは……」

「確かに少し恥ずかしいけど、それでも……良いと思うの。それに天気が悪い日とかだと屋上が使えないし。だから……ね」

 

レイナーレの少し甘える様なお願いに、湊は恥ずかしいが仕方ないと思い頷いた。

 

「はぁ……し、仕方ないですね。確かに外が雨とかだったりしたら屋上は使えないですし」

「うん、よかった! それじゃ食べましょう」

 

そして皆が見ている中、湊とレイナーレはお弁当を広げていく。

それは朝にレイナーレが作った『愛妻弁当』であり、その出来は今まで以上に熱が込められている。

湊は自分の席に座ったままであり、レイナーレはそんな彼に寄り添うように席を湊の隣に移動させる。

そして湊に少しだけ寄りかかりつつ、彼女は顔を赤くしながら箸で弁当の中身を摘まみ始めた。

そして摘まんだのはミニハンバーグ。焦げ目が綺麗に付いており、食欲を誘う一品だ。ただし、その形は見事なハート型になっている。

レイナーレはそれを摘まむと、湊の口元にそっと持って行く。

湊への愛情を溢れんばかりに込めて作ったハート型のハンバーグ。それを彼が食べてくれるということにレイナーレの胸はトクントクンと高鳴っていく。

 

「湊君、はい、あ~ん♡」

「あ、あ~ん」

 

レイナーレの嬉しそうな声に湊も嬉しくなりつつも恥ずかしがるが、それでも口を開ける。

そして湊の口の中にハンバーグが入れられ、湊はそれを咀嚼し始めた。

その様子をまるで愛おしいように見るレイナーレ。だが、彼女は少しばかりイジワルしたくなり、湊に問いかける。

 

「湊君、美味しい? それ、何だと思う?」

 

そんな彼女の意図を気付いてなのか、湊は頬を赤らめつつも幸せそうな笑みを浮かべて彼女の問いに答える。

 

「えぇ、とっても美味しいハンバーグですね。いつも思いますけど、レイナーレさんの作る料理は本当に美味しくて……その、きっと良いお嫁さんになるなぁって思います……」

「はぅっ!? そ、そうなんだ……その、もっと頑張るね……み、湊君の、その……お嫁さんになれるように……」

 

湊の言葉の意味に気付き、顔が一気に真っ赤になるレイナーレ。

そして湊も赤くなり、互いに恥ずかしいが何処か幸せそうに笑う。

 そしてそんなやり取りを何度もしながら湊達は弁当を食べていった。

 

 

 

 尚、この光景を見ていたクラスの皆は口から白いナニカを吐き出し、兵藤、元浜、松田の3人はそれこそ全身血まみれになっていた。

ここで皆に言うことがあるのなら、一つだけ。

 

『油断していたら持って逝かれる』

 

そういうことだろう。

 

 


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