堕天使な彼女の恋物語   作:nasigorenn

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少しグダったような感じが否めないですが、それでもレイナーレの乙女な部分を見ていただければ嬉しいです。


第49話 二人は夕飯の材料を買い出しに行く

 朱乃との話を終えて、レイナーレは湊と一緒に帰るべく部室へと戻って来た。

部室に入るとさっそく湊の姿を探すレイナーレ。その心境は朱乃に自身の本心を語ったことにより、昂揚感に溢れ嬉しさが込み上げて来て仕方ないと言った様子だ。

改めて湊のことが好きだと言ったことで、完璧に自身の気持ちがはっきりとしたからだろう。何を今更だと思うかも知れないが、他人に打ち明けることによって改めて湊への好意を自覚した彼女……本当に今更だ

そんなわけで、レイナーレは少し興奮で顔を赤らめつつ湊の姿を探し始める。

探すと言ってもそこまで広い室内ではない。すぐに湊は見つかった。

彼は応接客用のソファに座り、祐斗や小猫と楽しそうに会話をしているようだ。

その様子に少しばかり危機感を感じなくもなく、レイナーレは少しだけ急いで湊に声をかけた。

 

「蒼崎君、戻ったわ」

「あ、レイナーレさん、お帰りなさい」

 

レイナーレが帰ってきたことが嬉しかったのか、笑顔でレイナーレにそう答える湊。

 

「っ!?」

 

そんな湊にレイナーレの顔は一気に真っ赤になった。

何というか、彼女にとってコレは不意打ちであった。元から分かっていたくせに、朱乃に明かしたせいでもっと気持ちが膨れ上がった。そのためか、湊に笑いかけられるだけでもドキドキしはじめ、返事を返したもらっただけでもときめいてしまう。

心臓が大丈夫じゃないかと思うくらい動悸が激しくなるが、その感覚も含めてどうしようもなく愛おしい。

そんな充実感に満ちた気持ちになり、レイナーレはただのやり取りでさえ顔を赤らめて笑顔になる……それが他の人にも見られていることも気付かずに。

そんな幸せな彼女は湊の手を優しく取ると、満面の笑顔で話しかける。

 

「少し待たせてごめんなさい。もうお話も終わったから、帰りましょうか」

「そうですね。それじゃ木場君、東城さん、グレモリー先輩、お先に失礼します」

 

湊はリアス達にそう言うと、レイナーレに手を引かれながら部室から出て行った。

その背中を見送りながらリアスは戻って来た朱乃に話しかける。

 

「話は終わったの?」

「えぇ」

 

短く返す朱乃だが、晴れ晴れとした表情をみればその話し合いがどうなったのかは何となく分かるだろう。リアスは朱乃の表情からそれを察し、よかったと思うと共に内心でレイナーレに感謝する。

朱乃の抱えていた問題は、悪魔である自分では解決出来ない問題だから。

 

(あなたの御蔭で朱乃はやっと少しだけ前に進めたわ。何とかしてあげたかったけど、私ではどうしようもなかった。この問題はどうしても堕天使である者が必要だったから。だからこそ、ありがとう、レイナーレ)

 

その感謝を胸に秘めながら、リアスは朱乃にお茶を淹れるようお願いした。

 

 

 

 オカルト研究部がある旧校舎から出て帰路に付く二人。

レイナーレは何度しても慣れることはないであろう湊の手を繋ぎ、湊もまたレイナーレの女性らしい手にドキドキしつつも素直に手を引いて貰う。

別に杖があるのだからしてもらう必要はない。だが、レイナーレがそうしたいと願い出て、湊もまた彼女の厚意を受け取りそうなっている。

と言うのも、レイナーレは好きな人に少しでも役に立ちたいと思ってそうしており、湊もまた誰かの温もりが感じられることが嬉しくてそれに甘えているからだ。それが好きな相手なら尚のことである。

それだけ説明すればいい加減くっつけよと誰もが突っ込みたい所だが、そこはまだ二人の気持ちが互いに通じ合えばだ。今はまだ、互いに好きだと想い合ってはいるが、それを気付いてはいない。

しかし、確実に二人はその距離を詰めていた。主にレイナーレが果敢に詰めているのだが。

そんなわけで学園に通い始めてから二日目のこの日、二人は下校を楽しんでいた。

 

「姫島先輩と一体どんな話をしたんですか?」

 

湊がレイナーレにそう問いかけると、レイナーレはその時の事を思い出しながら恥じらいつつも嬉しそうに微笑んだ。

 

「ごめんなさい。これは女の子同士の話だから、蒼崎君でも内緒なの」

 

まさか堕天使のハーフである朱乃に父親との仲を和解するよう話し、その上自信満々に湊が好きだと告白したことなど言えない。

だからこそ、彼女はそう言って誤魔化した。

その言葉に申し訳なさそうにする湊に少し心を痛めたが、こればかりはどうしようもない。

その代わりに彼女は湊にある提案を行うことにした。

それは湊の家に来たときからずっと彼女が思っていたこと。そして彼女が彼にしてあげたかったことの一つでもある。

レイナーレはそれを言おうとした途端、顔が熱くなるのを感じ喉が渇いていくのを感じ取った。ある意味これは恥ずかしい。だが、女の子なら誰もが一度は言ってみたいこと。故に勇気を出して湊に言う。

 

「蒼崎君、今日はちゃんと晩ご飯を食べないとね」

「え? それってどういう……」

 

その言葉に一瞬理解が出来ずポカンとした表情になる湊。そんな湊の顔が可愛いと思ったのか、レイナーレは頬を赤らめつつ答える。

 

「昨日の御夕飯を忘れたの? あんな物ばかり食べてたら蒼崎君の身体に悪いわ。だから………今日からは私が食事を作ってあげる」

 

如何にもな恋する乙女の言葉に、言ったレイナーレは勿論湊も顔を真っ赤にした。

好いている相手にそう言ってもらえたのだから当然嬉しい。だが、それでも相手はホームステイしにきた客人だ。客人にそんな失礼な真似はさせられない。

 

「いや、そんなレイナーレさんに悪いですよ」

 

湊はそう言いつつ、確かに昨日言われたことを思い出す。

昨日の夕飯は出前を頼んだのだが、その原因が冷蔵庫の中に食糧らしいものが一切入っていなかったからだ。一人暮らしな上に、目が見えない湊は調理という物を行わない。気軽に片手で食べられる栄養食糧と水で大体を過ごしていたのだが、レイナーレはそれを見て駄目だと湊を叱った。成長期にある湊の身体にこんな食べ物はよろしくいない。食事とは栄養摂取だけにあらず。心をより豊かに満たし、精神に安らぎをもたらすものでもあるのだ。

まぁ、それは建前であり、本音は湊に毎日食事を作ってあげて喜んで貰いたいというもの彼女の乙女心なわけだが。

だからこそ、レイナーレは少しだけ強気に出た。

 

「何遠慮してるの。私達は、その……一緒の家に住む家族同然なんだから、一緒に暖かいご飯を食べるのは当然なの! だから、私が作るの! だって、蒼崎君には身体にちゃんとした良い食事を食べて貰いたいし、その……美味しいって褒めて貰いたいし……」

 

ツンになろうとして思いっきりデレしか残っていないレイナーレ。

その顔は熟れたトマトのように真っ赤であり、それでも一生懸命でいじらしさを感じさせる。

その言葉は湊の心にも深く染み渡り、此方も真っ赤になりつつもその言葉に返事を返す。レイナーレは勿論だが、湊だって彼女の事は異性として好意を持っているのだ。そんな相手にこんな言葉を言われて嬉しくならない男などいない。

 

「そ、その……よろしくお願いします……」

「っ!? うん! 私、頑張るから!」

 

湊の様子と受け入れの言葉を聞いてレイナーレは華が咲いたかのような笑顔になった。それを他の人が見ていたのなら、誰もが見惚れていただろう。それぐらい彼女の笑顔は美しかった。

 そこから始まったのは、実に初々しいカップルに見間違うほどのイチャつきを見せた夕飯の買い出しであった。

レイナーレに連れられてスーパーに案内された湊。店内に二人で入ると、身体が触れあうくらいレイナーレが湊の腕に抱きついてきた。

 

「れ、レイナーレさん!?」

 

腕から感じる柔らかな感触とレイナーレの温もりに驚きの声を出す湊だが、レイナーレは自分がしていることの大胆さに真っ赤になって恥じらいつつもこう答える。

 

「その、店内はそこまで広くないから、こうしないと他の人の邪魔になっちゃう」

 

実際にそんなことはない。確かに大きな店ではないが、それでも人二人が並んで歩いたって充分に通れる程に通路は広い。

これは単に、それに託けてレイナーレが湊とよりくっつきたいがために言っているだけだ。実際に湊の介護という名目もあるので、決して嘘とも言いがたいのがミソである。

湊はレイナーレの言葉に素直に従いレイナーレの手を優しく握り返した。

 

「確かにそうですね。すみません、変な邪推をしてしまって」

「う、ううん、そんなことないわ。(寧ろもっと邪推してくれた方が嬉しいんだけどね)」

 

湊に手を握り返され、胸がキュンと高鳴るレイナーレ。

寧ろ邪推してくれた方が嬉しいと思いつつも、こうして湊とくっついていることにドキドキしながら嬉しく感じていた。

その様子はまさにバカップルに見えなくもなく、レイナーレはもう新婚さんだと言わんばかりにドキドキしつつも幸せにニヘリと頬が緩んでしまう。

 

(湊君とこうして一緒にお買い物してるなんて……まるで新婚さんみたい。どうしよう、幸せで顔がにやけちゃってしょうがないよ~~~~~~!)

 

もう思考が幸せ一色になるレイナーレ。

恋人同士で一緒の部屋に住み、食事のために一緒に買い出しに行く。それはまさに新婚と変わりなく、レイナーレは湊と一緒にこうして買い物をしていることが嬉しくてたまらなかった。

傍から見れば微笑ましいくらい初々しいカップルに見えなくもない。だからなのか、幼い子供が湊達を¥を指差しながら大きな声でこう言った。

 

「あぁ、あのおねえちゃんたちくっついてる! こいびとさんなの?」

 

「「!?」」

 

その言葉を聞いて耳まで真っ赤になるレイナーレと湊。

そんな二人の様子を見てか、母親は子供を優しく叱りつける。

 

「いきなり駄目でしょ。いい、あのお兄ちゃんはお目々が見えないの。だからあのお姉ちゃんが助けてあげてるのよ」

「ふ~~~~ん、そうなんだ~~~~」

 

その言葉に間違いはなく、周りにいた客達は湊達の事を暖かい目で見始める。中には通路を譲る者もいた。

そのせいで二人、特に目が見えているレイナーレの顔は火がでそうなくらい真っ赤になったが、心の何処かではその言葉が嬉しくて仕方ない。

 

(や、やっぱりそう見られちゃうんだ……湊君と恋人に………うふふふ……)

 

もうすっかり内心では下の名前読みになっているレイナーレ。湊と恋人に見られたことが嬉し恥ずかしくどうしようもなく幸せで胸が一杯になる。

そんなレイナーレと湊の様子を周りの客達は察し温かい目で二人を見る。

そんな暖かい目で皆から見られつつ、買い物を済ませた二人。

互いに子供の言葉ははっきりと覚えており、夕陽に照らされながらもはっきりと分かるくらい顔を真っ赤にしていた。

湊が持つと言ってレイナーレから少し強引に借りた袋とレイナーレが持つ袋が夕陽に当てられて影を伸ばす。

二人の影は互いに寄り添い合い、綺麗にくっついていた。

影ほどではないが、互いに寄り添い合う二人。その心臓はどちらもドキドキと

高鳴っていた。

夕陽よりも赤い顔を意識しつつも、レイナーレは湊に笑いかける。

それはこれからすることへの意思表示。恋する男の子への彼女なりのアプローチであった。

 

「蒼崎君、一生懸命頑張って美味しい御夕飯を作るからね」

 

レイナーレのその言葉を聞いて、湊はレイナーレに負けないくらい顔を熱くしながらも答えた。

 

「はい、楽しみにしてます」

 

そして二人は買い物袋を片手に持ちつつも手を繋ぎながらアパートへと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、砂糖注意警報!
レイナーレの手料理が湊に襲い掛かります!

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