堕天使な彼女の恋物語   作:nasigorenn

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過去最高すぎて驚きのあまり開いた口が塞がりません。
皆さん、本当にありがとうございます。


第47話 彼は彼女が此処に来た理由を知る

 もういい加減にしろと突っ込みたい衝動と、少しながらそんな相手がいることを羨ましいと思う心に揺れつつもリアスは話を進めることにした。

それまでの話で彼女の眷属の紹介は終えたが、未だにいない兵士に関してはリアスがまだ決めていないらしい。なので兵士抜きの状態なのだとか。

湊にその説明をしたところで何かが変わるというわけでもないので、次の話に移るリアス。

 

「次にこの部活、オカルト研究部の活動について説明するわね」

 

その話に湊は軽く頷くと、少しばかり期待に胸を膨らませている様子を醸し出し始めた。オカルトな存在である彼女達がどのようなことをしているのかというのは純粋に気になるのだろう。

そんな様子の湊にレイナーレは微笑み、リアスも期待に応えようと胸を張って説明し始めた。

 

「私達悪魔は人間の欲望を叶え、その代わりに対価を受け取ることを生業としているのよ。オカルト研究部ではその仕事をしているというわけ」

 

リアスが説明したことは単純に悪魔としての仕事だ。

悪魔がこの人間社会でやって行くにあたってすることは説明の通りに欲望を叶え、対価を得るという行動だ。これは古来から行われており、悪魔なら誰しもが行っているという。ただし、あくまでもそれは人間界にいる悪魔だけであり、冥界にいる悪魔はしていないらしい。

その話を聞いた湊は以前レイナーレから聞いた話と同じだと思い、もう少し具体的に何をしているのか聞くことにした。

 

「あの、具体的にはどんなことをしているんですか?」

「そうね………本人が地力では叶えられない願いや、望んでいることを叶える代わりに対価として何かを受け取る。例えば、一人だと勇気が足りなくて好きな人に告白出来ない人の背中を押して手伝ってあげるかわりに、現金だったり物だったりを受け取ったりするの。こんな感じかしら」

 

その話で湊は悪魔の仕事がどのような仕事かは理解したが、例が例だっただけに悪魔というよりは恋のキューピットだと考えて笑ってしまう。実に悪魔らしからぬ話だ。

要は何でも屋なのだ、悪魔の仕事というのは。

そしてその願いを叶えるという部分に湊は少しだけ……そう、少しだけ惹かれた。

もしかしたら……今の自分では、人間では絶対に無理な願いも叶えてくれるのではないだろうかと。

 

「あ、あの……」

「ん、何かしら?」

 

その願いをリアスに言いたい衝動に駆られつつも、湊は何でもないと言葉を止めた。

今更過ぎた、終わった話をほじくり返すのは情けないだろうと思ったから。

彼が昔から少しだけは思っていた。そしてレイナーレと会ってからは何となく願ってしまう事を。

その時の誤魔化したような笑顔は何だか悲しそうで、レイナーレはそんな湊を見て胸が痛んだ。

理由まではわからないが、湊が心を痛めていることがわかるから。

だからこそ、彼女は何も言わない。湊がきっと何かに心を痛めていることは分かるが、それを聞くのは違うと思うから。それは本人が話してくれるのを待つしかないだろう。その代わり、レイナーレは湊の手を優しく包み込む。

 

「あ、レイナーレさん……」

 

急に手を包み込まれ、レイナーレの柔らかな温もりを感じ顔を赤くしてしまう湊。そんな湊にレイナーレは慈愛に満ちた優しい笑みを向ける。何も言わないが、返事の代わりに自分の伝えたい思いをその手に乗せて、湊の手を優しく包む。

その優しさが伝わったのか、湊は真っ赤な顔のまま何も言わない。その代わりに、レイナーレの厚意に甘えることにし、しばらくそうして貰った。

 

「ご、ごほん!」

 

と、何だかまた脱線しかけて二人だけの世界を構築しつつある湊とレイナーレにリアスは咳払いをわざとすることで現実に引き戻した。

 

「二人とも随分と仲を見せつけてくれるけど、もう少しは周りも考えたらどうかしら」

「「ご、ごめんなさい」」

 

リアスの言葉に自分達が何をしていたのかを自覚させられ恥ずかしさから顔を真っ赤にして謝る二人。

そんな様子の二人にリアスは少しだけ羨ましいなぁと思いながら話を戻す。

 

「ともかく、この部活動は悪魔の仕事のための部活というわけなの。さっき言ったこと以外にもいろいろとあるけど、人間社会で生活するにあたってはこれが一番していることかしらね」

「そうでしたか。何だか意外と悪魔も大変なんですね」

「そうなのよ。オカルト的に見られてる悪魔だけど、蓋を開けてみればこんなものよ。昔のアニメでも言っていた言葉があったけど、そんなのは嘘ね。試験だってあるし、やらなければならないことなんて五万とあるもの。それは悪魔に限った話じゃないしね。レイナーレから聞いたけど、堕天使の仕事だって聞いた様子じゃ人間界のOLと大差ないもの」

 

実に夢や希望のない話をするリアス。

オカルトに憧れる人間は幻想故に憧れを抱くが、蓋を開ければどの種族であろうとも幻想などまったくない。実に現実的な悩みは尽きないらしい。

湊はそんなリアスに労りの言葉をかけると、リアスはそれを有り難く受け止めた。

そしてやっと湊が一番待っていた話題についてリアスは語り始める。

 

「それで最後に、何で悪魔でないレイナーレがここに入るのかについてなんだけど」

 

その言葉に緊張してか固唾を飲む湊。レイナーレはそんな様子の湊に苦笑する。

 

「彼女は親善大使として、私達と共に行動するようにと命じられているからなの。平たく言えば、互いに監視しろって言われているようなものだけど、こっちは兎も角堕天使側は遊びに行ってこいって言われてる感じね。本当、何でそんなお気楽なのが向こうのお偉いさんなのか理解に苦しむわ」

 

普通に聞けば、堕天使の総督を侮辱する発言。如何に他種属であろうと許されるものではない。まともな堕天使が聞けば激怒するだろう。

だが、その言葉にレイナーレはその通りだと頷く。

 

「私もその通りだと思うわ。おじ様ったら、若いんだから学校生活を満喫してこいって言うんだもの。挙げ句は留学の資料のために制服で写真を取られたわ。今頃両親に渡されて3人で楽しく話してそう」

 

きっと両親とアザゼルがレイナーレの制服姿を見てハシャいでいるであろうことを想像し、レイナーレは顔を赤らめながらそう語る。

どうやら彼女は上に対して尊敬の念がないようで、リアスは兎も角祐斗や小猫は少しばかり驚いていた。

そしてその言葉にリアスも思い当たる節があり、共感していた。

 

「そうなのよね。私も入学当初、制服姿を見たお兄様が感涙したぐらいだから。お兄様達は家族の成長が喜ばしいんだろうけど、当人からしたら恥ずかしい限りよね、あれは」

「本当にそうよね」

 

リアスとレイナーレ。悪魔と堕天使という全く違う者同士だが、苦労する身内がいるというだけで互いに似たもの同士のようだ。それが面白くて、ついつい湊は笑ってしまう。

 

「きっと二人共、ご家族に愛されてるんですね」

 

その言葉に顔を赤くするリアスとレイナーレ。

リアスはただ気恥ずかしい言葉を言われて恥ずかしさからそうなり、レイナーレは湊の口から出た愛と言う言葉に顔を赤くする。出来れば自分にだけその言葉をかけてほしいと内心思ってしまったのは言うまでも無い。

兎も角、余計な話こそ入ったものの、これで何故レイナーレがオカルト研究部に入るのかを理解した湊。

レイナーレが親善大使としてリアス達と交流を持つのにこのオカルト研究部はうってつけだということだった。

リアスと親しそうに話すレイナーレに、湊は仲が良い友人が出来たようだと喜ぶ。

するとレイナーレは、湊の手を軽く握りつつ瞳を少し潤ませながら話しかけた。

 

「それでね、その………蒼崎君も一緒にこの部活に入ってくれない?」

「え?」

 

その言葉に湊は少し驚いた。

自分のような何の役にも立たない人間が誘われるとは思わなかったのだ。

 

「でも、僕は何も出来ない足手まといですよ。それにあまりわからないですけど、堕天使でも悪魔でもない僕がこの部活に入るのはよろしくないんじゃ……」

 

本来なら、悪魔の拠点足るここにただの人間が居ることはよろしくない。

だが、レイナーレはそれを分かった上で湊を誘っているのだ。

彼女は自分が顔を赤らめつつも懸命に考えていることを話す。

 

「わ、私が部活に出てる間、蒼崎君は一人になっちゃうから、その……心配で。道路とか危ないし、蒼崎君がいつ転んでしまうのか心配だから……私は蒼崎君を手助けするのを学ぶためにこの学校に入ったんだし、だったら一緒に居た方が安心するし……一緒にいたいから……」

「レイナーレさん……」

 

消えそうな程後半は小さくなっていく声。けれどその顔は真っ赤で瞳を潤ませつつも、一生懸命に湊にお願いする。それは誰が見ても、恋する乙女の顔であり、リアスはそんなレイナーレを見てつられてなのか顔を赤くしていた。

少し興奮気味になっているレイナーレはすっかり忘れているが、元々湊は一人で今まで過ごしてきたのだ。今更一人になったところで何かしら心配するようなことなどない。

だが、レイナーレに一緒に居たいと言われた湊はその言葉に顔を赤くしつつもその言葉が嬉しくて仕方なかった。

だからこそ、頷きたい。だが、それを許可するのはレイナーレではない。

湊はリアスの方に顔を向けると、リアスは青春物のドラマを見ているような気分のまま湊に答えた。

 

「別にいいわよ。蒼崎君は此方の事も堕天使の事も知っているし、この部活自体仕事がなければいつもお茶してるだけだからね。それに……この状態で部活に入れなかったら、レイナーレに睨まれちゃうわ」

「り、リアス!?」

 

リアスにそう言われ、レイナーレは顔を恥ずかしさで真っ赤にしつつ彼女に突っかかる。そして湊をこの部活に誘ったのは、自分の介護が行き届く範囲にいて貰うためだと言い訳がましく言うが、この場にいる湊以外の全員はそれが嘘であることが丸わかりであった。

 

(普通なら駄目なんだけど、いくら何でもこんなあからさまに好き合ってる二人の仲を裂くのはとてもじゃないけど、無理。したらそれこそレイナーレに怨まれそうだし。それに……私だって彼女みたいな恋愛をしたいし、そう思うと応援したくなるから、今回は特別よ)

 

 そんな風にリアスは思いながら二人を見つめる。

湊とレイナーレは互いに一緒の部活に入れたことを喜んでいた。

 

 

 

 そして二人が帰ろうと動き始めた所で、レイナーレにとって待っていたもう一つの案件がやってきた。

 

「ちょっとよろしいでしょうか?」

 

その声をかけてきたのは、朱乃であった。

この部屋に来てから、ずっと目が笑っていない笑顔を浮かべてレイナーレと湊のことを見ていた彼女。

一体彼女に何の用があるのだろうと普通なら思うだろう。だが、レイナーレは彼女に話しかけられることを分かっていた。

だからこそ、湊に向かって優しい声で話しかける。

 

「蒼崎君、少しだけ待っていて。私は副部長の朱乃と話があるから」

「あ、はい。わかりました」

 

湊の返事を受けて笑うレイナーレは、胸に暖かな気持ちで一杯にしながら朱乃の前に行く。

 

「ここじゃなんだから、外で話しましょう。『あまり他の人には聞かれたくない』でしょう」

「えぇ、そうですわね」

 

そして朱乃とレイナーレの二人は部室から外へと出て行った。

そんな二人に、リアスは何とも言えない顔でその背を見送るのであった。

 

 




実は所々にこの物語の重要な部分があったりしますよ。

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