作者の過去最高を大きく上回り、もう感無量です。
これからも二人の甘酸っぱい青春をお楽しみいただければ嬉しいです。
皆さん、一緒に砂糖を吐きましょう(笑)
朝から実に微笑ましいラブコメをやってしまったレイナーレと湊だが、学園に行く頃には多少は落ち着きを取り戻していた………。
「あ、蒼崎君、こっちに。危ないから……」
「あ、ありがとうございます……」
互いに赤面し合いながら湊はレイナーレに手を引かれ一緒に登校する。
そして当然ながら、あんなことがあって互いに直ぐ落ち着く訳が無い。
(あぅ~~~~~~、何で私、あんなことを……。まさか蒼崎君に抱きついてるなんてっ! で、でも……少しだけ覚えてる……蒼崎君の温もり……暖かくて、愛おしく感じて……って、何考えてるの、私!? こんなんじゃミッテルトのこと言えないじゃない……はしたないって嫌われたかな……うぅ~~~~~)
(お、落ち着こう、僕。あれは事故だった。レイナーレさんだって寝ぼけてただけだし、本人も覚えていないって言ってたし。ここで僕がほじくり返すような真似をしたら余計彼女に失礼だ。ここは穏便に気にしていないと言って彼女を安心させないと。で、でも……初めてあんなに近くで女性に抱きしめられたのは初めてだ……レイナーレさん、柔らかくて良い匂いがしたなぁ…………って何考えてるんだ僕は!! 彼女の無意識の行動に劣情を感じてしまうなんて、最低の極みじゃないか! もっと気を引き締めないと。でないとレイナーレさんにエッチな奴だって嫌われてしまう!)
赤面しながら歩く通学路。
そんな二人を同じ学園に通う生徒達は何やら微笑ましい眼差しで見ている。中には羨望の眼差しを向ける者もおり、余裕が全くない二人には気付けない。稀に顔を真っ青にして道の端で蹲っている人もいたが、気付く事もなかった。
「あ、あの、蒼崎君……」
「ど、どうしたんですか、レイナーレさん……」
レイナーレは気まずさからなのか、トマトのように真っ赤になった顔を湊に向けながら話しかけた。それに反応し、湊も少しどもりつつも答える。
「あの……そのね……今朝のことなんだけど………」
言いながら今朝自分がしでかしたことを思い出して更に顔を真っ赤にするレイナーレ。そんなレイナーレに湊は慌てつつも答える。
「し、仕方ないですよ! だってレイナーレさんはあの時まだ目が覚めてなかったんですから。それに今までとは違う環境になったんですから、そういうことがあっても不思議じゃないし、心細い時とかって人肌が恋しくなるって言いますし……あ、何言ってるんでしょうね、僕!」
自分でそう言っては湊もレイナーレと同じくらい顔を赤く染める。
その言葉に湊の心遣いとレイナーレを女性として意識していることが感じられ、レイナーレは内心嬉しくなってしまう。だが、同時にそれだけ自分がはしたない事をしたのだと再確認させられ、羞恥で顔が熱くなるのを止められない。
穴があったら入って蓋をして出てこれないようにしたい気分になるが、同時に嬉しさが込み上げてしまいどんな顔をして良いのか困ってしまう彼女。
そんな複雑だけど歓喜に満ちた感情を湊に知られるのが恥ずかしいと思ったのか、レイナーレは湊に少しだけ慌てた様子で話しかける。
「いや、あの、その……ごめんなさい! あんな変なことしてしまって! でも、その……蒼崎君の御蔭で、心細くなかったの。だから……ありがとう……」
「うぁ、う……ど、どういたしまして………」
レイナーレの言葉を受け、湊はそれそこポストのように顔を真っ赤にして何とか返事を返す。
感謝された理由が自分の言った言葉の肯定なのか、それとも今朝の出来事を許したことなのか。
その判断は付かないが、それでもそう言われ湊の心は温かくなった。
そんな気持ちを噛み締めながら、湊は気を取り直してレイナーレに話しかける。
「そ、それじゃあ……今日も一日よろしくお願いします」
それは本当なら家を出る前にかけようと思っていた言葉。
今朝はあの騒動のせいで声をかけられなかったので、今こうして気持ちを切り替えると共に彼はレイナーレにその言葉を告げた。
「うん、こちらこそよろしく」
レイナーレは湊の言葉を受けて、嬉しそうに微笑みながら繋いだ手に力を込めた。
これでやっと少しは落ち着いたのか困惑する気配がなくなった二人。だが、変わらずに顔は赤く熱を発している。
しかし、その心はどこか幸せで、二人とも嬉しそうに笑っていた。
そんな二人の様子を見て、周りにいた駒王学園の生徒達は青春だとしみじみ感じていた。一部何か吐いている生徒もいたが……。
今朝の騒動も何とか落ち着き、二人の学園生活が再び始まる。
湊はいつもと変わらずに集中して点字を打ち、レイナーレは苦手なことはあれど新鮮な経験に胸を弾ませながら授業を受けていく。
クラスメイトとしっかりと仲良くなったレイナーレは湊との仲の良さを聞かれては顔を赤くして恥じらい、その様子があまりにも丸わかりなものだからさらにハシャぎ立てるクラスメイトにレイナーレは顔を真っ赤にしてしまう。
そんな可愛らしい彼女の様子を見て、実に恨めしそうな視線を湊に向ける変態3人組。
そんな光景を見ることは出来ないが耳で声を聞き気配を感じることで少しは分かる湊は、レイナーレがクラスに馴染んでいることに安心し喜んだ。
そして時間が過ぎ、昼食を学食でレイナーレと取った湊。
その場で見ているだけで赤面しそうな雰囲気を醸しながら、レイナーレに食事を食べさせられるということになり、恥ずかしながらも湊は大人しく受け入れた。
そのせいで駒王学園の生徒にさらに二人の睦まじい姿を見るハメに遭い、互いに恥じらいつつも幸せそうな二人以上にまわりの皆が被害に遭った。
そのまま時間は過ぎ、あっという間に放課後になった。
周りの生徒達は皆部活動や委員会、または帰宅するために各自動き出す。
そんな中、湊はレイナーレにあることを話しかけた。
「あ、そう言えばレイナーレさん。レイナーレさんは部活とか入らないんですか?」
学生ならやはり一度は部活動に憧れを持つもの。それも初めての学園生活なら尚のことであり、レイナーレに何かやらないのか湊は聞いてきた。
その質問に対し、レイナーレは少し困ったような笑みを浮かべながら答える。
「一応入る部活は決まってるの。まぁ、こればかりは仕事柄仕方ないんだけどね」
「そうなんですか? 一体どんな部活なんですか? 運動部? 文化部ですか? レイナーレさん、体育の話を聞く限り運動とか凄く出来るみたいですから、どこに言っても直ぐにレギュラーになれるかも知れませんね。あ、でもお料理とかお菓子とか作るのも上手ですから、料理部とかもいいかも。きっとエプロン姿なんかも似合うでしょうしね」
レイナーレの部活をしている光景を頭の中で思い浮かべて笑いかける湊。見えないこともあって分からない部分は聞いた話から想像している。
そんな湊の反応にドキドキしてしまうレイナーレは、エプロンが似合うと言われ内心喜びつつも答えた。
「せっかくだから蒼崎君も一緒に行きましょうか。そこで何の部活か教えてあげる」
「いいんですか、僕なんかが行って?」
今まで部活動に縁がなかった湊はそう言われ戸惑いを見せる。
そんな湊にレイナーレは優しく手を握る。
「ううん、寧ろ蒼崎君には一緒に行って貰いたいの。だって一人だと心細いから。蒼崎君と一緒なら、安心出来るの」
「そ、そうですか。なら、こんな僕でレイナーレさんのお役に立てるのなら、是非」
「うん、ありがとう」
レイナーレに必要だとされ嬉しくなってしまう湊。
そんな湊から快い返事が貰え、レイナーレもまた嬉しくて笑う。
そしてレイナーレに優しく手を引かれながら歩くこと約十数分。
二人は古い木造の扉の前に立っていた。
そして扉を前にしてレイナーレは湊の手を握る力を少しだけ込めながら、扉の奥にいるであろう人に声をかけた。
「レイナーレよ、来たわ」
『わかった。入りなさい』
扉越しでも聞こえる女性の声。
その声を聞いて緊張したのかレイナーレは少しだけ身体が強ばる。
それを感じたのか、湊が今度はレイナーレの手を優しく握る。
「蒼崎君?」
いきなり手を優しく握られ顔を赤くしながら湊を見つめるレイナーレ。そんな彼女に湊は安心刺せるように優しく微笑んだ。
「緊張してるみたいでしたから、これで少しでも緊張が解れたらいいなって。こんなので解れるわけないって、自惚れだって分かってるんですけど、これで少しでレイナーレさんの役に立てたら嬉しいです」
「蒼崎君………」
湊の微笑みと言葉を受けて胸がキュンと高鳴るレイナーレ。
そして感謝と本心を湊に伝える。
「ありがとう、蒼崎君。御蔭で緊張も解れたし、安心して中には入れるわ。やっぱり蒼崎君に着いてきて貰ってよかった」
その言葉に湊は照れくさそうにしながらも嬉しそうに笑う。
そして今度こそ、レイナーレはその扉を開けた。
「ようこそ、オカルト研究部へ」
扉を開けた先では、リアス達が待っていた。
レイナーレが入る予定の部活。それはリアス達が所属しているオカルト研究部であった。