堕天使な彼女の恋物語   作:nasigorenn

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最近話題のアニメを見てつい書いて見たくて書きました。
次回はもっと具体的にイチャつかせる予定です。


第40話 彼と彼女のルール

 レイナーレにおかえりなさいと言われ胸が温かくなる湊。

ここ数年聞いていなかった、誰かを出迎える言葉に彼の心は嬉しくなった。

そしてレイナーレがそう言ってくれることに彼女ではないが充分想像を膨らませてしまう湊。

 

(何か、こういうのっていいなぁ……。きっとレイナーレさんと一緒になれたら、毎日こんな素敵な気分になるんだろうなぁ……って何考えてるんだろう、僕は)

 

そんな事を考えてしまったせいで顔が熱くなっていく湊のそんな顔を見て、レイナーレもまた嬉しそうに見つめていた。

しかし、それが正座で三つ指を立ててなのだから、もう突っ込みを入れたくなるのは仕方ないかも知れない。正直この光景を見ていた彼等の知人が居たのだとしたら、全力で突っ込んでいただろう。

まぁ、レイナーレ自身、決してその行為の意味を知らないわけではないのだが、そういうことをしたくて仕方ない年頃なのだったりする。

湊は取りあえず気を取り直してレイナーレに話しかける。

 

「あ、そう言えばレイナーレさん、荷物ってどうなってますか?」

 

ホームステイするのだから荷物があるはずだが、レイナーレは持っていない。

当然宅配業社を通じて送られてくるのだが、どうやらまだ来ていないらしい。

そのことも分かっているようで、レイナーレはまだ来ていないと答えようとしたが………。

 

丁度良くインターホンの音が鳴った。

 

その音を聞いて湊は出ようとするが、レイナーレはそれを押しとどめる。

 

「たぶん宅配の人だと思うから私が行くね。蒼崎君は休んでて」

 

レイナーレは笑顔で湊にそう言うと、早足で玄関に向かって歩き出した。

 

「あ、どうも、〇〇便の者です」

 

彼女が扉を開けると共に、外で待っていた業者の人間が声をかける。

そしてレイナーレはそんな業者の人に笑顔で対応した。

 

「ご苦労様です、ありがとうございます」

 

レイナーレはニッコリと微笑むと、業者の人は言葉を失ったかのように彼女から目が離せなくなった。そしてレイナーレがその様子を心配し始めた所でその人は動く。

 

「………い、いえ、そんな、仕事ですから!」

 

彼女の笑顔にあてられ、少し見入ってしまっていた業者の人は慌てた様子で書類を懐から取り出した。

まさかこんな美少女が出るとは思っていなかったらしい。

レイナーレは書類を受け取り内容を見て問題がないことを確認する。特に問題はないようだった。

 

「では、サインか判子をお願いします」

「あ、はい」

 

そう言われサイン欄に彼女は名前を書こうとするが、そこで少し思い留まった。

それというのも、せっかく湊の家に住めるようになったのだから、ここは家主の名前を書くべきだと思ったからだ。本音で言えば、結婚した後の自身の名字が『蒼崎』になっていることを願ってか、その願掛けのような気分で彼女はサインにこう書いた。

 

『蒼崎』と。

 

「では、お荷物は玄関先まで持って行くので」

「はい、よろしくお願いします」

 

そして業者は荷物を玄関先に下ろしていき、レイナーレはそれを回収して室内に戻った。

 

「あ、荷物はどうでしたか。重いのなら運ぶの手伝いますよ」

 

湊は戻って来たレイナーレに少し心配した様子で話しかける。

レイナーレはそんな湊の心遣いに感謝しながら大丈夫だと答える。何せ彼女の荷物はそこまで多くないのだから。

旅行用のトランクが二つで全部であり、中には私服や寝間着、それに小道具や調理器具などといった生活用品で満たされている。

何も最初から全部もって来る必要は無いし、何よりレイナーレは住まわせてもらう身なのだから、荷物を大量に持ち込むわけにはいかない。

だから必要最低限、故にそこまで重くはないのである。

そして荷物を部屋に持ち込むと、レイナーレは部屋の隅にそれを置いて湊に向き合う。

 

「そ、それで………どうしようか………」

 

やることもやってしまい、することがなくなるとレイナーレは困った顔で湊に話しかけた。

二人っきりということもあって、胸は常にドキドキしている。そのためか、何をして良いのか二人とも分からなくなっていた。

そして二人で考えること数分、湊はあることを思い付きレイナーレに話しかけた。

 

「あ、そうでした。レイナーレさんもこの部屋に住む以上、ルールを決めないといけませんね」

「ルール?」

 

そう、家族であろうと一緒の家に住むのなら出来上がっていく決まり事というのがある。この場合、異性と一緒の部屋で暮らすことで起こりうるトラブルを未然に防ぐために必要であった。

不思議そうに首を可愛らしく傾けるレイナーレに、湊は優しくルールについて話し始めた。

 

「その、レイナーレさんと今日から一緒に暮らすわけですが、着替えとかお風呂とか、色々と決めておかないと後で大変な事になりかねませんから」

「あ、そういうこと。確かにそうかもしれないね」

 

レイナーレも湊の言っていることを理解する。

だが内心では寧ろ恥ずかしいけどそういった『ハプニング』を望んでいる自分がいた。

きっと彼はそういったハプニングに遭う度に顔を真っ赤にして慌てるだろう。

だが、そうなればなる程にもっと自分のことを女の子として意識してくれるかもしれないと。

だが、そう考えている自分に気付くと、はしたないと一気に恥ずかしくなった。

そして二人で話し合った結果、着替えなどは洗面台で交互に着替えることにし、お風呂などは二人でその日に話し合って決めることにした。

取りあえず危険が少ないようにルールを決めた二人は制服を着替えることに。

先にレイナーレが着替えることになったのだが、その際に洗面台の扉越しから聞こえてくる衣擦れの音に湊は顔を真っ赤にしていた。

 そして二人とも着替え終わったところでお互いに向き合いながら会話をする。

別に何てことはない普通の話。レイナーレが料理が出来る事から湊の好き嫌いなどを聞かれたり、逆にレイナーレの好き嫌いを湊が聞いたりなど。

その際、レイナーレが辛いものが苦手だと知り、湊はそんなレイナーレを可愛いと思った。また、レイナーレも湊の好みが意外と渋いものが多いことを知り、格好いいと思い頬を赤く染めたりなど、ちょっとしたことですぐ赤くなるのを止めろと突っ込みたくなる会話が続いていった。

 

 

 

 日もすっかり沈み、夜になったところで二人は夕飯に付いて話し始める。

流石に初日から何か料理を作って貰うのも気が引けると湊は思い出前を頼むようにしたのだが、その際レイナーレが部屋の冷蔵庫を見て中に入っている物を見て湊に珍しく怒った。曰く、栄養食品とお茶くらいしか入っていないからだと。

料理を始めたレイナーレにとって、こんな身体に良いのかわからないものを湊には食べて欲しくない。だからなのか、結構本気で怒ったレイナーレは、湊の食事は全部自分が作るとはっきりと宣言した。

まぁ、内心ではそんな自分が若奥さんのようだとニヤつきかけていたわけだが。

そしてなし崩し的に頼んだ出前のお寿司を二人で食べた。

湊はレイナーレが山葵で涙目になっている様子を感じて可愛いと言い、そう言われたレイナーレは山葵のせいだけじゃなくても顔を真っ赤にした。

そんなイチャつきを見せた後、夜も深まり湊は先に風呂に入ることに。

目が見えなくてもすっかり慣れた動作で服を脱ぎ、洗濯籠に放り込んで風呂場に入る。そしてシャワーを浴びてから身体を洗おうとした途端、その声は聞こえてきた。

 

「あ、あの、失礼しま~す……」

「っ!?」

 

急に背後で聞こえてきたレイナーレの声に驚く湊。

その返事を待たず風呂場の扉を開けて彼女はゆっくりと入って来た。

その顔は沸騰しそうなほど真っ赤であり、その身体は真っ黒なビキニだけが身を包んだ妖しい恰好となっている。

そして彼女は胸の前に手を軽く合わせながら湊に熱の籠もった声でこう言った。

 

「その、ね……身体洗うの、大変だと思うから……お背中流そうかなって……」

 

その言葉の意味を湊は、沸騰しかけた思考のせいで理解出来なかった。


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