堕天使な彼女の恋物語   作:nasigorenn

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少しスランプ気味ですね。
イチャつかせ過ぎないようにすることが! 上手く形に出来ない自分がもどかしいです。


第38話 彼女と彼のお昼ご飯

 何とかクラスの皆からも受け入れられ、早速レイナーレにとって人生と言って良いのかは謎なので堕天使生とでも言おうか、ともかく初の学校生活が始まった。

初日ということで比較的に教師達は彼女の事を慮って授業を進めていくが、レイナーレは特に問題無く授業に取り組んでいく。

その様子を気配と耳で感じ取っていた湊は、レイナーレの新たな一面を感じられて笑みが浮かんでしまう。

湊にとってレイナーレは自分よりも様々な事を知っている聡明で可愛らしい女性だ。だが、実際に勉学を学ぶこの場に出て、レイナーレは湊が考えているのとは又違った一面を見せた。

語学は堪能らしく現代文や英語などはとても優秀なのだが、理数系は苦手なのか指された際に恥ずかしがりながら分かりませんと答えていた。

そんなレイナーレが可愛らしいと湊は思う。

苦手な部分が見え、それでより親密に思えることが嬉しくて、彼女のことが身近に感じられて嬉しい。一緒の教室で共に同じ授業を受けられることが楽しいと感じた。

そのためか、授業中ずっと暖かな笑みを浮かべる湊。そんな湊の様子に周りのクラスメイトもほっこりとしていた。

対してレイナーレもまた、嬉しくて仕方なかった。

今まで知っていた知識に更に新しい知識が入って来る。知らないことが増え、それに比例して新しい情報を学び覚える。それがまず楽しかった。堕天使には学校がないから、こういった感覚は久しくて楽しい。

何よりも、大好きな湊の隣で一緒に授業を受けられることに幸せを感じた。

以前は遠くから眺めただけ。だけど今は隣で、手が触れ合えるくらい近くで湊の様子を見ることが出来る。だからなのか授業中、彼女は授業を聞きつつも湊の様子をずっと見ていた。

そして内心で驚きながら感心する。

 

(これが授業中の蒼崎君なんだ……何だか、凄い…………)

 

それというのも、授業を受けている間の湊は動きが止まることが一切無いからだ。

手に持っているのは、特殊なペン。インクも何も出ないのでペンというのも可笑しい代物だが、それを使って湊の手は高速でノートに点字を打ち込んでいた。

少し柔らかい下敷きを使い、手で触って読めるように全て反転させながらノートに教員が話している事を叩き込んでいく。

故に彼の机からは常に何かを叩く音が絶えず、湊の手は止まらない。

そんな様子の湊だが、その顔は常に笑っていた。

コレが出来るからこそ、湊は普通に授業を受けることが出来る。そうなるためにどれだけ努力したのだろうか? レイナーレはそう考えながら湊の事を見る目に熱が籠もる。彼の新たな一面を見れて、内心感動した。

 お互いに新しい一面が見れて嬉しい2人。そして遂にゆっくりと2人で話す機会が訪れた。

 

 

 

 鳴り響くのは、お昼を知らせるチャイムの音。

その音と共にクラスの皆は賑やかになっていく。弁当を広げる者、朝の内にコンビニで食糧を買ってきた者、食堂に向かう者、購買で食糧を買いに行く者と様々だ。

そんな中、レイナーレはそれまで受けていた授業の教科書を纏めつつ湊に笑いかける。その表情にはこれから話しかける内容に緊張しているようで、少し笑みが硬くなっていた。

 

「蒼崎君、お昼はどうするの?」

「お昼ですか?」

 

レイナーレの問いに対し湊は少し考え込む。

普段なら1人教室内で朝の内に買って来たパンを食べているので、他の人と一緒に食べることなどなかった。だからどう答えて良いのか悩んだ。

 

「レイナーレさん、お昼ご飯とか持ってきてます?」

 

湊の問いに対し、レイナーレは頬を桜色に染めつつ湊に答える。まるで恥ずかしいけど嬉しそうに、待っていた言葉が聞けてよかったと言った感じに。

 

「その……ね……お弁当、作って来たの。よ、よかったら、一緒にどうかな……」

 

レイナーレは鞄から風呂敷で包まれた物を取り出すと、それを湊の前に差しだした。勿論見えないので意味はないのだが、それでもそうしたくてレイナーレは湊の前に出したのだ。

そんないじらしいレイナーレの様子に湊は見えなくても胸が締め付けられ、顔が熱を持っていくのを感じた。そして嬉しくて少しばかり興奮した感じに返事を返す。

 

「いいんですか、ご相伴にあずかって?」

「えぇ、勿論!(だって元々蒼崎君と一緒に食べるために作ったんだし……)」

 

湊の返事を肯定と受け、レイナーレは花が咲いたかのような笑顔になった。

この弁当に関しての入れ知恵はカワラーナである。

学園で想い人との楽しい一時と言えば昼食、そこで手作りのお弁当を出せば好感度アップだと。この事に関してレイナーレも同意であり、少女漫画の定番でもあるのでかなり頑張った。堕天使のくせに恋愛に初心なレイナーレにとって、少女漫画はある意味恋愛バイブルといえよう。それを今まで熱心に読んでいたレイナーレにとって、このお弁当イベントはかなり重要である。

そんな決意を感じたというわけではないが、レイナーレから嬉しそうな雰囲気を感じ取った湊は此方も負けないくらい嬉しそうに微笑んだ。

 

「でしたら、今日は天気も良いようですし屋上に行きましょうか」

「うん!」

 

そして2人で屋上へと向かうべく、席から立ち上がる。

湊はそのまま杖を前に出して歩き出そうとするが、その前に右手を軽く引っ張られて止まる。顔を向けると、その先には湊の右手の裾をレイナーレがちょんと少しだけ摘まんでいた。

 

「わ、私が蒼崎君をリードするから、蒼崎君は安心して……」

 

顔を真っ赤にしながら湊の右手の裾をきゅっと引っ張るレイナーレ。

そんな彼女の気遣いに感謝しながら湊は笑顔でお願いした。

 

「でしたら、お願いします」

「う、うん、頑張るわ!」

 

そんなわけで、湊はレイナーレに手を引かれながら屋上に行くことに。

その様子を見ていた兵藤達は血涙を流しながら悔しそうにしており、女子達は2人の初々しさに微笑みを浮かべて、また少し羨望の眼差しを向けていた。

 そしてレイナーレに屋上まで連れて来て貰った湊は、暖かな日差しを浴びながら近くにあるベンチへと案内された。

 

「良くわかりましたね、屋上までの道」

「前に蒼崎君が案内してくれたから」

 

迷わずに屋上に来れた事に感心する湊にレイナーレは嬉しそうに笑いながらそう答えた。以前案内して貰ったことは彼女の中でとても大切な思い出であり、色あせることなく覚えているのだ。故に学内の案内は行ってないところ以外はほぼ迷わずに行ける。

レイナーレはそのまま湊に寄り添うかのように座ると、先程出したお弁当を開けた。

中に入っているのは、白米におかずといったスタンダードな代物。

おかずは卵焼きに野菜の煮物、それに唐揚げなど。湊に気付かれない様にしているが、彼女の左手にはまだ治りきっていない傷がちらほらあったりする。

カワラーナ指導の下、一生懸命勉強したのはいうまでもない。

そして白米には少しばかりイタズラ、もといお茶目心が出ていた。

白米に桜でんぶで♡マークが描かれているのだ。人から見れば恥ずかしくて仕方ない代物だが、湊は目が見えないので少しばかり冒険した。

そんな弁当を食べて貰えると思うと、レイナーレはドキドキして仕方ない。

だが、食べる前に湊が聞きたがっていたことを先に答えることにした。

 

「その前に蒼崎君には言わなきゃね」

「それもそうですね」

 

屋上から人の気配が感じられないことから二人っきりだと意識してしまい顔が赤かなる2人。レイナーレは弁当の事もあって湊以上に真っ赤になっていた。

そんな状態でもするべき事はすべきだと話し始めるレイナーレ。

内容は普通に堕天使の親善大使としてこの町に赴任するということ。かなり省いて休戦協定の話などはあまりしないようにした。湊に話してもしょうがないことだからである。

それを聞いて湊は大体を把握する。だが、腑に落ちないことが一つだけあったが、それを聞くのは気恥ずかしくて止めた。

 

『どうして家を選んだのか』ということを。

 

たまたま知り合いが自分しかいなかったからだと、そう思うことにした。

もしこれがレイナーレが自分を頼りにしてくれたのなら、それはそれで嬉しいから。

だからこれ以上は聞かないことにして納得する。

 

「そうでしたか。なら……これからよろしくお願いします」

 

湊はこれから一緒に住むレイナーレに礼儀正しく頭を下げる湊。

 

「そ、そんな、こちらこそ……」

 

レイナーレは慌てた様子で頭を下げる。

二人して頭を下げる光景は少しばかり奇妙だが、見ていて何故か微笑ましい気持ちにさせられるだろう。

そして改めてお弁当を食べることに。

だが、湊に弁当は渡されない。

レイナーレはこれから自分がする行為に凄く恥ずかしさを感じつつも、熱病に浮かされたように顔を赤くしながら口を開いた。

 

「あ、蒼崎君、私が食べさせて…あげる……」

「れ、レイナーレさん!?」

 

その発言に驚く湊。

だが、レイナーレは止まらない既に行動を起こし、箸を使って桜でんぶの♡マークの部分のご飯を掬うと。それを湊の口元に持って行く。その顔は郵便ポストより真っ赤であり、瞳は羞恥と緊張と期待で揺れていた。

差しだした箸は震えながらも湊の前に出される。

 

「は、はい、あ~ん…………」

 

やっている側がオーバーヒート寸前であり、やられている側の湊も顔から火が出るくらい真っ赤になっていた。

目が見えない彼だが、それでも人から食べさせて貰うことが恥ずかしいことは分かっている。それが好きな人なら尚更に。

だが、彼女の厚意を無下にすることなど出来ないと、湊も恥ずかしがりつつも口を開いた。

 

「あ………」

 

控え気味にだが箸からご飯と食べる湊。

そんな湊を見てレイナーレから声が漏れた。それと共にレイナーレの胸が高鳴る。まるで小鳥に餌を与えているような感じだが、それ以上に彼女には愛くるしく見えた。

そしてもっと彼のそんな顔が見たいと、彼女は更にご飯やおかずを湊に差し出す。

 

「これもどうぞ、あ、あ~ん………」

「い、いただきます……」

 

湊も抵抗する気は無いようで恥ずかしがりながらも素直に貰う。

 

「お、おいしいれす………」

 

そして食べる度に美味しいと感想を述べるが、正直ドキドキしすぎて味など分からなかったし、言葉も可笑しくなっていた。

 

(蒼崎君が私が作ったお弁当を美味しいって言ってくれてる。こんなに嬉しいなんて………うふふふふ。それにハートの部分が口に入る度、何凄く胸がドキドキしちゃう。し、幸せな感じでどうにかなっちゃいそう………)

 

彼女は恥じらいながらも美味しそうに食べてくれる湊に胸をときめかせ、湊は湊でドキドキが収まらず顔が熱くて仕方ない。

 その後も弁当がなくなるまでこれは続き、食べ終わった頃にはレイナーレは顔を赤くしつつも満たされた表情になっており、湊は恥ずかしさと嬉しさのあまりにどんな顔をして良いのか分からず俯いていた。

こうして2人の妙にいじらしく初々しくもどかしい昼食は終わった。

 


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