堕天使な彼女の恋物語   作:nasigorenn

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今回は特に2人がイチャつくわけではないです。


第37話 彼女は周りに答える。

 湊はレイナーレが編入してきたことに大層驚き、どうして留学生として編入してきたのか知りたくてたまらなかった。

だからこそ、自分の隣に座った彼女に早速話しかけようとするのだが……。

 

「あの、レイナーレさ……」

 

話しかけた所で、途中でその声は別の大音量と気配によってかき消された。

その正体は新たに入って来たレイナーレに興味津々で群がってきたクラスメイト達である。

 

「あの、ハイブラウさんってドイツから来たんでしょ! どんな国だったの!」

「日本語凄く上手よね。猛勉強とかしたの!」

「うわぁ、すっごい美人! ねぇ、この抜群のスタイルの秘訣とかってない!」

 

外国から来たということで盛り上がりを見せるクラスメイト達。そんな彼女達の様子を察して湊は今は無理だと判断した。

だからこそ、今度は周りのクラスメイト達に対してレイナーレがどんな返しをするのかを聞くことにする。何となくだが、面白そうだと思ったのだ。彼女がどんな反応をするのかが。

聞かれたレイナーレは周りのクラスメイト達の様子に少し驚きつつも、微笑み返しながら返事を返す。

 

「ドイツのミュンヘンに住んでいたの。色々な世界遺産があったり大きな教会があったりして歴史溢れる町よ。でも、都市部はやっぱり大きなビルとかが多くて日本とそんなに変わらないかも」

 

勿論、口裏合わせの嘘である。

だが、そういう設定故にちゃんと作り込んであるのは流石と言えよう。それを作ったであろうアザゼルに彼女は内心少し驚いていた。設定に妙に凝るのは流石『元』中二病といったところか。本人は否定するだろうが。

 

「日本語は母様が日本人だったから教わったの。母様の祖国の言葉だから、一生懸命覚えたのよ」

「てことは、ハイブラウさんってハーフなの!」

「えぇ、父様がドイツ人で母様が日本人なの」

 

その言葉により反応しテンションを上げるクラスメイト。

この辺りは内心素直に感心するレイナーレ。堕天使や悪魔、天使などの三大勢力における種族に於いて、混血は寧ろ忌み嫌われるものだ。だが、それに対し人間は羨望に近い感情を持つ者が多い。幼い子供ならば異物として毛嫌うものだが、もう高校生にもなればそのようなことはない。寧ろ海外の格好良いとされる人種の良い部分を受け継いでいると羨ましがられるのだ。

故にレイナーレは苦笑しながら返事を返す。

元から嘘八百なのだから、当然これも嘘。レイナーレの両親は共に堕天使である。

悪魔もそうなのだが、これらの種族は他の人間の言葉の殆どを理解することが出来る。だからこそ、特に彼女が話しているのは日本語というわけではない。能力による翻訳があると言って良い。

まぁ、それを抜きしてもレイナーレは日本語は勿論、英語にドイツ語と色々と学んでいるので問題無く話せるし文章も書ける。そうでなくてはこの人間界で遊ぶなど出来ないのだ。

 

「スタイルが良いって言うけど、そんなこともないわよ。私は寧ろ貴方のスベスベそうな肌が羨ましいもの」

「え、そうかな~」

 

レイナーレは聞いてきたクラスメイトにそう答えると、その生徒は顔を赤らめ満更ではないようで嬉しそうに笑った。

スタイルに関しては個々の問題なので特に何も言えない。レイナーレのスタイルが良いのは別に何かしたからと言うわけでは無く天然だ。まぁ、人間の女性と同じように食事には気をつけているが、その程度だろう。基本彼女らの種族は美男美女が多いのもその理由の一つとしか言えない。

そんな風に受け答えを行っていくレイナーレ。

そんな彼女の声を聞いて湊は嬉しそうに笑う。

彼女が留学生としてこのクラスに来たことが、まるで夢のように現実感がなかった。

だが、こうしてクラスメイトと仲良く話しているところを聞くと、現実感が湧いてそれが嬉しかったのだ。

しかし、そんな微笑ましい光景にも当然良からぬものもあるわけで……。

 

「君って以前学校に来てた子だよね! 確か蒼崎の知り合いの! 結局蒼崎との関係ってどうなの?」

「週に何回『ピー』してるんですか! 後今日は穿いてる下着の色を教えて下さい!」

「そのおっぱい本物ですか! 是非確めさせて下さい! 勿論、そこから先もOKだぜ、俺は!」

 

勿論そんなことを聞く輩はこのクラスに3人しかいない。

レイナーレに色々と聞いている女子達に紛れ、変態トリオに3人が彼女に詰め寄っていた。

そのことで嫌悪を顕わにした視線を向ける女子達。

 

「え、あ、あの……ぁぅぁぅ………」

 

レイナーレはと言えば、エッチなことを聞かれた事で戸惑うと共に顔を真っ赤にしていた。

普通の堕天使なら見下すところだが、彼女は年相応の人間並みに初心だ。

卑猥なことを聞かれれば当然恥ずかしいのである。

だが、ここで答えないというのは今後のクラスメイトとの付き合いに支障を来すと思ったのか、彼女は羞恥で真っ赤に染まった顔で出来る限り答えた。

 

「そ、その……胸は本物ですけど、触らせるのも……駄目で、流石に言えない………そ、それと蒼崎君とは……」

 

最後の辺りでレイナーレは湊の方に目を向けて顔を俯いてしまう。その顔はトマトよりも真っ赤になり、瞳は潤んで湊から目が離せないでいた。

言葉も切れ切れだったので殆ど聞こえなかっただろう。傍から見れば変態3人組のセクハラに遭っているようにしか見えない構図になっている。

だからこそ、女子達はいつもの様に怒るろうとした。

しかし、その前に3人組に声をかける湊。その声は静かだが、確かな怒りが込められていた。

 

「兵藤君、元浜君、松田君、いくら何でもそれは酷い質問じゃないかな? 彼女はまだこの国に来て慣れていないというのに、そんあ不躾な質問をするなんてあんまりじゃないかい。これで彼女が傷付いたら、君達は……どう責任を取るつもりだい」

「「「っ!?」」」

 

いつもはお調子者の3人だが、流石に湊のこの気配を感じて口が塞がった。

顔はいつもと変わらない笑顔。だが、その口から出る怒気に3人は震え上がった。

普段怒らない人間が怒るというのは凄く恐いものだ。動物も案外肉食獣より大型の草食獣の方が怒った時は恐ろしい。

湊も自分がかなり怒っていることに驚いていた。

普段はそこまで感情を顕わにすることはないのに、レイナーレの事になるとどうも感情が落ち着かない。原因は分かっているが、それでも驚きを隠せない。そんな自分が嫌いではないが。

故に彼女を困らせる真似をした彼等が許せないのだ。

その怒りは周りにいたクラスメイト達にも伝わり、彼女達は慌てて3人組を罰っすることにした。湊が怒っているということが彼女達にとっても恐かったのだ。

事態の収拾を行うためには、事の発端たる馬鹿3人を断罪する他ない。

 

「あんた達、ハイブラウさんに何失礼な事聞いてるのよ!」

「普通そんなこと聞かないわよ、このド変態、ゴミ屑、ウジ虫以下!」

「はぁ? 触らせるわけないでしょ、この馬鹿! もうちょっと常識ってもんをわきまえなさいよ!」

 

そして始まる断罪と言う名の一方的な暴力。

変態3人組は女子達に罵られながら殴られ蹴られ見るも無惨な姿へと変わっていく。

そんな3人の様子を聞いて、湊はその怒りが収まっていくのを感じた。

もう成敗されたのだし、これ以上怒っていても仕方ない。

そう思い湊はレイナーレに、きっと困って戸惑っているだろうから落ち着かせるように優しく声をかける。

 

「大丈夫でしたか、レイナーレさん? すみません、彼等も悪気があってああしてるわけじゃないと思うんです。多分少しでも打ち解けようとしてそれで暴走しかけてただけかと。だから嫌わないで下さいね」

 

湊はそう言うが、実際に見ればどう見たって下心満載でどう言い訳しても絶対に無理だと誰もが思うでであろう。それをこうも言えるのは、偏に湊の人徳なのかも知れない。

そして湊に声をかけられたレイナーレと言えば………。

 

「う、うん、蒼崎君がそう言うのなら………(蒼崎君に助けて貰っちゃた……立派に怒って相手を黙らせる蒼崎君、格好良かった……)」

 

傍から見てもバレバレなくらい恋する乙女の顔になっていた。

頬は桜色に染まり濡れた瞳が湊を見つめ、熱い吐息が口から漏れる。

レイナーレからすれば、もう何度目になるか分からないくらい湊に助けられた。その度に彼女の瞳に湊は凜々しく格好良く映り、まさに王子様のように見えてしまう。

彼女は王子様に助けられ、その胸が更にキュンと高鳴ってしてしまう。

その様子を見ていた女子達はレイナーレに不思議そうに、それでいて既に答えが分かりきっているといった感じにニヤニヤ笑いながら聞いてきた。

 

「あの、ハイブラウさん? 蒼崎君と知り合いなの?」

 

それに対し、レイナーレは自分がどんな顔をしているのか気付き、恥ずかしくて顔を真っ赤にしながら俯きつつも答えた。

 

「う、うん、その…………」

 

後半は殆ど呟き程度の声でしかないが、それでも彼女達の耳には入ったらしい。

周りが騒々しいこともあって湊は聞こえなかったが、その代わりに……。

 

「「「「「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」」」」」

 

再びクラス中の女子から黄色い声が上がった。

 

そしてレイナーレは、その間ずっと湊を見つめていた。

 結局、この後も似たようなことが起こり、湊がレイナーレに落ち着いてが出来る様になったのは昼休みに入ってからであった。

 

 

 




次回が激甘予定です(笑)

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