堕天使な彼女の恋物語   作:nasigorenn

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感想にもありましたが、敢えて言います。
この作品のレイナーレは原作と正格がかなり違います。正直プライドも高くなければねじ曲がってもいませんので。
まずはそこをご了承下さい。タグにも綺麗な……って入ってますので。


第22話 部下は部下で彼女のことを見守る

 ペットショップで動物と戯れてご満悦なレイナーレと湊。

そんな二人に対して、ミッテルトは疲れ切った様子を見せていた。

 

「さっきの子犬がね、凄く可愛かったの!」

「皆とても甘えてきて可愛らしかったですね」

 

先程の触れ合いを思い出し会話に華を咲かせる二人。

 

「酷っい目に遭ったっす! ウチは危うく犬畜生に犯されそうになったすよ~~~~!」

「そんな、大げさねぇ~」

「皆とても優しい子達でしたよ」

 

ミッテルトは自分が遭った被害を思い出してうんざりしながら文句を垂れるが、そんなことは信じられないと二人に言われてへこむ。

まぁ、誰だってペットショップに行ったらいきなり襲われました、何て思わないだろう。

レイナーレの目からは大型犬と戯れているようにしか見えなかったし、湊に限っては見えないのだからミッテルトがどんな目に遭っていたかなど知りようがないのだから。

 そんな目に遭ったミッテルトを気にせず、このデートは更に続いていく。

やはり目が見えない湊の事もあってか、少しばかり普通とは違う所へと行く三人。

いつもなら行かないような場所に案内してもらい、大いに楽しむ湊。そんな湊の笑みを見て喜ぶレイナーレ。

二人の様子はそれこそ、カップルといっても良いほどにイイ感じだ。

だが、それでも告白していないというこの状態。二人を見ているミッテルトはこのままで良いのか本当に判断出来なくなってきそうだった。

 

 

 

「むぅ……ミッテルトがちょっかいをかけ始めた頃はどうなるかとヒヤヒヤしたが、この様子なら問題は無いか?」

 

そんな三人をばれないようにかなり後から見守るカラワーナ。

ミッテルトが二人に介入した時はあまりの行動に止めに入るべきか悩んだが、自分も見ていることがばれたらレイナーレにどのように怒られてしまうのかわからなかったため様子を見ることにした。

そしてミッテルトが湊にわざとらしく女の部分を使って誘惑する度に、焦らされて彼女もまた疲れていた。

そんな彼女と一緒になってレイナーレの様子を見ていたドーナシークだが、此方は特に疲れた様子はない。

 

「ふむ……あの小僧、中々やるではないか」

 

顎に手を当てながらそう言うドーナシークに、カラワーナは何がだと聞く。

聞かれたドーナシークはニヤリと笑いながら答えた。

 

「ミッテルトは私から見ても上玉の女と言えよう。美しさやスタイルはレイナーレ様に見劣りするが、それは時が解決する。その上『実技』ではレイナーレ様とは比べものにならん。レイナーレ様は残念というか何というか……経験0だ。その点で言えばミッテルトはお前も含めて一番の経験者と言える。その玄人の誘惑を受けても尚、あのように平常心でいられるというのはそうはいないぞ」

「そうか? 確かにアイツは一番経験豊富だが、それでも小娘だぞ。それにレイナーレ様の意中の彼は目が見えないんだから、いくらミッテルトが誘惑したところで殆ど効かないんじゃないか?」

 

やけに堂々と答えるドーナシークに不思議そうに返すカラワーナ。

確かに彼女の言い分も間違いではない。目が見えないのだからミッテルトが如何に美少女であっても湊にはわからないし、そんな美少女が誘惑してこようが見えなければそんな反応などしないだろうと。何より、それまでの様子から分かる湊の歳不相応とでも言うべき性欲の無さからすれば、姿がわからない相手に欲情するとは思えなかった。

それに対し、ドーナシークはやれやれと呆れ返っていた。

 

「まったく、そんなのだから妄想だけが進んで実技がまったく進まないのだ、貴様は。いいか、男なら女体の感触や香りだけでも昂ぶるものだ。それに目が見えないというのは、ある意味目隠しプレイ状態故に妄想が掻き立てられる。男ならそれだけでもたまらんものよ。だが、あの小僧はその様子がまったくみられない。それだけ精神が鍛えられているということだ。私なら小僧とは別の答えを出すがな」

 

そう言われカラワーナは五月蠅いとドーナシークに噛み付く。

まるで、『そんなんだからお前は未だに恋人の一人も出来ないんだ』と馬鹿にされているようだったから。だが、その怒りを飲み込みつつドーナシークのその答えとやらを聞くことにした。

 

「何だ、その言い方は? 今の彼の状態は傍から見れば両手に花。言い替えれば二股に近いようにしか見えそうにない。まぁ、実際に近づけばレイナーレ様との会話を楽しみながらミッテルトの誘惑を天然で躱していることがわかるが。それが彼の答えだとでも言うのか? それにお前の言う答えとは何だ?」

「いいか、小僧は女二人を侍らせているようだが、その実はレイナーレ様に重点を置いている。はっきり言えばレイナーレ様にだけ意識が向いていると言ってもいい。ミッテルトはあくまでも妹のように扱っているといった感じだ。小僧はミッテルトの誘惑に靡かず、レイナーレ様のみを見ているのだ。男らしい答えと言えよう。だが、私ならそうはしない」

 

そこで一拍おくとドーナシークは自身満々に答えた。

 

「麗しい熟女が二人で私を取り合っているのなら、私はそんな二人の争う姿は見たくない。ならどうするか……決まっている。一緒にベットで愛するのみだ! 分け隔て無く、二人とも愛していることを精神にも身体にも深く刻みつけ、立てなくなるまで愛してやる!」

 

まだ昼間だというのにはっきりと卑猥なことを言うドーナシーク。

その答えを聞いたカラワーナは流石に顔を真っ赤にして恥ずかしがってしまう。

そしてもしこれ以上聞かされたら耐えられないと知りつつも、小声で少し聞いてしまった。

 

「ちなみに聞くが……それは経験談か?」

「勿論だ。ちなみに過去最高は六人同時だったか。流石の私もあれには参ったものだ。全員失神させるのに丸一日かかったからな」

「っ!?」

 

それを聞いたカラワーナはもう駄目だった。

何でこんな卑猥な奴が同僚なのかと呪い、そしてそんな奴と一緒にデートを監視する自分に嫌気が差した。そして興味本位とはいえ、そんな答えを聞いたカラワーナはもう恥ずかしさのあまりドーナシークが近くに居ることが我慢出来なくなった。

 

「このっ、女の敵め! お前のような奴がレイナーレ様の相談に乗るな! もう、どこかいけ!!」

 

そう叫びながら光の槍を手に出現させ、思いっきりドーナシークに投げつけるカラワーナ。

ドーナシークはそれをひょいと避けるとやれやれと呆れた様子でカラワーナに背を向け早足で去り始めた。

 

「まったく、これだから妄想ばかりで実践がまったく出来ていない小娘はいかんな。麗しき熟女の方なら笑顔でやんわりと返すものを。これ以上あの二人を見守る必要も無いだろう。故に私は静恵さんとのデートに向かうことにしよう。そろそろ時間なのでな」

「とっとと失せろ!」

 

その背を忌々しく睨み付けながらドーナシークを見送ったカラワーナは再びレイナーレ達のデートを見守るべく、行動を再開した。

 

(いくらドーナシークが言おうとも、やはり心配なになってしまうのはどうしようもない。私がレイナーレ様達をお守りし、ミッテルトのちょっかいがいきすぎないように注意せねば)

 

そう決意し、彼女はばれないように見守る。

 

 

 

 そんな事になっていることなど知らず、三人は色々な店を廻っていく。

そして行く先々で知らなかったことなどを知っては笑い楽しんだ。

何故かその際、ミッテルトだけ何かしらの被害を被る目にあっていたが、理由まではわからない。それは神ですらわかり得ないだろう。

そんな中、湊が今までではしなかった行為をした。

 

「あ、すみません。少しトイレに行って来ますね」

 

それは良くある言葉であり、それを聞いたレイナーレは顔を少し赤くしながら反応した。ミッテルトがイヤらしそうな笑みで何かからかおうとしたが、レイナーレによって口を塞がれる。

湊に少しでも悪影響が出るような事を聞かせたくないからだ。

そして湊がトイレから戻ってきたのは、約20分後。

 

「すみません、遅くなってしまって」

「そんなにトイレに長く居て何してたんすか? あ、ナニを……」

「ミッテルトはそれ以上言わない! それよりも蒼崎君、大丈夫? 体調が悪いんだったら、このお店から出てどこかで休もうか? クスリとか必要だったら言って。直ぐに買ってくるから」

 

そんなに長い時間トイレに行っていたのかとミッテルトに突っ込まれそうになったが、レイナーレはそれを押しとどめて湊のことを純粋に心配した。

 

「いえ、別に大丈夫ですよ。体調は問題無いですし、クスリなんて必要ないですから。そんなことでレイナーレさんのお手を煩わせる訳にはいきませんよ」

 

湊はそう言い申し訳なさそうな笑みを浮かべて謝る。

湊の顔をそう言われたら仕方ないとレイナーレはこれ以上は聞かないようにしたが、それでも直ぐに変調があるようなら言って欲しいと湊に少し強く言う。

その言葉に湊は感謝しながらお礼を言った。

 

「そこまで言ってもらえるなんて嬉しいですね。まるでレイナーレさん……お姉さんみたいですよ」

「そ、そうかしら……(わ、私が蒼崎君のお姉さん……それはそれで……イイかも……)」

顔を赤くしながら内心喜んでいるレイナーレ。そんなレイナーレを見てからかいを入れるミッテルト。

湊はそんな二人に気付かれない様、そっと空いた手は後に回す。

 

 その手には、小さな紙袋が握られていた。

 

 


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