堕天使な彼女の恋物語   作:nasigorenn

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うぅ……まさか評価がかなり下がるとは思いませんでした。
何かご指摘があれば嬉しいですね。作品の質向上のために。


第21話 部下は部下で彼女のことを何だかんだと心配している

 どういうわけかミッテルトも交えて三人で出歩くことになった湊達。

レイナーレはミッテルトの真意を測りかねてはいるが、分かることは一つ。

それはミッテルトが湊に『ちょっかい』をかけようとしているということ。

湊はとても優しいが、でも男だ。そんな彼がこの玄人の誘惑に耐えられるのかと言えば……正直わからない。だが、信じたいとレイナーレは思った。

だからこそ、レイナーレは湊の腕に力を込めてくっつきつつ、ミッテルトに警戒を向ける。その様子はまるで小猫が威嚇しているようであった。

 

 

 

 一緒に出歩くことになった湊だが、二人から両手を引っ張られるという事態に戸惑ってしまう。

自分と違うリズムで歩く二人に別々に引っ張られているのだから無理も無いだろう。目が見えないということもあって、そのリズムに合わせるのも中々に難しい。

だが、それでも楽しく感じていた。

レイナーレの御蔭で新しい物を知って、そしてレイナーレの好きな物を教えて貰えることが彼には嬉しかったのだ。

だからこそ、彼女を慕っている様子を見せるミッテルトがどんな風にレイナーレのことを思っているのか知りたくなった。

彼にとって、それはレイナーレの家族に本人の話を聞くのと等しいから。

 

「う~~~ん、やっぱり人間界はいいっすね~。この生温い感じがたまんないっすよ」

 

リラックスした様子でミッテルトはそう言いながら湊の腕にさりげなくくっつく。その様子を見てレイナーレは負けじとくっつこうとするが、先程の決意も薄れてきてしまい大胆なことはせずに腕を軽く引く程度に抑える。

流石にさっきみたいなことをもう一回するのは彼女には無理だった。湊の赤い顔を見るのは悪くないが、流石に恥ずかしすぎる。

そんな風に思うレイナーレにとって、ミッテルトの大胆な行為は恥ずかしいが、同時に羨ましく思った。

そんな二人の様子を感じてか、湊は苦笑する。

ミッテルトからは妙にくっつかれていて懐かれているようだが、それをレイナーレに見られているのが何やら気まずい感じがすると感じた。

別に何かいけないことをしているわけではない。だが、妙にレイナーレから感じる何とも言いがたい気配に湊は何故かいけないことをしているような気になった。

それを少しでも和らげようと、湊はレイナーレに話しかける。

 

「と、ところでレイナーレさん、次はどんなところに案内してくれるんですか」

 

それは本来の目的であり、それまで案内して貰ったところから期待が膨らむ湊。

そう言われレイナーレはミッテルトに向けていた意識を外し、少し慌てながら答えた。

 

「つ、次はね、ペットショップに行こうと思ってるの」

「ペットショップか~。話は聞いたことがあるけど、行ったことが無い場所ですね。それだけに楽しみです」

 

湊は今まで無縁だった場所なだけに楽しみになっていた。

彼にとって未知な所は少し恐いが、レイナーレと一緒になら楽しいと感じる。それにペットショップと聞くと、よりレイナーレが女の子らしくて可愛らしく感じ、それが嬉しかった。

湊に楽しみだと言われ、レイナーレの顔は綻ぶ。その言葉はレイナーレにとって今の現状打破の励みとなった。

 

「そう言ってもらえると嬉しいわ。なら、早く行きましょうか」

 

笑顔でそう言いながらレイナーレは優しく湊の手を引く。

その手を感じながら湊はレイナーレに笑いかけた。

それはまさに年相応のデートの様子。二人は互いに笑い合い、その何気ない会話にドキドキとしながらも楽しむ。

湊はレイナーレの話をゆっくりと聞きながらも笑い、レイナーレはそんな湊の無邪気な笑みに顔を赤くしつつも嬉しそうに笑い返す。

青春と言う言葉にふさわしい空気が二人から発されていた。

そんな二人を見てミッテルトは妙に気まずそうな顔をする。

別にその案が嫌なのではない。

二人の初々しい感じが妙に居心地悪さを感じさせたからだ。

爛れたことが大好きな彼女にとって、この堕天使らしくないレイナーレの反応は猛毒のようにしか感じなかった。

実の所、本当に湊にちょっかいをかける気はないミッテルト。確かに湊の容姿は好みな方だが、それでも慕っている上司のお相手に手を出す気などない。なら何故このようなことをしたのかと言えば、正直レイナーレの様子から進展が中々しないと思ったからだ。

この男女間における百戦錬磨の玄人は、レイナーレの初恋が上手く行くとは思えなかった。

初恋が上手く行かないと言われているは、その経験が一切無いからだ。

経験を積めばそれに対しての対応が取れるようになってくる。確かに胸の高鳴りなどはどうしようもないが、それでも慌てふためき何も出来なくなるということはない。

そして同時にレイナーレが凄く引っ込み思案なこともミッテルトは知っている。初恋にのぼせ上がっているが、元々異性に耐性のない彼女がそんなすぐに湊と添い遂げられるとは思えない。

それらから察するに、レイナーレのこの恋は上手く行かないとミッテルトは判断した。経験上で言えば、このままいけば友人か友人以上恋人未満になりかねないと。

それで悲しむレイナーレの姿を見たくないからこそ、こうして二人に発破をかけに来というわけだ。

わざとレイナーレの前で湊にくっつくことで女としての対抗心を燃やさせ、それで積極的になったレイナーレと湊をより密着させ男女としての関係を強める。上手く行かなくて自分に転がったのなら、その時はその時で美味しく頂こうという打算もあるが。

だが、こうして二人の様子を間近に見て、ミッテルトはその必要は無かったんじゃないかと思い始めた。

こんな如何にもお互いに好き合ってる様子の二人をみれば、寧ろ何もしないほうがいいんじゃないだろうかと。

だが、まだ始まったばかりだと思い取りあえずチャチャを入れることにした。

 

「ペットショップっすか~。レイナーレ様ったら、獣〇に興味があるんすか? もしくはバ〇ー犬が欲しいんすか?」

 

ニヤニヤと笑いながらレイナーレにそう言うミッテルト。

年頃の男子がそんな卑猥な言葉を聞けば、途端にそんな妄想に駆られてしまうだろう。勿論湊の男の性を刺激することを狙ってのことだ。隣に気になってる女がいるのだから、その妄想もよりリアルになって意識せざる得ないはず。

そう思いながらミッテルトは湊を見るが、その顔はイヤらしさのかけらもない。寧ろミッテルトの言った言葉の意味が理解出来ず、ミッテルトに話しかけてきた。

 

「あの、ミッテルトさん。獣〇とかバ〇ー犬ってどういうものなんですか? バ〇ーってパンに塗るものですよね。それが犬とどういう関係が? 好きな犬がいるんでしょうか?」

「え、そんなことも知らないんすか!?」

 

寧ろ知らないことに驚くミッテルト。

湊は基本そういった知識の殆どを知らないのだから無理も無いが、ミッテルトの今まであった男の常識からは逸脱していた。

そんな性の欠片もないような相手がレイナーレの想い人で大丈夫なのかと心配になり、ミッテルトは素直に湊にそれを教えようとした。

 

「いいっすか、おにーさん。獣〇というのはっすね……」

 

だが、その先を湊が聞くことは無かった。

 

「蒼崎君、そんなこと聞いちゃ駄目!!」

 

レイナーレが顔を真っ赤にしたまま湊の両耳を塞いだからだ。

その様子からしてミッテルトの言っていることが何なのかは理解している。だからこそ、恥ずかしさのあまりに顔が真っ赤になってしまっていた。

レイナーレだって年頃なのだから、そういった知識などは持ち合わせている。何より、妹分の部下から恥ずかしさで気絶しかけるくらい生々しい話をきかされているのだ。嫌でも詳しくなってしまう。

レイナーレは必死に湊の耳を塞ぎながらミッテルトをキッと睨み付ける。

 

「何変なことを蒼崎君に教えようとしてるの! 彼はその……そういうことを全く知らないんだから」

「それでいいんすか、レイナーレ様~。そういった知識がないとこの後押し倒した後に苦労するっすよ」

「っ!? ま、まだそういうのは早いからいいの! その、そういうのは結婚してからで……」

 

ミッテルトの言うことに一々頭にその考えが過ぎってしまって顔を真っ赤にするレイナーレ。それをからかい笑うミッテルトだが、内心は少し心配だったりする。

そして湊は耳を塞がれているせいで何が起こっているのかわからない。ただ、耳も塞がれては何も出来ないので少々不安に感じた。

そうとは知らずにレイナーレはミッテルトの少々卑猥な意見に顔を真っ赤にしながら反論する。

それも熱が上がり始めた頃合いを見計らってミッテルトはレイナーレにトドメを刺した。

 

「ところでレイナーレ様~」

「何よ!」

「そんなにおにーさんと顔が近くて大丈夫っすか?二人の顔、後少しでキスできそうっすよ。それもと……狙ってるっすか?」

「え……………」

 

ミッテルトにそう言われ、レイナーレは顔を改めて湊の方に向ける。

すると目の前にあるのは湊の顔。睫毛は勿論のこと、その唇まで細やかに見えるほどに近かった。

それを認識した途端、レイナーレの顔はまるで爆発したかのように真っ赤になった。

 

「ご、ごめんなさい、蒼崎君!? 大丈夫」

「あ、やっと聞こえた。はい、レイナーレさん、大丈夫ですよ」

 

慌てて手を耳から離し、レイナーレはドキドキしながら湊に謝る。

湊は耳が聞こえたことにやっと少しホッとしたのか、安心した笑みを浮かべながらレイナーレの言葉に答えた。

そしてレイナーレはさっき見た湊の顔を思い出して顔を赤くしながら恥じらい、ミッテルトはそんな様子のレイナーレを笑う。

湊は何が起こったのか分からなかったが、取りあえず二人とも楽しそうだと思い笑顔のままだった。

 

 

 

 尚、その後入ったペットショップでも一悶着あった。

レイナーレはペットショップに入ると、店員に子犬や子猫を少し触らせて貰えないかと話し、それを店員は快く応じてくれた。

どうやら最初からそういった施設もあるところだったようで、問題はないらしい。

そして子犬や子猫がいる部屋に入ると、途端にレイナーレ達の方に集まってきた。

 

「きゃぁっ!? もう、この子達、甘えん坊なのかしら」

 

レイナーレの方には子犬が駆け寄り、尻尾を振り切れんばかりに振りながら飛びついてきた。そんな可愛らしい子犬をレイナーレは軽く抱き上げて撫でてあげると、子犬は気持ちよさそうに目を細め、お礼とばかりにレイナーレの頬を舐めてきた。

それにくすぐったいと言いながらはしゃぐレイナーレ。その姿は少女のように無邪気で、それでいて母性に溢れた女性の美しさ兼ね揃えていた。

対して湊はと言えば……。

 

「あはは、こんなに来られると困っちゃいますね」

 

笑っているわけだが、その身体中の至る所に小猫に乗っかられていた。

まるで小猫で出来た毛玉のようだ。

その様子にレイナーレは少し驚いたが同時に笑ってしまい、穏やかな笑みで湊に話しかける。

 

「蒼崎君、凄いことになってるわよ。そんなに猫に好かれるなんてね。それに蒼崎君も妙に慣れてない」

「ええ、少しばかり猫とは縁があるんですよ。だからでしょうかね」

 

二人して動物に懐かれ笑い合う。

まるでカップルのようなお似合いな二人だが、それでもカップルではないというのだから不思議だ。

そんな風に二人が動物と戯れている中、ミッテルトと言えば……。

 

「ちょっ!? 何でウチだけ大型犬なんっすか! しかもこいつ、ウチにのしかかってくるし! って、お尻に硬くて熱いのがあたってるっす! いくらウチでも動物はまだしたことないんで、嫌、駄目っす!」

 

大型のセントバーナードに襲われ………戯れていた。

 

 

 


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