堕天使な彼女の恋物語   作:nasigorenn

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今回は湊は出ません! そしてあの三人が登場します。
最近の感想で色々言われているので何とも言えないですが、この作品は無力な何も無い少年とレイナーレの恋物語だということを忘れないで欲しいです。


第12話 彼女は部下に相談を持ちかける。

 現在、レイナーレはもの凄く悩んでいた。

それというのも、先日の湊の告白紛いの発言のせいで完全に自分の中に芽生えていた感情に気付いてしまったからである。

この年頃の恋愛、それも初恋というのだからある意味凄い。レイナーレは湊に恋していることを理解してしまい、常に湊のことで頭がいっぱいとなっていた。

会いたい、会ってもっともっとたくさん一緒に居たい。そしてもっと彼の笑顔が見たい。彼に微笑んでもらいたい。彼のことをもっと知り、そして自分のことをもっと知ってもらいたい。

そんな、まさに思春期特有の感情が溢れ出しそうになり彼女は胸を高鳴らせる。

そして出来れば、彼にも自分と同じような感情をもってもらいたい。

正直、好きになってもらいたい。愛されたい。

そう思ってしまうのは我が儘なことだろうか? いや、そんなことはない。恋する少女なら誰もがそう思うものだろう。特に先日の一件の際、湊からもそれなりに自分を意識しているという言葉を聞いたので、レイナーレのその願いは更に強まっていた。

御蔭でもう、彼女は湊の事を考えていることが殆どになっていた。

それで仕事が勤まるのかと言えば、残念なことに勤まってしまっている。

組織の下級堕天使の仕事など、実際そこまで多くないのだ。いくら初恋にのぼせ上がっているレイナーレでも熟せるくらい、それは単純なものしかない。

それにより上へ上がろうとする貪欲さがないレイナーレは同期達が互いに蹴落とし合っている醜い争いに参加することもないので、ほぼ暇になっているわけだ。

普通なら周りから文句を言われそうな物だが、生憎仕事はやっているので言われることはない。

 だからだこそ、彼女はこの時間を利用してあることを部下達と話し合おうとしていた。

 

 

 

 組織内にある施設の一室にて、彼女は珍しく自分達の部下を呼び出していた。

あまり仕事熱心とは言えない彼女ではあるが、それでも能力は低くない。下級の中でもそれなりに高く、その実力は中級に匹敵しうる。故に彼女にはそれなりの実力を持った部下がいるのである。

そんな彼女が堕天使として上を目指さないのはどうなのかと周りは白い目で見るが、そんなことなど彼女にとって知ったことではない。

それにその部下達もまた、少々普通の堕天使と毛色が違っていた。

 

「よく集まってくれたわ」

 

感謝を込めた言葉を集まった部下達にかけるレイナーレ。

その顔は彼等の上司らしく凜々しいものであった。

そしてそんな彼女に対し、一人の男と二人の女は敬意を表す。

男はスーツを纏った渋い中年、そして片方の女は肌の露出が多く胸の谷間を顕わにしてスーツを着崩して着ている青く長い髪の美女。最後の一人はフリルなどを多くあしらった所謂ゴスロリ服を呼ばれる服を着た美しい金髪の少女であった。

彼等こそ、堕天使レイナーレの部下である。

そんな彼等は上司からの飛び出しに応じ、この部屋に集まった。

何故呼び出されたのかまでは知らない。だが、堕天使社会は力社会。上司が呼び出しを行ったのなら、それに出向くのは当然のことである。

彼等はこれから何を言われるのかを真剣に考える。普段からやる気があまりないレイナーレが遂に何か行動を起こすのだろうか、もしくは普段から人間界に出入りしているレイナーレが何か重要なことを掴んで来たのではないかと。

そして3人は同時に同じ事を考えた。

 

『面倒にならなければよいが………』

 

それが彼等が毛色が違うが故に思った事。

普通の堕天使なら、上司がやる気を出したとして大いに喜び、そのやろうとしていることに部下として尽力するものだ。

だが、彼等は違う。その『特殊』な趣味とでも呼べるもののせいか、普通の堕天使のような思考を持たないのだ。

だからこそ、レイナーレが言い出したことのせいで、その大好きな『趣味』を阻害されるのは面倒だった。

だが、それを表に出すわけにはいかない。そんなことをすればレイナーレにどのような仕打ちを受けるか分からないのだから。

そんな風に緊張している部下の顔を見て、真面目に話を聞いてくれると判断したレイナーレは取りあえず席に座り直す。

それにならい、彼等もまた座り直すと、そこでレイナーレは彼等にある質問をした。

 

「ねぇ、貴方達。貴方達の恋愛観念について聞きたいのだけど?」

 

その質問の意図が理解出来ず、彼等はポカンとしてしまう。

それもそうだろう。上司から呼び出しを受け、そして出向いてみれば来のはいきなり自分の恋愛観念についての質問とくれば、誰だって意図など分かるはずが無い。

そして表情こそ威厳があるように振る舞っているレイナーレだが、内心ではあまりの苦悩の悶絶していた。

それというのも、この問いをかけた3人が普通の恋愛観念など持ち合わせていないことを知っているから。

ある意味では堕天使らしいと言えるのかもしれないが、ここまで露骨なのは流石に引くレベル。そんな相手にしか相談できない自分がもっとも苛立ちを感じる。

だが、それでも彼女は縋りたかったのだ。恋愛などしたことも無い彼女にとって、少しでも情報を入手するために。

そしてレイナーレは男の方に顔を向けて、如何にもな雰囲気で男に声をかける。

 

「ドーナシーク、貴方の恋愛観念について言いなさい。勿論、嘘偽りなくよ。別に貴方の趣味は知らないわけじゃないけど、念のため、もう一回言いなさい。だれもそれを咎める者はいないし、私も聞いた所で貴方達を見る目は変えないわ。だから存分にね」

 

少しだけ砕けた表情で笑うレイナーレ。

その表情を見て、部下達も笑った。同僚と仲がよろしくないレイナーレだが、この部下達とは結構砕けた感じで仲が良いのだ。まぁ、湊のようにはいかないが。

そして名を呼ばれた男、ドーナシークは席から立ち上がると胸を張り、堂々とした様子で聞かれた事に答えた。

 

「は! 私は熟女が大好物です! 女は五十を超えてからがたまりません!! 張りと弛みが丁度良い、ふっくらとした肉付き、そして若い女では持ち得ない包容力と淫らな肉欲、それだけで私は心が満たされます。この間も人間界のレンタルショップで熟女物を三本ほど借りてきました! 出来ればこのまま熟女と毎日を淫らに過ごしたいです!」

 

自分の性癖をはっきりと口にするドーナシーク。

その発言に残り二人の女の部下達が汚物を見るような目でドーナシークを見ていたが、彼はまったく気にしていないようだ

その事に表情ではとくに出していないが、内心ではやっぱり聞いた事に後悔し始めるレイナーレ。

彼は熟女が大好きで仕方ないらしい。

そしてレイナーレは次にスーツを着崩したスタイル抜群の部下に話しかける。

此方はまだ女性なだけに多少はマシかもしれないが、それでも彼女の憂鬱加減は酷いものだ。

 

「カラワーナ、貴方はどう?」

 

その質問に対し、カラワーナと呼ばれた女の部下立ち上がると少し顔を赤らめもじもじとした様子で答えた。

 

「はい、私は、その………しょ、少年が好きです。十歳前後の素直で無邪気で無垢な子供を自分色に染め上げるとか、最高ですよねッ! 初めての性欲にどうして良いのか戸惑っている少年を優しく教え導き、そして私の身体の虜にして肉欲な日々、考えただけでもうっ………」

 

鼻血をダダ漏れにさせながらそう答えるカラワーナを見て、レイナーレは何とも言えない気持ちになる。

女性がそういうのに興味を持つというのは、人間界の書物で得た知識で知っては居るが、そこまでドはまりしている本物は初めて見た。

彼女もその気持ちは自分のこの気持ちに近いのかもしれない。だが、本当にそうだろうかと疑う。

少しでも参考例が欲しい彼女は最後の希望を少しだけこめて、残った部下に話しかける。

 

「ミッテルト、貴方は?」

 

その声に対し、ミッテルトと呼ばれた少女は面倒臭そうに立ち上がると、その問いに答える。

 

「ウチは男でも女でもどっちもイケるっすよ。勿論、美男美女じゃ無きゃいやっすけどね。男なら責めも受けも両方、女なら責めが大好きっす。それでレイナーレ様、凄く好み何で押し倒してぺろぺろしていいっすか?」

「やったら貴方を今すぐ八つ裂きにするわ」

「ちぇ、気持ちいいのに……」

 

何やら欲の入り交じったミッテルトにレイナーレは表ではしれっと冷たく返す。

だが、内心では凄く焦っていた。

 

(やっぱり相談するんじゃ無かった! ミッテルトったら、まだ諦めてないの! 私の貞操は、その………蒼崎君に……って、私ったら何考えてるの、もう~~~~~~~~)

 

彼女の脳内では、湊と『そういった光景』が浮かび上がり、顔が熱くなってくるのを感じ取った。堕天使にしては初心過ぎるレイナーレの反応は実に堕天使らしくない。仕方ないのだ、彼女は初めて初恋をしたばかりなのだから。

そしてミッテルトは所謂両刀使いだった。

ある意味ではレイナーレより進んでいるので、もし湊とそんな仲になったら参考に話を聞くかも知れないとレイナーレは思う。

ただし、自分の貞操は勿論、湊の貞操をくれてやる気などないが。

 以上、これがレイナーレの部下の3人。

熟女好きとショタコンと両刀、これ以上ないくらいの異色振り。

これが彼等がレイナーレと同じようなほどに変わり者な理由。

そんな部下を持つレイナーレはきっと周りから色々な目で見られているのかも知れない。

そして彼女は3人の恋愛観を聞いて、改めて後悔する。

いくら相談する相手が居ないからってこれはどうなのだろうかと。

だが、それでも彼女は3人に相談することにする。

それはあまりにも乙女らしい彼女の願い。いじらしく礼儀正しい思い。

 

『この間、湊に助けて貰ったお礼に何をしてあげたら喜ぶのか?』

 

というものだった。

 

 


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