堕天使な彼女の恋物語   作:nasigorenn

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レイナーレの惚気話ですね。
そしてお気に入りの減りが酷すぎて………余計鬱になりそうですよ(笑)


番外 彼と彼女とお泊まりと 彼女の場合

 男子が男子で盛り上がりを見せている中、女子もまた盛り上がりを見せていた。

リアスの私室として用意された部屋の中、世の男子なら皆が羨ましがるような光景がそこには広がっている。何せ途轍もない美少女達が皆、いつもの服装より無防備な恰好でそこにいるのだから。

リアスは正直隠す意味が全くないようなネグリジェをその豊満な身体に包み、朱乃は白の襦袢を着ているが、艶やかな雰囲気が溢れ出している。駒王学園の二大お姉様はその二つ名にふさわしく、実に年上の魅力に溢れた恰好をしていた。

そんな二人に対し、小猫やゼノヴィア、アーシアやレイナーレは普通のパジャマ姿。とは言え、レイナーレやゼノヴィアの胸元は大きく張り出し、パジャマのボタンを弾けと飛ばさんと主張しているのに対し、小猫とアーシアはすんなりと抵抗なく収まっている。

そのためか、この二人は四人を見て羨ましそうな、少し妬ましいような、気まずそうな、そんな顔になっていた。

と、以上の面々が特大サイズのベットの上で輪になるように寝っ転がりながら女の子らしく女子トークに華を咲かせる。

最近のオシャレや何処のお菓子が美味しいとか、下着のサイズ云々だとか、兎も角色々なことを話していくリアス達。中にはレイナーレやアーシアはもう学校に慣れたのかなどの心配しての話もあり、それを受けてレイナーレとアーシアの二人は心配して貰えたことに申し訳なさと嬉しさを感じた。

さて、そんな心温まる話を終えたわけで、今度はより深い話題へと移る。女子が盛り上がる話題とくれば、もう一つはアレしかないわけだ。

 

その名も『恋バナ』。

 

読んで字の如く、恋愛に関するお話である。

やはり年頃の女の子なら、そういった物に憧れを持ち騒ぎたくなるもの。それは男だろうと女だろうと変わらない。

そんな話題になれば、まず最初に話を振られるのはこの中で唯一の恋人持ちのレイナーレだ。彼女は周りの好奇心が籠もった視線を感じ、少し引き気味になりつつその前に先に話題を振ることにした。別に自分の話をするのは嫌ではないが、あまりそういうのは人に話して良いというものでもないと思っている。それ以前にリアスや朱乃なんかは彼女の恋愛に大きく関わっているのだから、今更何を聞きたいのやらとすら思う。故にレイナーレは先手を打った。

 

「ねぇ、みんな好きな人はいないの?」

 

彼女をそれまで弄くり返して楽しもうとしていたリアス達であったが、先手を取られ流石に動揺を隠せない。

実の所、気になっている男がいるからだ。

特に顔を強ばらせたリアスと朱乃。この二人の気になっている男子は同じ人物なだけに、この場で改めて他の者達に聞かれるのを躊躇ったのだ。

そんな二人の心境など知らずに、まず最初にゼノヴィアが答えた。

 

「私は強い男との子供が欲しいからな。その点で既にイッセーに子作りをもちかけているんだが、どうにも受け止めて貰えない。やはり部長のような大きさの胸でなければ駄目なのだろうか?」

 

そう平然と答える彼女。その表情に羞恥の感情は一切無く、リアスに比べれば小さいがそれでも世間と比較すれば充分巨乳に分類される胸を持ち上げて見せた。

その行動と言葉を受けて顔を真っ赤にするアーシアとレイナーレと小猫。いきなり子作りなどと聞かされれば、それがどういう行為なのか分かっているだけに考えてしまい恥ずかしくなってしまう。それは恋人が居るレイナーレとて同じであり、初心な彼女達には刺激が強すぎた。

そんな三人に対し、リアスと朱乃はジロっとした目でゼノヴィアを睨む。これだけで既に答えははっきりしている。ゼノヴィアはそんな二人の視線に首を傾げるが、この後理由を知って理解するだろう。

次に動いたのはアーシアだが、彼女の口から出たことはまぁ、予想の範疇である。

 

「私はまだそういう相手はいません。今は普通に学園に通えて幸せですから」

 

それまでの雰囲気を消し飛ばすような暖かな微笑みを浮かべるアーシア。その微笑みは確かに幸せそうだ。

そんなアーシアを見てホッコリとする一同。特にアーシアを助けたレイナーレとしては、友達が幸せそうで此方も嬉しくなる。

その雰囲気に便乗してか、もしくは大して興味がないから早く済まそうと思ったのか、小猫が少し早口で周りに言う。

 

「私も同じです。今は特にそういう相手はいません。でも、エッチな人は嫌いです」

 

その言葉にやっぱり皆納得する。小猫は見た目の幼さもさることながら、あまりそっち方面への興味が薄い。それよりもお菓子の方が彼女の興味を引くあたり、花より団子だ。それでも敢えて好き嫌いを語るなら、イッセーのような人間は好みではないらしい。それが裏返るのも時間の問題だとも知らずに。

以上の三名が告白を終えると、残った三名。具体的にははっきりとしているレイナーレを覗き二人に注目が集まった。

その視線を感じ顔が赤くなっていくリアス。朱乃はあらあらと笑うが、それでも頬に朱がさしている。

そして観念したのか、リアスは顔が熱くなるのを感じながら答えた。

 

「わ、私は、その………イッセーのことが………」

 

途切れ途切れに答えるリアスの顔は誰が見てもはっきりと分かるくらい恋する少女のそれだ。本人はまだはっきりと好意を口にしていないが、恋愛を経験し今も尚恋するレイナーレには直ぐに分かった。

そんなリアスに朱乃は不敵に笑いながら皆に答える。

 

「私はイッセー君のことが大好きですわ。少しエッチなところも、私達のために一生懸命なところも、全部」

 

そう答える朱乃はどこか嬉しそうだ。彼女も又、リアスと同じく一誠に好意を抱いているとはっきりと表明した。

そしていがみ合うリアスと朱乃。この恋バナではっきりとしただけに、やはり納得いかないところがあるらしい。そのまま行けばきっと二人による魔術による応酬によって部屋が崩壊するだろう。

それを危惧したのか、それまで静かにしていた小猫が少しだけ慌てた様子でリアス達に話を振った。

 

「でしたら、今度は唯一恋人がいるレイナーレ先輩の話を聞いてみましょう。部長達に何かしらのアドバイスがいただけるかもしれませんしね」

 

それを聞いてまるで食らい付くようにレイナーレに迫るリアス達。経験者と未経験者の違いがそこには出ていた。少しでも経験者から何かを教授できないかと彼女達も一生懸命なのだ。いくら二大お姉様と讃えられようとも、その実まだ恋をしたことがない女の子なのだから。

 

「レイナーレ……どうやって蒼崎君と恋人同士になったのか、もっと掘り下げて教えてくれないかしら」

「私も知りたいですわぁ、殿方を射止めるその方法」

 

若干目が危ない光を放つ二人にレイナーレは引きつつ慌てて答えた。

 

「ちょっ、ちょっと、二人だって私と湊君のことは知ってるはずよ! そんな急に言われても」

「それでもよ! 何かあるでしょ、そういうの」

「経験者としてご教授いただけるなら何でもですわ」

 

一度火が付いたら消えるようなことはなく、迫る二人だけに留まらずアーシア達も興味津々な様子でレイナーレを見つめ始めた。相手が居なかろうと恋愛事に興味があるのが女の子というものだ。

故に周りの視線の中、レイナーレは答えることに。

 

「そんなみんなが期待するようなことなんて何もないのに、もう~。それで、何が聞きたいの?」

 

その言葉に色々と飛び交う質問の数々。その中からレイナーレは湊との出会いを思い出し、幸せに頬を染めながら答える。

 

「湊君をいつ好きになったのか、そしてどこが好きなのかって?」

 

出て来た質問の中で、もっともスタンダードなものにまず答えることにしたレイナーレ。何故湊を好きになったのか? それは彼女自身でもはっきりとはわからない。

人を好きになるのに、理由が必要かと問われれば必ずそうではないのだから。

だからこそ、彼女は大好きな湊のことを胸に思い浮かべ、暖かな気持ちを抱きながら答える。

 

「どこを好きになったのかって聞かれても困るわ。だって……私は湊君の全部が好きだから。私に微笑んでくれるあの瞳も、困ったときに浮かべる苦笑も、全てを優しく包み込んでくれる包容力も、驚いた時なんかに見せる少し子供っぽいところも、実はピーマンが苦手なところも、全部………全部愛おしくて……大好き。いつ好きになったのかなんてわからない。でも、一緒に居て楽しくて嬉しくて、気が付けば湊君のことばかり考えていて、もっと一緒にいたいって想って……好きになってた。初めての初恋だったと思う。初めて男の人を好きになったの。その相手が湊君だった………良い所も悪いところも、全部含めて私は彼が大好きなの」

 

心の底からの告白にレイナーレは恥ずかしさから顔を真っ赤にしたが、それでもその胸は彼への想いに満たされ幸せに感じる。口にしなくても分かるが、改めて口にすればそれはそれで愛おしさが湧いてくるものだ。

だからなのか、彼女はこの中で一番恋する少女の顔になっていた。

そんな風に語る彼女を見て、リアス達もまた顔を赤くする。自分達も彼女のように、誰かを想う事が出来る様になるのだろうかと。また、意中の相手と結ばれたら、彼女のように幸せを感じる事が出来るのかと。

羨ましく、それでいて少し恐く、何よりもそうなりたいと、彼女達は心の底からそう思った。

だからこそ、恋バナは盛り上がる。

もっとレイナーレと湊のことを聞きたいと、リアス達は夢中になってレイナーレに食い付いた。

 

「湊君と初めてのデートは、その………凄く楽しかった。あの時は湊君の目が見えなかったから、私が頑張らなきゃって張り切って、色々なお店に案内したなぁ。それで頑張って、初めて男の子にはい、あ~んとかしちゃったりして。あの時の湊君、可愛かったなぁ」

 

やら、

 

「リアスに追い詰められた時も湊君に助けて貰ったなぁ。湊君、あの時私のために怒ってくれて、格好良かった」

 

とか、

 

「湊君、一緒に住み始めた時は凄く慌ててて、でも私が困らないように気を遣ってくれて、凄く嬉しかったの。彼と一緒に暮らせることで私も舞い上がってて、正直有頂天で頭がいっぱいいっぱいだったから、湊君のことを気遣えなくて恥ずかしかったなぁ」

 

など、

 

「湊君、私のためを思って自分はいない方が良いんじゃないかって身体を壊すくらい考え込んで……今に思えばお馬鹿だなて思うけど、それだけ私のことを考えてくれて嬉しかった。それと同時に悲しくもなったけど、それでも……良かったと思える。だってこれで私は……湊君にその想いを伝えられたから。そして彼も私のこと……好きだって言ってくれたから……この時の感動は一生忘れないと思う」

 

とかなど、まぁ出て来る出て来る自慢話にしか聞こえない惚気。これが一誠なら血涙を流しながら悔しがるが、恋に焦がれるリアス達にはまるで夢物語のように聞こえ夢中になった。

その結果、彼女はこの夜寝かせて貰えず、ずっと湊への想いを顔を赤くしながらリアス達へと語った。本来寝不足は肌への大敵でありよろしくないのだが、どういうわけかレイナーレは妙につやつやとした肌で幸せそうに笑っていた。

 

 

 

 お泊まりが終わった翌日。

二人は一緒に暮らすアパートへと一緒に帰った。

その間、二人は昨夜の楽しかった思い出を語り合い共に笑い合う。

そんな楽しい時間を過ごし歩いて行けばアパートへはアッと言う間に付いた。

先に部屋に入ろうとするレイナーレだが、湊はそれを制し自分が先に扉を開けた。

そして中に入ると、湊はレイナーレへと振り返り、愛おしい人へとこの言葉をかける。

 

「おかえりなさい、レイナーレさん」

 

それは同居人として、大好きな愛おしい人への迎えの言葉。

そう言われたレイナーレは彼の暖かな笑顔に顔を赤らめつつ幸せそうに笑みを浮かべ答える。

 

「ただいま、湊君」

 

そして二人は一緒に自分達の部屋へと入っていった。

今回のお泊まりは確かに男女ともにより友好を築けた。しかし、それ以上に二人は自分の気持ちを見直すことが出来、そしてより相手への愛おしさを募らせた。

一緒に歩き、話し、そして一緒に帰ってわかる。

 

あぁ、僕(私)は幸せだなぁ、と。

 

人生に幸せは数多くあるが、それでもきっと………一番愛おしい人といられることは何よりも幸せなことだろう。巨万の富よりも地位名声よりも、それこそが彼等にとって一番大切なものだと、この二人は心から思った。


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