堕天使な彼女の恋物語   作:nasigorenn

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久しぶりに甘く甘酸っぱく出来た気がします。


番外 彼と彼女とプール

 この日、オカルト研究部は何故かプールにいた。

この時点で何故?と皆は思うだろう。答えは簡単であり、前回の騒動を思い出せば分かることだ。

生徒会に迷惑を掛けたので、そのお礼代わりに彼等が行うはずだった業務の一つを請け負うというものだ。その業務というのがこの学園のプール掃除。掃除をした後は遊んで良いというオマケ付きでだ。

そういうわけで、オカルト研究部は掃除をすべくここに居るのだ。

 

「さぁ、早速やるわよ! そして終わらせて思いっきり遊びましょう!」

 

リアスの元気良い声がプールに響き合い、オカルト研究部の面々はそれに勢いよく応じる。

そして湊はレイナーレと別れ更衣室へと向かう。

そこで一旦体操着に着替え、掃除道具のブラシを引っ張り出してプールに出る湊達。

改めて掃除をするプールを見て、彼は驚きと感動が入り交じった声を上げる。

 

「うわぁ~、凄いですね、これ」

「確かにそうだよなぁ。これを毎年生徒会が掃除してたと思うと、凄くて頭が上がりそうにないぜ」

「確かにそうだね」

 

湊の声に一誠と祐斗も賛同すると、反対側から着替え終わった女子達が来た。

皆の体操着姿に鼻の下を伸ばす一誠。そんな一誠をジト目で睨み付ける小猫。

と、いつものやり取りをする面々。湊はレイナーレと一緒にプールを見ながら楽しく話をする。

 

「これがプールなんですね。広いから掃除が大変そうです」

「そうね。でも、これだけ大きいと掃除し甲斐があって張り合いがでるわ」

 

レイナーレは湊にそう答えると自信満々に胸を張る。

彼女は湊と一緒に暮らし始めて、もう結構経つ。それまでの間に湊の家における家事炊事は彼女が主体でやってきたのだ。蒼崎家の家事担当として自信を持っているレイナーレにとって、ここは頑張り所だと思うらしい。

そんなレイナーレを見て湊は頼もしいと微笑みつつも、家庭的なレイナーレの様子に惹かれた。

 

(レイナーレさん、一生懸命な感じで………)

「可愛いなぁ、レイナーレさん………」

 

思っていることをそのまま口に出してしまう無意識男の湊。

そんな彼の呟きを聞いて、レイナーレは顔を真っ赤にしてしまう。

 

「もう、湊君ったら………可愛いって言って貰っちゃった……嬉しい」

「え、もしかして口にしてました?」

「うん。湊君ってそう言うところがしっかりしてないから……でも、そこがまた可愛いくてドキドキするんだけどね」

 

レイナーレに返されて顔を真っ赤にする湊。このやり取りも何度もしているが、未だに落ち着く様子は見えない。

 

「ぐぅっ!?  そ、そう言わないで下さいよ。男としては可愛いよりも格好いいって言われる方が良いんですから」

「でも、私はやっぱり可愛いって思うの。大好きな湊君の可愛い姿が見れて、私は嬉しいから」

「そう言いますけど、レイナーレさんのそう言うときに浮かべる笑顔だって可愛いいですよ。僕は見ていてドキドキしますから」

「っ!? もう、湊君のイジワル。でも……嬉しい」

 

そして真っ赤になる二人。

そんな二人を見て温かな目で見守るリアス達。既に見慣れている面々にはこの二人のやり取りはもう日常だ。

 

「な、何だ、アレは!? アレが恋仲というものなのか……何故か分からないが凄いとしか言いようがない」

 

見慣れていないゼノヴィアは二人の様子を見て顔を真っ赤にして驚いている。

 

「くそ、このリア充共め! 俺だって……俺だって女の子とそんな風にイチャ付きたい………うわぁあぁあぁああぁああぁあああ!!」

 

一誠だけは涙を流しながら悔しがっていた。

 やっと始まるプール掃除。湊達は皆デッキブラシでプールの汚れた床や壁面を磨いていく。

普段あまり使うことのないブラシに悪戦苦闘する湊だが、皆やレイナーレの使っている姿を見て真似ることで何とか掃除を進めていく。

そしてある程度皆で磨けばプールも元の姿を取り戻し始めた。

のだが、まだそれでも完全ではない。見づらいだけでまだまだ磨き残しは残っているのだ。だからなのか、こんなことが起こったりもする。

 

「キャッ!?」

 

レイナーレは突如足が滑りバランスを崩してしまった。このまま行けば水を張った床に激突し汚い汚水まみれになってしまう。

それは女子にとって可哀想な事になる。だからこそ、直ぐ側に居た湊は彼女を優しく抱き留めた。

バランスを崩して床に倒れ込みそうになる彼女の身体が湊の胸にぽすりと収まる。

 

「大丈夫ですか、レイナーレさん」

「あ、湊君……うん、大丈夫」

 

湊の胸に納まり、レイナーレは頬を桜色に染めつつ彼の身体に自分の身を預ける。

それは安心からの行動であり、湊だからこそその身を任せられる。

彼女は湊に抱き留められ、ドキドキとしながら湊を見つめる。

 

「ありがとう、湊君。湊君が受け止めてくれたから、怪我せずに済んだよ」

 

レイナーレの赤なりつつも嬉しそうな顔に湊はドキドキしつつも彼女の無事を喜ぶ。

 

「レイナーレさんに怪我がなくて良かった」

「うん……湊君が守ってくれたから……今の湊君、私を助けてくれるヒーローみたいで……格好良かったよ」

「ッ!? そう言ってもらえると……嬉しいです」

 

そして見つめ合う二人。

それは良くある普通のことだが、この二人にとっては幸せなトラブル。

それを見てキャーキャー騒ぐリアス達。

 

「くそ、何てラッキースケベを蒼崎の奴! くそ、俺だって部長の胸に飛び込みたいってのにって、おわぁ!?」

「大丈夫かい、イッセー君!」

 

湊達に注意が向いてしまい足下が疎かになった一誠は見事に足を滑らせる。

そしてそのまま汚水に落ちかけた所を、近くに居た祐斗が抱き留めた。

祐斗に見事にキャッツされる一誠。

 

「怪我はないかい、イッセー君」

 

イッセーを心配する祐斗だが、その様子はまさに王子様というのがふさわしい。

そんな王子様に助けられた一誠は………。

 

「お前なんてお呼びじゃねぇんだよ、バカァアアァアアアアアアアアアアアア!!」

 

もの凄く悲しそうに叫んだ。

 そんなハプニングもあったが無事にプール掃除も終わり、プールは改めて水を張られた。

綺麗になったプールを見て感慨に耽る湊達。その感動もそこそこに、今度は遊ぶべく皆胸をときめかせながら水着に着替えに行った。

 

「おぉ、部長のナイスバディな水着姿! 最高だっぜ!!」

 

水着に着替え終わったリアス達を見て一誠がハイテンションになる。それはリアスに留まらず、朱乃などを見ても更にはしゃいでいた。この二人はスタイル抜群であり、男なら誰しもが固唾を飲み込み欲情する肢体の持ち主だ。

そんな二人の水着など見れば、欲情に直結しているような一誠ならそうなるのも無理は無いだろう。それ以外にもこの場には美少女が多く居るのだ皆似合っていて素晴らしく、彼は天国にいるような気分になった。

そんな中、この二人は互いに顔を真っ赤にしながらも見つめ合っていた。

 

「やっぱりレイナーレさん、その水着……似合ってます」

「湊君が選んでくれたものだから………湊君も……格好いいよ」

 

互いの姿を見て気恥ずかしいけど見続けたい。そんな気持ちに駆られ、顔が熱くなっていくのを感じながらも魅入ってしまう。

そんな見つめ合う二人に、リアス達は呆れつつも暖かな目で見守り、一誠はそれまで幸福だった気分が一気に叩き落とされた気分になった。

 

「おかしい……何でだ。何で俺はこんなにも悔しいと感じるんだ? あれ? 何で涙が……しかも血涙が……」

 

傍から見たら危ない病にかかったようにしか見えない一誠だが、その理由が分かる皆は特に心配した様子もなくプールへと入っていった。

 そして皆思い思いにプールを満喫する。

リアスや祐斗、それにゼノヴィアは思いっきり泳ぎ、朱乃はビーチチェアに横になり身体を休ませていた。その中で、アーシアや小猫は何故か一誠から泳ぎを教わることに。二人共泳げないらしい。

美少女とスキンシップが取れることに喜びを顕わにする一誠だが、何故かその視線はそれ以上にこの二人に向いていた。

 

「湊君、頑張って!」

「………ぷはっ、はい!」

 

一誠の視線の先には、黒く露出の激しいビキニに身を包んだレイナーレと、そんな彼女に手を引かれて一生懸命足を動かす湊がいた。

そう、湊も実は泳げないのだ。

それまで目が見えなかった彼は、当然泳ぐという事とは無縁であった。故に彼は一切泳げないのだ。

だからこそ、こうしてレイナーレに泳ぎを教わっているというわけである。

レイナーレは湊の手を優しく握りながら引き、湊は一生懸命にレイナーレにリードされつつバタ足をする。

そんな二人だが、一誠の目はどちらかと言えば水にぷかぷかと浮かぶレイナーレの大きな胸の方に向く。リアス達ほどではないが、彼女も負けず劣らずの巨乳なのだ。この欲望に正直な男は目を目向けられずにはいられないようだ。

 

「先輩、目はエッチです」

「あまりレイナーレ様をエッチな目で見ないで下さい。そうして良いのは蒼崎様だけです」

 

小猫に殴られアーシアにきつく言われる一誠。分かってはいてもそうしてしまうのが彼らしい。

そんな様子の一誠達に比べ、湊は真面目に頑張っていた。

せっかく教えて貰っているのだから、彼女に応えたいと。

その頑張りが妙なハプニングを起こすとも知らずに。

それはそろそろ湊が泳げるようになってきたとレイナーレが判断したときに起こった。

 

「湊君、手を離すよ」

 

レイナーレは微笑みながらそう彼に言ったが、その声は集中している湊には聞こえなかったらしい。そのまま返事を返さない湊だが、レイナーレは一生懸命な彼の姿に胸をときめかせつつ手を離した。すると湊は確かに前に進み始めた。それはつまり泳げているということ。それ自体に問題はない。問題なのは………。

 

予想以上に速いということだった。

 

それまで泳げなかった人物とは思えないくらい速い速度で進む湊は、そのまま一生懸命だったので気付かすにレイナーレに突撃。

 

「キャ、湊君!?」

 

驚くレイナーレ。彼女の胸に、湊の顔は突っ込んでいた。

急に顔が柔らかいものに覆われ困惑する湊は、急いで状況を把握しようと顔を軽く振り始める。

 

「んぁ、湊君、駄目、擦れちゃ……んぅ……」

 

胸を弄られ顔を真っ赤にしながら艶声を上げてしまうレイナーレ。

そんな彼女に気付かない湊は更にその動きを激しくしてしまう。

結果………彼女のビキニのヒモが解けた。

 

「え?………キャァッ!?」

 

それに気付いたレイナーレは急いで周りに見られないように身体を水に沈めた。

そして湊はやっと顔を上げると、状況を即座に察し顔が一気に真っ赤になった。それはそうだ。目の前で胸を押さえて真っ赤になる最愛の恋人が居れば、何があったのかなど直ぐに察せられる。

 

「す、すみません、レイナーレさん!」

 

自分が何をしたのかを理解し真っ赤な顔で謝る湊。

そんな湊にレイナーレは真っ赤な顔で恥じらいながらも少し拗ねたような感じに湊に言った。

 

「湊君の………エッチ」

 

分かってはいるし言われてもしょうがないことは分かっている。

しかし、それでも言われてはへこんでしまう。

湊は己の愚かさに身を焦がされるが、そんな彼にレイナーレは優しくも艶やかに微笑んだ。

 

「でも……たまにはこういうのもいいよ。だって……大好きな湊君になら、その……恥ずかしいけど、見て貰いたいと思うから……」

 

そんな殺し文句に湊は真っ赤な顔で水に沈む。

レイナーレはそんな湊を心配しつつも可愛く見えて胸をときめかせた。

以上がこの二人のハプニング。それを見た一誠は羨ましさと嫉妬に狂いそうになり、小猫に殴られ水に浮かんでいた。

 

 

 

 そんな感じにプールを満喫し帰るオカルト研究部の面々。

湊とレイナーレはリアス達と別れ、帰り道に今日の楽しかった思い出を語り合う。

 

「今日は楽しかったですね」

「えぇ、そうだね。一杯遊んだから少し疲れちゃったかも」

 

そんな会話をする二人。その顔は笑顔であり、実に楽しそうだ。

そして家に着く前に、レイナーレは湊に身を寄せながら彼に囁いた。

 

「確かに楽しかったけど、今度は湊君と二人っきりで何処か泳ぎに行きたいな」

 

その甘い囁きに湊は夕陽よりも顔を真っ赤にながら答える。

 

「はい、そうですね。今度は………・二人っきりで行きましょうか」

「うん!」

 

二人だけの約束をした後、二人の影は一つに合わさり彼等の唇もまた、合わさった。

 


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