堕天使な彼女の恋物語   作:nasigorenn

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起きに入りがガクンと減ってショックな今日この頃。
皆さんはもっと刺激が欲しいのだと思いますけど、それがまた難しいですね。
少し加筆しました。


番外 彼と彼女と子猫

 たこ焼きを食べ終わり、二人はお腹も心も満たされ再びデートを再開した。

互いに腕を組み歩くその姿は誰が見ても恋人同士。その上レイナーレの赤らめつつも幸せそうな顔を見れば、如何な愚か者でも食いかかる気にもならない。

二人は次の目的地へと向かいながら昔を懐かしんでいた。

 

「あの時はミッテルトさんが一緒でしたね」

「そうね、あの子ったらいきなり来て『自分も行くっす』て言ってきたっけ。御蔭で私は気が気じゃなかったわ」

 

湊が思い出しながらそう言うと、レイナーレは当時の事を思い出して苦笑した。

その様子は手間が掛かって仕方ないけど憎めない子を見る母親のようだ。

 

「気が気じゃなかった?」

 

湊がその事を不思議そうに問いかけると、レイナーレは顔を赤らめて恥じらいつつ答える。

 

「うん、あのね………あの時、あの子ったらわざと湊君にちょっかいをかけていたの。私にそれを見せつけて湊君を自分に取られないようにって私を煽ろうとしたのよ。だからあの時、私はあの子が湊君にくっつく度に落ち着かなかったの。湊君があの子に取られるんじゃないかって思って」

 

そう聞いて、湊は申し訳なさそうに苦笑しつつ答えた。

 

「そうだったんですか。それはその………すみませんでした」

「うぅん、謝らないで。別にもう気にしてないもの」

 

レイナーレはそう言って、湊に顔を赤らめつつ微笑む。その微笑みは恥じらいがあるが嬉しそうな微笑みだ。

 

「それにね、あれは私のことを応援しての事だったから。だから今は……感謝してるの。御蔭って程じゃないけど、こうして湊君と一緒になれたから」

 

彼女の幸せそうな笑みを見て、湊の心も温かくなる。

 

「レイナーレさん………」

 

昔と今の違い。

昔は彼女の事は気になる女の子だった。湊にとって、自分をそのままに見てくれる優しい少女だった。

今は愛おしい恋人だ。大好きで大好きでしょうがなく、一緒に居られるだけで心が温かくなり幸せを感じる愛おしい女性。

湊はそのことを考え、そして嬉しくなりながらレイナーレに微笑む。

そんな彼女は湊に微笑まれ、嬉しそうに笑うと当時の気持ちを軽く吐露する。

 

「あの時は本当に大変だったわ。何せあの子ったら湊君にべったりくっつくんだもの。私だって本当は湊君ともっとくっつきたかったけど、あの時は恥ずかしかったから出来なくて」

 

その割りに結構大胆なことをしているのだが、懐かしむ程度なので忘れているレイナーレ。それは湊も同じであり、彼は組んでいたレイナーレの腕をより内側に巻き込み、彼女の身体にそっと自分の身体をくっつけた。

 

「あ………」

 

少し驚きの声を漏らすレイナーレ。

そんな彼女の顔を見て可愛いと思いながら湊は笑いかけた。

 

「なら、今はもっとこうしてくっつきます。僕もその……レイナーレさんともっとこうしていたいですし。これなら昔みたいに不安にならないでしょう」

 

言葉はさらりと出るが、やはり顔は赤くなる。

でも、そこが湊らしくてレイナーレは愛おしく感じた。

そしてその返事の代わりに湊の身体に自分の身体を預ける。

 

「うん、私も………こうして湊君ともっといたい。だから……ありがとう」

 

自分に身を寄せて微笑んでくれるレイナーレが湊にはとても可愛く魅力的に見えた。

出来ればそのまま抱きしめてキスしたくなる衝動に駆られるが、ここは道の往来であり、流石にそれは行きすぎだと判断してやめた。まぁ、ただでさえ目に毒なレベルでイチャついている二人なのだから今更のような気がするが、それを突っ込める者は誰もいない。

あの時はミッテルトによって横から茶々を入れられたデート。

しかし、今回は誰の邪魔も入らない。だからなのか、二人はいつもよりくっついて歩いて行く。

そして次に向かうのは、あの時のデートで行った店の一つだ。

 

「次に行くのは………」

「えぇ、ペットショップに行こうと思うの」

 

そう、次に二人が向かうのはミッテルトも交えた三人で行ったペットショップだ。

あの時は目が見えなかったが、今は見えるだけにどのような動物がいるのか気になる湊。それが表に出てるのか、彼はワクワクとした様子であり、レイナーレはそんな湊を暖かな目で見つめる。

 

「湊君、楽しみにしてるでしょ…ペットショップ」

「あれ、分かっちゃいます」

 

言い当てられて少し驚く湊。そんな彼にレイナーレはクスクスと笑いつつ答えた。

 

「うん。だって湊君、まるで子供みたいにハシャいでるもの。無邪気な感じで可愛い」

「そ、そんなことはない……と思うんですけどね………」

 

可愛いと言われ恥ずかしさから顔を赤くする湊。

そんな湊がレイナーレには更に可愛く見えた。恋する乙女にとって、大好きな人の無邪気な部分は可愛く見えるらしい。

そして二人は笑い合いながらペットショップへ向かった。

 

 

 

 ペットショップに着くと、二人を出迎えたのは様々な動物だった。

主に犬や猫だがその品種は数多く、他にも鳥や兎、ハムスターなどの動物などもいた。それらが皆二人が来たことで此方を興味深そうに見つめてきた。

その視線を感じて笑う二人。レイナーレは前もそうだったことを思い出しつつ、店員に声をかけた。

 

「すみません、少しいいですか?」

「あ、はい」

 

レイナーレに声をかけられた店員は彼女を見て少し頬を赤くする。レイナーレは誰が見ても分かるくらいの美少女なだけに、男性の店員だとどうしてもその注目を集めてしまう。目が見える前はそうは感じなかったが、目が見える様になってからはそれが誇らしくもあり、同時に少し嫌な気にもなる。湊としては複雑な心境だ。

でも、だからこそもっと彼女が愛おしいと感じる。

 

「触れ合いコーナーを使用したいのですけど、大丈夫ですか?」

「えぇ、勿論大丈夫ですよ! さぁ、此方です」

 

湊はその想いを感じながらレイナーレを見つめると、どうやら話は終わったらしく笑顔で湊にレイナーレは話しかけた。

 

「湊君、大丈夫だって。子犬とか小猫を触りに行こう!」

「はい」

 

彼女の笑顔を見て此方も笑顔で返事を返すと、二人は以前と同じ体験コーナーの部屋へと案内された。

そして扉を潜ると即座に二人の元に集まってきた。

 

「久しぶりね、貴方達。キャッ、くすぐったい」

 

レイナーレの元に飛びついた子犬は彼女の足に思いっきりすり寄ると、尻尾をぶんぶんと振って喜びを顕わにする。

 

「もう~、このイタズラッ子ね~」

 

レイナーレはそう言いながらその子犬を抱きかかえると、子犬は嬉しそうにワンッと鳴いた。

そして湊はというと、やはりレイナーレの予想通りの姿になっていた。

 

「あはははは、みんなそんなに焦らなくても大丈夫ですよ」

 

そう答える湊は小猫があっちこっちに乗っかかり、あの時同様に小猫で出来た毛玉となっている。

その姿にやっぱり笑ってしまうレイナーレ。

 

「湊君は本当に猫に好かれるね。何だかモケモケしてヌイグルミみたい」

「そうなんですか? こっちは身動きが取れなくて大変ですよ」

 

レイナーレにそう答えつつも、湊は自分に乗る小猫の一匹一匹を丁寧に撫でた。

 

「皆甘えん坊ですね。よしよし」

 

慈愛に満ちた表情で小猫を撫でる湊。その顔はまるで父親のようであり、その父性を感じたレイナーレは少し嬉しく思いつつ湊を見つめる。

 

(まるで湊君、お父様みたい。きっと結婚して子供が出来たらあんな風になるんだろうなぁ…………)

 

そんなことを考え、そして少しして自分が考えたことが恥ずかしくなり赤面するレイナーレ。子犬はそんなレイナーレを不思議そうに見つめていた。

その後は二人で子犬と子猫と戯れていたのだが、小さいだけに子犬小猫達は眠くなったようでその場で身を横にして寝始めた。

そして二人は店を出ようと思ったのだが、何故か出られない状況に陥る。

 

「この子、気持ちよさそうに寝てるね」

「そうですね。きっとレイナーレさんの膝が気持ち良いからですよ」

 

そんな会話を小さい声で行う湊とレイナーレの膝の上には一匹の子猫が丸まっていた。

そう、あれから寝始めた子犬や子猫達の中で、この子猫だけどういうわけか二人の膝の上で寝始めてしまったのだ。因みにレイナーレと湊は二人で肩を寄せ合いながら正座で座っている。その二人の間の膝に子猫が乗っかって寝ていた。

その子猫は二人の膝の上で気持ちよさそうに寝ており、そのため起こして可哀想だと思い二人は店から出ずにこうしている。

子猫に聞こえないようにそう湊が言うと、レイナーレは少し恥じらいつつも湊を見つめて問いかけた。

 

「何でそう思うの?」

 

その問いに湊はレイナーレに負けないくらい顔を赤くしつつ答える。

 

「その………僕も知ってるからですよ。レイナーレさんの膝が柔らかくてスベスベしてて気持ち良いことを」

「まぁ、湊君ったら………」

 

レイナーレはそう言われてお茶目に喜ぶが、それは既に分かりきっていた。だからなのか、湊は少しばかり恨めしい顔をする。

 

「レイナーレさん、少しイジワルですよ」

「うふふふ、たまにはいいかなって。湊君にイジワルされることもあるからね」

 

そう言われると湊は何も答えられない。その代わりに、そう笑う彼女が魅力的で見入ってしまっていた。

だから少しだけ意趣返しをする。

 

「でも……本心ですよ。レイナーレさんの膝は本当に気持ち良くて、僕は膝枕されたときのこと、今でも思い出せますから」

 

それを聞いた途端にレイナーレの顔がボンッと真っ赤になった。

大好きな人にそう言われたらそうなってしまうのも仕方ないかも知れない。

レイナーレはそんな湊に潤んだ瞳で文句を言う。

 

「湊君のイジワル」

「えぇ、僕はイジワルなんです。だって、そんな風に涙目になるレイナーレさんも可愛いですから、ついつい見たくなるんですよ」

「あ、あぅ…………もう、湊君は~………でも、そういうところも……大好き」

「僕も好きです………レイナーレさんの可愛いところ」

 

湊に可愛いと言われ真っ赤になるレイナーレ。

そんなレイナーレを湊は可愛いと思い見つめる。

周りの子犬や子猫達が眠りに就く中、二人の雰囲気は何処か甘酸っぱかった。

 そして二人の間にいた子猫は何処か幸せそうな寝顔で気持ちよさそうにしていた。

 

 

 

 


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