アタランテが咬ませ犬的ポジジョンなのが納得がいかない!というよりペロペロしたい 作:天城黒猫
「──ッ!」
”獲物”は黒のセイバーと、黒のバーサーカーの二体。
──そこだ。
「────!」
彼らが走る方向は、矢が飛んできたところ。つまり、
赤のアーチャーは、自身の元に接近させまい、と矢を連続して射るが、黒のセイバーと、黒のバーサーカーは、それらを剣で、
そして、遂に──
「──クッ」
赤のアーチャーは、軽く舌打ちをする。黒のセイバーと、黒のバーサーカーは、あと数歩進めば、彼等の武器が赤のアーチャーに触れる、といった距離まで来ている。
そんな状況で、赤のアーチャーが撮った選択肢──それは逃亡。
当然だろう。
故に、接近される訳にはいかない──!
赤のアーチャーは、矢を放ちながら、サーヴァントより遠ざかろうとするが、黒のセイバーは、そうはさせまい。と一気に距離を詰めて、大剣を振るう。
「ッ……!」
大剣の切っ先に、赤のアーチャーの腕がかすり、赤い血を流す。この程度どうということは無い、
──逃がさない。
黒のサーヴァントは、赤のアーチャーを見失わないように、全力で疾走して追いかける。
時折、二手に分かれて、追い詰めて攻撃を加える。などをし、赤のアーチャーは少しずつ、少しずつだが、体にかすり傷が増えていった。
──仕留める!
追い詰め、追い詰め、いずれは止めを差す──!!
黒のサーヴァントは、赤のアーチャーを追い詰める。
その最中、黒のセイバーは、ある異常に気づく。
──バーサーカーがいない!?
周りを見れば、黒のセイバーの後をついてきていた筈の、バーサーカーの姿がなかった。
更に、気づけば赤のアーチャーの姿さえも、消えていた。
「────!!」
そして、
──偶然か?
黒のセイバーの額に、一筋冷や汗が流れる。
ジークフリートの弱点──背中を狙ってきたのは、偶々か? それとも──。
「ッ!!」
またもや、黒のセイバーの背中めがけて、矢が飛んできた。
そして、確信する。
──追い詰められている。と、黒のバーサーカーとは分断され、赤のアーチャーの姿は見えない。
そして時折、背中めがけて飛んでくる矢。
この状況を見れば、それが
「──ゥ?」
ふと周りを見てみれば、黒のセイバーは居らず、赤のアーチャーの姿も見えない。迷子になったのだろうか? と考え──
「ゥ────ッ!」
森の木の向こうから、黒鍵が黒のバーサーカーめがけて、飛んできた。それを黒のバーサーカーは、自慢の
「ウウ゛ゥゥ……!」
そして威嚇の意味を込め、唸り声を上げる。
そんな彼女の予想に反し、出てきたのは──人間だった。
身長は、150程だろうか。黒い髪の天辺に、見事なアホ毛を生やしている少年──サーヴァントではない。ただの人間。──名を泉──。
その事に、バーサーカーは少々戸惑ったが、彼の右手に赤い文様──令呪が刻まれている。そして確信する。
──コイツは赤のマスター!
恐らくは、アーチャーのマスターだろう。ピポグリフに乗っている時に、少しだけその姿が見えた。
好都合だ。マスターを叩けるならば、そのサーヴァントも脱落する。──というよりは、元々は黒のキャスターより、コイツを食い止める様に言われていたのだ。
ならば、──殺す!
「ナァ────オッ!!」
「おおっ!? 怖い怖ぁいっ!」
黒のバーサーカーは咆哮しながら、
そして、バーサーカーの腹に掌を当て、
「シッ!!」
「ウ゛ゥ!?」
泉の掛け声と共に、
──何故?
自分の身はサーヴァントだ、ただの人間に、ダメージを与えられるのか?その疑問に黒のバーサーカーは、頭を振り、思い直す。目の前にいる人間は、魔術師だと。ならば、何かしらの魔術によって、この様なダメージを与えている筈だ。
幸い、ダメージはそれ程では無い。ならば、──大した事無いだろう。
黒のバーサーカーは、そう思って、反撃をしようと
だが、それは回避された。
一回後退した泉は、
「んー、やっぱ何処かの麻婆やツインテ少女みたいにはいかないかぁ。マジカルが付くには程遠いなぁ。
──ま、それでも、
泉は何なしに、己の本心を口に出した。──だが、その内容は、
──今、何と言った?
──ステータスが低い? それは本当の事だろう。だが、程度? 頑張れば行ける?
──巫山戯るな。
「ウ゛ウ゛ウ゛ゥゥ────ッ!!」
その言動は、ますます黒のバーサーカーを怒らせ、黒のバーサーカーは、
泉は、「うわぉ、怖い怖い」などと、馬鹿にしたように言いながらも、深呼吸をして、気を引き締める。
そして、魔術の詠唱を短く、静かに口ずさんだ。
「──
その男の
まさか黒の陣営として、召喚されているとは、思いもしなかった。
どうする?相手は、己の師だ。──だが、今は敵同士、戦うべきか?──迷いが、赤のライダーにあった。
そんな赤のライダーを見て、
「──クッ!?」
赤のライダーは、反射的に槍を振るうが、黒のアーチャーは、その槍を回避して、赤のライダーへと攻撃を加えた。
そして赤のライダーは、後方へと吹っ飛んで行った。
立ち上がる赤のライダーに、黒のアーチャーは、微笑みながら言う。
「アキレウス。これは聖杯大戦です、故にこの様な事もあり得る。──貴方は甘い。
余りにも甘い。敵には容赦なく、苛烈に攻撃しますが、一度味方だと認めたものには、甘い。──それが貴方の弱点です」
──そして。
黒のアーチャーは、先ほどまでは生徒に指導する様な態度だったが、敵の前に立ちはだかるような態度へと、急変し言い放つ。
「────わかりましたか?
そんな己の師に対し、赤のライダーは、言う。
「……ああ、わかったぜ。先生──いや、
黒のアーチャーも、赤のライダーも、嘗ては教師と教え子。だが今、この瞬間──敵同士だと認識した。
そして、赤のライダーは槍を構え、迎え撃つ黒のアーチャーは、無手。アーチャーたる弓矢は持たない。
だが、充分だ。何故ならば──。
「ラァッ!!」
赤のライダーは、槍を黒のアーチャーに攻撃を加えるべく、振るう。
だが、黒のアーチャーは、振るわれた槍を、逸らし、拳によって赤のライダーへと攻撃を加える。
──何故ならば、
そして攻撃された赤のライダーは、少々よろめくが、その程度では止まらない。
槍を振るうが、その攻撃は通じない──。
「無駄ですよ。その槍を与えたのは、槍の振るいかたを教えたのは、誰でしたか?」
黒のアーチャーは、赤のライダーに言う。
赤のライダーが持つ槍──
──故に、
だから、その様な攻撃は通じない。
──その事実に、赤のライダーは内心舌打ちしながらも、歓喜していた。
アキレウスという男はつくづく英雄なのだ。
それを
両者は槍を振るい、矢を穿ち、時には拳で相手の体を殴る。それはまさに力と技が入り混じった戦いであり、一瞬のスキが、油断が
──どうすれば
戦いながらも、脳内で様々な状況を
だが、赤のライダーは思う。
──どうしたら勝利できる? 果たして勝利できるのだろうか。
目の前にいる男は、己の師であり。自身の隙を、癖を知り尽くしている。そんな彼に、どうやったら勝利できるのか……そんな
だが、赤のライダーは戦い続ける。逃げようとすることもなく、己が負けるという事もありえるだろうが、それでも戦い続ける。
それはアキレウスという男が、英雄であるから。そしてもう一つ。──自分の成長を見てもらいたい、そんな子が親に対するような思いに似た感情ゆえに──
アキレウスがケイローンの元を発ってから、様々な活躍をした。そんな活躍の中で、
そして、他にも手に入れた