アタランテが咬ませ犬的ポジジョンなのが納得がいかない!というよりペロペロしたい   作:天城黒猫

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 かなり遅いですが、あけましておめでとうございます! 今年も頑張って小説書き続けていきます! この小説は、春頃には完結すると思います(前々から完結するするとは言っているけれど、なかなか完結しないことについてはノーコメントで……)この話が終わっても、また別の話を書いていくつもりです。
 ひとまずは、最後までこのお話にお付き合いくださるとありがたいです。

 あと、福袋はキアラ様がきました。北斎ちゃんピックアップではメルトリリスも。(ドヤァ
 今度の節分イベントも楽しみですね!




大聖杯内部より、月への階梯

 大聖杯の中には、今までに脱落したサーヴァントたちによって構成された魔力、それに加えルーマニアという土地の龍脈から吸い上げた魔力によって満たされていた。泉はそうした魔力の中を進んでいきながらつぶやいた。

 

「甘いミルク……なるほど、確かにこれはそうなのだろう。けれども、僕にとっては泥の中を進んでいるようだ。快楽に溺れるどころか、早くこの場所から出たい気持ちでいっぱいだよ。でも、そういうわけにはいかないんだ。だから、大聖杯の中に入ってもしぶとく肉体を維持していないで、この魔力の中に溺れろよ。ジャンヌ・ダルク。なぜ、お前がそこにいる? なぜ、脱落したのにその姿を保っていられる?」

 

 泉から数十歩ばかり前の位置で、旗を手にして立っているジャンヌ・ダルクは答えた。

 

「そういうわけにはいきません。私はあなたを止めなければならない。あなたを殺さなけれなならない。それこそが、この聖杯大戦にて顕界した私の使命なのですから。私はすでに”黒”のアサシンによって大聖杯に送り込まれました。ですが、私の依り代となったレティシアと私との適合率が高かったためか──(彼女は小声で呟いた)あの謎の召喚陣によって──私は彼女の中に残滓となって残りました。啓示を使用し、私はどうすればいいのかを考えました。その結果、私は彼女にささやき、洗脳を行うことにしました。これは私のスキルの力によってすぐ成功しました。そうして、貴方を倒そうとしましたが、逆にレティシアは殺されました。そして、世界にその残滓をとどめるためのくさびがなくなった私は、大聖杯へと送り込まれました。彼女が殺されることを予想していた私は、大聖杯の内部に送り込まれ、魔力へと変換される直前に力を振り絞り、この姿を維持し続けました。その結果、私は魔力に変換されることなく、一つの意志としてここに姿をとどめていました。そこで、私は願いを叶えるための段階になったとき、大聖杯の内部よりそれを妨害できないものかと考えていたのですが──まさか、直接大聖杯の内部に入り込んでくるとは思いませんでしたよ。ですが、貴方は何としてでもここで止めてみせます!」

「いいだろう、くそったれが! 世界よ、見ていろ! 僕を止めるものは誰一人いないんだ! ジャンヌ・ダルクの残滓、残りカスを差し向けたところで、無駄なんだよ!

 しかし、外で戦っている肉体の僕もそうは長続きしないだろう。あまり時間が無い。こうなったら、さらに分けるしかない!」

 

 泉は魔術の詠唱を唱えた。すると、彼の肉体は二つに分かれた。すなわち、それぞれ精神と魂との肉体である。そのうちの、魂の泉は言った。

 

「ここは(たましい)に任せろ。(せいしん)は願いを叶えるんだ!」

「ああ、ありがとう!」と精神の泉はその場から駆け出し、大聖杯の奥へと向かった。

 

 ジャンヌ・ダルクはそれを止めようとしたが、残った魂の泉によって妨害された。彼は言った。

 

「ジャンヌ・ダルク、認めるとしよう。お前は聖女だよ、まさに世界を救わんとする聖女だ。しかし、僕から見たらお前は魔女だ! 僕を救えるのは、僕一人しかいないんだ! だから、邪魔をしてくれるな!」

「そういうわけにはいきません。それに、私は聖女ではありません。私は私自身が正しいと思った行いをするのみです」

 

 泉は魔術の詠唱を始めた。それが戦いを始める合図となり、二人はぶつかり合った。

 泉は魔力による攻撃を何回も行うが、ジャンヌ・ダルクはそのことごとくをすべて弾き返した。彼は魔力による攻撃が通じないとわかると、自身の肉体を強化し、全身を錬金術によって鋼へと変換して、素手による攻撃を行った。

 ジャンヌ・ダルクの振るう旗と、泉の振るう拳とがぶつかり合い、激しい音と火花を発生させた。彼らはほぼ互角の戦いを繰り広げていた。お互いの攻撃は防御されるか、回避されるかのどちらかであったが、数回に一度、体に攻撃を加えるといった戦いであった。ジャンヌ・ダルクは、腹に拳による一撃を与えられたが、同時に旗による打撃を泉の肩に加えた。こうして、お互い手痛い一撃を貰うと、呼吸を整えるために後ろに飛び跳ねた。ジャンヌ・ダルクは息を整えながら考えた。

 

(聖杯の知識によると、彼の動きは八極拳と呼ばれるものですね。まるで蛇のようにうねる腕から繰り広げられる一撃は、熊の腕と同じ威力……万全の状態ならばともかく、残滓である私では数回食らったら終わりですね……ですが、それはあちらも同じでしょう。腐ってもサーヴァントなのです、あちらはただの人間ですから、私の攻撃をそうそう耐えられるはずはない。ここは、慎重に動きつつ、確かな一撃を加えられる機会を待つべきですね)

 

 泉もまた、息を整えながら次のようなことを考えていた。

 

(肩が痛いな……多分、骨にヒビが入っているかもしれない。錬金術によって硬化した僕の体は鉄よりも硬いけれど、サーヴァントの前ではあまり意味がないか。仕方がない、ここは八極拳の奥義による一撃にかけるしかないか)

 

 二人とも、考え終わると再びぶつかり合った。

 泉はこれまでよりも、とりわけ激しい攻撃を行ったが、ジャンヌ・ダルクは反対に防御に徹しており、二人の戦いは亀甲していた。泉は次々と、あらゆる攻撃を行うが、それらのことごとくを防御されることによって、焦りがではじめ、さらに苛烈な攻撃を行った。そうした中で、ジャンヌ・ダルクは冷静に状況を見極め、できあがった一瞬の隙を見つけだし、すぐさま旗の刺突による強力な一撃を加えた。

 その一撃は泉の脇腹に突き刺さり、旗の先端は彼の体を貫通した。旗が抜けると、泉は数歩ばかり後ろに下がり、腹の傷をおさえると膝をついて、仰向けに倒れた。彼は呟いた。

 

「馬鹿な……僕の負け……だと?」

「ええ、その通りです。私は、この先に急がせてもらいますね」

 

 とジャンヌ・ダルクは言うと、きびすを返して精神の泉が向かったあとへと走り出した。しかし、魂の泉が彼女の背後からしがみついたことによって、それは静止された。ジャンヌ・ダルクは彼を振りほどこうとしたが、一向にかなわなかった。彼は息たえたえの声で言った。

 

「まだだ……! まだ……僕は負けていないぞ……! ジャンヌ・ダルク……この先には……僕の、願いのためにも……いかせないぞ……! いかせて……たまるか……お前なんかに……僕の願いを邪魔、されて……たまるか……ああ……僕はもうだめだろう……ならば、ここで僕と共に散っていけ……ジャンヌ・ダルク……!」

 

 彼の全身の魔術回路は激しい活動を始め、その果てに暴走し始めた。それを察知したジャンヌ・ダルクは言った。

 

「まさか、自爆するつもりですか!」

「そうだ! そうだ……! その通りだ……!」

「やめなさい、あなたは魂。人間を構成するのに重要なものの一つです。それがなくなったら──」

「問題ないさ……魂程度ならば、後でいくらでも……作り出すことができる。肉体も同じだ……問題は……精神……あれだけは……唯一無二の……ものだ……いちばん重要な……精神のみ、が無事ならば……問題はないのさ……さあ……ジャンヌ・ダルク……(ぼく)の……すべてを使用した……自爆だ……いくら……お前でも、ひとたまりもないだろうさ……さあ、一緒に、地獄に行こう、じゃないか。精神の僕、後は、全て任せたぞ……必ず、僕の願いを……叶えろ……!」

 

 泉の体は強烈な光と膨大な魔力を放ち、粉々に砕け散った。その衝撃で、ジャンヌ・ダルクも吹き飛ばされた。彼女は全身にいくつもの傷を負っており、そこからたくさんの血を流していた。彼女はやがて力尽き、大聖杯の魔力として吸収されていった。

 

 

 

 精神の泉は大聖杯の内部を進んでいった。

 しばらくすると大聖杯の景色は、いくつものビルや歩道をせわしなく歩くたくさんの人々、道路には車が列をなして走っている光景へと切り替わった。空は青く、いくつかの白い雲が浮かび、そのさらに上には太陽が光輝いていた。泉は周りの建物やそのテナントの名前を確認すると、つぶやいた。

 

「ここは僕の故郷だ──そうに違いない。だって、この町と同じ地名、同じ様子の町はこの世界のどこにもなかったのだから。ああ、見ろ、僕。見てみろ! この世界では、道行く人々はどれもが泥人形のように醜く、見るに堪えないものだったけれど、あの人々はしっかりとした人間だ。あの建物もそうだ。あの太陽もそうだ! あんなに美しく光り輝く太陽を見たのは、いつぶりだろうか? ああ、僕は帰ってきたんだ。願いが叶ったんだ──故郷に戻ったんだ!」

 

 と泉は満面の笑みを浮かべ、涙を流しながら叫んだ。彼は腕を振り回し、最後に右手を横に振るった。すると、その光景は粉々に砕け散り、色とりどりの花が咲いた花畑へと変化した。泉は怒りの表情で言った。

 

「そんなことを言うとでも思ったのか? 僕にとって、この世界にあるものすべては汚物だ。目障りなノイズそのものだ。たとえ、僕の故郷の景色でも、この世界のものならばそれは同じなんだよ。なあ、大聖杯。お前は僕を怒らせたぞ。本当ならば、この場で粉々にしてやりたい気持ちでいっぱいだ。けれども、そうすると僕の願いは叶わない。──安心しろ、お前も僕の願いが叶ったあかつきには、消滅するんだからな。冬の聖女(ユスティーツァ)

 

 と泉は目の前に立っていた女性、ユスティーツァの体を粉々に砕いた。彼は2分間の詠唱を行うと、叫んだ。

 

「大聖杯は僕の支配下にあり! やっとだ、やっと僕の願いは叶う! いいや、焦るな、僕。まだ第一段階に過ぎない。さあ、勝負はここからだ! ここから先はあとどのくらいの時間が掛かるのかは全くの未知数だ。体の僕、魂の僕、なるべく時間稼ぎをしてくれ! さあここからが本番だ。大聖杯よ、その魔力を(ソラ)へと届けろ! 僕を月へと案内しろ! 月の観測機へと! ムーンセルへと!」

 

 果たして彼の願いは無事叶えられ、(せいしん)は電子体へと変換され、ムーンセルへと移動した。彼は目の前にある、正方形の物体を見上げると言った。

 

「これがムーンセルか。しかし、大聖杯の力を借りたとはいえ、この肉体を電子化させるのは無事成功したようだね。いやあ、よかったよかった! さて、本番はここからだ。予定では、魂の僕もここにいるはずで、そのほうがリスクも少なくなるんだけど、そんなことは言っていられないね。さあ、覚悟を決めろ。聖杯よ、僕を手伝え! ──投影開始(トレースオン)。投影するはムーンセルの権限、すなわち月の王権(レガリア)だ!」

 

 泉は今の自分の中に存在する魔術回路をすべて起動し、投影魔術を開始した。彼の前身が悲鳴をあげ、肉や血管は張り裂け、全身から脂汗が湧き出した。そうした苦痛は長い間続いた。しばらくすると、泉は膝をついた。彼の手には一つの指輪がはめられていた。それこそは、月の王権(レガリア)であった。彼は叫んだ。

 

「やった! やったぞ……! 次だ、果たしてこの月の王権(レガリア)がムーンセルの権限を振るうことができるかどうか……月の王権(レガリア)とムーンセル、接続開始だ! よし、いいぞ、成功だ! さあ、ムーンセルよ、お前は知識が欲しいんだろう? ならば好きなだけくれてやる! この僕が持つ、この世界の正史、異界の知識、stay night(げんてん)hollow ataraxia(いつわり)Zero(ぜんじつたん)Prototype(げんけい)apocrypha(がいてん)extra(でんしせかい) extra ccc(うらがわ)extella(ゆうせいとのたたかい)kaleid liner(しょうじょのものがたり)Grand Order(せいはいたんさく)これだけではない──その他にも、あらゆる世界の、あらゆる並行世界の知識をくれてやる! 思う存分吸収しろ! よし、よし、いいぞ、貪欲だ! さあ、ここで月の王権(レガリア)の出番だ。ムーンセルよ、知識を与えるだけでは満足か? 僕が求めるのは、お前の演算だ! 僕が与えた知識をもとに、計算をしろ! あらゆる可能性、あらゆるIF、あらゆるもしもを──」

 

 こうして泉の指示通りに、ムーンセルはあらゆる計算を高速で開始した。

 泉は感極まった様子で言った。

 

「やっとだ──僕がこの世界に来てから、ずっと元の世界に戻る方法を探し、あらゆる可能性を確かめ、あらゆる実験を行い、最終的にはこの大聖杯と、ムーンセルの力が必要だということが分かった。それからは、僕がこうしたことを企んでいることを隠しつつ、いくつもの準備をおこなった。危ない橋を渡るときも何度もあった。そして、やっと始まった聖杯大戦だ。どのようなサーヴァント、どのような魔術師が参加するのかは、あらかじめわかっていたから、綿密なプランを建て、そして運よくここまで潜り抜けてきたんだ! ああ、やっとだ! 僕の願いは叶うときはすぐそこだ! 願いはすぐそばに! 世界の破壊はすぐだ! 故郷への帰還はすぐそこだ!」

 

 

 






次回は来週の土日に投稿します。

次回予告!
【アタランテとアキレウス、カルナ決着】
【肉体と天草四郎時貞、決着】
【英雄王の裁き】

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