アタランテが咬ませ犬的ポジジョンなのが納得がいかない!というよりペロペロしたい   作:天城黒猫

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ネロ祭楽しいです。(キングハサンに殴られながら)

スパさんにアタランテで勝とうとして色々と工夫していますが、未だに勝てません。聖杯捧げて、レベル92となったアタランテ姐さんだというのに……まあ、作者の戦い方があまり上手くないというのもあるのでしょうね。勝てないのは。


神罰の野猪

 約束された勝利の剣(エクスカリバー)の光線によって、幾つもの壁を一直線に貫かれた事によって、泉が居る場所から、天草四郎時貞が居る玉座の間への道が一直線に出来上がっていた。泉はその道をゆっくりと歩き、玉座の間へと移動した。

 

「やあ」と泉は玉座の間へと入ると、辺りを見回した後、天草四郎時貞を見つめ、言った。「今晩は。天草四郎時貞。そしてセミラミスにシェイクスピア。悪いけれども、君たちには僕の願いのために死んでもらおうか」

「ええ、今晩は」と天草四郎時貞は言った。「悪いが、それは不可能な頼みごとだ。川雪泉。そちらこそ、俺の願いを叶える邪魔をするというのならば、死んでもらおうか」

「待て!」とセイバーは、泉が手に持っている剣を見るなり、彼の方へと駆け寄って剣を向けた。甲の下にある彼女の顔は、憤怒と困惑とが混じり合ったような表情をしていた。彼女は歯を食いしばりながら叫んだ。

「テメエ、その剣は何だ? 何故テメエ如きがその剣を持っている? ああ、見間違えるものか! その剣は王の象徴たる剣! ブリテンを治める王の証明! 騎士王たる証明! 何故、何故! 何故テメエが約束された勝利の剣(エクスカリバー)を手に握っている!」

「ああ」と泉はそうした彼女の方を見ると、手に持っていた剣を床に突き刺し、その柄から手を離して言った。「そういえば、モードレッド。君の願いは、選定の剣を引き抜くことだったけ? なら丁度いいでしょう? ホラ、抜いてみなよ」

「巫山戯るな!」とモードレッドは、今までの戦いで見せた激しさを上回るほどの様子で、剣を手にして泉へと襲いかかった。「その剣を手にして良いのは、騎士王のみだ!」

「そうか。それじゃあ、僕が騎士王になるのかな? だったら、配下に加えてあげてもいいよ? モードレッド。円卓を囲もうじゃないか。……まあ、モルガンが造り出した、騎士王の偽りの子なんて配下に加えるつもりは無いけれどもね」

 

 そうした泉の言葉に、モードレッドは激しい怒りを見せ、獣のような咆哮をあげながら剣を握る力を強めた。そうした彼女の様子を見た獅子劫は、

 

「セイバー! 落ち着け!」と言った。しかし、彼女にその声が届く様子はなかった。彼はこう考えた。(クソ、俺の声が届かないほどに怒り狂ってやがる。今のアイツは眼の前に居る敵を殺す事にしか興味のない猪だ。令呪を使って沈静化させるべきか)

 

 獅子劫が令呪の効果を発動するために口を開こうとした直前、泉はアーチャーに予め決めていたハンドサインを見せた。その意味というのは、「あいつに向かって矢を射れ!」というものであった。その様子を見逃さなかったアーチャーは、素早くその命令を実行した。獅子劫の僅かに開いた口へと、アーチャーが放った矢は正確に命中し、彼の舌と喉を貫いた。

 続いて、泉は第二の命令を先ほどと同じ方法で行った。

 

「そら、どうしたんだい?」と泉は約束された勝利の剣(エクスカリバー)の柄に手を乗せて言った。「この剣を引き抜きたいんだろう? そら、早く引き抜きに来ると良い。あんまり遅いと、僕が引き抜いてしまうよ!」

「殺す!」とセイバーは叫んだ。「殺す! その剣に、その汚え手で触れるな!」

 

 この瞬間、彼女の怒りは、今までに抱えたどの怒りよりも激しいものへと達した。そうした瞬間を、アーチャーは見逃さず、矢を素早く、連続して放った。それらの矢は、全てがセイバーの鎧を貫き、彼女の肉体を貫いたのだった。そのうちの一本は、足へと突き刺さり、セイバーは地面へと倒れた。

 彼女は床を這いつくばりながら、

 

「殺す……!」と泉を見上げて、その目で射殺さんといった様子で、彼を睨みつけていた。「テメエは殺してやる! オレを、剣を、騎士王を侮辱したテメエは、オレの魂の髄にまで刻み込んでやろう! そして、オレの肉体が消え失せようが、魂のみでテメエに噛み付いてやろう! この先、永遠にテメエを憎んでやろう!」

「おお、怖い怖い」と泉は、約束された勝利の剣(エクスカリバー)を手に取り、モードレッドの元まで歩み寄り、彼女を見下しながら言った。その表情は、満面の笑みであった。「でもまあ、許してよ。この約束された勝利の剣(エクスカリバー)で殺してあげるからさ。憧れていた剣によって殺されるなんて、コレ以上の贅沢は無いでしょう?」

 

 泉はセイバーの首を切り飛ばした。彼女の首は地面を二度か三度ばかり跳ねながら、地面に倒れ込んでいる獅子劫の元まで転がっていった。それを見た獅子劫は、顔をあげて泉を睨み、口を動かしたが、喉と舌とを傷つけられているために、声をだすことは出来なかった。

 

「言いたいことは分かるよ」と泉は言った。「その目、その気配で、獅子劫さん、君の言いたいことは分かるよ。大方こんなところだろう? 『俺達を騙したのか? 共闘の契約をし、俺は聖杯をお前に譲る代わりに、お前は俺の体にある呪いを解く。それが契約の内容だっただろう。……まあ、お前がそれを守るつもりは無い様だったがな』

 心外だね。契約は守るさ、魔術師というのは契約を大事にする生き物だからね。君に罹っている呪いは確かに消そう。そう、この世界ごとね!」

「成る程」とカルナは言った。「お前はどうやら本気でこの世界を消し飛ばそうとしているようだ。しかし、それをさせるとオレのマスターも、無辜の人々も無になるのだろう。ならば、オレはお前に槍を向けよう」

「同感だな」とアキレウスは叫んだ。「ランサー、俺もお前と同じ意見だ。その首、俺の槍で刈り取ってやろう!」

「へえ、やる気かい?」と泉は回りを見回した。

 

 今、この場にいる者たちのうち、彼に敵意を向けているのは、天草四郎時貞とカルナと、アキレウスとセミラミスといった具合であった。シェイクスピアは、泉のことを注意深く観察する様子を見せながら、その口元には笑みを浮かべており、こうした面白い出来事を一瞬たりとも見逃さないといった様子であった。

 アタランテは、暫くの間考え込むような様子を見せ、

 

「マスター」と言った。「私は今まで、汝の指揮に従ってきた。それは、汝の作戦、汝の実力が見事なものだったからだ。とはいえども、汝が敗北するか、あるいは追い詰められたのならば、私は汝を見限るつもりだった。よって、私は必要以上に汝に干渉しようとはしなかったし、するつもりも無かった」

「そうか」と泉は言った。「僕の実力を認めてくれるということかな。嬉しいね! でも、干渉しようとはしなかったっていうのは、少しショックかな。まあいいや、それで、何が言いたいんだい? アーチャー」

「ああ、汝の願望は『この世界を消滅させる』ということで相違あるまいな?」

「その通りさ」

「ならば、私は今より汝をマスターとしてではなく、私の敵として見るとしよう!」とアーチャーは叫んだ。「汝にも、そのような事をするのならば、余程の事があるのだろう! だが、我が願望は子の幸福だ! 貴様の願いを叶えるわけにはいかない!」

「そうか、残念だ」と泉はため息を吐いた。「でもさ、考えようによっては僕の願いが叶えば、アーチャー、君の願いも叶うんだよ? 苦しむ子が、苦しむ存在が、苦しむ世界が、苦しみを与える者が、苦しみを与える存在が、苦しみを与える世界がなくなれば、子どもたちは苦しむ事も無くなるだろうしね。そら、そういう意味では天草四郎時貞。君の願いも同じだ。苦しむ世界がなくなれば、苦しむ人々が無くなる。……どうかな? 消滅による救済っていうのも、悪くはないでしょう?」

「いいや」と天草四郎時貞は言った。「俺はそのような救済は認めない。それは救済ではなく、全てを諦めるのと同義だ。消滅というのは人々にとって、恐怖そのものだ!」

「その通りだ」とランサーは言った。「お前はどうやら、本気のようだ。オレも、この世界が消えるというのは、賛成しない」

「ああ、全くだぜ」とライダーは言った。

「そうか」と泉は言った。「ところで、そこのアサシンとキャスターはどうかな? 君達の意見を聞いていなかったね」

「たわけ……」とアサシンは、血を吐きながら、息も切れ切れといった様子で答えた。「我の治める世界を、帝国を貴様はなくそうというのだろう。ならば、その傲慢、我の手によって刈り取ってやろうではないか……」

「女帝殿よ!」とキャスターは言った。「あまり無理をなされるでありませんぞ。見るからに瀕死ではありませんか! 『これは数多くのイギリス国王から黄金の冠を奪い去った眠りだ』先ほど、自身でおっしゃっていたではありませんか! このように! 

『これはヒュドラの毒か! 不味いぞ、さしもの我といえどもコレはあまりにも強力すぎる……解毒には時間がかかるかも知れん、それかあるいは……』と! ヒュドラ! おお、今回の聖杯大戦にて召喚されたケイローンの精神を殺し尽くし、不死を失わせた毒! かのヘラクレスをも死へと至らしめた毒! 『真鍮も、石も、大地も、無辺の海も、重々しい死の支配をまぬがれることができないとなれば……』まさに英雄殺しの猛毒ですぞ。あまり無理をなされるでありませんぞ。

 そして、吾輩についてでしたな。そうですなあ……『地球という素晴らしい建物も、自分にとっては荒れ果てた岬のように見える』と申しまして、吾輩は面白おかしい作品を書ければそれで良いのです。というか、ぶっちゃけ吾輩、戦いなどできないのでして。こうして観戦することが精一杯なのですよ」

「よし」と泉は言った。「よし、分かったよ。それじゃあ、キャスター以外は敵という事で良いのかな?」

 

 と彼は再び回りを見回した。

 その場に居る英雄たちは、手に持つ武器を各々泉へと向けており、今にも飛びかからんと言った様子であった。

 泉が指を鳴らすと、非常に強い光と音とが発生し、英雄たちを一瞬だけひるませた。彼はそうした、ほんの刹那の時間を利用し、令呪を使用した。その命令というのは、次のようなものであった。

 

「アーチャー、令呪をもって命じる──宝具、『神罰の野猪(アグリオス・メタモローゼ)』を使用せよ! 重ねて命じる──一切の理性を捨て、野生のみの本能に従え! 更に重ねて命じる──この場にいる者たちを足止めせよ!」

 

 こうした命令は即座に実行された。

 アーチャーは第二の宝具である猪の革を取り出し、それを身に纏った。すると、彼女の姿はたちまちのうちに変化していった。

 緑色の髪は、くすんだ、泥色、あるいは灰色のような髪色に変わり、目には理性の光りといったものは宿っておらず、野生の、凶暴な獣のような、鋭いものへと変わっていた。そして、彼女の肉体は肥大化し、右腕は黒い毛皮と、鋭い牙を持ち、禍々しい様子をした、彼女の身長の半分ほどはある、巨大な猪の頭へと変わっていた。

 アーチャーは咆哮し、近くにいたランサーへと飛びかかった。ランサーは、そうした彼女の攻撃に、槍を盾として防ぐのがやっとであり、後方へと吹き飛ばされた。

 次に、彼女はライダーへと飛びかかった。その素早さは、ライダーのそれと同等か、あるいはそれ以上といった具合であった。ライダーもまた、攻撃を喰らった衝撃によって2、3歩ばかり後退したが、アーチャー目掛けて槍を振るった。彼女はその攻撃を回避し、後ろに飛び退った。

 アーチャーは四つん這いになり、ライダー、ランサー、天草四郎時貞、セミラミセス、キャスターの順に睨みつけた。

 

「まるで」とライダーはその様子を見て呟いた。「獣、いいや、これは狂戦士といったほうがいいか?」

「そうですね」と天草四郎時貞は言った。「彼女は、実質的な狂戦士(バーサーカー)でしょう。クラスこそはアーチャーですが、宝具を使用したことによって、ステータスに狂化スキルが追加されています。そして、それによってステータスも上昇しています」

「成る程な」とアサシンは言った。「要は獣であろう、理性を捨て去ったのならば毒でどうにでもなる!」

 

 彼女が指を振ると、毒の霧の塊がアーチャーへと目掛けて向かっていった。

 

「■■■■■■■!」とアーチャーは咆哮すると、その霧目掛けて、猪の口から矢を放った。その矢は、これまで彼女が放ったどの矢よりも強力であり、毒の霧を吹き飛ばした。

 

「どうやら」とアーチャーの様子を観察していた泉は言った。「アーチャーにまかせても、特に問題は無いようだね。それじゃあ、僕は大聖杯へと向かわせて貰うよ」

「待て!」と天草四郎時貞は叫んだ。「お前の願いを叶えるわけにはいかない。願いを叶えるのは、俺だ」

「そうか」と泉は大聖杯がある部屋へと向かいながら振り返りもせずに言った。「天草四郎時貞、君には世界の救済という願いがあるんだったね。他のサーヴァントたちにも願いがあるんだろう。だけれども、僕にもどうしても叶えなくてはいけない願いがある。そして、これは聖杯大戦だ。一人の願いを叶えるために、敵を蹴落とし、勝利するための戦いだ。僕は、僕の願いを叶えるためにも、僕はお前たちの全てを否定しよう」

 

 泉は、彼らが居る部屋から完全に姿を消した。






モーさんファンの皆さんごめんなさい。

次回! 
アタランテ無双はっじまるよー!
【魔獣の鋭牙】
【潜伏者の奸計】
の二本立てでお送りします!

次回は明日か明後日か、来週の土日に投稿します。
最終話まで本当あともう少しです……

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